前のページではヒートショックからの溺死の問題について解説しました(「4-02-03.ヒートショックに強い家は住んでいても快適です」参照)。
溺死よりは件数が少ないものの、家庭内の不慮の事故による死亡数として転倒事故死は常に上位にいます。このページでは住宅内の転倒事故について、注意点などを解説します。
年を取ると転倒しやすくなることを、早い段階からイメージする必要があります
年を取ると転びやすくなる、ということを皆さんも知識としては知っていると思います。ただ家の購入時にそのイメージをすることは簡単ではありません。
上記の表で示されたように、転倒には色々な理由があります。筋力の低下はもちろん、バランス機能の低下や視力の低下、関節炎によるものなど、実際に経験しないとイメージしにくいものが多いと思います。
そして1度転倒し骨折などしてしまうと、それがきっかけで寝ている状態が増え、更に筋力が低下して寝たきりになり可能性が高くなります。単に転ぶだけという小さな問題ではありません。
細かな転倒原因の1つ1つについて気を付ける必要があります
転倒したきっかけを調べていくと、色々な理由があります。建物の工事が必要な時もあれば、日常のちょっとした注意で防げることもあります。代表的な例をいくつか見ていきましょう。
カーペットの端は意外とつまづきやすい場所です
フローリングの住宅で、冬場にカーペットを敷く家も多いと思います。こんなわずかな段差で、と思う方もいるかもしれませんが、結構この境目でつまづき、転倒する例が多くあります。
大きめのカーペットを使い、通常歩く部分には端が無いように敷くことで、これが原因の転倒事故を減らせます。
コード類もつまづきの原因になります
電気コード類に足を取られて転倒するという例も結構あります。特に冬場はこたつや電気カーペットなどを使うケースが多いため、床を這うコードが増えますので、より注意が必要です。
どうしても床にコード類を使わなければならない場合には、コードを極力壁に沿って伸ばし、人が歩く場所にはコードを出さないように注意します。
また、転倒とは関係ありませんが、床に這うコード類が増えると、電磁波の一種である電場が、床全面に発生するケースもあります。不用意に床に這わせるコード類を増やさない方が、安全性は高くなります。
電場も含めた電磁波については「2-02-01.日本の住まいは世界トップレベルで電磁波が強く出ています」のページを参考にしてみてください。
玄関マットはすべりやすいと危険です
玄関ですと土間との段差について注意することが多いと思いますが、その上の玄関マットも気を付けないと何気に危険だったりします。
玄関マットを踏むときは、土間からの段差を上がって踏むことになりますから、体重がきれいに真上からかかる訳ではありません。足が少し斜めから入るため、玄関マットは普通のカーペットの上を歩くよりもすべりやすい条件がそろっています。
そして段差を上がるという通常の歩きよりも不安定な体制のため、転びやすい訳です。これはヒヤッとされる方も多いせいか、玄関マット用のすべり止めが100円ショップなどで売られていますので、そのすべり止めを使うという対策もあります。
ただ1番確実なのは玄関マットを使わないことです。見映えとの兼ね合いになりますが、絶対的に必要なものではありませんので、危ないと感じた時には使わないことも検討しましょう。
階段はもっとも危険度が高い場所です
家の中で転倒にもっとも気を付けなければならない場所が階段です。階段で転ぶと単なる転倒だけでなく、転落して大きな事故になりかねません。階段で注意しなければならないことは複数あります。
階段でとにかく必須と思われるのが手すりです。最近の建物ですと最初から手すりが付いていることが多いと思いますが、昔の建物ですと手すり無しの階段もあります。
またデザイン性を重視した住宅では手すりはあっても実際には使いづらいものもあります。片持ち階段などでは手すりのつくり方によっては子どもが落ちやすいものもありますので、手すりの有無と一緒に、使いやすさや実用性などを確認するようにしましょう。
手すりについての話を動画でも説明しています
手すり部分についてのお話は動画も作ってみました。その動画がこちらです。
よろしければ動画もご覧ください。
また、キズ防止のために階段にマットを敷いているケースも良く見かけます。当然このマットもすべらないことが絶対の条件となります。
他に階段からの転落原因として良く聞くのは、一緒に階段を下りているペットにつまづき、転んで落ちてしまうというケースです。
犬は時には予想もしない動きをしますので、当初から別々に階段を下りる習慣をつけておきます。別々といっても人が先に下りると、後ろからぶつかってくることもありますので、階段を下りる際にはペットを先に下ろすようにした方が無難です。
玄関にはベンチがあると便利ですし事故も減らせます
玄関も転倒事故が起きやすい場所です。段差があるという理由もありますが、靴を履いたり脱いだりする行為でバランスを崩すことも多いからです。
しかし玄関にベンチがあると、座って靴を脱ぐこともできますので、転倒リスクを大きく減らすことができます。最近では後付けの玄関用のベンチもありますので、リフォームの際に検討してみましょう。
お風呂もバリアフリータイプが増えました
浴室も通常のユニットバスですと段差が付いています。ちょっとした段差ですが、こちらでもつまづき転倒するという例もあります。
もっとも最近では段差がないタイプの浴室も増えてきました。選べるのであれば、最初からこのバリアフリータイプを選んだ方が安全性は高いと思います。もし将来車椅子を使うことになった時にも、バリアフリータイプのお風呂であれば、そのまま利用もできます。
では何でも段差が無い方が良いかと言えばそうでもありません
ではどんな場所も段差が無い方が良いかと言えば、必ずしもそうでないことが、家づくりの難しいところです。例えばこの掃出し窓(床面まである窓で、人の出入りが可能)には段差が付いています。
転倒防止という面から見ると段差が無い方が望ましいのですが、防水という面から見ると、段差を付けた雨仕舞と防水がしっかりしている事が多いので安心です。
もちろん段差が無いタイプの掃出し窓もありますが、防水上不安のある窓も多くあります。防水が問題ないかどうかは見た目では判断できませんので、外の掃出し窓については、若干段差がある方が安心できるケースが多いように感じます。
家の選び方と普段の使い方の両方に気を付けないと、転倒事故は減らせません
こうして転倒事故の原因などを見ていきますと、建物の作りに問題がある場合と、使い方に問題がある場合に分かれます。ただ建物の作りで後から改修しにくいのは階段の傾斜だけです。
手すりやすべり止めなどは後からのリフォームでも対応可能です。ですので、戸建住宅選びの際には、階段の傾斜は特に注意し、他の項目についてはリフォームや使い方で対処すると考えておけば良いと思います。
戸建住宅を選ぶときには、このような観点も持って、選んで欲しいと思います。
次のページはこちら 「4-02-05.風通しを良くするだけでもデメリットが出ることもあります」
この記事の一部を動画でも解説してみました
この記事でお話ししました内容の一部を動画でも解説してみました。その動画がこちらです。
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