建物の耐久性が高ければ結果として不動産を安く購入したことになります

前の02項では建物に費用をかけても資産性は上がりにくい、とお話ししました。建物に費用をかけることで、資産性を上げたり維持したりするのは難しいのですが、建物を長く使うことによって一定期間あたりのコストを下げることは可能です。

不動産は購入したり売却したりする際にかかるコストが結構大きいため、一度購入した不動産を長期間使い続ける方が経済的にトクをすることが多くなります。

特に建物は一定期間経過すると資産性こそゼロに近くなりますが、使用する分に問題がなければそのまま利用し続けられます。その結果最終的に建物の資産性がゼロになるとしても、長い期間使うことで当初払ったイニシャルコストは1年あたりに換算すれば安くなります。

イニシャルコストと利用期間からざっくりと建物のコストを計算してみましょう

・2100万円の家を30年間使うと1年あたりは70万円
・3000万円の家を60年間使うと1年あたりは50万円

考え方は上の通りですが、実際にはローンの金利なども影響しますのでもう少し複雑です。前提として、
・2100万円の家を建築し、30年経過後に同じレベルの家を建て替え。
2100万円すべてをローンとし、30年返済。30年後に同じ条件で再度借入。
金利を2.0%固定とする。
・3000万円の家を建築し、30年返済。60年後まで同じ家に住む
金利は2.0%固定とする。
という前提でローンを計算し、支払った金額を積み重ねていくと下の表のようになります。

ローン支払い額の合計

30年後に同じ建物を同じ金額で建て替え、再度同じローンを払うという前提での計算です。家を購入した場合と賃貸で家賃を払い続けた場合のグラフも見た目は同じ感じです。

支払総額は
・2100万円の家2回 5600万円弱
・3000万円の家1回 4000万円弱
と、60年で見ると1,600万円の差になりました。

もっとも累計費用が逆転するのはこのシミュレーションですと43年後と結構先のことになります。現実には他の要素、建て替えの方は引っ越しや仮住まいの費用、住み続ける方は修繕費用などがあり、この通りにはいかないでしょうが、長く使い続けることができれば、トータルでの費用は安くなります。

資産価値という観点から見れば建物は築20年以降はほぼゼロになりますが、使用価値という観点から見れば50~60年くらいは問題なく使えます(例外もあります)。日本の住宅の平均寿命は27,8年と言われますが、機能的な問題で寿命を迎えている訳ではなく、生活スタイルや家族構成の変化、あるいは気分の問題だったりします。

先々の家族構成や生活スタイルがどうなっていくか予測することは難しいのですが、ある程度考えておくことで、長く使える建物とすることは可能です。今後建物を新たに建てようと計画している人は、ある程度は長く使えるということを考えた方がトクをする可能性が高くなると私は考えています。

戸建住宅の耐久性は物理的なものよりもデザイン的な理由が大きいと思われます

デザインのイメージ

耐久性は機能の問題よりもデザインの問題の方が重要だったりします。

ただ、ここで言う耐久性とは、構造がしっかりしていて長く使える、という事だけを指していません。もちろん構造が長期間持つのは当然のことですが、幸い最近の建物は構造に問題が出ることはそれほど多くありません。長い間使えるかどうかは、広い意味でのデザインに関わる問題が大きいと思います。

広い意味でのデザインとは、使い勝手の良い間取り、古くなっても悪い感じを受けない素材、そして見た目の美しさです。

使い勝手の良い間取りといっても特別なことではありません。買い替えや建て替えをする人からは、リビングが狭すぎる、収納がないため部屋が散らかる、お風呂やトイレが狭くて使いにくいなどの意見が多く聞かれます。

逆に言えば、これらの問題が出なければ無理して建て替えをしようとは思わない訳です。広さに対する不満が多くあるため、最初からある程度の広さを確保しておけば、このような意見は出にくくなります。

古くても美しいイメージ

古くても美しさを感じるものはたくさんあります。家自体がそのような家であれば、建て直そうという気持ちはあまり出てきません。

古くなると悪い感じを受ける素材は、化学系の素材などで良く見受けられます。すべてがそうだとは言いませんが、塩ビ系の壁紙、プリントされた木目のフローリングなどで、古くなると急に感じが悪くなる素材が結構あります。屋根材や外壁などでもそうです。化学系の屋根材や外壁材は、古くなると急速にみすぼらしく見える素材があります。

それと比べれば、自然系の素材は最初から古く感じるということもありますが、経年変化後にも味を出すことで良い雰囲気を出します。そのため、古くなっても感じが悪くなりません。漆喰の壁や無垢のフローリングなどが代表例です。

自然系の素材は最初は高くつくかもしれませんが、長い間取り換えることなく使えることも多いので、トータルで見ると安くなることがよくあります。

最後の見た目の美しさは、長く使うという観点から見れば意外とその効果は大きいように感じます。一時の流行ではなく、美しく作られた建物は、数十年たっても古い感じを全く受けず、新築よりも美しく感じることがあります。このような住宅であれば愛着を持ってメンテナンスを行いますし、その結果さらに長い期間使える住宅となります。

広い意味のデザインと言うのは人によって捉え方は違いますし、長い時間ではものの見方が変わることもありますので、こういったデザインが絶対的に長く使えるというものはありません。

ただ、建てる人が思い入れを持って作られたデザインは何かしらその人の心に残りますし、多少の不具合があっても愛着がそれを上回ることも多いかと思います。新しく家を建てる人はデザインについて、よく考えてもらえればと思います。

そう考えますと、経済的には中古住宅を購入した方がトク、とこのサイトでは何度かお話ししていますが、長期間で見れば注文住宅で自分の好きな建物を建てた方がトク、というケースもあり得ます

一方でデザインを重視しすぎて機能が低い戸建住宅も耐久性に問題があります

さて、耐久性は構造的なものよりもデザイン的なものの効果が大きいとお話ししました。それでも最低限耐久性について考えられた建物でなければ、どれほどデザインが素晴らしくとも機能が追いつかなくなるケースが時々あります。

シロアリや腐朽菌にやられて土台に問題がある場合、雨漏りが多く構造体に影響が出る場合、上水道、下水道などの配管の交換ができない場合などにはやはり問題となります。

新築する場合、これらの問題を細かく見ていくのも1つの方法ですが、長期優良住宅の認定を取っている建物を建てるという方法もあります

長期優良住宅とは、住宅が長期間使えるように国が認定した基準を守っている建物のことです。この法律ができたのは2009年ですので、まだあまり普及が進んでいませんが、この認定を受けている建物は耐久性については一定の基準を満たしていますので、機能的な部分の耐久性について心配される方は、こういった建物を選べば良いと思います。

中古住宅を探している人にとっても、この長期優良住宅を狙うというのは1つの方法ではないかと思います。機能的には長期間の耐久性を持っていますが、中古住宅は資産価値が高くないため、利用価値が高い割に安く購入することも可能です。

施行されて5年ほどの法律のため、長期優良住宅の認定が取れた中古住宅はあまり多くありませんが、今後増えてくるかと思いますので、気に入った場所で長く住みたいと思うような立地であれば、このような住宅も検討に入れてよいと思います。

次のページはこちら 「04項.戸建住宅のメンテナンスコストも考える」

ふくろう不動産は皆さんに代わって中古住宅の見る目を提供しています

ふくろう不動産は千葉市花見川区にある売買仲介専門の不動産会社です。このページでは建物の耐久性についてお話ししました。建物は利用価値の割には資産価値があまり高く付きません。

しかしこれは、中古住宅の購入を考えれば大きなメリットです。一定期間経過後の建物は利用価値が高い割に安く購入できます。建物を見る目があり、問題のある建物をつかまない限りは、大変お買い得だと思っています。

ふくろう不動産ではこの建物で問題のある建物をつかまないために、インスペクションの機能を充実させています。また瑕疵担保保険に加入することで万一のトラブルの際にも保険が下りるようお勧めしていますし、その手配も行っています。このような内容に興味をお持ちの方は、「2章.ふくろう不動産の検査・チェック項目」のページもご覧ください。

またふくろう不動産では建物検査、住宅診断を単体でも行っています。サーモグラフィカメラや床下探査ロボットを使い、住宅に問題が無いかどうかを厳しくチェックしています。詳しくは「6-03.戸建住宅のインスペクションの費用と内容について」のページをご覧ください。

前述しましたように、土地を購入して注文住宅を建てるという方法も、短期で見ると費用がかかりますが、長期的に見るとトクとなるケースも多く出てきます。注文住宅を建てる土地の選び方についても色々とアドバイスと検査ができますので、土地をお探しの方も、当社のご利用をご検討ください。

他にもふくろう不動産では皆様からのご質問やご相談を随時受け付けています。ご質問やご相談はもちろん無料です。ご相談されたからといって、後で当社からしつこい営業を行うこともありません。ご質問などは「お問い合わせフォーム」をご利用ください。

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