最近では太陽光発電システムを屋根に載せる戸建住宅がずいぶん増えました。この太陽光発電システムにはメリットもたくさんありますが、デメリットもたくさんあります。
ただ、他のサイトや記事を見ていますと、そのデメリットはイニシャルコストやランニングコストなどのお金の話が中心です。具体的には補助金や電気の買取価格の話などです。
しかしデメリットは経済的な問題以外にもたくさんあります。このページではコスト以外で太陽光発電について注意しなければならない内容についてお話しします。
太陽光発電のサイトでは、システム本体の話しか出てきません
太陽光発電システムについての記事は、ほとんどがシステムそのものについてのメリットやデメリットの話になっています。しかし太陽光発電システムは、それ単体で動かすものではありません。人が住む建物の一部として使うものです。
ですので建物との関係、住んでいる人との関係で太陽光発電システムの善し悪しを考えなければなりません。なぜかそのことについて記載されているサイトが少ないので、このサイトで注意点を促したいと思います。
太陽光発電のパネルの重量により建物構造に影響を与えます
住宅性能評価の等級が2つ分変わることだってあり得ます
太陽光パネルは製品によって重さが異なりますが、1平米あたり12~16Kgあたりが多いのではないでしょうか。
戸建住宅の屋根は材料によっても重さは異なりますが、瓦屋根であれば、1平米あたり40~50Kgくらい、軽いと言われている人工スレート材で1平米あたり25Kgくらいだと思います。
それと比較すると太陽光パネルは重くないので、屋根への影響はない、と主張する方が多くいます。しかし本当にそうでしょうか。
上の図は、戸建住宅に必要な構造壁の長さを示したものです。等級と書かれているのは、住宅性能評価の等級で1は建築基準法のレベル、2や3はそれよりもレベルが高く、等級3であれば等級1と比べ1.5倍の地震にも耐えられるという計算になっています。
構造壁の長さは屋根が重いか軽いかによって必要量が違うものとされています。そして瓦屋根は重い屋根、人工スレートは軽い屋根に分類されます。
もし、1階の構造壁が55cm(床面積1平米当たり)相当あれば、軽い屋根であれば住宅性能評価の等級3、つまり最高レベルの等級が取れます。しかし、もし重い屋根であれば等級2の58cmにも足りませんので、等級1のレベルとなります。
さて、先程の太陽光パネルの重量をもう1度見てください。スレート屋根の2階建て戸建住宅で1平米あたり25Kgの屋根を持ち、1階の構造壁が55cm相当であれば等級は3です。でも1平米あたり16Kgの太陽光パネルが全面に載っていれば、25+16ですから41Kgとなり、思い屋根と同じ重さになります。
そうなると等級は1です。実際に等級を取得する際に、基準ギリギリの数値で等級を取る会社も多いので、このケースはそこそこあります。
もちろん単純に計算できるものではありませんが、等級だけで比較見れば屋根にパネルがあるかないかで1.5倍も構造強さが違うこともある訳です。これで影響があまり無い、というのは乱暴な意見だと思います。
もし軽い屋根を使う前提で構造が考えられ、構造壁を29cm相当しか取っていない建物に、後から太陽光パネルを設置した場合には当然問題になります。構造壁は4cmほど足りません。
※この構造壁○cmとはすべて床面積1平米あたりの構造壁の長さのことです。床面積が仮に100平米で地震係数が29であれば、構造壁は2,900cm、つまり29m分必要となります。
さらに問題なのはパネルは均等に屋根に載るとは限らないことです
さらに問題なのは、このパネルは屋根全面に均等に重さがかかるように載る訳ではないことです。片流れの屋根であれば、均等にパネルを屋根に載せることも可能かもしれませんが、寄棟や切妻の屋根であれば、屋根の片側に重さが偏ることになります。
そして太陽光パネルの重さが偏る方向は南側です。太陽光発電の効率を良くするために日の当たる南側にパネルを載せるからです。そして南側は建物内に日光を多く入れたいがために、開口部も多く、広く取ります。結果として構造壁の量も他の面と比べて南側は少ないことになります。
つまりただでさえ弱い壁面部分である南側の上部に重量のあるパネルが載ることで、重量バランスが悪い建物になることがあるということです。
これが設計当初からパネルを載せる前提で構造を考えてあれば問題ないかもしれません。しかし、設計段階で考えられていなかったり、リフォームなどで後からパネルを設置する場合には、この重量バランスが考えられているとは思えません。
特に建築基準法の最低レベルで建てられている建物であれば、後からパネルを載せることで基準法で定めた耐震性を発揮できない建物になる可能性が大いにあります。
しかし太陽光パネルを設置するリフォーム会社で耐震性を考える会社はあまりありませんし、そもそも知らないケースが多くあります。ですので、安易に太陽光発電パネルを載せれば良いと考えてはいけません。
施工によっては屋根の防水レベルを低くします
また、屋根に太陽光パネルを設置する訳ですが、施工が甘いと雨漏りしやすい建物となります。
10年くらい前の設置ではまだ慣れていない業者が多かったため、雨漏りのトラブルも多かったと聞きます。
最近では施工マニュアルが整備され、以前よりも雨漏りする確率は減っていると思いますが、だからと言って手放しで安心はできません。それはその防水工事がどのように行われているかによるです。
既存の屋根にパネルを設置する場合には、当然屋根に穴を空けなければなりません。そしてその穴の周りはシーリング材などで水が入らないようにします。
しかしこのシーリング材は何十年も持つものではありません。その材料にもよりますが、10年位で寿命となり劣化するものも多くあります。その時には劣化したシーリング材の周りから雨水などが入ってくる可能性が結構あります。
太陽光パネルが普及し始めて10年近く経過しますので、今後雨漏りする建物が増えてくるのではないかと私は恐れています。太陽光パネルを設置する場合には、防水処理などをどのようにするのかも確認した方が良いと思います。
機種によっては光反射が激しく訴えられます
また、事例は少ないと思いますが、太陽光パネルによる光の反射によって迷惑を受けたとして裁判になった例もあります。この裁判では一審ではまぶしいと訴えた方が勝ち、二審では設置した会社が勝つなど、法律でこのように確定した、という状況にまでまだなっていません。
もっともこの事例を受けて、最近では光の反射が少なく、まぶしくないパネルも出てきている様ですので今後は問題になりにくいかもしれませんが、こういった可能性もあるということは知っておいた方が良いでしょう。
電磁波や音の問題があるかもしれません
さらに、この問題もはっきりとしていませんが、住む人の健康に問題が出ないとも限らないということです。可能性として考えられるのは電磁波の問題と音の問題です。
電磁波については、パワーコンディショナーから磁場が発生しているため、住んでいる人の健康に影響を与える可能性がゼロではありません。
しかしこの磁場はそれほど強いものではなく、3m以上離れていれば、問題ないと言われている3mG(ミリガウス)を下回る磁場しか計測できないと聞いています(低周波の磁場についてです。高周波の電磁波が出ているという意見もあります)。もっとも機種によっては発生する磁場も異なるかもしれません。
私自身いくつかのパワーコンディショナーの近くで磁場を計測したことがありますが、強い磁場を計測したことは今のところありません。
パワーコンディショナー自体から強い磁場が出ていないとしても、それを繋ぐ電線などが建物内のどの場所を通るかによって、強い電場や磁場を発生する場所ができる可能性もあります。寝室やリビングなど長時間滞在する部屋の近くにはそういった電線は通さないように注意した方が良いと思います。
また音の問題も無いとは言えません。音と言っても聞こえる音だけでなく、低周波音、高周波音といった聞こえない音のことです。音自体は聞こえなくても、人の健康を損ねる可能性が指摘されています。
そしてパワーコンディショナーでは高周波音を発生していることがあり、人によっては不快に感じることもあります。これはパワーコンディショナーを作っているメーカーのカタログ内にも書かれています(参考例「京セラのパワーコンディショナーのページ」)。
住む人や周辺の人の体質などにもよります
このような注意点をいくつか挙げてきましたが、問題があるかもしれないというレベルの話ですので、これで太陽光パネルは絶対にダメという話ではありません。しかし建物によっては、あるいは人によっては太陽光パネルの設置が問題になる可能性は大いにあります。
そして導入時にはメリットばかり言われ、このようなトラブルの可能性について話す人があまりいません。導入を勧める人も、このような問題について知らない人も多くいます。
実際に太陽光発電を入れる方は、自分の体質やアレルギーなども確認した上で導入を決めて欲しいと思います。
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このページの内容の一部を動画にしてみました
このページの内容の一部分を動画でも解説してみました。その動画がこちらです。
また、太陽光パネルの重さに関する話は、別の動画でも解説しています。その動画はこちらです。
よろしければ、動画もご覧ください。
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