このページでは、マンションの価格を取引事例との比較ではなく、そのマンションを貸し出した場合、いくらの賃料が取れるかという観点から考え、そのマンションの価格が妥当なのかどうかを考えてみたいと思います。
新築分譲マンションの利回りは4%台が多いと思われます
計算の精度は良くありませんが、新築マンションは大体利回りが4%台の半ばになることが多いようです。精度が良くないと言いますのは、新築分譲マンションの場合その物件は賃貸に出されることがありませんので、他の物件から想定して計算しているからです。
この4%台という数値は投資という観点で見た場合、決して良い数値ではありません。ましてやこの利回りは表面利回りです。投資の場合8%以上ですとか10%以上でなければ普通は検討に値しません。
ではなぜ分譲マンションの利回りが低いかと言えば、
1.建物のレベルが賃貸物件と大きく違い、建物費が高いため
2.投資物件は空室率や税金などのロスがあるため、余分に利回りが必要となるため
の2つの理由があると思われます。
賃貸用マンションは建物性能を最低限に留め、投資コストを抑えて利回りを良くします
まず建物のレベルですが、賃貸物件と分譲物件では全く別のものと言っても良いほど建物のレベルが違います。
賃貸物件では、借り手が良いと感じて賃料が上乗せできそうな仕様については費用を掛けますが、それ以外ではなるべくローコストで建物を作ります。当たり前の話ですが、建設コスト、つまりイニシャルコストが安い方が同じ賃料であれば利回りが良くなるからです。
例えば構造です。その建物は地震に強く耐震等級も2を得ています、と言った場合に賃料をその分上げられるでしょうか。また断熱性もそうです。高気密高断熱の建物でUA値(外皮平均熱貫流率)を良くしても賃料は上がるでしょうか。
賃料に反映する建物の機能アップは、明るさやきれいさなど限られたものでしたかないため、建物の機能を抑えてその分イニシャルコストを安くしようとします。そういったいくつものコストダウン策が重なり、結果として分譲用と賃貸用では全く違う建物になるケースが大半です。
違う建物である分譲用マンションは機能を上げるために建設費用を多くかけるために、結果として利回りは悪くなります。
自宅用マンションでは空室率や入居者入れ替わりのコストはかかりません
また、投資用物件と居住用物件とでは必要となるコストが異なります。まず投資物件では空室率を考えなければなりません。自宅用マンションではずっと住んでいますので空室率は0%ですが、賃貸に出す投資物件では入居者が入っていない期間も考慮しなければなりません。
また入居者が入れ替わる際には部屋のクリーニングや、場合によってはリフォームも必要になります。居住用でも必要となることもありますが、投資用ほどには費用はかかりません。
また税金も居住用の方がトクな設定になっています。本人の居住用であれば住宅ローンの控除など税法上のメリットがありますが、投資用は賃料に対して逆に税金がかかります。こういった費用を引いた実質利回りは自己の居住用よりも少なくなりますので、その分利回りを高めに設定しなければなりません。
こういった理由から投資用と居住用では利回りが大きく異なっています。ですので投資物件の感覚で居住用のマンションの利回りを考えるとどれも割高ということになってしまいます。
実はその感覚は正しいのかもしれませんし、この理由から賃貸の方がメリットが大きいと考え、不動産を購入しない方もいらっしゃいます。経済性だけを考えればその判断は正しいかもしれませんが、快適性や安全性を考えるとどうだろうという気もします。
さて、賃料から利回りを考える場合ですが、新築であれば4%以上、中古であれば築年数が浅いという前提で5~6%以上は最低限欲しい気はします。ここから大きく下回る価格設定はさずがに割高なのではないかと考え、他の物件と比較してみると良いと思います。
逆にこれより大幅に利回りが高い物件は、何か別の問題は無いのか、そもそもの造りはきちんとしたマンションなのか、または築年数が古く管理費や修繕費がかかる可能性が無いのかなどを確認した方が良いと思います。
新築であれ中古であれ、マンションの価格は決まるべくして決まります。割高の物件は数多く出回っていても、割安の物件というものはほとんどありません。
投資家の方は市場のわずかな歪みを見つけて、結果的に割安な物件を購入することができますが、一般の方には難しいと思いますし、また自分で住むのであれば何らかの快適性を犠牲にしなければならないこともありますので、投資レベルの利回り物件を探すことはあまりお勧めできません。
分譲用マンションを利回りから考える方法が必ずしも正しいとは限りません
マンションの価格には色々な考え方がありますが、金融系の方々は、この賃料から考える収益還元法こそが正しい見方、というスタンスです。
そもそもこの利回りから売買価格を考えましょうという感覚が出てきたのでは最近、と言ってもここ10数年くらいでしょうか。バブルの頃は利回りが1%台でも値上がり益を期待できるので、利回りが低くても全く問題ないという感覚で取引されていました。
今でも中国の不動産取引では利回りなどは関係なく、値段が上がるのか下がるのかという観点で取引されることが多いと聞きます。
それは市場が成熟していないから、という見方もできますが、絶対そうだとも言い切れません。この賃料から逆算する考え方は賃料は正しく設定されている、という前提に基づいて考えられています。
しかしもしかしたら、賃貸市場の方が成熟していないために、このような結果になっているかもしれません。成熟度もひっくるめて市場だと言えばその通りなのですが、あまり賃料基準を考えすぎるのも判断を誤るような気がしています。
日本では、土地などの資産を多く持っている資産家が税金対策のために不動産賃貸を行っているという物件が多くあります。そのため本来であれば採算が取れないような賃料設定でも賃貸物件として十分に成り立つケースも多いため、安い賃料設定の住宅が多くあります。
そういった住宅の賃料に他の住宅の賃料も引っ張られ、本来の賃料(そういったものがあればですが)相場ができていない感があります。賃料からの利回り計算はある程度は考えた方が良いのですが、あまり振り回されないようにした方が良い、というのが私の考えです。
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