新聞を取っていると毎日大量のチラシが挟まれています。その中には不動産関連のチラシも数多く入っています。私も仕事柄不動産のチラシには目を通すようにしていますが、見たいポイントが小さく書かれているため、大変読みにくいと感じることもあります。

これは一般の方と不動産のプロとでは見るポイントが違うせいもありますが、本当に重要な見るべき部分は一般の方でもプロでも同じ部分です。このページでは新築マンションのチラシで、どの部分を特に注意して見たらよいかについて、お話しします。

新築マンションのチラシの表面にはあまり見るところはありません

チラシの表面の見かた例

新築マンションのチラシの表面はイメージ的なものが多く、重要なチェック部分はあまりありません。

新築マンションのチラシは、中古物件や戸建の分譲のチラシと異なり、紙のサイズが大きく、写真が数多く掲載されているケースが多いと思います。私が住んでいる千葉エリアでは、新築マンションのチラシはB3サイズが多いのではないでしょうか。

しかしチラシのサイズが大きいからと言って、情報量が多いとは限りません。チラシの表面は写真が多くイメージ優先で作られていることが多いため、重要な情報があまり載っていません

また新築マンションは建物完成前に営業することが多いため、チラシには完成した実際の建物や室内が載っていないことがよくあります。ですので写真も完成予想図をCGで作成したものや、実際の街の写真と合成して作ったものがよくあります。

またチラシによってはマンションとは全く関係が無い外国のイメージ写真を掲載しているものもまれにあります。こういったチラシのつくり方が悪いという話ではありませんが、写真類はあくまでもイメージなので、実際の建物とは違うということは予め理解しておきましょう。

またチラシの表面にはキャッチコピーやマンションのメリットが大きく書かれていることもあります。しかしキャッチコピーは単なるイメージであることも多いですし、メリットも詳しく見てみないと、本当にそれが売りポイントなのかどうかは分かりません。掲載されている価格も、売られている住戸の中の最低価格であることも多いため、その価格だけでは判断できることがあまりありません。

結局チラシの表面でチェックするのは、このような新築マンションが○○駅の近くで売りに出されている、という情報を押さえるくらいだと思います。もちろん写真などを見て気分を盛り上げるには問題ありません。

新築マンションのチラシ裏面でも重要な部分は小さく表示されています

チラシウラ面の見かた例1

チラシの裏面で重要な部分は間取りと物件概要の部分です

新築マンションのチラシは表面よりも裏面の方が重要です。最も重要な情報である物件概要のページや間取り図などが載っているからです。

間取り図は部屋のレイアウトも重要ですが、面積や寸法などが入っていると実際の物件をイメージしやすくなります。間取り図は設計図や竣工図ではありませんので、本当に重要な情報が入っていないこともあるのですが、大まかな部屋のイメージをつかむには役に立ちます。

住宅ローンの返済プランも参考にしない方が良いと思われます

チラシウラ面の見かた例1

チラシには住宅ローンの返済例が載せられていることがよくありますが、あまり参考にしない方が良いと思われます。

新築マンションのチラシでは、月々の支払例が掲載されているケースも多いと思います。ただこの支払例はあまりあてになりません。チラシにもよりますが、掲載例の支払いは変動金利の一番安い金利で計算し、借入期間も最長と思われる35年で計算されていることが多いからです。

40歳で借り入れする人が75歳まで返済というプランを組むのは現実的ではありません。また、このプランで書かれている0.725%という金利が35年続くとも思えませんので、この意味でも現実的ではありません。

またローン返済金額の結果は、売られている住戸の中で安い金額設定をしている住戸で計算されることが多いので、本来欲しい住戸の支払金額とは合わないこともよくあります。

変動金利は市況によって金利が、つまりはローンの返済額が変わりますので、チラシに掲載された支払いがずっと続くとは限りません。また住宅ローンの設定によっては、最初の2年のみ安く、3年目以降は高いという住宅ローンもあります。

物件価格が分かればローンは自分で計算できますし、また自分で計算すべきです。返済期間や金利などの設定が少しでも変わると支払金額は大きく変わります。チラシのローン支払い例は本来自分が組むローンの支払額と比べても金額が低くなっている例が多いので、参考にしない方が良いと思います。

変動金利のリスクについては
「2-02-03.住宅ローンは固定金利と変動金利のどちらを選ぶのが正解でしょうか」をご参照ください。また、自分がいくらのローン支払いであれば大丈夫かについては
「2-02-09.結局いくらの不動産を購入することができますか?」のページと
「2-02-01.住宅ローンはいくら借入ができるかと実際に払えるかを考えましょう」のページを参考にしてください。

1番重要な物件概要で押さえておくべきポイントがいくつかあります

さて最も重要な情報である物件概要は本当に小さな字で書かれていますので、読むのが大変です。購入前にはもちろん分譲会社などに行って、もっと詳しい情報を集めなければならないのですが、チラシでも分かる部分があり、その時点で購入対象ではないと分かった場合には、わざわざ分譲会社を訪問する必要もありません。

そういった基本的な内容を物件概要の欄でチェックした上で、詳しい話を聞きに行くかどうかを決めてください。また、チラシからその物件で何を注意しなければならないかが分かることもありますので、注意して物件概要を読み込むようにしましょう。

ちなみに新築マンションの広告チラシには掲載しなければならない項目は決まっています。記載事項については「不動産公正取引協議会連合会の別表6」を参照してください。

所有権か借地権かは確実にチェックしておきましょう

分譲後の権利形態

時々所有権ではなく借地権のマンションもあります

最近のマンションではあまり見かけませんが、マンションの権利が所有権ではなく、借地権のマンションもあります。借地権のマンションがダメという話ではありませんが、最初から所有権のマンションを探しているのであれば、権利形態が違うマンションは購入対象外となるでしょう。

さすがに新築の借地権のマンションであれば、もっと大きくどこかに書かれていると思いますが、一応権利関係は最初に見ておきましょう。チラシによっては、これらの権利形態について書かれていないこともあります。

ただ借地権のマンションである場合には必ずその旨記載しなければならないというルールがありますので、「借地」の表現がなければ、通常の所有権であるはずです。チラシに借地の表記がないのに、実際にモデルルームなどで話を聞くと借地権だった場合は、その分譲会社に問題があると思われます。

マンションの構造も確認しておきましょう

マンションの構造

ほとんどのマンションは鉄筋コンクリート造ですが、鉄骨造や一部鉄骨造といったマンションもあります。

物件概要ではマンションの構造も確認しておきましょう。ほとんどのマンションは鉄筋コンクリート造ですが、鉄骨造のマンションもあります。また、高層マンションでは低層部分が鉄筋コンクリートで上層階が鉄骨というマンションもあります。

鉄骨造の場合は、防音性に劣るタイプのマンションが時々ありますので、マンションの防音性能がどのくらいなのかを普段以上に注意して、現地や図面を見るようにしなければなりません。

全住戸数と販売戸数、そして住戸のタイプを確認しましょう

全戸数と販売戸数

意外と戸数とタイプの状況は分かりにくくなっています。

意外とチェックし忘れなのが、マンションの全戸数と販売戸数です。管理人室などを除くマンションの専有部分の全てが販売対象で、かつ1度の販売で全ての住戸を販売対象とするのであれば、全住戸と販売戸数は同じ戸数となります。

注意しなければならないのは、全戸数と販売戸数が大きく異なる場合です。この場合は単にマンションの規模が大きいので、販売する時期を分けているだけなのか、あるいは販売しない住戸がマンション内にあるのかが判断できません。これがなぜ重要な要素なのかと言えば、同じマンション内に販売されない住戸がある場合、マンションの性格が少し変わる可能性があるからです。

例えば購入するマンションのタイプがファミリータイプであっても、分譲しないワンルームの住戸が複数ある場合は、家族連れと1人暮らしの人が混ざることになります。またワンルームマンションは事務所として使われるケースも多いため、居住者以外の人の出入りが多くなる可能性もあります。

物件概要爛に掲載されるマンションの間取りタイプは、その時に販売される住戸のみです。賃貸などに回され販売しない住戸の間取りは掲載されません。また販売される分でも、販売する時期が異なり、チラシを出したタイミングで販売されていない住戸がある場合にも、そのタイプの住戸の情報は載りません。

ですので、全住戸と販売する住戸の数が違う場合には、マンションの全ての住戸について、どのようなタイプがあるのかを別途確認する必要が出てきます。

私見では、違うタイプの住戸が混ざるマンションはあまりお勧めしません。住戸タイプが異なると生活スタイルも違うことが多いため、トラブルが起きやすいと思われるからです。

駅からの距離も概算に過ぎないことを理解しておきましょう

歩くイメージ

マンションのチラシに書かれている徒歩分数の表示は目安に過ぎないことを理解しておきましょう

また、物件概要欄には最寄りの駅からの徒歩分数表示などが書かれています。しかしこの徒歩分数は目安です。不動産物件情報の徒歩分数は80mを1分として(自動車の場合は400mを1分として計算します)余りが出た分は繰り上げて時間表記をしています。普通の人の歩く速度はもう少し遅いことが多いですし、坂道や交差点などがあると、さらに時間がかかります。

また、歩道橋などがあって時間がかかる場合も計算されません。駅までの距離といっても、駅の改札を出て階段を下りたあたりからの距離表示ですし、地下鉄であれば物件から1番近い地上出入り口からの距離で計算されます。

ですので、実際には物件概要に記載されている時間よりも多くの時間がかかると考えておきましょう。「4-01-01.通勤経路や通勤電車についての調べ方を知りましょう」のページも参考にしてください。

修繕積立金の単価も見ておきましょう

修繕積立金

修繕積立金の平米単価も見ておきたいところです

また、修繕積立金の額も見ておきたいところです。修繕積立金は専有面積に応じて金額設定をしていることが多いため、積立金の金額に幅があったとしても、修繕積立金額の最低金額を販売される住戸の最低面積で割れば、単価は計算できます。

上の概要書ですと、5,360円からとなっていますが、販売タイプの住戸の最低面積は65.3平米でしたので、平米単価は82円となります。ちなみにこの82円という単価はかなり安めの設定です。

国交省のガイドラインでは修繕積立金は平米あたり200円近くを推奨していますので、かなり安く設定していることが分かります(「2-05-05.マンションの経済性を考えるために修繕積立金について理解しましょう」参照)。

新築時に修繕積立金を安く設定している場合、当初は支払いが安く済むでしょうが、いざ実際に修繕が必要となった時にはお金が足りず、追加で修繕金を支払わなければならないという危険があります。そのため将来大きなお金が出る可能性があることを覚悟しなければなりません。修繕積立金を安く設定しているマンションを購入しようと考えた場合には、長期修繕計画の有無と内容もセットで確認することをお勧めします。

駐車場の方式についても見ておきましょう

駐車場の台数と使用料金

機械式駐車場の比率が多いのであれば、将来更新時に大きな費用がかかる可能性が高くなります。

修繕積立金と同様に気を付けたいのは駐車場の方式です。上の表記のマンションですと駐車場の大半が機械式駐車場です。機械式駐車場は更新時、つまり取り換え時に大きな金額がかかるために、早い段階から駐車場更新のための費用を準備しておくことが望まれます。

国交省の計算によると、機械式駐車場1台あたり月に7,000円近い金額を貯めておくことが望ましいとしています。しかし上記のマンションでは駐車場使用料が最大でも3,500円となっているため、駐車場更新の費用が貯まるとは思えません。そうなると将来大きな費用を出さなければならない可能性があります。

モデルルームなどで設計図書を確認する前提でチラシを見ます

新築マンションのチラシだけでは確認できることは限られます。実際にはモデルルームや販売事務所などで、設計図書などを見て判断しなければならないことが多くなります。

設計図書閲覧場所

なぜか設計図書確認場所が分譲会社名になっていることがあります。

しかしなぜか設計図書閲覧場所として、分譲会社の会社名が書かれていることもあります。この記載の意味が正確には私には分からないのですが、設計図書がモデルルームなどで確認できないとなると問題です。販売事務所やモデルルームでは必ず設計図書を確認しなければなりません。チラシやパンフレットでは情報が少な過ぎるからです。

ましてや新築マンションは建物自体が建っていないことが多いため、実際の建物を見て判断することもできません。チラシに載っている情報はマンション購入時に必要な情報のほんの一部です。

チラシはあくまでも物件を実際に見に行く前の参考に見るものですので、現地や販売事務所では必ず設計図書を見て判断するようにしましょう。自分で図面を見ることができない場合には、インスペクションサービスを受けるという方法もあります。

次のページはこちら 「3-02.戸建住宅や戸建て用の土地販売のチラシの見かたをマスターしましょう」

このページの話を動画でも説明してみました

このページで説明した内容を動画でもまとめてみました。その動画がこちらです。

よろしければ、動画もご覧ください。

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