このページではタワーマンションの経済性に関する話をします。タワーマンションはお勧め、ですとか資産性が下がりません、などといった意見もよく聞くのですが、私自身はその意見に同意しません。

タワーマンションについては他にも健康や快適性に関することでお話ししたいことは色々とありますが、それは別のページで説明するとして、このページでは経済性に関する部分のみ説明します。

このタワーマンションの経済性について理解せずに購入してしまうと、将来大きな損失を出す可能性があります

マンションに限らず、このサイトで経済性について考える時は、
1.イニシャルコスト
2.ランニングコスト
3.売却時の資産価値
の3つについて考えます。このページでは、2.のランニングコストとそれに伴う3.の売却時の資産価値について考えてみたいと思います。

タワーマンションはランニングコストが普通のマンションよりも大きくかかります

タワーマンション

タワーマンションは資産価値という点から考えるとリスクが大きなタイプです。建物のランニングコストがあまりにも大きいからです。

まずランニングコストですが、タワーマンションは通常のマンション以上にランニングコストがかかると考えられます。その理由として、
1.付属施設が多いため、管理費が高い
2.通常のマンションにない設備の管理費と修繕費が高い
3.外壁などの維持管理費が異様に高くなる
などが挙げられます。

付属設備は便利ですが、最終的には所有者がその費用を負担しています

まず1.の付属施設です。タワーマンションはホテル的なサービスを追及しているタイプが多く、コンシュルジェサービス等を入れた24時間管理となっているケースが良くあります。

もちろんそれはそれで便利ですが、日勤タイプの管理と比べればその分管理費は高くなります。また、キッズルーム、ゲストルームといった施設を入れているタイプもあれば、スカイラウンジやスポーツジム、プールまで入れているマンションもあります。

確かに快適性は上がると思いますが、こういった施設を運営する費用は管理組合が負担しています。つまり最終的には所有者が負担します。施設の利用費がタダであれば、管理組合の負担は100%ですし、仮に有料であるとしても支出の方が大きいと思われ、やはり負担の方が大きくなります。

施設については住戸数が多いから運営できるという意見もありますが、この意見にはあまり同意できません。住戸数が多いといってもせいぜい1,000住戸、つまり1,000世帯分です。ビジネスとしてスポーツジムやプールを経営しようと思った場合、1,000世帯の市場でこれらのビジネスが成り立つとは思えません。これらの施設は最初から赤字前提で組まれています

利用者が多いうちは管理費が高くても文句は出ないでしょうが、将来住人が高齢化した際に、こういった施設の負担に何割の人が賛同してくれるのか、怖いものがあります。

仮に付帯サービスを止めることにしたとしても、そのスペースをどうするのか、維持管理に費用は掛からないのかなどを考える必要が出てきます。

プールのイメージ図

マンション内にスポーツジムやプールは必要でしょうか。ランニングコストが気になります。

このような施設にどのくらいの費用が掛かるかは、その施設によって異なります。富裕層向けサイトの「ゆかしメディア」ではプールの年間の維持費が3,000万円かかるタワーマンションの記事を掲載していました。こういった維持費を支払うのは、もちろんタワーマンションの所有者、つまり購入されるあなたの負担です。

問題なのは設備の維持管理費と修繕金の額の多さです

それでも付属施設についてはそれほど大きな問題ではありません。原則として管理費の中でやりくりするものですので、将来大きな費用が出ることはないからです。問題なのは2.の通常のマンションにない設備の管理費と維持修繕費です。

高層エレベーターのイメージ

通常のエレベータだけではなく、非常用エレベータの設置などが必要になります。

例えばタワーマンションでは非常用エレベータの設置が義務付けられています。それに伴い自家発電装置なども設置されています。自家発電装置は停電時以外は使わないのでランニングコストはかからない、と考える方もいるでしょうが、メンテナンスでそれなりの費用がかかります。最低でも年に1度は試運転しますし、その際に使う重油などもそれなりの金額になります。

また、発電装置やエレベーターは設備ですので寿命は当然躯体より短く、40年以内には交換・更新が必要になります。その時にかかる費用も大変高額です。

しかしなぜか修繕計画は30年で設定されており、エレベーターや自家発電装置の更新費用は計上されていない管理組合も時々見受けられます

修繕積立金を少なく見せるためにわざとそうしているのではないかと勘繰りたくもなります。他にもスプリンクラーなどの消火設備が必要なタワーマンションもあり、その場合は当然メンテナンス費用、将来の更新費用などが必要になります。

これらは修繕積立金から修繕費、更新費などが捻出される訳ですが、新築時は低い積立金設定にし、後から段階的に上がっていくという積立金設定がなされている管理組合もあります。

しかし通常のマンションでも修繕積立金の額が足りないことが多いのに、通常以上に修繕費がかかるタワーマンションで段階的に上がる設定をしていると、将来いくら必要になるのか、怖くなることがあります。

タワーマンションの外壁はメンテや補修はどうするのでしょうか?

さらに3.の外壁の維持管理費用です。マンションの外壁はタイルの欠落防止などに気を使わなければならないため、定期的に点検しなければなりません。また問題がある場合にはもちろん修繕工事が必要です。

マンション外壁のイメージ

タワーマンションは外壁のメンテナンスが難しく、費用も通常のマンションの数倍もかかるケースがあります。

しかし通常のマンションであれば足場を組んで簡単にできる工事であってもタワーマンションではできないケースがよくあります。高さが高すぎるため足場が組めないからです。

この場合は足場ではなく上からゴンドラを吊るし工事や点検を行う訳ですが、その費用は足場よりも金額がはるかに高く、時間もかかります。ゴンドラ利用はただでさえ金額が高いのに、風が強い日は利用できず、本当に長い期間をかけてメンテを行わなければなりません。こういった費用を事前に修繕計画に盛り込んでいなければ、所有者はその際に追加で修繕費を支払うことになります。

タワーマンションの問題が顕在化するのは築30年以降と思われます

修繕のイメージ

問題が顕在化するのはおそらく築30年以降です。そしてどのような問題が起きるのかは、まだ誰も分かりません。

タワーマンションでは、こういった諸々のランニングコストが通常のマンション以上にかかります。こういったランニングコストの実情がまだ大きく知られていないために、現状では中古マンションもある程度の価格が付きますが、一度幅広く知られるようになると、タワーマンションの中古価格が急激に下がる可能性もあります。

これはどのマンションでも言えることですが、マンションはババ抜きゲームの要素を常に持っています。そしてタワーマンションはこのババ抜きの要素が通常のマンション以上に大きいと感じられます。

タワーマンションは上述しましたように通常のマンション以上にランニングコストがかかるといった理由に加え、住人の合意形成が取りにくいタイプのマンションだからです。

通常のマンションであれば、新築時に大体似たタイプの方々が集まります。マンションのプランや価格に大きな差が無いため、購入者層が大きく異なるということはあまりありません。しかしタワーマンションは戸数が多いことに加え、高層階と低層階で価格が大きく異なります。そのため購入者層が大きく異なります

特に所得・資産の差は通常のマンション以上に大きくなります。そのため通常のマンション以上に所有者の合意形成が難しく、大規模修繕などの可否を管理組合で決めようと思っても簡単に決まらないのではないかと考えています。

タワーマンションで築年数が40年を超えるマンションはまだありません。現時点では古いものでも築20年程度です。そのため大規模修繕が近づいてきた時、実際にどのような問題が起こるのかはまだ誰も分かりません。しかし建物のメンテナンスのことを考えれば、簡単に解決できる問題とは思えません。

一部の方は「タワーマンションは資産価値が落ちない」ですとか「立地が良いマンションは古くても資産価値が残る」といった主張をされています。しかし現段階では古いタワーマンションの実例は無く、資産性については予想でしか語れません。ただし、色々な条件やコストを考えていくと、どんなに立地が良くても負債マンションとなるリスクを否定しきれません。

またタワーマンションを分譲している不動産会社はもちろん、一般的な仲介会社もタワーマンションの問題点について説明する人はめったにいません。エリアによっては、売り物件の半分以上がタワーマンションというエリアもあるため、タワーマンションに対し否定的な事を言いますと、自らお客様や取扱物件を減らす事にもなり兼ねないからです。

ですが、もし購入したタワーマンションの資産性が大きく落ちると、困るのはあなた自身です。タワーマンションの購入を検討されているあなたには、ぜひ先々まで考えて判断していただきたいと思います。

次のページはこちら 「2-05-12.同じ支払額でもマンションは戸建住宅より安い金額の物件しか買えません」

ふくろう不動産は技術的な内容も含めてお客様に物件の提案をしています

ふくろう

ふくろう不動産では情報はすべて公開し、調査も徹底して行います。

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不動産や建築の専門出版社に勤めていた期間が長いため、様々な角度から業界を見ることができました。1つの不動産会社に勤めていますと、その会社のやり方には詳しくなりますが、見方が偏る危険もあります。当社は不動産会社、設計事務所、工務店など多くのジャンルの会社取材などを通し、幅広く知識を得ています。

今までのパターンだけ見ていれば、タワーマンションは資産価値が高いと考えられるかもしれません。タワーマンションは市場に出始めてからまだ20年ほどです。技術的な視点から見て、今後どのような問題が出てくるのか、確実なことは誰にも分かりません。そしてこの技術的な問題が資産価値に大きな影響を与えることも十分に考えられます。

このような話を記事にしていますと、ふくろう不動産はマンションをお勧めしないのか、ですとか、マンションの取り扱いはしていないのか、とお客様から聞かれることがあります。しかし当社でも、マンションの仲介業務を行いますし、それがタワーマンションであっても、仲介を拒むということはありません。

タワーマンションの購入について、お勧めするかと聞かれれば、お勧めしません、と答えます。ただ当社は考えられる問題を提示し、分かり得る範囲で情報を公開し、意見やアドバイスを述べますが、最終的に決めるのはもちろんあなたご自身です。

話を聞いたけれども、それでもタワーマンションが良い、というあなたにはタワーマンションをご紹介・ご案内します。ただしできる範囲で、このページでお話ししましたデメリットが出ないようなタワーマンションをお勧めするようにしています。

このページでお話しした内容について、私自身は正しいと思って述べていますが、それはどこまでいっても私個人の意見に過ぎません。本当に資産価値が維持できるかどうかは、時間が経ってみないと分かりませんし、私の意見が間違っているという可能性もあります。

当社でタワーマンションの仲介などを依頼された場合には、想定される問題について資料を確認し、危険性についてお話しし、それでも問題ないかどうかを確認して、購入されるかどうかはお客様に決めて頂くというスタイルです。

ふくろう不動産ではこういった内容も踏まえ、お客様に失敗しない不動産購入のアドバイスを行っています。当社については、「ふくろう不動産とは」のページもご参照ください。

タワーマンションの資産価値について、動画でも解説してみました

このページでお話ししました内容を動画でも説明しています。その動画はこちらです。

よろしければ、動画もご確認ください。

また、ふくろう不動産では皆様からのご質問やご相談を随時受け付けています。ご質問やご相談はもちろん無料です。ご質問を受けたからといって、後で当社からしつこい営業の連絡を行うこともありません。ご質問などは「お問い合わせフォーム」をご利用の上、ご連絡頂ければ、こちらから折り返しメールにて返信させて頂きます。

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