マンションに付属している設備で、機械式駐車場を除けば、大きなものはエレベーターです。エレベーターは取り換えはもちろん日々のメンテナンスでも結構な額の保守点検費用が掛かります。

私は「2-05-06.マンションの管理内容によって資産性も変わる」の中で、マンションの管理費用は見ない、管理内容だけ見るべき、とお話ししましたが、もし管理費の内訳を見ることになれば、エレベーターの保守点検費用は最初にチェックする項目の1つです。

これはエレベーターがまだ新しく問題が少なそうなため、本来であれば消耗品のチェックや交換だけで済みそうなのに、フルメンテナンス契約としており、不必要に管理費用が高くなっていることがあるからです。

中古マンションの購入前にはエレベーターについて2点チェックします

もっとも中古マンションを購入しようと考えている人から見れば、管理費の内訳を見てもその内容を変更できる訳ではありません。ですので、購入前にチェックしたい内容のみ説明したいと思います。

中古マンションではエレベーターが25年までどのくらいの期間が残っているかを見ます

まずそのエレベーターの設置年月日です。エレベーターの寿命は概ね25年です。そして各エレベーターメーカーはエレベーターの保守用部品を25年以上は保管しない、としています。25年以上経過したエレベーターは交渉しても修理するための部品がないため、エレベーター自体を新品に交換しなければならないということです。

エレベーターを完全に新しいものに交換しようとすれば、機種にもよりますが、1,200~1,500万円近い費用が掛かります。エレベーターのかごなど使えるものはそのまま使い、制御系の機械のみ交換するという最低限のやり方でも400~500万円の費用が掛かります。

このエレベーターを将来交換する前提で修繕積立金を貯めているマンションであれば問題ないでしょうが、「2-05-05.マンションの経済性を考えるために修繕積立金について深く理解する」のページでもお話ししましたように、きちんとした修繕計画を立てておらず、積立金の額が不足しているマンションがたくさんあります。

そういったマンションであれば、エレベーターの交換時期には多額の修繕費を払うことになります。築25年が近づいているマンションの購入を検討する場合は、かならず長期修繕計画をチェックし、エレベーターの交換費用が予定として組まれているかどうかを確認しましょう。

念のために法定点検が行われているかどうかも確認しましょう

エレベーターは寿命もそうですが、定期的な点検が行われているかどうかも確認する必要があります。法律の定めでは年に1回以上は点検しなければならない事になっています。実際のマンションでは点検のペースはもっと頻度が高いと思いますが、まれに点検をほとんどしないという管理組合もあると聞きますので、一応は確認するようにしましょう。

確認といってもエレベータ内部に点検のステッカーが貼られているかどうか、またそのステッカーに貼られている有効期限が過ぎていないかどうかを見るだけです。ほとんどのマンションでは問題が無いと思いますが、万一こういったステッカーで有効期限が過ぎているようであれば、その管理組合はきちんと機能していない可能性が高くなります。

マンションのエレベーターが2009年改正の建築基準法に対応している製品かどうかを確認します

もう1つのチェックは、2009年に改正された建築基準法に適合したエレベーターであるかどうかです。エレベーターに関する法律は定期的に変わっていますが、大きな変更は2009年改正の「地震時管制装置の設置義務付け」と「戸開走行保護装置の設置義務付け」の2つです。

「地震時管制装置」はエレベーターが地震を感知すると、近い階で停まり、人がエレベーター内に閉じ込められる危険を減らす装置です。

「戸開走行保護装置」とはエレベーターのドアが開いたままの状態ではエレベーターが動かないという設定がされている装置のことです。これにより、ドアに人が挟まれたままエレベーターが動き、ケガをするという事故を防ぐことができます。あまりありそうにないと思われるかもしれませんが、2006年や2012年にはエレベーターに挟まれて死亡するという事件も起きています

2009年10月以降に着工したマンションであれば、これら2つの機能を備えたエレベーターになっていると思われますが、それ以前に着工されたマンションでは、これらの機能がないエレベーターが普通に使われています。

これは今の法律では認められませんが、当時の基準を満たしているので、既存不適格という扱いでそのまま使用することが認められています。ただし、エレベーターの死亡事故なども出ているため、今後エレベーターの規制が厳しくなる可能性もあります。中古マンションであっても、新しい基準のエレベーターの設置が義務付けられると、その際にはマンション居住者に金銭的な負担がかかることもあります。

既にこれらの機能があるエレベーターについては次のマークが入っています。

地震時最寄階停止マーク

2009年以降の新しいマンションではこういった安全機能が付いたエレベーターが設置されています。

 

戸開き走行防止マーク

いくつかの死亡事故を受け、この機能を入れることが義務付けられました。

このマークを表示するような指導が入ったのが2012年8月からですので、このマークはあまり普及していません。2009年以前のマンションではこれら2つの装置は義務ではありませんでしたので、中古マンションではこれらの機能がないエレベーターの方が多くなっています。

ですので、絶対にマーク入りの安全基準が高いエレベーターがあるマンションを選びましょうとは言えません。ですが、古いエレベーターでは安全性が少し劣ることと、将来機能を取り込むことになった場合には費用が掛かることは覚えておいて欲しいと思います。

少し細かな話になりますが、2009年の改定では、他にも脱レール防止対策や制御盤の転倒対策などが盛り込まれ、より地震に対して強いエレベータになっています。エレベータの安全性という事を考えますと、この2009年以降の方が安全性は高いものだと考えて良いと思います。

古いエレベータ利用時に地震が起きた場合の対処策も知っておきましょう

余談になりますが、古いエレベータ(2009年以前の設計)に乗っている最中に地震が起きた時の対処策も知っておきましょう。基本は動いているエレベータを止める事です。

エレベータは動いている時よりも止まっている時の方が原則として安全です。ですので強い地震があった時、あるいはスマホ等に緊急地震警報が届いたときは、最寄りの階のボタンを押して、エレベータを止める方が、より安心です。動いている途中でどの階にいるか分からない時は、すべての階のボタンを押すという方法もあります。日常的にこのような事をしますと周りの方に対して迷惑ですが、地震警報が出た時などは、迷わずに停める方が安心です。

新しいエレベータではこれが自動で行われますが、古いタイプの場合は手動で行う必要があるという事になります。

非常用エレベータは非常時でも使わないようにしましょう

これも余談ですが、高層マンション等では非常用エレベータというものがあります。非常用と言うからには非常時に使えるエレベータであると思われそうですが、実は地震等の非常時であってもこのエレベータを使う事はお勧めしません。

この「非常用」とは火災時などに消防士が率先して利用できるエレベータという意味ですので、これを災害時、緊急時に使いますと、消火や救助活動の妨げになる事もあります。原則として災害時には階段を使うと考えておくべきだと思います。

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