ほとんどのマンションでは修繕のための積立金が足りません
このページでは、将来そのマンションの資産性を危うくしそうな要素の1つである修繕積立金について解説します。マンションの場合は、どうしても立地優先という考え方が強く、将来どのくらいの修繕費などがかかるのかがあまり考えられていないことが多いように感じます。
しかし修繕積立金の設定がうまくなければ、長期間保有後に多額の特別修繕費を支払わなければならなくなる可能性が出てきます。
仮に途中で売却するにしても、売却前後に大規模修繕が発生するようであれば、売却金額も安くせざるを得なくなる可能性が残ります。特に正しい修繕積立金の設定をしているマンションはあまり多くありませんので、この点を注意して見ていきます。
設備が多いマンションでは、中古となったときに多額の修繕費がかかる可能性があります
修繕にかかる費用は、そのマンションがどのような造りになっているかで変わってきます。一般的には躯体よりも設備の方が早く壊れますので、設備が多いマンションでは必要な修繕費が多くなります。
しかし、実際に修繕が必要にならないと金額を確定することができません。そこで目安ではありますが、国交省が専有面積当たりの修繕積立金の目安を公開していますので、その数値を見ていきましょう。
「マンションの修繕積立金に関するガイドライン(国土交通省)」(別ウインドウで開きます)
上の表の20階以上はいわゆる高層マンションですが、設備が多い高層マンションの修繕積立金がこの価格で収まるとは思えません。私見ですが、この積立金では、20階以上のマンションは将来何かしらの問題が出る可能性が高いのではないかと思っています。
新築マンションでは修繕積立金が低く設定されています
これによりますと、15階建て未満で建築延べ床面積が5,000平米未満のマンションであれば、1平米あたりの修繕積立金は1か月あたり218円となっています。マンションの専有面積が75平米であれば、16,350円となります。
この数値を見て、高いと感じられた方は多いのではないでしょうか。特に新築のマンションで1か月あたりの修繕積立金を1万円以上に設定しているマンションはあまり多くありません。
これは積立金などの月々の支払いが高いと、マンションの販売に悪い影響が出ることを恐れて、新築マンションを販売するディベロッパーが、敢えて低い金額設定をしているのではないかと考えられます。
また、建設当初は修繕の必要がないため、安い積立金を設定して必要な時期が近づいてきたら金額を上げればよい、という考え方もあります。しかし実際に管理組合の総会で金額の増額を決めるのは簡単ではありません。必ずと言っていいほど反対者が出るため、必要と思われる額まで積立金の額を上げるのは難しいためです。
このような理由で最初から積立金の額が低く設定されているマンションでは注意が必要です。
中古マンションの積立金の査定内容では十分な額でなくても良好とされます
また中古マンションを購入する場合は査定内容に積立金の額が十分であるかどうかの確認項目があります。しかしその設定金額は、上記と同じ条件であれば1平米あたりの月額積立金額が165円とガイドラインと比べてもかなり安い金額で設定されています。
ですので、査定書類を見て、積立金が十分ある、と記載されていたとしても、将来積立金が足りず、追加の修繕費を払わなければならない可能性が十分以上にあります。可能なかぎり、積立金の額が高いマンションを選ぶ方が無難ではないかと思います。
正確な積立金の額などは中古マンション購入前に「重要事項に係る調査報告書」を取得して確認しておきましょう。調査報告書については「4-03-09.中古マンション購入前には「重要事項に係る調査報告書」を取得しましょう」のページも参考にしてください。
マンション敷地内の機械式駐車場は将来大きな負担になる可能性があります
さらに問題になるのが、マンション内に機械式の駐車場を入れているケースです。機械式の駐車場が大掛かりな設備であり、メンテナンスや取り換えなどで多額の工事費がかかります。
そのため、先程紹介しました国交省のガイドラインでも、1台あたり月額でこのくらい、修繕工事費を積み立てておいた方が良い、という数値を公開しています。
駐車場収入を修繕積立金ではなく管理収入にしているマンションはリスキーです
マンションによっては、駐車場の使用料を組合で徴収していますので、その使用料をこの修繕費に充てているマンションもあります。一方で駐車料金は周辺の駐車料金相場で決まることも多いため、修繕積立分に満たない金額で設定しているマンションも多数あります。
さらに、駐車料金を修繕積立金に充てていれば良いのですが、マンションによっては管理収入として扱い、管理費の一部として使ってしまうマンションも多数あります。その場合には、いざ駐車場を修理しようと思っても、その予算が確保できません。
規定の積立を行っても、マンションの機械式駐車場の更新は難しいと思われます
それだけではなく、そもそもこの表の金額では取り換え工事の費用が溜まらない可能性が高いと思われます。
機械式駐車場の寿命は法的な耐用年数が15年、実際には20年程度ではないでしょうか。そしてその間のメンテナンス費用と新たに新設する機械設備の導入費を合わせれば1台あたり200~250万円の費用がかかります。
しかし、上記の表で示した1台7,085円を15年分修繕積立金としたとしても130万円にもなりません。20年溜めたとしても170万円です。これでは機械の交換に費用が足りないのは明らかです。
国交省のモデルプラン通りに進めても費用が足りなくなる可能性が高いのに、それより下回る修繕積立しか行っていないマンションでは将来多額の修繕費が発生することを避ける訳にはいきません。
この機械式駐車場を設置しているマンションにはこういった問題が発生する可能性が高い確率であります。これについては別のページでも説明しています(「2-05-07.マンションの敷地内駐車場に問題が潜んでいることがあります」参照)。
エレベーターの部品は25年間しか保存されないため、古い中古マンションでは交換費用が発生します
マンションで他にある大型の設備ではエレベーターがあります。エレベーターの寿命は概ね25年です。そして各エレベーターメーカーは、エレベータの保守・交換部品を25年以上保管しないと宣言し始めました。
つまり25年以上経ったエレベーターは修理しようにも部品がありませんから、新しいものに交換しなければならなくなります。修繕積立金がこの分まで見ているかどうかと言いますと、まず考えられていません。
最近では意識の高い管理組合はこういった問題に気が付き、修繕積立金を増やす動きをしているようです。管理会社を変え、管理費を抑えてその金額を積立金に回すなど工夫している話を時々聞きます。
購入前には価格だけでなく、修繕積立金も調べたうえでマンション選びを考えましょう
マンションの経済性を考える時に、修繕積立金や機械式駐車場の費用を考える人はあまりいません。しかし既にいくつかのマンションでこれらの問題が起きており、今後さらに問題化すると思われます。
マンションでの資産性を考えている方は、こういった修繕内容にも注意してマンションを選んでいく時代がもう来ているのではないかと私は感じています。
次のページはこちら 「2-05-06.マンションの管理内容によって資産性も変わる」
このページの内容を動画でも解説してみました
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