どんな家を買うべきかとか、そもそも家を買うべきか買わないべきかという話は色々な方が色々な立場から意見を述べています。不動産関係者や建築関係者はもちろんですが、金融や投資関係の方も、家を買うかどうかについて、意見を出している方は多くいらっしゃいます。
投資家の方(このページで言う投資家の方とは不動産投資の方を除いています)や経済評論家の方の意見はすべて同じではありませんが、それなりの率で家は買うべきではない、と主張される方がいます。これらの意見に参考となる事も多いのですが、本当に正しいのかと疑問に思う内容もたくさんあります。
どの意見が正しいとか正しくないとか、私が判断できるものではありませんが、投資家の方の買わない方が良いという意見の中から、これはどうだろうと思うものについて、意見を述べたいと思います。
日本の不動産は絶対に下がると断言される方は正しいのでしょうか?
一般的な投資家の方、経済評論家の方は、これから日本の土地や建物の価格が上がる事はない、と断言される方がたくさんいます。不動産の価格が下がる根拠として、
・日本の人口はこれからどんどん減っていく
・空き家は現時点でもたくさんあるし、これから更に増えていく
という2点が引き合いに出されます。
しかし、投資家や評論家の方の意見を100%そのまま信じることは、私にはできません。私も不動産業界にそれなりに長く関わっていますが、その間に様々な意見を聞いてきました。そして評論家の方々の意見はそれなりの率で、誤解を恐れずに言えばかなりの率で、間違っていたことが今では分かっています。
バブルの時代でも、本当に数多くの人が土地の価格は下がらない、国や銀行が下げさせるはずがない、という意見がいかにも正しい話のように語られていたことを今でも私は覚えています。ですが、実際にはバブルは崩壊し、評論家をはじめとする多くの人の予想は当たりませんでした。
今日の不動産の価格は上がらないという意見の根拠も、その根拠がどこまで正しいのか、私は疑問に思っています。例えば、人口減による影響ですが、
・最近のタワーマンションの価格は外国人の購入で支えられており、日本人の人口の影響は受けていない
・今後移民等が解禁にならないとは限らない
・土地の価格は下がっても、紙幣の価値がもっと下がり、相対的には不動産の方がマシかもしれない
など、その気になれば、相反する要素はいくつでも見つけることができます。
実際に人口が増えていた時期にも不動産の価格が下がっていた時もあり、どの位の相関関係があるのか、はっきりとした事は分かりません。
住まいが余るから価格が下がるとも限りません
2つ目の理由の空き家が増えている事を考えれば不動産の価格は下がらざるを得ないとの主張ですが、こちらは人口減という理由以上に疑問に思っています。空き家の数自体は確かに増えていますが、その空き家は人が実際に住むに値するような住戸なのか、疑問に思える空き家が多いからです。
賃貸での空き住戸や、売買でも古屋が売られている事例をよく見ますが、普通の人が住める状態ではない住まいがたくさんあります。所有者も使えると思って建物を残しているのではなく、建物がある事で土地の税金が安くなるために、建物を残しているだけで、その建物がそのまま使えるとは思っていない建物も多いでしょう。
古い団地のマンションもだんだんと空きが増えている場所もあるようですが、そのようなマンションは修繕費などが集まらなくなり、スラム化が進みます。空き住戸が増えているといっても、そのようなスラムマンションに住む人がそんなにいるでしょうか。
評論家の方は数値を見ているだけで、このような実情をあまり分かっていないのではないかと思う時もあります。
子供の数が減っているため、今後は土地や建物を相続で受ける人も増えるので、不動産を買う必要がなくなる、という主張も聞きます。ですが、相続を受けた土地建物をそのまま相続で引き継ぐという人は、それ程多くないと思っています。
実際に中古の戸建住宅の仲介を行っていますと、古い戸建て住宅が売られている理由の多くは、親御さんが亡くなったけれども、子供たちは別の住まいを持っているので、そのまま相続する人はおらず、売却する、という理由が結構な率を占めます。
皆さんもご自分の周りの人の状況をよく観察してみてください。親御さんの家にそのまま済むという方をどの位の率で見るでしょうか。お子さん世帯が持ち家であるか賃貸であるかを問わず、引き継いで住み続けるという例はあまり見る事がありません。
相続で家を受け継ぐから買う人がいなくなる、という意見には現状を見ている分にはあまり賛成できません。
もちろんここで私が述べた考えは単なる意見ですので、間違っていることもあるでしょう。ですが、同様に投資家の方の話、評論家の方の話にも間違っている内容はたくさんあると思っています。
その内容が正しいかどうかが分かるのは10年後、20年後でしょうが、意見が間違っていたからと言って、意見を述べた人が責任を取ってくれる事はありません。最終的には自分の考え、判断で不動産の買う買わないを決めなければなりません。
投資家や評論家の方の大半は技術的なものが分かっていないように感じます
評論家の方の話を聞いて感じるのは、土地や建物についての技術的な内容が分かっている人はほとんどいないという点です。評論家の方は賃料から不動産価格を考える方がほとんどですが、賃貸用物件と分譲用物件の建物性能の違いという点については、まず触れられません。
分譲用マンションであれば、賃貸に出されている分もあるため、価格設定が正しいと思われる意見もありますが、それ以外については、意味の無い意見や相場から大きく離れた意見も多数見受けられます。
戸建住宅は特にそうですが、建物性能が賃料に反映される部分が少ないため、賃料だけで考えると戸建住宅の建物価格は高く感じられる評論家の方が多いように感じます。この話は「戸建を買いづらいのは償却期間や住宅ローンのせいではありません」のページでも述べていますので、よろしければこちらも参考にしてみてください。
評論家の方からは生活の満足度という視点があまり語られません
建物性能が違うと、生活の質が大きく変わります。自分の生活と直接関係が無い投資であれば、投資効率だけ考えればよい話ですが、住まいであれば投資の面と生活の面の両方について、どうあるべきかを考えなければなりません。
例えば投資だけを考えた場合、最高の立地にボロボロの戸建住宅に住むというのがかなり割の良い投資になります。立地が良い場所なので土地価格が下がりにくく、建物は最初からボロボロのものを買えば、建物価格はゼロに近い価格で手に入れられますので、売るときにも損失は出ません。ですが、そういった生活をしていて楽しいかどうかは別の問題です。
普段の生活の快適性をある程度見切るという考えも確かにありますが、逆にお金はかかっても快適性を上げるという考えもあります。こういった視点を抜きにして実需の住まいが語られるのは片手落ちのような気がします。
評論家や投資家はポジショントークがあるので仕方がないのかもしれません
もっとも、評論家の方や不動産以外の投資家の方は、自分にとって都合が良い方向に世の中を持っていきたいので、このような意見になるのは仕方がないのかもしれません。
例えば不動産以外の投資家、株や債券を扱う投資家であれば、日本人お金の大半が不動産に向けられているのを苦々しく感じるでしょう。不動産を買わずにその分株などに投資してくれれば、自分が扱うジャンルが大きくなるという面も考えているのかもしれません。
評論家であれば、自分の意見を偉そうに(失礼ですが)語りますが、マスコミ受け、一般受けしようと思えば、どちらにも取れるような発言ではなく、多少の揺らぎは無視して受け狙いの内容を断言しなければ注目を受けないという側面もあるのかもしれません。
そう考えますと、誰もが経済的に合理的に動いているという事になり、文句を言う筋合いではないのかもしれません。
一方で意見を聴く側としては、発信者のポジショントークに振り回されるのは勘弁してほしいと感じます。書籍や雑誌、サイトや動画で様々な意見が出ていますが、どのような立場の人が話をしているか、何をどのような根拠で話しているかの判断が昔以上に要求されている世の中になってきていると感じます。
ふくろう不動産の意見が間違っていることもあります
ここまで色々と意見を述べてきましたが、もちろん当社の意見が間違っている可能性も十分以上あります。また当社は不動産仲介会社ですから、不動産を買いたい人が増える方が良いという立場ですので、どうしても意見が不動産を買う方に流れているという可能性もあるでしょう。
私は極力第三者的に意見を述べたいと考えていますが、それでも実際に行っている仕事や周りの影響を受けない訳にもいきません。当社のサイトをご覧になられる方も、サイトの内容を100%信じるのではなく、ご自分の考えで判断しながら当社のページを見てもらえればと思います。
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