古いマンションイメージ

古いマンションの内装をきれいにリノベーションしたマンションは経済的でしょうか?

マンションはリノベーションで新築同様、になる訳ではありません

古いマンションを購入し、リノベーションを行い、室内の見た目が新築同様というマンションがあります。購入者はとてもお買い得だった、と思うかもしれませんが、本当にお買い得だったかどうかは、もう少し時間が経ってみないと分かりません。物件にもよりますが、経済的に損をする確率は高いと私は思っています。

マンションでリフォーム・リノベーションができるのは専有部分のみです。そしてマンション建物の劣化で問題になるのは共用部分の方です。

共用部分の劣化が激しくなると、管理費や修繕積立金の額が大幅に上がります。このコスト増により、当初は安いと思われていたマンションが支払総額でみると高くなることがあります。

さらに、この劣化が進むと、マンションの資産価値が大きく下がります。下がるだけではなく、買い手が付かなくなるというケースも考えられます。

デザイナーズマンションのイメージ写真

リノベーションを行うことでデザイナーズマンションのような美しい内装を手に入れることができます。しかし資産性に影響を与えるのは共用部分であり、専有部分ではありません。

老朽化するマンションはババ抜きゲームとなる可能性があります

古い中古マンションの購入で気を付けなければならないのは、建物の劣化が進み過ぎるとそのマンションには住めなくなるということです。あるいは住めなくはないけれども高額の管理費や修繕費がかかるというケースもよくあります。

管理費などがあまりにも高額となった場合、そのマンションは資産ではなくお金の支払いばかりが増える負債となる可能性があります。老朽化するマンションはババ抜きゲームのように、誰が最後にババを引くか、言葉を変えれば負債となる時に誰がそのマンションを買うか、という要素があるのです。

ババ抜きのイメージ写真

マンション購入には常にババ抜きの要素があります。マンションは最後には値段が付かなくなるのですが、そのタイミングで誰が所有しているかが問題です。

首都圏の実需向けマンションでは実例があまりありませんが、リゾートマンションでは10年以上前からお金がかかるだけ、というマンションが出始めています。タダ同然でも購入者はおらず、高い管理費と修繕積立金が毎月出ていくだけというマンションです。

さらにリゾートマンションでは1室を購入した企業が倒産し、その後の買い手が決まらないというケースもあります。その間は管理費も積立金も管理組合には入ってきません。その場合は最終的に他の所有者が、管理費や修繕費などを負担することになります。支払いがどんどん増えていく訳です。

首都圏のマンションがこうならないという保証はありません。首都圏では人が多く、実際に住んで生活する人が多いためにまだ問題にはなっていませんが、今後人口が減っていく状況であれば、リゾートマンションと同じような展開になる可能性があります。

実需向けはリゾートマンションとは違うのでタダにはならない、と断言される方も多くいますが、その話に特に根拠はありません。もちろんすぐにタダになるという事はないと思いますが、タダに、あるいはマイナス資産になる可能性は十分あると思います。

現在首都圏でも100万円台のファミリーマンションが出始めています(「ビジネスジャーナルで100万円台のマンションの話がありました」参照)。私見ではゼロになる日もそう遠くないのではないかと思っています。

マンションは事実上建替えできないと考えるべきです

その場合、土地の持ち分やマンションの権利を持っているので最後の最後は建替えれば良い、とお考えの方もいるかもしれません。しかし、現状ではマンションの建て替えはほとんど行われていません。

全国のマンションの戸数は概ね600万戸あります。そのうち、建て替えを検討した方が良いと思われる旧耐震基準で建てられたマンションは100万戸強あります。そして、建替えされたマンション、建替え検討中のマンションはどのくらいあるでしょうか。

「国土交通省 マンション建替えの実施状況(平成26年4月1日現在)」(別ウインドウで開きます)

マンションの建て替え件数

マンションの建て替え件数の推移です。順調に増えているように見えますが、本来建替えなければならないマンションの1%近くでしかありません。
出典:国土交通省

2014年4月の段階で検討中や準備中のマンションを含めても230件しかありません。仮に1棟あたり50戸あったとしても、11,500戸分で全体の1%強でしかありません。

また、建替えが行われたマンションを見てみますと、大半のマンションでは建替え後の床面積が増えています。これは建っていたマンションには容積率でまだ余裕があったためと思われます。そのため建替え時に新しい住戸を増やし、それを販売することで建替え費用の一部を捻出し、無事に建替えができたものと思われます。

では、容積率に余裕がないマンションはどうなるでしょうか。建替えに関する費用は全て今の所有者の負担になります。しかし建替えには、新しいマンションを建設する費用だけではなく、古いマンションの解体費用や建替え期間中の仮住まい費用、引っ越し費用など他にも多額の費用が掛かります。

所有者の何割がこういった負担に耐えられるでしょうか。平成25年度の国土交通省の調査によると、この時点でマンション所有者のうち60歳以上の方の比率は50%を超えます。この率は今後どんどんと高くなっていくでしょう。

主たる収入が年金の方は建替え費用の負担ができないケースは多くあるため、現状ではほとんどのマンションは建替えることができません。

建替えのイメージ

ほとんどのマンションでは建替えできません。

こうした費用の問題を筆頭に、所有者間の考え方の違いによりマンション建替えの合意形成を取ることは大変難しくなっています。誤解を恐れずに言えば、ほとんどのマンションでは建替えできません

今後マンションの建て替えを促進する法律や制度は出てくると思いますが、画期的なものが出てこない限り、建替えできないという状況はまだまだ続くと思われます。

まとめて売るための合意形成も難しく、合意できたとしても値段が付かないこともあります

では最後はまとめて売ってしまえばよい、少ないとはいえ土地の権利もある、と考える人もいらっしゃるでしょう。しかしこれも今後はどうなるか怪しい感じがします。

首都圏の実需向けマンションであれば、全く値段が付かないということは今のところほとんどありません。しかしリゾートマンションではもう値段が付かないという物件が数多く出ています

仮にマンションの値段がタダであっても、管理費や修繕費などが発生します。この負担がばかにならず、費用がひたすら出ていくだけという状況になっています。実際に競売などではリゾートマンションの売却価格ゼロ円という物件もあり、もはや資産ではなく負債でしかありません。

首都圏のマンションがこうならないとは限りません。と、言いますか割と近いうちにこのような物件が首都圏でも出てくるのではないかと思っています。

もしこのような物件が首都圏でも出てきたらどうなるでしょうか。建物を解体して土地の権利を売却するしか方法は思いつきません。しかし、この方法ですらおそらく簡単ではないでしょう。

まず建物の解体費自体がタダではありません。またここまで来ている状況であれば、管理費の滞納などマンション自体に負債がある場合もありそうです。

問題が出始めたマンションでは、管理費や修繕積立金の滞納が起こり始めます。マンションの管理組合自体が借金を持つことになると、最終的に解体・売却ができたとしても、その売上の中から借金を返済しなければなりません。

解体イメージ

解体は建替え以上に合意形成が大変かもしれません。

また建替えと異なり、解体・売却には全所有者の同意が必要(2015年以降は8割の合意で可能になる予定)です。8割の合意を得ることも大変ですし、仮に合意が得られたとしても、売却先を見つけ、金額交渉するのも簡単ではありません。

今後マンション円滑化法がどのような実行力を持ち、どういった決着のつき方が出てくるのか、まだ分からない部分がたくさんありますが、所有者がトクをする、という事は考えづらく、むしろマンションが倒壊すれば周辺に迷惑なので、強制的に立ち退かされる可能性もあると思われます。

何にせよ、マンション購入の前には、最後にはどうなるか、ということを考えておかないと大きな出費が、場合によっては立ち直れない失敗をしてしまうこともあります。立地が良く値段も安いので購入します、と簡単に結論を出さないように、ご注意ください。

次のページはこちら 「タワーマンションは資産価値を維持できるか」

また、マンションの資産性については「中古マンションはスケルトンリフォームで資産価値が上がるでしょうか?」の記事も参考にしてみてください。

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