当社では仕事柄不動産に係るサイトを色々とチェックしています。その中の定番と思われる話に、新築マンションを安く買う方法というものがあります。
サイトの内容には、なるほどと思うものから役に立たないものまで色々な内容が混ざっています。このページでは新築マンション、分譲マンションを安く買う方法はあるのか、その内容は正しいのかについてお話しします。
そもそも値引きの額や率で、安くマンションを買ったと考えてはいけません
まずはマンションはたくさん値引いてもらったからお買い得だったとは限らないという事を理解しましょう。これは額であっても率であっても同じことです。
マンションは1つ1つに値段がついており、家電製品と異なり全く同じものはありません。そのため当然値段も1つ1つ付けられることになります。つまり元々付いていた価格に正当性というものは特にありません。
マンションを販売するディベロッパーが、この価格であれば一定期間内で売れるであろうという想定をして価格を決めます。その想定が実際の市況と比べて高すぎた場合には、大幅な値引きをした後でも市況より高い価格だったということも日常的にあります。
新築マンションに限らず、不動産の価格には定価というものは無い、と考えなければなりません。分譲マンションのパンフレットに価格が定価と書かれていたとしても、不動産はすべて時価だと考えて、その価格が安いかどうかを考えるべきです。
そして自分で考える時価が、定価と比べて高いか安いかを考えなければなりません。定価の方が明らかに高いのであれば、値引き交渉をするなり、他の物件を考えるなりの行動を取ることになります。
逆に時価よりも低いのであれば、値引きが無くてもお買い得という事もあります。値引き額でお買い得かどうかが決まる訳ではありません。
値引き交渉ができるタイミングは確かにありますが、最初から狙うには無理があります
さて、自分が考える価格と比べて高かった場合には、当然値引き交渉も考えなければなりません。そして値引き交渉には時期があるとも言われています。
決算期前の会社は値引き交渉しやすいでしょうか?
よく言われるのは、決算期前の会社はその年度の売り上げが欲しいので、値引き対応しやすいという話です。しかしこの話はどこまで正しいのかは正直疑問です。
値引きについての方針はマンションの分譲会社や、その支店、販売責任者の考えによっても大きく異なります。また、契約が決算時期内であっても、引き渡しが決算期よりも後になると、その年度の売り上げに計上できないということもあります。
決算期前が値引き交渉しやすいという話は、完全に間違いとは言い切れませんが、例外もかなり多いと思いますので、あまり深く考えなくても良いのではないかと思います。少なくともわざわざその時期を狙って検討するという程の話ではありません。
完成後のマンションは値引きしやすいでしょうか?
もう1つ、値引き交渉しやすいタイプの定番が、完成後のマンションは値引き交渉しやすい、という話です。こちらは決算期の話よりもより現実性が高い気がします。
特にマンション完成後の残りが後数戸となった場合は、少しくらい安くなったとしても早く売り切りたいとディベロッパーが考えることが多いからです。
それは、残りの住戸の販売にかかる経費や、マンション建設に掛かった費用の金利負担分などを照らし合わせると、多少値引きしても売り切ってしまった方が最終的に利益額を増やせることがあるからです。残りの住戸数が少なければ少ないほど、値引きできる可能性は高くなると思われます。
ただ、では完成後に売れ残ったマンションを狙うのが良いのかと聞かれれば、必ずしもそうとは限りません。売れ残っていたという事は、当初の価格が市況よりも高く設定されていた可能性が高いから売れ残ったとも考えられます。
ですので、少しの値引きくらいでは全く割に合わないこともあります。あくまでも自分で考える時価と比べて高いかどうかで判断しないと、結局高い買い物をすることになり兼ねません。
マンションの中では、完成後数年、あるいは10年近く経っても値段がほとんど変わらないマンションもあったりします。そしてそのようなマンションは、販売直後から人気が高く、完成前に完売してしまうケースが良くあります。
最近のマンション購入者の方は大変目が肥えています。そのような方々は、お買い得のマンションを見落としません。そう考えると、一定期間で売ることができなかった完成在庫のマンションが本当にお買い得なのか、良く考える必要があります。
もちろんこの値引き額が大きく、自分で考える時価よりも大きく下がった金額であれば、検討してみて問題ないと思います。
ちなみに完成在庫となった新築マンションの値引きにも色々なスタイルがあります。スタイルと言うよりも順序と言った方が良いかもしれません。
順序として最初は、モデルルーム等についている家具や照明、カーテンなどを無料でプレゼントするというおまけが付くタイプの値引き、次がローン手数料や登記費用などの諸費用をディベロッパーが負担するなど、マンション本体の値引きは無くても何らかの費用をディベロッパーが負担するというタイプの値引き、最後が売買金額自体を下げるという一般的な値引きです。
どのスタイルがいくらトクかは計算してみないと確実なことは言えませんが、後のスタイルの方が通常は値引き額が大きくなります。ただ、これもあくまでも時価との比較で考えるようにしてください。
また築1年の中古マンションは新築マンションと比較して10~20%値段が安いと言われます。そう考えると、築1年以上の完成済み新築マンションは新築時よりも10%以上安くないとお買い得ではない、という考え方もできます。
モデルルームの家具代だけでは、この下がった分を補てんできません。何度も言いますが、マンションの価格は時価です。そしてその時点の時価を常に考えながら、お買い得かどうかを考えるようにしましょう。
新築と値段が変わらない中古マンションは割高でしょうか?
このマンションの値引きについて考える際に、参考となるのが、中古でも価格が落ちないマンションの話です。築2年や築3年で新築時と価格がほとんど変わらない、あるいは上がっているというマンションも時々あります。
これは新築と比べて値段が下がっていないので損なマンションでしょうか。必ずしもそうとは限りません。新築時の分譲価格が市況よりも結果として安く出ていたため、その時点での中古価格が妥当な価格で、新築時の価格が安かっただけ、ということもあります。
そして築3年で購入したそのマンションを築10年で売却することになった時に、やはり値段が下がっていないということもあります。3年後に価格が落ちていないマンションは10年後もあまり価格が下がっていないこともよくあるからです。新築時と比較するだけではトクか損かは簡単に判断できるものではありません。
考え方としては高いマンションと相場のマンションがあるだけと考えましょう
このように考えていくと、一般的に言われている新築マンションを安く買う方法は本当に安く買えているのかどうかが疑問です。
私見ではマンションを安く購入できる方法は、マンションの相場観を正しく持っている人が、相場よりも安い物件を見つけた場合にのみ安く購入できるだけだと思います。これはマンションを買うタイミングや交渉テクニックにで何とかなるというものではありません。
完成後のマンションを値引きした購入された方は、同じマンションの住戸を定価で購入された方と比べれば、確かにトクと言えるでしょう。しかし悪い言い方をすると、同じ負け組の中で負けの額が少ないだけ、という可能性もあるのです。
値引きをして購入したマンションは、値引きをしなければ売れなかったマンションでもあります。そして新築時に販売で苦労したマンションが中古になった時に高値を付けるということはあまり多くありません。
もちろん値引き額が大きく、本当にお買い得になることもあります。ただ、このあたりも相場観が無いと判断できません。
本当にお買い得だったのかどうかは、そのマンションの処分時、売却時に確定します。この時期にこのタイミングでこのような交渉術でマンションを購入してトクをした、と主張される方はたくさんいますが、本当にトクだったかどうかは、実は確定していないのです。
皆さんも色々な情報を得つつ、マンションの購入を検討されると思いますが、内容が怪しい情報もたくさんあります。複数の情報を照らし合わせながら、どのやり方が良いのかを考えながら、マンション購入を楽しんでもらえればと思います。
次のページはこちら 「第3章.その住まいは安全ですか」
このページの話を動画でも説明してみました
このページでお話ししました内容の一部を動画で説明してみました。その動画がこちらです。
よろしければ、動画もご覧ください。
ふくろう不動産でもマンション購入のアドバイスを行っています
ふくろう不動産は売買仲介専門の不動産会社です。仲介専門ですので、中古マンションを取り扱っていますが、原則として新築マンションの販売には関わっていません。
ですが中古マンションを検討されている方は新築マンションを並行して検討される方も多くいらっしゃるため、新築マンションについても相談されることがよくあります。
当社で新築マンションを直接案内することは基本的にありませんので、その場合には資料などを見て注意点のみお話しして、ご自分でモデルルームなどを見に行ってもらっています。
その新築マンションの購入を決められた場合には、当社にお金を払う必要はありません。ただその場合、当社には全く売り上げが上がりませんので、可能であれば当社で内覧会等の際に当社のインスペクションなどを受けてもらえないかとお願いすることがあります。
ただそのインスペクションのお願いも強制力が全くありませんので、そのままお付き合いが終わってしまうこともあります。当社としては悲しいことですが、その場合は仕方がありません。
そんなこともあるという前提で、ご相談などを受け付けていますので、相談などにお金がかかることはありません。より詳しい話を聞きたいという方や、ご質問されたいという方は「お問い合わせフォーム」からご連絡をお願いします。お問い合わせされたからといって、当社からしつこい営業を行うこともありませんので、その点はご安心ください。