戸建住宅の外壁で注意しなければならないのは、傾きと仕上げの状況の2つです。
0.6%以上の傾きがある外壁は明らかに問題です
まずは傾きです。室内で傾きを計測する場合も同じですが、1,000分の6以上傾いているようでしたら構造上問題がある可能性が高いです。また1,000分の3以上でも、何らかの問題がある場合があります。
室内であればレーザーレベルで傾きを計測できますが、外部ですとその計測は簡単ではありません。そこで簡易的に下げ振りを使って調べることがあります。
しかし、実際に外壁の傾きを調べることはめったにありません。外から見た感じで何となくおかしいと感じた際には調べますが、通常は室内で傾きを調べてその内容で判断するからです。
しかし外から見ておかしいと感じられるくらい傾きがある建物は構造的に大きな問題がある可能性が高くあります。もうその時点でお勧めできない物件、という位置づけになり、念のために室内でも傾斜を確認する、ということになります。
戸建住宅の外壁は傾きよりもひび割れや表面の劣化チェックが中心です
ですので外壁のチェックは傾きよりも仕上げの状態を確認する方が中心となります。
戸建住宅の外壁は大別すると2つに分けられます。モルタル塗りなどを行う湿式とサイディングなどを貼る乾式です。ここからさらに細かく分けられます。
湿式はモルタル塗りの上から吹き付け塗装などを行うのが主流ですが、左官仕上げにしたり、タイルを貼ったりと別の仕上げにすることもあります。
サイディングは窯業系と呼ばれる板が主流ですが、金属系、樹脂系、木材系のものもあります。ただ、日本の住宅の場合は8割以上は、モルタル塗り後の吹付か、窯業系サイディング貼りの2つで占めますので、この2つに絞ってチェックポイントを解説します。
ひび割れは幅が0.5mm以上あると問題である可能性が高くなります
まず吹付仕上げの外壁の場合、壁面にひびが入ることがよくあります。材料の伸縮などである程度ひびが入るのは仕方がありませんが、大きなひびが入っているようですと問題です。
一般的な基準では0.5mm以上の幅のひびは問題と言われます。また0.3mm未満は問題がないレベル、0.3から0.5mmはグレーゾーンです。ひびの幅はコンマ何ミリの世界ですので、クラックスケールと呼ばれる計測機器で測定します。
また、ひびの幅が狭くても外壁全体に入っているようですと問題です。びっしりとひびがはいっている場合は何らかの問題が起きている可能性が高くあります。またひびが一定の方向にのみ数多く入っている場合は建物自体が傾いている可能性もあります。
このように湿式の壁は吹付仕上げにしても左官仕上げにしても、ひびの問題と向き合わなければなりません。こういった背景があるため、外壁をサイディング中心とする建設会社も増えています。
しかしひびが入ることは一概にデメリットとも言えません。建物の構造などに問題がある場合、湿式の場合には壁に表れますがサイディングなど乾式仕上げの場合は表面に出てこないため、建物に問題があっても分かりません。
これだけで建物の良しあしを決めることはできませんが、外壁が塗り替えされていない湿式の建物でひびが入っていない戸建住宅は構造に安心感があります。
構造だけではなく、下地の処理ですとか施工の丁寧さなどにも拠るのですが、湿式の外壁がきれいな建物は細かな問題が起きていない訳ですから、しっかりと施工されている可能性があります。中古住宅の場合はサイディングよりは判断しやすいと思います。
シーリングの破断とチョーキングもチェックします
一方サイディングですが、これはひび割れよりもシーリング材の破断に注意してみます。シーリング材とはサイディングの板と板の間を埋める目地のようなものです。このシーリング材が切れていたり、剥がれていたりすると壁の中に水が入りやすくなります。
吹付仕上げやサイディングで共通して見なければならないのは表面の塗装の劣化です。劣化の初期症状としてチョーキングと呼ばれる現象があります。白亜化(はくあか)とも呼ばれ、外壁の表面を手で触ると塗料が粉上になって手に付く状態となる症状のことです。
チョーキングがあるからと言ってすぐに外壁自体に問題が出る訳ではありませんが、外壁材自体が少し劣化してきていると考えてください。
外壁の劣化がそのまま雨漏りにつながる訳ではありません
外壁が劣化し始めた場合何が問題かと言いますと、1番は見た目です。その外壁材にもよりますが、汚れが付着して汚い外観となってしまうことがよくあります。ただ、外壁が劣化したからと言って、すぐに交換や再塗装が必要となる訳ではありません。
リフォーム業者さんなどで、外壁をそのままにしておくと雨漏りが始まり取り返しが付かなくなります、と不安を煽るようなセールスをされる方もいます。しかし通常防水は外壁材が受け持つ訳ではなく、その内側の防水シートが受け持っています。
また最近では壁を通気工法としていることも多く、外壁材が濡れていても通気層の外側で水を排出できる仕組みになっています。
そのため正しく施工されていれば、外壁の劣化で雨漏りがすぐに始まるということはありません。幸い防水シートの寿命は20年以上と言われているため、雨漏りが無い建物であれば急いで補修する必要もないと思います。
ただし、この正しい施工、が意外となされていない建物も多いため、外壁から水が入り、そのまま雨漏りにつながる例も無い訳ではありません。そのため判断は難しいのですが、定期的に外壁を塗り直しする必要もありません。
私の意見としては、外壁の塗り直しは原則として美観との兼ね合いで決めて良いと思っています。
私の個人的な意見では、雨漏りする建物は新築当初から雨漏りします。建物の劣化よりも施工不良が原因のケースが多いように感じます。
ですので、今まで雨漏りが無かった建物であれば、外壁のちょっとした劣化で急に雨漏りが始まるとは考えにくいので、美観との兼ね合いで決めても問題ないという意見です。すべてのケースに当てはまる訳ではありませんが、大半の建物ではそれで良いと思っています。
次のページはこちら 「3-02-11.戸建住宅の屋根は形と材料と劣化状況を確認しましょう」
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ふくろう不動産では、お客様が雨漏りする建物を選ばないように、最終検討段階にある建物はサーモグラフィカメラを使って雨漏りしやすい場所をチェックしています。
サーモグラフィカメラはすべての内容を確認できる訳ではありませんので、100%の安全ではありませんが、それでも一定の割合で危険な建物を見付けることができます。サーモグラフィカメラについては「2-01.サーモグラフィカメラは雨漏りの建物を見つけます」のページを参考にしてください。
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