皆さんはヒートショックという言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは温かい部屋から急に寒い部屋に移動したときに、温度変化に体がびっくりして血圧が急激に変わり、脳卒中や心筋梗塞などを起こす恐れがあると言われています。

正式な医学用語ではないようですが、お年寄りの健康に大きな影響が考えられる現象です。このページではこのヒートショックについて考えます。

住まいの中では、トイレや脱衣室、お風呂などでよく起きる現象です

住まいの中で実際にこのヒートショックを起こしやすいのは、トイレやお風呂周りです。冬場は寝室やリビングは暖かくしていることが多いのですが、トイレや脱衣室は寒いままという家が数多くあります。

「4-02.快適という観点から見た戸建選び」のページでも説明しましたが、家庭内の不慮の事故で多いのが、窒息と溺死です。そしてこの溺死は、お風呂でヒートショックを起こして失神した後に、お風呂に沈んでしまい結果として溺死してしまうと言われています。

ですので、ヒートショック対策はお年寄りの方がいる家庭においては、命がかかった重要な対となります。

家庭内事故の内訳

窒息はさておき、溺死や転倒による死亡は家の造りによって改善できる可能性があります。
出典:厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/furyo10/01.html

実際に日本での溺死者数は海外と比べても多いようです。これは暖かい部屋→寒い脱衣室→熱いお風呂という熱い寒いの繰り返しで失神してしまったための溺死者が多いと思われます。

ちなみに私の出身県である富山県は日本で不慮の溺死率が1番高いそうです。平成20年の統計ですと全国平均の約2倍あるようです。理由は私には分かりませんでした。

ヒートショックを起こさないような対策は、4つほど考えられます

ヒートショックを起こさないために取れる対策がいくつかあります。これを費用がかかる方から順番に説明します。

住まい全体の断熱性能を上げることで、部屋毎の温度差を減らす

お金がかかりますが、一番効果があると思われる対策が住まい全体の断熱性能を上げることです。家全体の断熱がきちんとできていれば、冬場でも家の中の空気の温度はさほど下がりません。

また建物の断熱がきちんとできていれば、外側の壁の温度もそれほど下がらないために、輻射冷却の影響も小さくなります。その結果気温が多少低くても、寒さを感じにくくなります。

これはヒートショック対策として有効ですが、そもそも住まいとして快適な環境となります。同じ家の中で暑い場所と寒いま所が混在していると、体が休まりにくくなります。

また空気の温度と壁や床からくる輻射熱に差がある状況も、体に良いことではありませんし、快適でもありません。断熱がしっかりしている家ではこういった悪い影響を受けずに済みます。

入浴時の血圧変動

お風呂の室温が低い、つまり部屋とお風呂場の温度差があると血圧の変化が大きいというデータがあります。
出典:日本建築学会住まいづくり市民セミナー@富山より

部屋ごとの個別暖房ではなく、全館暖房とする

これも費用がかかりますが、部屋ごとの温度差がヒートショックの原因なのであれば、全室同じように暖房すればヒートショックも起きにくいということで、全館暖房としてしまうというやり方もあります。

しかしこれは前項の家の断熱性を高くするやり方とセットで行わなければなりません。単に全館暖房としてしまうと、光熱費があまりにも高くなるため、現実味がありません。

全館暖房の設備を入れても、ランニングコストが高いために、その設備を使わなくなると、本末転倒です。幸い断熱をきちんと行っている家であれば、全館暖房の費用も安く済ませられるケースが多いようです。

少し話は異なりますが、全館暖房とする方が部分暖房のケースよりも運動量が増えるというデータがあるようです。

暖房方式と住宅内の活動量との関係

出典:日本建築学会住まいづくり市民セミナー@富山より

こたつやホットカーペットなどの部分暖房だと、その場所から動かなくなり、運動量、つまりは筋肉量が落ちる危険がありそうです。お年寄りが寝たきりになる率を減らす対策としても、良いかもしれません。

暖房方式と筋力

出典:日本建築学会住まいづくり市民セミナー@富山より

 寒い部屋や場所のみ暖房を入れる

しかし、上の2つのやり方は効果は高いのですが、費用も高くなります。今住んでいる家の断熱性が高くない場合に、断熱改修や全館暖房を入れると高額の費用がかかります。

そこまで費用がかけられない場合には、寒い部屋のみ別途暖房を入れるという方法があります。最近では浴室暖房も一般的になり、コストも安くなってきました。脱衣室やトイレにはパネルヒーターや電気ストーブを使うという人も増えているようです。

ただ、これらの場所は水を使うことが多い場所ですし、紙や衣類などが多く置かれる場所ですので、火事や感電などの事故に注意しなければなりません。可能であれば専用の暖房機を使う方が望ましいと思います。浴室暖房機やトイレ用暖房機も最近では出ています。

また断熱性が高いユニットバスなども売られています。リフォームなどでお風呂を交換する際にはこの断熱性が高いユニットバスを選ぶこともお勧めです。

シャワーやお湯をまくことでお風呂の室温を上げる

シャワーで湯船にお湯を

お風呂のお湯をシャワーで高い場所から入れるという方法もあります。高い場所からのシャワーで、浴室の室温を上げる効果があります。

これはお風呂のみの対策ですが、お風呂に入る前に、シャワーや湯船のお湯をお風呂の床面に流し、お風呂の床面と風呂場の室内を少しでも温めておくという方法もあります。

お風呂のフタを一定時間開けておいて、風呂場の室温を上げるという方法もあります。この方法であれば特にイニシャルコストもかけずに行うことができます。少し手間がかかる点と、風呂場を温める効果が小さいという面もありますが、すぐにできる対策として有効です。

また湯船のお湯はり自体をシャワーを使うという方法もあります。高い位置からシャワーでお湯を湯船に入れることで、お風呂の室温を上げるというやり方です。

お風呂については他にも細かな対応策があります

ことお風呂に入るときの対策としてはさらに細かな対応策があります。

温度が下がらない昼間にしかお風呂に入らない

対策と言うのも変ですが、夜は寒くて危険なので、昼にしかお風呂に入らないというお年寄りの方もいます。ローテクの対処法ですが、もちろんこのやり方も有効です。

最初に湯船に入るときにはぬるめのお湯にする

いきなり熱いお湯ですと、その前の寒さとの対比で血圧の上下動が激しくなります。追い炊き機能付きであれば、最初はぬるめのお湯につかり、少しずつ温度を上げていく方が安全です。東京ガスのサイトでは、42℃の湯温は血圧変動が大きいので、38~40℃を推奨しています。

東京ガスのヒートショック注意ページ

出典:東京ガス

いきなり肩まで湯船につからない

いきなり肩までつかる

急いでお風呂に飛び込むのはお勧めしません。特にすぐに肩までつかるのは危険です。

すぐに肩まで湯船につかるというのは、心臓を急に温めるということでもあります。その前の寒さで血管が収縮しているのに、急に温まると血圧が上がります。

これが肩までつかる場合には、水圧で心臓に負担がかかるのでさらに血圧が上がります。その結果ヒートショックを起こしやすくなります。

安全なのは先にかかり湯をする、特に心臓から遠い手や足に充分お湯をかけて温めた後から入るという方法です

入浴前にはアルコールは取らず、むしろ水を飲む

日本酒

お酒を飲んだ後にお風呂に入るのも危険と言われています。

ヒートショックは入浴時の体調にも影響を受けます。ヒートショックの危険があると思われる方は、入浴前にお酒を飲んではいけません

逆に入浴の前後に水を飲むのはヒートショックに対して効果的だと言われています。事前に水を飲むのは脱水症状を防ぐ効果もあります。

お風呂内でも急な動きをしない

いきなり湯船にどっかりとつかるのも問題ですが、逆に急に立ち上がってお風呂から出るのも危険と言われています。人によっては立ちくらみ等をおこし、倒れて頭を打ったりする危険もあります。

これらの対応策は若いうちから習慣付けておくのが望ましいと思います

こういった入浴時のこまごまとした対策は結構面倒だと思う人が多いと思います。そして、いつから注意したら良いのかは意外と自分では分かりません。

また、年を取って急に入浴の習慣を変えるというのも難しいことです。ですので、ある程度若いうちからこのような習慣をつけておく方が望ましいと思います。早めに対策を取っていて損をすることはまずありません。

予算があれば家に手を入れる方が安心ですし快適です

入浴法について細かくお話をしましたが、中々面倒なやり方です。お金に余裕があるのであれば、先に家の断熱や暖房設備などを充実させた方が快適度合いが上がります。もちろん家に手を入れた上で、さらに上記の対策を取るとなお望ましいと思います。

家の新築やリフォーム時には見た目やデザインなどには注意しますが、断熱性はデザインほど重視はされません。しかし後々の快適性や場合によっては命にも関わる話ですので、対応できるのであれば、早い段階から断熱に注意した家づくりをした方が良いと思います。

次のページはこちら 「4-02-04.家庭内の転倒事故も死亡理由の上位です」

このページでお話ししました内容の一部を動画でも解説してみました

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