人の体感温度は、温度、湿度、通風の3つで決まるという話を聞いたことはないでしょうか。この3つのバランスが悪いと快適な家にはなりません。

風通しについては、どの人も風通しが良い家が良い、と言いますが、風通しの対策が正しく取られている家はそう多くありません。逆に風通しを良くしようと設計してみたものの、その結果他の面でマイナス点が出てくるケースもあります。このページではそういった風通しのプラスマイナスを考えたいと思います。

風鈴

通風を良くする手法によってはデメリットが出ることもあります

風通しが良い家にするには、風が通る窓が2か所以上開いているということが前提となります。当たり前ですが、入り口と出口の両方があって初めて風が流れます。

窓を1か所開けただけでも風は入ってきますが、家の中に風を通したいと思えば、どの部分を風が通るかを考えて、風の入り口と出口を考えなければなりません。しかしこの基本的な内容を守るだけでも、メリットとデメリットがあります。

見映えと風通しのバランスをどう取るかは難しいところです

風の通り道を作るのは風通しを良くする基本です。しかし風通しが効率的に行われる場所に窓を設置できるかといえば、必ずしもできるとは限りません。家のレイアウトを考えた場合、窓を取り付けられる位置は限られます。

また、通風のみ考えて窓を設置すると窓の取付位置はばらばらになってしまいます。その結果、外から見た外観は窓の場所がバラバラであまり見た目が良くない家になってしまう危険があります。

連窓イメージ

横につながった窓だけを開けても、部屋全体の風通しは良くなりません。

建築家が設計する家で連窓というのを見たことは無いでしょうか。窓が2つや3つ並んで取り付けられているものです。

見た目に美しいためこの連窓を好む建築家も多いのですが、横に並んでいる窓を両方開けても風通しは良くなりません。部屋の反対側の窓が開いていないと、その部屋の中を風が流れないからです。これは別に連窓が悪い訳ではありませんが、窓を含めた外観デザインと風通しの両立は意外と難しいものです。

高低差がある窓があると温度差で風通しが良くなります

また風の入り口と出口は、高低差があるとより通りやすくなります。空気も水平方向だけでなく、立体的に空気の入れ替えができるというメリットもあります。ただ、ここにもデメリットが付いてきます。

高低差のある窓で空気の入れ替えを考えた場合、効果的なのは天窓です。壁にある窓よりもより多くの換気が期待できます。

しかし天窓を作るということは屋根に穴を空けることでもあります。以前雨漏りのページでも解説しましたが、天窓は少しでも施工精度が悪いと雨漏りする場所です。全ての天窓が雨漏りする訳ではありませんが、通常の住宅よりも雨漏りのリスクは高くなります。

天窓の参考例

天窓は風通しという点では効果が高いのですが、雨漏りのリスクは大きなものがあります。

またハイサイドライトと呼ばれる壁の高い位置に取り付ける窓の設置も、高低差がある窓を作るという点で有効です。ハイサイドライトは、人の視線を防ぎながら日の光を入れることもできる窓でもありますので、こちらも人気があります。

しかしこのハイサイドライトにもデメリットがあります。まず窓の開け閉めですが簡単でないものが多くあります。手動で開け閉めするタイプで手が届かない場所にあるハイサイドライトですと、窓を開けるのが大変面倒な作業です。このタイプの窓は実際の生活上ではほとんど窓を開けることがない、と以前天窓メーカーの方から話を聞いたことがあります。

家を建てる際にはイメージで窓を作りますが、利便性が悪いと実生活ではほとんど使わないというのが実情のようです。設計上は風通しが良い家であっても実生活上では使えないというのでは意味がありません。しかし結果的にはハイサイドライトが通風として意味が無かった家は結構な率であります

高い位置に取り付けられた窓

高い位置に取り付けられた窓でリモコンなどによる開閉機能が無い場合には、ほとんど開けられることが無いそうです。

またハイサイドライトのように壁の1番上にあるような窓は防水処理も難しいため雨漏りのリスクは高くなります。構造的に考えても、窓は壁の真ん中にあるよりは端にある方が耐震性は弱くなります

わずかであっても垂れ下がりの壁は耐震力を発揮します(計算上ではカウントされませんが、多くの設計者や大工さんが有効であると考えています)。この風通しやデザイン上のメリットと、防水や耐震上のデメリットのバランスをどう考えるかは難しいところです。ただこのメリットとデメリットを知った上で選ぶのであれば問題ありませんが、知らずに決めるケースも多いと思われますので注意したいところです。

部屋の隅に窓がある方が風通しは良いのですが構造と防水という面ではマイナスです

水平面で考えると部屋の真ん中に窓があると、部屋の隅の部分の空気が入れ替えしにくいというデメリットがあります。しかし部屋の角に窓があると風通しと言う点ではメリットですが、防水と構造の面ではデメリットとなります。

出隅が窓になっている家の例

家の角に窓があると通風と採光には優れますが、耐震性と防水性は劣るリスクがあります。

建物の出隅や入隅は地震の際に大きな力がかかります。この部分を柱だけで支えるのと柱と壁がセットで支えるのでは大きな違いがあります。もちろん壁とセットの方が地震に対する力は強くなります。

防水性についても、家の角にある窓の周りは雨漏りしやすいと言われます。通常の窓廻りと比べると防水紙の貼り方などの手順が異なるため、ミスが起きやすい作りになっているのが原因と思われます。

もちろん角にある窓すべてがそうだという訳ではありませんが、リスクが高くなるということを知っておいてください。

既存住宅では部材の交換で対応できる風通し対策もあります

ここまでは、建物の設計時に注意したい風通し対策について考えてきましたが、中古住宅を購入した場合は、窓の位置の変更を簡単に行うことはできません。しかし既にある窓や雨戸を変更する事でできる風通し対策もあります。

リクシルの可変ルーバー雨戸

可変ルーバー雨戸などに交換することで、日差しや風通しを調整しやすくなります。
出典:LIXIL

例えば雨戸です。夏に直射日光を入れたくはないけれども風通しは確保したい場合などにはこの可変ルーバー雨戸などは重宝します。雨戸を閉めて網戸とセットで使えば、人の視線や日光などをコントロールしながら風だけを取り入れることが可能です。

外付けのルーバーは省エネ対策としても効果的ですし、ローテクの割には効果が高い製品ですので、取り換え金額で納得がいくのであれば検討したいところです。

内倒しの窓の例

内倒しの窓も風通しに貢献します。

こちらは内倒しの窓です。少しだけ開く窓は使ってみないとその効果を感じにくいのですが、換気や風通しという面から見ると結構優れものです。

小雨程度であれば雨が入りませんので、梅雨時にも風通しが欲しい時に開けておくことができます。上記の写真の窓はドレーキップというタイプの窓で、内倒しと内開きの両方ができる窓ですので、窓全体を開けることも可能です。

家づくりはどこまでいってもバランスが大事です

今回は風通しという切り口ですが、少しマニアックな内容のお話をしました。このサイトではどのページでもバランスが重要であるとお話ししています。

このページでもお話ししましたが、風通しを良くするというちょっとした話でもメリットやデメリットがあります。家づくり、住まい探しでメリットのみというものはありません。どの物件、どの考えにもメリットとデメリットがあります。そのバランスを考えつつ、皆さんには家さがし、不動産探しを楽しんでもらえればと思います。

次のページはこちら 「4-02-06.日光を家の中に入れるかどうかで快適性が大きく変わります」

この記事の話の一部を動画でも説明しました

このページでお話ししました内容を動画でも解説してみました。その動画がこちらです。

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