この01項では、資産価値という面から見た場合、どのような街を選んだら良いかについて考えます。これはあくまでも資産価値、という切り口から見ています。既に気に入っている街があり、そのエリアに住むということを決めている人にとっては関係がない話かもしれません。

ですがこの街の資産価値の見かたを間違えると、数十年後に後悔することになるかもしれません。

また、将来の価値について考える場合、未来予測を入れなければなりませんが、この未来予測はそれなりの率で外れます。ですのでこの項の内容は、参考意見程度で見ていただければと思います。

個別の条件が良くても街自体の資産価値が下がれば物件の資産価値も下がります

街イメージイラスト

広い範囲で見て、資産価値が落ちない街を選ぶ方が、後々経済的に苦労しなくても済みます。

当サイトでは将来破綻しないためには「価格が落ちない、あるいは落ちにくい不動産を選ぶこと」と主張しています。(「01節.将来破綻しないために知っておきたいこと」参照)

土地やマンションの場合は、将来資産価値が落ちにくいかどうかは、ほとんどその立地で決まります。立地の細かな条件としては、駅からの距離や道路付けや敷地の高さ・形などといったものがありますが、もっと大きく見て、どの街を選ぶかという点も重要です。個別の条件が良くても、その街・エリア自体が寂れていくようであれば、資産価値が下がっていく可能性が高いと思われるからです。

では具体的にどの街が寂れていくのか、という話になりますが具体的な名称を挙げるのは差し障りがあります。私自身の予測はもちろんありますが、サイト上での公開は差し控えたいので、考え方についてお話しさせてください。

基本的にものの値段は需要と供給のバランスで決まります。これは不動産であっても同じことです。この需要と供給について各々考えてみましょう。

街中でかつ物件供給が少ないエリアは価値が下がりにくい傾向があります

まず供給についてです。需要:つまりは欲しい人たちの数に対して、供給:売られている不動産の数が少なければ値段はあまり下がりません

例えば高級住宅地である田園調布について見てみましょう。田園調布はずいぶん昔に高級住宅街、というポジションを確立してから今でもその地位を保っています。

その理由はいくつかありますが、大きな理由の1つに、エリアがある程度限られ、希少性が確保されているというものがあります。安全性のページでもチェックしているflood mapで田園調布を見てみました。

田園調布駅近辺のフラッドマップ

田園調布の駅近辺をflood mapで見た画像です。標高40mの設定で誤差もあると思いますが、周辺と比べて高い土地の範囲が割と狭いことに気が付きます。

実際の高低差や高級住宅エリアと少し食い違う部分もあるかもしれませんが、高級住宅街となっている部分は高台にあります。そしてその高台の面積は限られています。そのため、この高台のこの部分のみが高級住宅街である、と限られており、数が増えることはありません。

つまり供給数が限られるため、価格が維持されやすいという傾向があります。実際にこのエリアの公示価格の変遷を見てください。

田園調布の公示価格の変遷

田園調布3丁目の公示価格の変遷です。バブルの時とは比較できませんが、2000年あたりと比べれば、価格は上がっています。(「土地価格相場が分かる 土地代データ」のサイトより)

バブル時代である1990年前後から見れば金額は大きく下がっています。ですが2000年以降は価格が割と安定しており、2000年の坪単価256万円から2014年の坪単価は301万円と上がっています。供給が限られるエリアではこのような形で価格が維持される可能性が高いと思われます。

これはマンションについて考える時にも有効な考え方です。人気があるのにマンションの供給数が少ないエリアでは、やはり価格が下がりにくい傾向があります。

例えば二子玉川は大変人気のある場所ですが、新築マンションの数はそれほど多くありません。新たに建てられる場所が少ないせいではないかと思われます。こういったエリアですとマンションも中古になってもあまり値段が下がりません。先程同様土地の公示価格をこのエリアで見ても、やはり値段が維持されていることが分かります。

二子玉川の公示価格の変遷

二子玉川駅周辺の公示価格の変遷です。こちらも2008年のミニバブルの時期を除けば概ね安定しています。

これら公示価格などの数値をまとめているこちらのサイトは大変参考になります。
「土地価格相場が分かる 土地代データ」のサイト

皆さんが購入を検討されている土地やマンションの近くの公示価格の変遷を調べることで、そのエリア・街はどのような傾向にあるのかをある程度判断することができます。

そこでその土地が上がっているのか、下がっているのかを確認しながら、その土地の希少性はどうなのかを考えるようにしてください。

希少性は様々な形で現れます。高台のように物理的な要因で供給数が限られれていることもあれば、駅周辺では広い空き土地がないため、新築のマンションが建たないというエリアもあります。また駅直結のマンションなどは、その駅に1つか2つしかできないでしょうから、希少性が高いと思われます。

逆に利便性が高い駅に近い立地であっても、駅周辺に空き土地がたくさんあれば、他にも似た条件のマンションや戸建てが数多くできる可能性があるため、希少性は得にくいと思われます。

希少性が高いと供給数は少なくなり、結果として価格が維持されやすくなります。将来の資産価値を考える時には、希少性による供給量について考えてみてください。

需要予測は難しいですが、人口予測をベースに考えます

もう1つの要素は需要です。住宅地の需要をざっくりと言えば、その街にどのくらいの人が住みたいかということになります。当然数が多い方が需要が大きいということになります。つまり今後人が増えていくエリアは需要が大きく、不動産の価格が上がる可能性が高くなります。

では、その街は人が増えていくのか減っていくのかはどのように判断したら良いでしょう。この判断は結構難しく、私もこれが確実という判断方法を持っている訳ではありません。

そこでまずは公的なデータを見てみます。国立社会保障・人口問題研究所では市区町村別に2010年の数値を基に、2040年まで5年ごとに人口がどうなっていくかを予想しています。
(国立社会保障・人口問題研究所の『日本の地域別将来推計人口(平成25年3月推計)』のページ

データはエクセルで数値しか出ておらず、そのままですと分かりにくいので、グラフにしてみました。まずは私が住んでいる千葉市花見川区のデータです。

花見川区の人口予測

日本の地域別将来推計人口(平成25年3月推計)で示された花見川区の今後の人口予測をグラフにしてみました。ひたすら減っていくだけという予測を見ると、少しせつなくなります。

2010年から少しずつ人口が減っていくという予測です。日本全体でも人口が減っていきますし、花見川区は大きな駅が無い区ですので、確かに人が増える理由が考えいにくいです。千葉市全体で見ても、2020年までは微増し、その後は急激に人が減っていくという予想になっています。

では千葉市のすべてのエリアが良くないかと言えばそうではありません、千葉市中央区の予想を見てみましょう。

千葉市中央区の人口予測

県庁所在地である千葉市中央区の人口予測です。県内の他のエリアからの人口流入を想定したため、このような予想になっていると思われます。

中央区は2025年までは人口が増えていくと予想されています。その後も減ってはいるものの、2010年の人口を下回らないと予想しています。

こういった研究所の予測が当たるかどうかは分かりませんが、ありうる話だと思います。人口減少局面においても、県の中心部は人が増えると予想する人が実はたくさんいます。

県の中心部には県庁はじめ県の重要な施設が数多くあります。千葉県の他のエリアで過疎化が進んだ場合、仕事を探しに、あるいは医療や福祉を得に来ようと思えば、県の中心部に人が集まりがちです。千葉市中央区は言うまでもなく千葉県の主要施設が集まっている場所ですので、県内の他のエリアから人を集め、結果として人が増える可能性が十分にあります。

実際には中央区、という広い範囲ではなく、中心部付近の住宅街など集まる場所は限られるでしょう。中心部付近で利便性と環境との兼ね合いで人が増えるエリアが決まっていくのではないかと思われます。

ただし、研究所の予測もどこまで正確なのかは分かりません。私も自分自身の予測はありますが、それが正しいと言い切ることはできませんし、お客様にその予想を押し付けることもありません。

また、最初に示しましたように、自分が気に入っているからこの場所に決める、という考え方でも良いと思います。ただ、将来が不安でなるべく色々なことを考えておきたい、という方は、このような考え方も知っておいた方が良いと思います。

一般的には都心と湾岸と言われますが、最終的には自分の予想で決めましょう

資産価値が落ちないエリアはどこ、という話になった時、マンションでは都心と湾岸エリアという話を聞きます。過去のデータを見ていると今までは確かにそうだったと言えます。

ただこの意見について、都心エリアについては賛成ですが湾岸エリアについては、資産価値が維持できるかどうかは難しいと私は思っています。

今までお話ししてきたように、都心の物件については希少価値が高いために、今後も資産価値を保ちやすいと思います。しかし湾岸エリアについては、希少性はどうでしょうか。元々工場などが建っていたエリアで、まだまだ建物が建設できる土地が多く残っています。つまり今でこそ建設物件が少ないため希少性は高いのですが、今後も希少性があるかどうかは疑問です。

また過去のデータで選ばれたサンプルでは、湾岸エリアのマンションはタワーマンションがある程度入っています。タワーマンションは今のところ中古でも高い価格を維持していることが多いため、このタワーマンションがサンプルとして入っていることで、資産価値が下がっていないように見えます。

これもここまでは正しかったのでしょうが、今後も資産価値を維持できるかどうかは分かりません。大規模修繕の実態などがはっきりしてくると、タワーマンションの価格が急に下がる可能性もあると私は思っています(「2-05-11.タワーマンションは本当に資産価値を維持できますか?」参照)。このような状況を考えると、今後も引き続き湾岸エリアが資産価値を確保できるかどうかは分かりません。

もちろんこれらの意見は私の意見ですので、合っているかどうかは分かりません。資産価値については色々な意見がありますので、複数の意見を照らし合わせてみて、購入者自身が判断すべきことだと思います。

次のページはこちら 「02項.新築住宅と中古住宅を資産性から見た場合」

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サイト上では資産価値が上がる街については具体的にはコメントしませんが、実際にお会いするお客様にはもう少し具体的に説明しています。

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