水蒸気は住んでいる家の環境と人の健康に大きな影響を与えます。

例えば断熱と防湿がうまく作用していなければ結露を起こし、住宅を腐朽させる可能性があります。また24時間換気のシステムのうち、第1種換気と呼ばれるシステムでは給気と排気との間で熱交換を行いますが、これが水蒸気を交換する潜熱型(全熱型とも言います)と交換しない顕熱型では、換気後の温度や熱交換効率に大きな差が出ます。

湿度によってインフルエンザの発生率が大きく違います

ウイルスのイメージイラスト

湿度によって、インフルエンザなどのウイルスの発生状況が違うということが分かってきました。

人の健康に水蒸気は大きく関係しています。

例えばインフルエンザの発生には湿度が大きく関係していると言われます。絶対湿度が7gを下回るとのどの粘膜が乾いた状態となり、免疫機構が働きにくくなるために、インフルエンザにかかりやすくなるようです。

この絶対湿度7gは、温度によって相対湿度が変わります。気温が22℃あれば40%の湿度があれば7g以上の湿度ですが、気温が4℃しかなければ湿度100%でも絶対湿度7gを下回りますので、インフルエンザを発生させるのに十分乾燥した状態と言えます。

一般的に販売されている湿度計では相対湿度しか表示しませんので、相対湿度と絶対湿度の早見表を下記に記載しました。黄色く塗っている部分は、7g以下でインフルエンザの発生率が高くなる温度・湿度ですので、この範囲に入るようであれば、加湿器などで湿度を高くすることをお勧めします。

絶対湿度早見表

温度と相対湿度から大体の絶対湿度(g)は分かります。黄色く塗られている部分は、湿度が少なく、インフルエンザの発生率が高いと言われている湿度帯です。

温度湿度計

一般に売られている温度湿度計です。温度は概ね正しいと思いますが市販の湿度計は精度は良くないようです。ただ、目安ですので、これで充分だと思っています。

この人の健康と建物の健康についてバランスよく考えることができない人が、建築のプロの中にもいるようですので注意が必要です。

例えば冬場は結露しやすく結露した場合には建物を傷めるので、冬には室内をもっと乾燥させなければならない、と書かれていた本を私は何冊も見たことがあります。住宅だけを考えれば乾燥させるのは正解でしょうが、人の健康を考えた場合には明らかに間違っています。

中古住宅では換気システム位しかチェックできません

さて住宅購入の際に水蒸気について気を付けるべきことですが、中古住宅では建材を選ぶことができないため、換気システムにだけ注意を向けます。

結論から言えば、潜熱型の第1種換気システム以外は、加湿器などで加湿しないと、インフルエンザが発生しにくい湿度まで上げることができません。

換気扇のイメージ写真

チェックするのは換気扇ではなく、換気システムそのものです。

建築基準法の改正により、2004年以降の住宅は24時間換気システムの設置を義務付けられています。そしてその換気システムのほとんどは第3種換気と呼ばれるシステムで、排気のみを機械で、給気を自然吸気とするシステムです。

このシステム自体が悪い訳ではありませんが、24時間換気システムが入っていると、1時間に部屋の空気の半分が入れ替わります。その結果、冬場には部屋の半分が新鮮な空気になりますが、その新鮮な空気とは乾燥した空気でもあります

前述した表でも分かるように、冬場には外の気温は4℃以下の時もよくあり、気温4℃であれば湿度が100%であっても、絶対湿度は7gを下回ります。

実際には外の湿度が100%ということはあまりなく、もう少し高い気温であっても、絶対湿度7gを下回る日が大半です。そのため24時間換気で乾燥した空気を常に入れているため、室内の湿度もそのままではずっと乾燥したままになります。

対処するには残念ながら加湿器などで加湿するしかありません。これは室内に自然材料を利用した場合であっても変わりません。室内の内装に木材や珪藻土などの左官壁を利用した場合は、塩ビシートなどの壁紙と比べれば調湿機能はありますが、冬場の乾燥を補えるほどの機能がある訳ではありません

これは第3種換気はもちろん第1種換気でも顕熱型と呼ばれる換気システムも同様です。水蒸気自体も交換する潜熱型の換気システム以外は必ずと言っていいほど、冬場は乾燥する仕組みになっています

ですので、24時間換気システムがある住宅であれば、室内の乾燥を防ぐためには加湿器が必須になるということを予め覚えておいてください。

加湿器のイメージイラスト

調質建材を入れても、絶対湿度7g以上を確保するのは難しいようです。結局冬場は加湿器に頼らざるを得ません。

この話をしますと、私自身が換気システムは潜熱型の第1種換気を勧めているように聞こえるかもしれませんが、そうではありません。費用対効果を考えると、首都圏であれば第3種換気プラス加湿器の使用でも充分であるケースの方が多いと思っています。

新築住宅では図面や現場で使用材料とその使い方を見ておきます

新築住宅の場合は、どういった換気システムを選ぶのかという事と同時に、結露対策としてどういった建材をどのように使うかという問題があります。

しかし、この組み合わせを考えるのは簡単ではありません。今までは断熱性の高い住宅が少なかったために結露についても大きな問題が起きていませんでしたが、今後は断熱性が高くなるにつれ、施工ミスや設計ミスによる結露が出てくる可能性が高いと思っています。

そもそもプロであっても「水を通さない」「空気を通さない」「水蒸気を通さない」の3つについて区別が明確についていない人が多すぎます。

透湿防水シートが普及したため、水は通さないが水蒸気は通す、という事についてはようやく理解が進んでいますが、空気と水蒸気の通し方についてはあいまいになっている方が多いようです。

空気や水蒸気については100%通す通さないといったものではなく、通しやすい、通しにくいとい見かたで考えなければなりません

水蒸気の通しやすさは透湿性(m2・s・Pa/μgなど)で表され、空気の通しやすさは防風性(s/100cc)で表されます。透湿防水シートは本などによっては、水蒸気を通し空気を通さない、と書かれていますが厳密には水蒸気は通しやすく、空気は通しにくい作り、になっています。

この理屈は障子戸などをイメージすると分かりやすいのではないかと思います。障子は断熱性などは無いに等しいですが、閉めていれば開けているときと比べて熱は逃げにくくなっています。空気をある程度通すものの、部屋の暖かい空気を完全に逃がさない程度には空気を通しにくい訳です。

しかし水蒸気、湿気についてはほとんど素通りできるので、結露のしようがありません。障子紙自身が水蒸気を吸収しやすいというおかげもありますが、そもそも水蒸気を止めるほどの機能がないために、結露しない訳です。

また防湿シートは名前の通り、水蒸気を通しくくなっています。商品にもよりますが、防湿シートは透湿シートと比べると水蒸気は5,000分の1程度しか通しません

基礎知識があると設計や施工でも間違いにくくなります

こういった内容を知っていて、水蒸気がどこからどこに流れるかを知っていれば、断熱材の防湿シート面を逆に張るというトラブルは出ないはずなのですが、実際には適当に施工されていたりしますし、材料の選択も考えられていないのでは、と思われる現場もよく見ます。

一般的に断熱について詳しい人は換気や防湿対策についても詳しいことが多いので、断熱とセットで結露対策をどうしているか、乾燥対策をどうしているかなどを聞いてみて判断すると良いと思います。

次のページはこちら 「3-02-20.給湯設備で知っておいた方が良いこと」

この記事の一部を動画でも解説してみました

このページでお話ししました内容の一部を動画でも説明してみました。その動画がこちらです。

よろしければ動画も参考にしてください。

ふくろう不動産は住む人の健康を考えて不動産の提案を行っています

ふくろう不動産は千葉市花見川区作新台にある売買仲介専門の不動産会社です。このページでも説明した水蒸気が人に与える健康への影響だけでなく、電磁波の影響、ホルムアルデヒドによる影響など、住む人の健康に配慮した不動産の提案を行っている不動産会社です。

電磁波については「2-02.私たちは知らないうちに強い電磁波を浴びています」を、
ホルムアルデヒドについては「2-04.ホルムアルデヒド検知器で有害物質の有無を確認します」をご覧ください。

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