安全という切り口でお話をしている以上、健康問題は避けて通れません。このあたりは私も勉強が行き届いていない部分が多く不確かな部分も多いのですが、分かる範囲で説明していきたいと思います。
土地の土壌問題については、別ページをご確認ください
まず土壌についてですが、これは「12.都市計画法や建築基準法以外で気を付けるべきこと」で説明しました。土壌汚染で指定されているエリア以外であれば、それほど気にする必要はないのではないかと思います。ですのでこのページでは、電磁波と放射能について分かる範囲で述べたいと思います。
電磁波は建物から多く出ていますが、避けるべき土地はそう多くはありません
電磁波については、多くの誤解や怪しい説も出回っており、すこし胡散臭いイメージもあります。実は日本の住宅は世界でも有数の電磁波を受ける住宅のつくりになっており、本来であればもっと注意しなければならないものです。
ただこれは建物の影響で電磁波を多く受けており、土地に関しては問題のある土地はそれほど多くありません。建物の電磁波の問題については、「02章.健康被害を起こすかもしれない電磁波について知っておくべきこと」をご参照ください。
電磁波は低周波の電磁波について注意すべきだと考えています
また、電磁波といっても種類がたくさんあります。このページでは健康に与える影響がテーマですので、その部分に絞ってお話ししたいと思います。
人の健康に影響を与えるかもしれない電磁波は低周波の電磁波と言われています。周波数で言えば、5Hzから2kHzまでの極低周波と2kHzから400kHzまでの超低周波が対象です。
周波数の高い高周波の電磁波は人の健康にあまり影響を与えないと言われていますので、今回は考えません。高周波は携帯の電波や無線LAN、テレビやラジオの電波がこれにあたります。
ただこの高周波を発生する携帯電話の基地局の設置については、健康被害が出ているとして、訴訟が出ているケースもあります。私が知っている限りでは、「携帯基地局の電磁波による健康被害とは言えない」という裁判所の見解で、健康被害が出ている原告側が勝ったという事例は知りません。
本当はどうなのかは分からないところが多いのですが、私の知識と能力では高周波による健康被害について語れませんので、この分は除外して考えます。
低周波の電磁波は電場と磁場に分けて考えます
さて低周波の電磁波です。低周波の電磁波は性質が違う電場と磁場とに分けて考えます。建物であれば電場と磁場の両方について考えなければなりませんが、このうち電場はモノを伝わって届く電磁波ですので、土地に関しては考えなくても構いません。電場は空気の中はあまり通りませんので、土地に関しては磁場だけ注意すれば概ね大丈夫です。
その磁場ですが、土地にかかる磁場としては送電線や配電線から発生する磁場が一般的です。東京電力のサイトによると、国の規制値である200マイクロテスラを大きく下回っているので問題ないとしています。
東京電力のサイトによる電磁波についての説明
この200マイクロテスラという数値は、ICNIRPという電磁波などによる健康被害を研究している組織が安全と主張している数値から取っています。しかしこの200マイクロテスラはミリガウスで言うと2,000ミリガウスです。使用中の電子レンジ以上の磁場ですので、本当に安全なのかどうかは正直疑問に思う数値です。
しかし実際に送電線や高架線から出ている磁場で、2,000ミリガウスのような高い磁場を出している場所は、私が今まで計測した範囲ではありません。私が今まで計測した範囲では、土地にかかる磁場よりも建物の電気設備や家電製品の方が高い磁場を出しています。
磁場の基準として3mG(ミリガウス)未満が望ましいとされています
しかし、そうは言っても送電線の下は気になる、という意見もよく聞きますし、実際に送電線の下の土地は金額が安くなることもあります。では、送電線による電磁波の影響はどのくらいあるのかを、別の角度から見てみましょう。
先程はICNIRPという団体が示している200マイクロテスラという話をしました。ただ国によって電磁波の規定は異なっています。もっとの厳しい国はスウェーデンだと言われており、その国の電磁波規制案MPR-2によると低周波の規制値は2.5mG(ミリガウス)となっています。
また、日本では日本電磁波協会がEMEAJ-01(エミアージュ・ゼロワン)という基準を設けており、その基準では磁場は3mG未満が望ましいとしています。
1マイクロテスラは10ミリガウスですので、2.5mGであれば先程のICNIRPの基準の0.125%と800倍の厳しい数値となります。ICNIRPもきちんとした国際機関のはずですが、なぜこんなに差が出ているのか私には分かりません。
送電線から近い場所であれば、磁場は基準よりも高くなることがあります
それではEMEAJ-01の基準で考えた場合、送電線の影響はどうなのでしょうか。送電線の真下での測定で、10.1マイクロテスラ(101ミリガウス)という数値が出たという話を聞いたことがあります。ICNIRPの基準数値から見ればはるかに低い数値ですが、3ミリガウスよりははるかに高い数値です。
ただ、私が非公式に調べた結果では、送電線の真下でも3mGしか出ていない場所がたくさんありました。送電線の下だからといって、必ず磁場が高いという訳でも無さそうです。もっともこれも時期によって磁場の数値が違うこともありますので、確実とは言えません。
家の外の磁場は電力会社が無料で測定してくれます
私も磁場測定器を持っていますので、外で磁場を測ることも可能ですが、電磁波協会の基準では測定士は建物の中でしか磁場等を測ってはいけないことになっています。ですので私の計測は公的なものではありませんが、土地をお探しの方には参考意見を述べることはできると思います。
また、実際に土地の磁場について正式に調べたいときは、電力会社に連絡すれば電力会社で公的な測定をしてくれます。送電線などの磁場が心配な方は電力会社で調べてもらう方が良いでしょう。
ただ、結果を聞くときには単に大丈夫であるかどうかではなく、磁場の数値を聞くようにしてください。電力会社の基準は割と緩めですので、大丈夫と言われても結構大きな磁場であるケースも考えられます。数値を聞いた上で結果も聞くようにした方が確実です。
不動産会社や建設会社は電磁波の説明義務がありません
送電線の近くは他の場所よりも大きな磁場が発生することが多いのですが、200マイクロテスラという範囲内にある以上、法律に反している訳ではありませんし、必ず健康に影響が出ると決まっている訳でもありません。
ですので、不動産会社や電力会社は、こんな問題が出ます、とは言いませんし、そもそも説明義務も無かったと思います。ただ、私個人は気になるところですので、自分のお客様には参考意見の1つとして、注意を促しています。
また、前述しましたように、送電線などの影響よりも建物内の配線や家電製品の方が、強い影響があります。むしろそちらの対策を考える方が現実的ではないかと思います。電磁波については「第2章.健康被害を起こすかもしれない電磁波について知っておくべきこと」の中でも色々とお話ししていますので、こちらのページも参考にしてください。
電磁波対策の怪しい商売や商品にだまされないよう注意しましょう
もう1点気を付けたいのは、電磁波についてはよく分かっていないことも多いため、怪しい商売もいくつか見受けられます。
電磁波対策は何が効果があって何がないのか、よく考えて選ぶ必要があります。分かりやすいのは検査機器を使い、数値で説明されている対策です。電場であれば何V/m以下になるのか、磁場であれば何ミリガウス以下になるのかなど、数値を押さえたうえで判断するようにしましょう。
さらに注意点ですが、電磁波の数値を測る計測機器は精度が悪いものも多くあります。電磁波について、何かあおるような内容を話す会社は、どのような数値の根拠で話しているかと、どのような計測機器で数値を見ているかの両方を確認し、くれぐれも怪しい会社の詐欺的な内容に捕まらないよう、ご注意ください。
放射線の危険量は11マイクロシーベルト毎時と言われています
最後に放射能についてですが、私は詳しくありません。ですので本当に簡単に説明します。このサイトは住まい・不動産に関するサイトですので、放射能の内部被ばくについては割愛します。
外に立っていて受ける放射線の危険量は年間100ミリシーベルトと言われています。これを1時間あたりで考えると11マイクロシーベルトです。
私はガイガーカウンターとシンチレーションカウンター(どちらも放射線測定器)の両方を持っており、東日本大震災以降家の周りの放射線を測ってきましたが、幸い1時間あたり11マイクロシーベルト以上という高い数値になったことはありません。
このページを作成している2014年8月に家の中と外の両方の放射線を測ってみましたが、家の中は0.1台、外でも0.2台と低い数値です。実際1マイクロシーベルト毎時を超えることはほとんどありません。世界での平均が0.27マイクロシーベルト毎時と言われていますが、これまで計測した結果、家の中でこの平均数値すら超えた事は1度もありません。
ただ、一時期放射性物質を含んだ砂利や砂を使ったコンクリートから高い放射線が出ているという事件がありました。ですので、建物によっては高い放射線を受けるという可能性はゼロではありません。
幸い測定器自体は国産でも安いものがありますので、心配される方は、念のためにその土地、建物で調べてもよいと思います。当社も簡易的な測定器を持っていますので、お客様が購入対象とされている土地・建物については放射線量を調べています。
ふくろう不動産が使用している放射線測定器については「2-07.放射能測定器で危険な土地は避けます」のページをご参照ください。
これら電磁波や放射線に限らず、健康被害は建物による影響の方が事例が多く、可能性も高くなります。この詳しいお話は、
「3-02-22.シックハウスはもう無いと思っていませんか」
「2-02-01.日本の住まいは世界トップレベルで電磁波が強い」
のページもご参照ください。
次のぺージはこちら 「3-02.安全という観点から見た建物選び(戸建編)
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