建物は土地とは違い、事前にネットで確認できることはあまりありません。建物は個別の要素が大きく、1つ1つ見ていかなければならないからです。しかし、現地で建物を見る前でも確認できることはあります。その中でまずは登記事項証明書について見ていきましょう。
登記事項証明書とは、登記簿謄本と基本的には同じものです。以前は情報が紙で記載されていましたので登記簿と呼んでいましたが、今では情報がデータ管理となり、正式には登記簿事項証明書と呼ばれます。このサイトではどちらの表現を使う事もありますが、同じものと考えて構いません。
建物の登記が行われているのは中古住宅か、新築で既に竣工している建物です。このページでは中古住宅のケースで、建物の登記事項証明書の見かたを学んでいきます。
建物の登記事項証明書も土地の登記事項証明書も見かたは基本的に変わりません
登記事項証明書の見かたは基本的に土地の登記事項証明書と変わりません。建物の登記事項証明書を見る前には土地の登記事項証明書を見ますので、こちらのページも見ておいてください。
(土地の登記事項証明書の表題部をチェックのリンク)
(土地の登記事項証明書の甲区乙区を見てトラブルを防ぐのリンク)
建物の登記事項証明書も、土地と同様に所有権者の確認をします。所有権者は契約を行う相手なのか、共有者がいる場合は共有者全員の了解が取れているのかなどを、不動産会社に確認することになります。
甲区に所有権移転仮登記の記載がある場合には、契約前にかならず外してもらうようにします。抵当権の設定は残代金で抵当権の抹消を行うことが多いため、決済後に行わざるを得ませんが、所有権移転の仮登記は必ず契約前に抹消してもらうようにして下さい。
契約した後に、仮登記から本登記に移されてしまうと、もう手が出せなくなります(実際には賠償請求など諸々ありますが、トラブルに巻き込まれる可能性が高くなります)。
建物の登記事項証明書では建物の構造、登記年月日、建物の面積を確認しましょう
土地の登記事項証明書とは別の考えで注意しなければならないのは、建物の構造、登記の日付、建物の面積です。
まず、登記の日付が建物が本当に建った日付から大きく離れていないことを確認しましょう。これは、まれにですが、建物の登記が違う建物を指していることがあるため、そうでないことを確認するためです。
例えば以前解体した建物の登記が抹消手続きがされないため、そのまま残っていることがあります。その古い建物登記を見て、現在立っている建物と勘違いしないよう、日付は必ず確認して下さい。
また建物が建てられた年月日も確認しましょう。建物は昭和56年6月以降に確認申請が出された建物は新しい基準で建てられています。戸建住宅の場合、完成年月日で言えば昭和57年以降の建物であれば、概ね新耐震基準で建てられていると思われます。
ぱっと見た目では新しく見える建物も、実は築年数が古いという事もあります。2016年の熊本地震では、見た目が新しいアパートの1階が崩れ、多大な被害が出てしまいました。このアパートも画像を見る限り建物が新しく見えますし、賃貸時の情報を見ますと改築7年と書かれていました。
しかし、東京の不動産会社がこのアパートの登記簿をチェックしたところ、このアパートは築42年だと分かりました(「熊本県南阿蘇村で倒壊した学生アパートの本当の築年数は42年だった」暮らしっく不動産の記事より)。不動産の売買の場合には、正しい築年数を表示しますので、分からないという事はありませんが、念のために登記簿に書かれた新築の年月を確認するようにしましょう。
次に建物の面積を見ます。これも現状と違っているケースが数多くあります。よくあるパターンは新築の時のみ登記を行い、後から増築した分は登記をせずにそのままとなっているケースです。
増築部分の登記がないからといって、すぐにトラブルとなるわけではありませんが、増築した結果、建ぺい率や容積率が規定の数値を超え、法律違反となっていることがよくあります。
そのまま使い続けても通常は問題になりませんが、将来確認申請が必要なリフォームなどを行うときには、建物の一部を取り壊さなければならないこともあります。
また、明らかに面積が違うときは、やはり違う建物の登記が残っているという可能性もあります。単に古い建物の登記が残っており、その分を抹消するだけで済めば問題ありませんが、新しい(本来の)建物の登記自体が無い場合には問題となります。
その場合、未登記の建物となるわけですので、取引を行うには不安が残ります。売買契約後に買主側で登記するという方法もありますが、未登記の建物の取引は詐欺などの可能性が捨てきれませんので、売り主側にきちんと登記してもらった上で、改めて売買契約を交わす方が安全です。
登記上の所有者と実際の所有者が異なる場合には注意が必要です
また、土地の時と同様に、実際の所有者と登記上の所有者が異なる場合があります。実際の所有者の登記を行わずに売買契約・引き渡しを行う方法もあり、適法の場合もありますが、こちらも不安が残ります。
このように実際の所有者への登記を省略する方法を中間省略登記といい、適法の登記(新中間省略登記)もあるようですが、理由がはっきりとしない場合には、売り主側にきちんと登記をしてもらったうえで契約する方が望ましいと私は考えています。
抵当権者と抵当権の設定金額も確認しましょう
土地の登記事項証明書と同様に、建物の登記事項証明書にも乙区欄には抵当権などが設定されています。抵当権者が銀行系以外の会社や個人などの名前がある場合には、その内容を注意して確認しましょう。引き渡しの時にその抵当権を外せるかどうかの確認は必ず行うようにします。
特に抵当権の設定金額が売買価格より大幅に高い金額で設定されているときには、より注意が必要です。一般的に、売買代金の残金で抵当権の残りの残債を支払い、抵当権を外してもらいますが、売主さんの残債が売買代金よりも高い金額分残っているときには、売主さんは別途資金を用意しなければなりません。
売買契約書では抵当権を外して引き渡す旨書かれていますので、心配することはありません。しかし抵当権の債権額が高い場合には念のために仲介会社に問題にならないかどうかを確認するようにします。この取引自体が任意売却の場合には、契約時に注意しなければならない点が増えます。どういった点に注意しなければならないかは、仲介会社に詳しく聞くようにしてください。
今回の例では特別な記載内容はありませんが、色々な権利や内容が書かれていることがあります。不明な点は必ず確認し、理解できない内容があるときには、その物件を見送るくらいの気持ちで登記事項証明書を確認してください。
次のページはこちら 「3-02-02.建物の確認申請の内容チェックで危険な建物を選ばない」
ふくろう不動産では法的なチェックもより注意して行っています
ふくろう不動産は「お客様が知らずに損することがないように」をモットーにしています。ですので自社のお客様にはできる限り色々な情報をお話しし、判断してもらうようにしています。
当社は不動産仲介業ではありますが、買い手のためのエージェントとして活動しています。登記事項証明書についても内容が分かりにくい部分はお客様に説明しますし、登記事項証明書から特殊な状況が分かる場合には、そのリスクについても説明します(中間省略登記など)。快適で安全な不動産取引をお考えの方は、ぜひご相談ください。
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