このページでは、家を買うか買わないか迷っている人に向けて、私が考えていることをお話しします。この章は私が日頃考えていることを書き綴ったものです。

そのためすぐに役に立つという話はあまり含まれておりません。もっと現実的な話をご希望の方は、次の章「2章.その住まいは経済的ですか」からお読みになることをお勧めします。

住まいの購入は損をする、という意見の方が多い気がします

さて経済的に見て、買った方が得か借りた方が得かという議論があります。この質問に対しては「私には分かりません」とお答えしています。ただこれで終わってしまっては話が進みませんので、もう少し詳しくお話しさせてください。

損するイメージ

広告的な文を除くと、家を買うと損をするという主張が多いように感じます。

経済的な損得について出る話では、賃貸の方がトクという意見を多く見ます。その意見では大きく2つの論調があるように感じます。

1つは不動産の価格は長期的に下がる、その下がるものに投資するのはバカらしい、という意見。もう1つは不動産の価格は賃料などの利回りから計算できる、その計算から考えると損得はあまり出ない、損得が出ないのであれば、住む場所が限定される不便さ、損傷などのリスク、ローン破綻などのリスクを取るのは割に合わない、という意見の2つです。

(もちろん他にもさまざまな意見がありますが、私個人がなるほど、と感じる意見は上記2つの中に含まれていましたので、この2つとしました)

長期的に見れば本当に不動産の価格は下がるのでしょうか

まず不動産の価格が長期的に下がるという意見についてです。この根拠として、日本の人口がこの後減っていくということ、そしてすでに空き住戸がかなりの数になり、さらに今後空き住戸が増えるであろうと予測されることなどが挙げられます。ただ、こういった要素で実際に不動産価格が本当に下がるとは私には言い切れません。

右肩下がりのグラフ

本当に不動産の価格が下がり続けるのか、恐らく誰にも分かりません

まず人口の減少による影響ですが、本当にこのまま下がり続けると確定している訳ではありません。現在の日本人のみで考えれば減ることは間違いないでしょうが、世界レベルで見ると人口は爆発的に増えています

移民政策は政治的に難しいとの意見が大半ですが、世界では人口が増えて困っている、そして日本や先進国では人が減って困っているという状況から、いつ移民受け入れをせざるを得ない状況にならないとは言い切れません。実際に今でも移民政策については色々と考えられているようです。

また昨今の首都圏のマンションの高騰は、一部を海外の投資家が支えています。特にタワーマンションではその傾向が強く出ています。不動産の価格は日本の人口だけではなく、色々な要素によって決まるということを忘れてはいけません。

また、空き住戸は確かに多いのですが、機能的に問題があり空くべくして空いている住戸も多いように感じます。また、建物が建っていれば税金も安いという理由で、取り壊されていない建物も多数あります。

こういった空き住戸が数あることだけが主張され、不動産は余っているので価格が下がる、と言われるのは少し無理がある論理ではないかと思っています。

さらに、不動産の価格については不動産についてしか述べられていないのも片手落ちのような気がします。つまり不動産の価値は下がるが、それ以上に紙幣の価値が下がることはないのか、という話があまり出てきていません。モノの値段が高いか安いかは相対的に判断されるべきものだと思います。

どんどん下がる

本当に不動産の価格が下がるのかどうかは、誰にも分からないと思っています。

だんだん話が大きくなってきました。私は経済の専門家ではありませんし、投資の専門家でもありません。どの意見が正しいと言えるほどの知識もありません。

ただ、今までこの業界その他を見てきて、いかにもそれらしい将来予測が外れた例を数多く見てきています。ですので、こういった予測もあまり信用していません。そのため意見を聞かれると分かりませんと言うしかない訳です。

賃料など利回りから不動産価格を考えるのは有益ですが絶対に正しいとは限りません

もう1つ、賃料から考えれば、あまり損得はないという意見があります。この意見から学べることは結構多く、家賃とはどういうものなのかを改めて考えさせられます。この考え方が分かっていれば、変な議論に巻き込まれることを防ぐことができます。

例えば、賃貸であれば家の修繕費や固定資産税などを払わなくて済むからトクだ、という意見があります。では、この修繕費や固定資産税は大家さんが借主のために、ボランティアで費用を出しているのでしょうか。そんなことはもちろんありません。修繕費や固定資産税などの費用は得られる家賃から支払っています。つまりこれらの費用は家賃に含まれています。

大家さんのイメージ

大家さんの立場に立って考える事で、見えてくるものもあります。

他の変な議論の例としてこのようなものもあります。
住宅購入は大半の方が住宅ローンを組みます。住宅ローンには金利が付きますので、当然利息分の支払いもあります。金利や返済期間にもよりますが、この利息の額が借りた金額と同じくらいの金額となるケースもあります。その時に出る話として、借りた金額の2倍のお金を支払わなければならない住宅購入は損です、という意見を私は聞いたことがあります。

この意見についてあなたはどう思われますか。2倍なら損ですが、1.5倍ならOKなのでしょうか。あるいは1.2倍なら良いのでしょうか。利息分自体を支払うのが損ということであれば、現金一括で買う方法のみ良しとなります。ですがその場合でも、その現金を他に運用した場合と比較して損得を考えなければなりません。

この意見についても家賃や利回りの考え方があれば、ある程度の結論を出すことができます。この説明は長くなりますので省略しますが、家賃や利回りの考え方はとても有効で、世の中に出回っている変な理屈の何割かは、この考え方で省くことができます。

ただ、この家賃と利回りの考え方に1点不満があります。それは賃貸用の住宅と分譲用の住宅とでは建物の質が大きく異なるのに、同じ利回りで計算しようとしていることです。

この建物の質が異なるとはどういうことでしょうか。それは建物のオーナー、大家さんや家賃に反映できるような部分には費用をかけますが、反映できない、あるいはかけたコストを回収できるほど家賃の上乗せができないと考えられる部分については、コストをかけないということです。

もう少し具体的に見ていきましょう。例えば構造です。住宅の性能表示制度によりますと構造の安定に関する項目のうち、耐震の等級は1から3まであります(1が一番低く3が一番高いレベル設定です)。

大家さんは賃貸用の住宅を建てる時にどの等級の建物を選ぶでしょうか。ここで大家さんが考えるのはその選択が家賃に、つまりは利回りに影響を与えるかどうかです。

耐震等級を2に上げたからといって、高めの家賃設定ができるとは思えません。であれば、耐震等級は1で良いことにし、その分建設費を安く済ませようとします。利回り中心で考えれば当然の判断です。

地震を受ける家のイメージイラスト

賃貸住宅を建設する人は耐震の住宅性能表示等級3の建物を建てるでしょうか。賃料に反映されないと思われる項目で費用をかけるとは思えません。

これは耐震性だけに限りません。温熱環境や健康に影響を与えるかもしれない素材や設備などの判断も利回りから判断されることになります。

誤解を招かないために述べますが、これは法律に違反している訳ではありません。耐震等級1の建物でも建築基準法の決まりを満たしていますし、健康に影響を与えるかも、という部分も基準法その他の決まりを満たしています。ただ建築基準法は最低限のルールを設定しているだけですので、建築基準法を守れば安全・快適のレベルが高いという訳ではありません

ですので、この利回り計算ばかりに振り回されるのは危険です。分譲マンションの1住戸が賃貸に出されている場合など、同じ性能の建物と特定できる場合を除けば、元々違うものを同じ利回りで計算してはいけません。

建物は賃貸用と分譲用は大きく違います

賃料の利回りから考える理論は、建物の質をあまり考えていません。質の高い建物の賃料が計算できないため、その分計算に間違いが出ている気がします。

生活の質が上がることで経済性のモトがとれるかもしれません

さて、ここまで「経済的に見て」買った場合の損得について考えてきました。しかし、前のページでもお話ししましたように、家を買う目的は「生活の質を上げる」ためです。

「この生活の質」が上がるのであれば、賃貸よりも多少支払いが増えても構わない、という考え方もあります(広義で見ればこれも経済性の一部ではあります)。先程も述べましたが、賃貸用の住宅と分譲用、あるいは注文住宅と比較すると住宅の性能に大きな差があります。

質の高い生活

お金をかけた分以上に生活の質が高くなればOKという考え方もあります。

例えば温熱環境です。断熱材の種類と厚さ、窓のサッシやガラスの性能の差によって住戸内の温熱環境は大きく違います。これによる快適性の違いには本当に大きなものがあります。

分譲住宅の全てが温熱環境に優れている訳ではありませんが、一般的にはより断熱効果が高い材料が使われています。他にも構造や材料にも差があることが多くあります。これは分譲の建物を探している人は、賃貸で探している人よりも建物の性能についてのチェックの目が厳しく、目に見えない部分についても勉強している人が多いためです。

性能の差以上に大きいと思われるのが気分の問題です。私も自分で経験していますので言えるのですが、自分が所有している、という満足感には非常に大きなものがあります。それが単に権利証という紙1枚のものであっても、です。

壁に躊躇することなく釘が打てるといった小さなことから、自分の好みに合わせて大幅にリフォームできるという大きなものまで含めると、満足度合いがさらに高くなります。このページでは長々と経済的な話について述べてきましたが、実際には経済性どうこうよりもこの満足のために購入する人が多いと思っています。

このページで述べた内容は本当に個人的な意見ですので、同意されない方も多いと思います。ただ、私はこのような意見を持っているということ、そして家を買うか買わないか迷っている方に対して、何かしら参考になればと思い、お話しさせていただきました。

また、家を買うべきかどうかについては、投資家の方や評論家の方も数多くの方が意見を述べています。ただ、その意見も玉石混合で、参考になるものもあれば、全く意味が無い話もあったりします。このあたりについては「4-08.投資家や評論家の家の話はもっともらしく聞こえますが、正しいとは限りません」ページでも解説していますので、よろしければこちらのページも読んでみてください。

このページの内容を動画でも説明してみました

このページでお話ししました内容を動画でも解説してみました。その動画がこちらです。

よろしければ、動画もご確認ください。
このお話はページの関係でかなり省略している部分も多くありますので、より詳しい話を聞きたいという方は、ぜひ1度お問い合わせください。

次のページはこちら 「02節.戸建かマンションかは生活スタイルによる」

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