この01項では、建物に問題などがあり、予定していた住宅ローンが使えずに経済的に損をするかもしれない可能性についてお話しします。

法的に問題がある建物では住宅ローンが組めません

まずは住宅ローン一般についてですが、最近では法的に問題がある建物では住宅ローンを組むことができなくなっています。こうお話ししますと当たり前のこととお考えかもしれませんが、10年くらい前まではそうでもありませんでした。

法的な問題で一番多かったのは、検査済証を取らずに建物を完成させてしまうケースでした。建物は新築する際に、設計段階で確認申請を行いその写しをもらいます。

竣工後には役所などの検査を受け、検査済証を発行してもらいます。ところがこの最後の検査を行わずに検査済証の発行が無いまま建物を完成させてしまうケースが結構ありました。

この検査済証が無くても、建物の保存登記は可能で、登記ができれば抵当権の設定も可能だったため、検査を受けずにそのまま建ててしまった建物も数多くありました。検査を受けていない建物のすべてが大きな問題を持っているという訳ではありませんが、違法の建物であることは確かです。

国土交通省が2014年7月に出した報告書の中で下記のグラフを見つけました。
「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を 活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン (国土交通省 平成26年7月)」より

完了検査率の推移

15年前までは半分に満たなかった検査済証の取得率ですが、最近では9割前後の取得率となっているようです。

この図によれば、1998年では検査済み証を取得していた建物は全体の38%となっています。この年に建てられた建物の半分以上は検査済証を取得していない違法の建物となります。グラフの傾きを考えれば、1998年以前は検査済証を取得していない率はもっと高かったのではないかと思われます。

現在の新築では検査済証を取得していない建物には住宅ローンを付けられません

金融機関の融資のイメージ

今では金融機関の建物審査が厳しくなりました。

最近ではこの状況は改善されてきており、2012年では90%前後の建物は検査済み証を取得しているようです。取得率が上がった原因の1つは、金融機関が検査済証が無い建物への融資をしないようになってきたからです。

昔は抵当権設定登記ができれば問題となりませんでしたが、2003年に国土交通省から各金融機関に検査済証が無い建物への融資を控えるよう要請があり、それ以降は金融機関が検査済証の有無を確認するようになってきました。現在では検査済証が無いと住宅ローンの融資を行わないとする金融機関が多くなっています。

ここでようやく本題に戻りますが、今では検査済証がないと住宅ローンが使えないことがあります。昔ながらの感覚で建物を作っている会社では検査済証を取らない建設会社もあるかもしれませんが、新築の場合は必ず検査済証を取るようにしてください。

住宅ローンの可否もそうですすが、そもそも検査済証は当初の確認申請通りに建物が作られていますという検査結果を示しています。これが無いということは検査が行われておらず、仮に建物に問題があったとしてもそのままになっている可能性もあります。

また、2003年以前であればともかく、今の時代に検査済証を取らなくても問題ないと考えている建設会社があったとすれば、その会社は問題です。建設会社からそのような要望があったとしても、必ず検査済証を取得するようにしましょう。

中古住宅の場合には、検査済証が無いケースも多いと思います。その場合には、事前に建物検査を受け、耐震基準適合証明書を取るとか、フラット35の適合証明を取っておけば、一般的には住宅ローンを受けられます。ただこの作業は原則引き渡し前に行わなければなりませんので、売主さんや売主さん側の不動産仲介会社の協力が必要になります。

ただ建物のタイプによっては、このような証明書が取れない建物もあります。事前に不動産会社に確認した上で、契約を進めて良いかどうかを判断するようにしましょう。

リフォーム時にも検査済証が無いと、工事に支障をきたします

リフォームのイメージ

リフォームもその内容によっては、検査済証が必要となるケースもあります。

この検査済証が無いことで引き起こされる問題は住宅ローンに限りません。将来大規模なリフォームを行いたいと考えた際に、この検査済証がないために、リフォーム工事ができないということもあります。一時的な面倒を避けて検査済証を取らない例がかつては多かったと思いますが、将来に渡っての経済性を考えた場合、今後は必ず取らなければならないものだと私は考えています。

中古住宅については検査済証を取っていない建物が多数あるため、その場合には法適合状況調査書などを付けることで、その後のリフォームなどが問題なくできるよう、法律の整備が進んでいるようです。ただその場合にも当然費用がかかりますので、最初から検査済証がある方が、経済的に有利になるのは間違いないでしょう。

余談ですが、ではこの検査を受け検査済証を取っていれば安全な建物かというと必ずしもそうではありません。残念ながらこの検査で確認できるのは建物のごく一部のため、実際には検査済証があっても問題のある建物はたくさんあります。安全については、「第3章.その住まいは安全ですか」のページもご参照ください。

フラット35の借り入れにも、建物の基準があります

ここまでは一般的なローンが借りられない建物についてお話をしてきましたが、ここから先はフラット35が借りられない建物について説明します。

フラット35では住宅金融支援機構が定めている技術基準に適合している建物でなければ借入することができません。この基準は建築基準法で定められている基準よりも厳しくなっているため、一般のローンで借り入れはできても、フラット35では借入できないということもあり得ます。

また、この基準に適合しているかどうかの証明書を取らなければならないなど手続きも発生します。このフラット35の技術基準は、ざっくり言いますと下記のような内容です。

フラット35の技術基準

フラット35の技術基準です。具体的には細かな規定がたくさんありますが、内容はしごくまっとうな内容ではないかと思われます。

「フラット35 新築住宅の技術基準の概要」

個人的な意見を言えばフラット35の技術基準は、ごくまっとうなものだと思います。しかしこのフラット35の基準を嫌がる建設会社もあり、民間の住宅ローンを進める会社も多数あります

最終的にどのローンを選ぶかは買う人の判断で良いと思うのですが、建物の技術レベルとしては、この基準を満たしていている建物の方が安全性が高いと思います。フラット35を使うには適合証明を取らなければなりませんが、適合証明をとる申請料分のみ金額がプラスされるだけで、特に追加工事費は必要ない、という建物の方が私は安心できると思ってます。

建設会社がフラット35を嫌がる場合は、その理由を聞いてみてください。特別な理由がなくフラット35の適合が取れない場合や、大きな追加工事費を要求する会社の場合、本当に問題のない会社なのかどうかを再度確認した方が良いと思います。

誤解を恐れずに言えば、フラット35の技術基準はさほど高いレベルのものではありません。しかしそのレベルにすら届かない建物や、そのレベルに合わせるために高額の追加料金を要求する会社であるとすれば、普段建てている建物のレベルがどのようなものなのか、正直心配です。

最近では少なくなったものの、フラット35の技術基準を満たさない理由を、単に大丈夫ですから、という言葉だけで押し切ろうとする会社が、かつてはたくさんありました。この業界で言う「大丈夫」は何の根拠もない言い訳であるケースがよくあります。根拠なくこの言葉が出てくる会社には注意しなければなりません。

フラット35の技術基準が建築基準法の最低基準より優れているのは、耐久性や断熱性に関わる部分です。優れている、と言っても長期優良住宅の基準や海外の断熱基準から比べるとあまり高いものではありません。それでも1つの目安にはなる基準ではないかと思います。

耐久性が良く、長期間使用することができれば、最終的な経済性は良くなります。また断熱性の良しあしは快適性に大きく影響します。

この項は住宅ローンが使えるかどうかという切り口で考えており、ローンが使える建物というのは、建物レベルでは最低限のレベルを確保している程度です。

経済性と安全性・快適性のバランスをうまく取るためには、もっと深く色々なことを考えなければなりませんが、まずはこのレベルを理解し、確実にこれ以上を目指せるよう建物を選んでいくべきだと思っています。

次のページはこちら 「02項.建物資産価値について考える」

ふくろう不動産は他社との提携で、フラット35の適合証明書の発行の手伝いもできます

ふくろう不動産では中古住宅の耐震適合なども含め、瑕疵保険やフラット35の適合証明などの発行取り次ぎを行っています。

住宅ローンについてもシミュレーションを含め、様々なアドバイスが可能です。詳しくお知りになりたい方は、ぜひ一度ご相談ください。ざっくりとした内容については「6-03.戸建住宅のインスペクションの費用と内容について」のページにも記載しています。

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