この02項では建物(戸建住宅)の資産価値について考えます。
4節の最初のページである「2-04.経済的かという観点から見た建物(戸建)選び」でも説明しましたが、戸建の建物自体が資産として価値を持つことはあまりありません

これは日本独特の現象で海外では建物自体に資産価値が付くことが多いようです。なぜそうなのかは色々な理由があると思いますが、今回はその理由を工事費の内訳から考えてみたいと思います。

建物の何にいくら費用がかかっているかご存知ですか

そもそも建物は何にいくら位かかっているか、皆さんはご存じでしょうか。もちろんその建物にもよりますし、工事費の分類にもよるのですが、一般的な住宅では次の表のような内訳だと考えてください。

工事費2310万円の建物の内訳

一般的な戸建住宅の工事費の内訳です。もちろん建物の内容や工事費の種別の分け方にもよりますが、大体このような感じと考えて問題ないと思います。

このグラフは 見積金額を2,300万円強と出した工務店の建築工事費の内訳です。この中には工務店や職人さんなどの利益も含まれています。工事の種類を「基礎」「躯体」「仕上げ」「設備」の4種類に分けると、その内訳はこのようになりました。

さて問題はこの中で資産となるのはどの部分かということです。一定期間経過後の建物を取得する人はリフォームをした上で入居することが良くあります。スケルトンリフォームと呼ばれる大掛かりなリフォーム(構造体以外はほぼすべて交換するリフォーム)であれば、この内訳の基礎と躯体の工事を除けばほぼやり直し部分となります。

基礎と躯体部分は工事費全体の4分の1ほどしかありません。スケルトンリフォームを考えた場合、建物工事費で資産価値となるのはこの2種類、590万円の部分となります。

少し高額の建物の費用内訳を見てみましょう

では次に少し建設費にお金をかけた例を見てみましょう。

工事費4340万円の建物の内訳

価格の高い住宅の工事費の内訳です。工事費のアップは主に仕上げ工事にまわされます。資産価値という面から見て問題なのは、この仕上げ分はあまり資産として残らないことが多いということです。

このグラフは見積金額が4,300万円強の建物の工事費の内訳です。
先程の建物と施工面積はあまり変わりませんが、建物の性能や素材に高級なものを使うため、見積金額はほぼ2倍となっています。

これも将来スケルトンリフォームを行うとすると、資産部分は先程同様に基礎工事と躯体工事部分だけとなります。先程は全体の4分の1が資産部分となりましたが、このケースでは全体の約17%分となります。基礎や躯体にもお金をかけていますが、それ以上に仕上げや設備に費用をかけたため、基礎・躯体部分の比率は低くなっています。

もちろん建物の費用をかける際にどの部分に費用をかけるかは建築主の意向によります。しかし一般的には構造的な部分よりも仕上げや設備に費用を上乗せする例が多くなります。

結果として、将来その家を購入してスケルトンリフォームを行う人からみれば、新築時に費用をかけても、かけた分のうち資産として残る分はあまり大きくありません。

スケルトンリフォームで無いとしても、設備や内装には資産価値が付きません

ユニットバス

水廻りは物理的な耐久性があったとしても、古いものは嫌がられることが多いため、資産価値は付きません。

もちろんすべての中古住宅購入者がスケルトンリフォームを行う訳ではありませんし、実際の中古住宅の価格もこのような計算で行われることはありません

ただ、仕上げや設備分はお金をかけてもその分中古価格に反映されることはあまりないと考えた方が良さそうです(中古住宅の販売時に内装や設備を新しいものに交換する場合は別で、価格に反映されます)。

設備は耐久年数があり、配管などを除けば大半の住宅設備は15年以内に不都合が出ます。トイレやキッチン、お風呂などは、それ自体の耐久性はありますが、これらのジャンルは古いものは嫌がられるため、リフォームの際に交換されやすく、資産とは見なされにくいものです。

仕上げ材も高価な壁紙や床材を使ったとしても、中古住宅購入者の好みに合わなければただの古いものになってしまいます。戸建住宅の場合、構造的なもの以外は価値を保ちにくいのです。

建物にかける予算は経済性ではなく、快適性アップのためです

建物のイメージ

建物に費用をかけても資産性は上がりません。が、快適性は大きく上がります。このバランスをどこで取るかが大切です。

こう話をしていますと、ふくろう不動産では建物にお金をかけていはいけないと主張されているように聞こえるかもしれません。もちろんそうではなく、建物に予算をかけることで快適性は大きく上がります

ただ資産価値にはなりにくいので、建物にかける予算は快適性のために消費するものだということを予め意識したうえで予算配分を考えて欲しいと考えています。

建物に多大な費用をかけて、10年後に売ることになり、大きな出費となるのは悲しいことですし、かといって立地は最高に良く、資産価値は高くても建物のレベルが低く、10年間快適ではない生活を送るのもおかしな話だと思います。

繰り返しになりますが、この経済性と快適性、それに安全性を加えた3つの要素のバランスを考え、皆さんには質の高い生活を送っていただきたいと思っています。

次のページはこちら 「建物の耐久性が高くなれば最終的に安くなるか」

経済性だけでで考えると戸建住宅は中古の方がトクですが…

あくまでも経済性、という切り口で考えれば、戸建住宅は新築よりも中古住宅の方が得です。ただ、住宅を買う人の気分や自分の好みを反映させた家を作ることができる新築住宅の方が快適性は大きく上がることも確かです。

このあたりは、買う人の価値観によりますので、不動産仲介業者である私がどうこう言う話ではありません。ただ、ご自分の価値観を正しく反映させるには正しい情報を得ておく必要があります。正しい情報を得る手段の1つに、建物のインスペクション(検査)があります。

経済的には中古住宅の方がトクだと思っても、中古住宅の購入には不安があると思います。特に中古住宅は、新築住宅のような10年の瑕疵担保が付きませんので、その不安はより大きなものではないかと思います。

ふくろう不動産では、その不安を取り除くために、瑕疵担保保険の紹介や建物のインスペクション等を行っています。当社で仲介されるお客様にはこのインスペクションが無料で付いています。また、インスペクション業務のみも別途行っています。詳しくは「6-03.戸建住宅のインスペクションの費用と内容について」のページをご覧ください。

また、ふくろう不動産では皆様からのご質問やご相談を随時受け付けています。ご質問やご相談はもちろん無料です。ご相談されたからといって、後で当社からしつこい営業を行うこともありません。ご質問などは「お問い合わせフォーム」をご利用ください。

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