このページでは戸建住宅にかかるお金についてお話しします。
一般的な戸建住宅にかかる費用の内訳を説明します
そもそも住宅のどの部分にいくらかかるのか、一般の方はよく分からないと思います。実は不動産会社や建設会社の人であっても、全体的にいくら位ではですとか、部分的に仕様を上げるといくら位上がるかは把握していても、1つ1つの部位別の値段を把握している訳ではありません。
もちろん私も分かっている訳ではありませんが、以前出版社勤務時代に戸建住宅のコスト特集を担当したこともあるため、一般的にこういうものだというお話はできますので、今回はその一般的な話を進めます。
仕様を変えた場合の金額差と、全体の費用バランスを見る目を養います
ただし、戸建住宅のどの部分がいくら位費用が掛かっているかを知っても、具体的にそれがすぐに役立つ訳ではありません。工事費の内訳を見るのは、新築工事で建設会社から見積書を取った時くらいだと思います。
工事費の内訳が分かれば、相見積を取った時に比較できると思われるかもしれませんが、違う建設会社の見積もりを比較してもあまり意味はありません。同じプランであったとしても、建設会社が異なればできあがる建物は大きく異なります。同じ材料を使ったとしても、施工精度は会社によって異なります。
できていないもの、これから建てる家を見積書だけで高い安いの判断をすることはほぼ不可能だと私は考えています。
では、戸建住宅の値段は値段や内訳を知るのに何の意味があるのでしょうか。それは同じ建設会社が施工するのであれば、仕様の変えた時の金額差の目安を知ることができます。
また建物の費用の内訳を考えることで、何に費用を掛けたらよいのか、より深く考えられるようになります。これは後述する3つのバランスのどの要素にお金をかけているのかを考えることができるからです。
では、まず一般的と思われる戸建住宅の内訳の参考例をご覧ください。
もちろんこれはある建物で想定した見積もり内容を表したもので、全ての建物がこのような結果になる訳ではありません。あくまでも目安としてご覧ください。
このケースでは構造は36%、860万円の費用がかけられています
ここで建物の安全に関わる構造や耐久性に関わる外壁・屋根工事部分をグラフから少し飛び出させました。木(躯体)工事、基礎工事、木(造作)工事(構造系)、外壁工事、屋根・板金工事です。全部足しても860万円近く、全体の36%ほどです。
構造の部分が思ったよりも少ないと感じられる方が多いのではないでしょうか。また、スケルトンリフォームなどを行う場合は、残るのは赤い部分の構造体のみの場合が良くあります。この場合は全体の27%程になります。
だからと言って、この赤い色の部分に費用をかけろと言っている訳ではありませんし、この部分の割合が高い建物が良い建物だと言うつもりもありません。この時点では内訳は大体このようなものであると感じていただければそれで構いません。
私は不動産の選び方は経済性、安全性、快適性の3つのバランスで決まるという主張です。建物も同じ視点で見ることができます。
見積書の内訳を見て、この部分は安全性が、この部分は快適性がというように見ていくと今までと違った形で建物を見ることができます。建物の内訳をみる際には、この部分は3つの要素のどの部分に当たるのかを考えることで、本当にその費用をかけてよいかどうかの判断がより正確にできるようになります。
もちろんこれはその人1人1人の価値観や考え方によって、力のかけ方は違うと思いますし、価値観の差が現れるところです。
ただ、戸建の注文時には誰しも気持ちが舞い上がっています。そのため自分の価値観にあった冷静な判断が下せなくなることがよくあります。その際には、この3つの要素のどれに当たるのかを考えることで、少しは冷静さを取り戻すようにしてください。
オリジナルの内装を多用すると、費用は大きく上がります
例えば次の例を見てみましょう。
上のシミュレーションした建物は建具類は既製品を中心で構成しています。そのため
・建具代 120万円
・建具に関わる造作費 10万円
で、建具全てで130万円の設定です。これを既製品ではなく、オリジナルで作成したとしましょう。
・建具代 100万円
・建具の枠の材料 55万円
・造作費 37万円
・塗装費 35万円
と全部で227万円と100万円近く金額が上がってしまいました。
オリジナルは、安価な材料を使えば材料費自体は安くなるのですが、既製品と異なり、枠を制作しなければならなかったり(既製品は枠とセットになっているため、建具代に枠の費用が含まれています)、後から塗装が必要だったりと手間がかかります。建築費は材料と手間の2つで費用が決まりますが、この手間の部分の金額が大きいため、少し既製品から離れるだけで、金額が急激に高くなります。
もちろんせっかくの家ですので、世界に1つだけのものが欲しいという気持ちはよく分かりますし、自分で気に入ったデザインのものに囲まれる気持ち良さも分かります。ただ、知っておいて欲しいのは、これは3つの要素でいう快適性のアップに繋がる部分であり、資産性や安全性とは関係がないということです。それを理解したうえで、オリジナルのものを求めるようにしてください。
建具に限らず、浴室などもオリジナルで作る在来浴室はユニットバスを比べ、最終的に値段が何倍にもなることがあります。こちらも材料自体は安くとも、防水工事や手間などが大きく、トータルでは高いものになります。数少ない例外はキッチンで、こちらは機能を制限すればオリジナルの方が安く上がることもあります。
安全性を上げるためには、費用が上がることもあります
次は快適性ではなく、安全性に関わる費用アップについて見ていきます。
2,300万円の戸建の例では、構造材は105mm角のスギやツガ材中心で考えたため、構造材の材料費は201万円という数値になりました。
これを120mm角のヒノキ中心に変え、合わせて梁などの大きさを大きくした場合は、材料費は297万円となりました。5割増し、100万円近い増額です。こちらは快適性ではなく、安心性、耐震性のアップの金額増です。
耐震性の向上は柱を太くすれば良いというものではありませんが、それでも同じ構造形式であれば、太い方がより安全です。この安全性に100万円近く増やしてもよいかどうかの判断となります。
もっとも柱の太さや材質を変えることで、耐震性や耐久性がどれだけ上がるのかは正確には分かりません。そのため、さらに判断に迷うことになります。
どれが正解というものはなく、建てる人の価値観が反映されます
これらの判断はどれが正解と言うものはありません。家を建てる人の価値観に左右されるためです。安全性は必要最小限で後は快適さのために、という考えもあるでしょうし、資産にならないものは最小限にして、快適性は家具でカバー、という考えもあるでしょう。これも他の人に決めてもらうのではなく、皆さんご自身で判断してもらいたいと思います。
もっと細かく計算したい方や、実際に面積や数量などを入れて工事費が本当に妥当なのかどうかを確認したい方は、こちらの雑誌の付録についているエクセルソフトを利用するという方法もあります。
「建築知識2014年6月号」(別ウインドウでアマゾンのページが開きます)
ソフトは2種類ありますが、エクセルデータの方はそのまま使うことが可能です。
エリアごとに標準単価の設定がされていますので、施工面積などが分かれば、ある程度は一般的な工事費との比較もできます。ソフトは雑誌の付録ですので、この雑誌を買わないとソフトを使うことができません。
プロ向けの雑誌ですので一般の方が読むには難しいかもしれませんが、雑誌の中身はイラストと表が中心で分かりやすくなっていると思いますので、役に立つと思われるのであれば、購入してもよいと思います。
次のページはこちら 「2-04-07.建物購入時にかかる税金」
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