エコ設備についても、何がエコなのかを判断することは簡単ではありませんでした。同様にエコ建材も何をもってエコだと考えるのかは結構難しいものがあります。ある切り口ではエコであっても、違う観点から見るとエコではない、ということが良くあるからです。
最初に申し上げますが、これがエコ建材である、という結論はこのページにはありません。結論を求めている方には役に立たないページです。ただ、エコ建材にはどういった要素があるのか、何がエコなのかを考えるヒントを提供できればと思い、このページを作りました。
エコ建材のエコ要素は4つあります
エコ建材には色々な切り口があるのですが、一般的にエコだと言われている建材を見ると、次の要素が含まれていると思います。そのエコ要素とは
1.製造時にエネルギーを多く使わない
2.廃棄・処分する時に環境を壊さない
3.持続可能な材料である
4.リサイクル、リユースなどで作られている
という4要素です。
1.や2.は一般的な自然素材が概ね当てはまります。例えば木材は製造に人工的なエネルギーをあまり使いません。また廃棄時には燃やすことができ、かつ燃やしても有害な物質を出しません。
3.の持続可能は少し分かり難い概念です。これは木材であっても、当てはまる例と当てはまらない例があります。南洋材の自然林から伐採した木材を使うと、その後自然林が回復するかどうかが分かりませんので持続可能とは言えませんが、人工林で計画的に植樹されている場合は、数十年後に再度使えるようになりますので、こちらは持続可能ということになります。
ただ、何が持続可能なのかの判断は難しく、現実的には持続可能で無いものを持続可能と言っている例もあるため、この判断は簡単ではありません。
4.のリサイクル製品はもともと別のものを、建材として使い直すものです。こちらは定義は簡単ですが、だからといってエコとは限りません。リサイクル時に多くのエネルギーを使うと、1.の基準に反することになり、総合的にエコになるかどうかの判断が難しくなります。
また逆に、リサイクル可能であるものもエコ建材に入れられることがあります。ただ理論的にリサイクルが可能ということと、実際にリサイクルされているかという事は別です。そのため実際にはリサイクルされていないものでも、可能というだけでエコ建材として紹介されている製品もあります。
製造時に大きなエネルギーを使わない方がエコであるのは確かですが…
その材料を作る時に、大きなエネルギーを掛けなくて済む建材は確かにエコであると言えます。単にエネルギーを使わないというだけでなく、製造過程で環境汚染物質を出さないこともこの中に含まれるでしょう。
しかし、製造時にどのくらいエネルギーが必要だったかの判断は簡単ではありません。と言いますか、一般の方が判断するのはほぼ無理です。
例えば同じ木材であっても、自然乾燥の場合と人工乾燥の場合では、製造時にかかるエネルギーが大きく異なります。エネルギー計算では自然乾燥材は1立米あたり725MJ(メガジュール)のエネルギーが必要なのに対し、人工乾燥材では3,136MJと4倍以上のエネルギーが必要だったりします。
また木材の産地によっても輸送にかかるエネルギー量は大きく異なります。ウッドマイレージと言う木材の輸送距離による計算値を使うと、建設地から150km圏内の木材を使う場合と、欧州材を使う場合では発生するCO2の量が13倍以上も違うという計算結果もあります。
木材は建材の中でもっともエコである部類に入るのですが、その木材ですらどのくらいエコであるのかを簡単には判断できないのです。製造時にかかるエネルギーが少ないと主張しているメーカーもたくさんありますが、そのメーカーであっても正確に計算することは難しいと思われます。
そして残念なことに、こういったことをきちんと考えるメーカーは少なく、営業上有利だという理由で、エコ建材だと言っているだけの建材もそれなりにあったりします。
自然の形に近いものや、産地が近いものの方がエコである可能性が高くなるのですが、それも目安程度でしかなく、正確な判断はほとんどの人はできないと考えた方が良さそうです。
廃棄時には燃やせたり土に返せるものがエコなのも間違いないですが…
廃棄時に環境に悪い影響を与えないというのもエコであることには間違いありません。ですがこの判断も実は簡単ではありません。
今回も木材を例にとって考えてみましょう。木材は基本的には燃やしても害が無いものですし、放置しておいても腐ることで土に返せるものです。ですが、それは木材に何も手を入れていないケーです。
実際には木材には色々な処理が施されています。今では使われていませんが、かつて木材にはCCA処理というものが行われることがありました。このCCAとは銅、クロム、ヒ素の頭文字をとったもので、こういった薬品などを使い木材が簡単に腐朽しないような処理が行われていた訳です。
このCCA処理は人の健康に悪影響を与える恐れもあるため、現在では使われておりません。ですがこの処理をされた木材を使った建物はまだまだ多く残っています。この木材は燃やしてもヒ素などが昇華して周辺環境を悪くする危険がありますし、埋めても周辺の土壌や水質を悪くする危険があります。
これは木材でも極端な例ですが、今でも簡単に廃棄できないものはたくさんあります。例えば保護塗料が塗られている木材は塗料の種類によっては燃やしたことで問題がある物質が出るかもしれません。フローリングなどでは、表面に特殊加工をしているがために、簡単に廃棄できないかもしれません。
また振動や騒音を防ぐためにゴムを貼り付けているフローリングなどは、廃棄時に分離することは技術的には可能であっても、経済的に採算が取れないため、単に燃やすという事もできないことがあります。
材料単体を見て、土に返せます、ということであっても、実際にはうまく返せないものもたくさんあります。エコである部分が多い木材であっても、廃棄は簡単ではないのです。
また簡単に廃棄できるものであっても、耐久性が無いものであれば定期的に交換などが必要になります。これも本当にエコなのかは、よく分かりません。先程のCCA処理は、木材が長く使えるように土台などに行われた処理です。これは廃棄時には問題が出るのでエコとは言い難いのですが、長く使える、という点ではエコという要素もあります。何がエコなのかは本当に一口では言えないものだと改めて考えさせられます。
リサイクル品で作られれば本当にエコでしょうか?
リサイクル品を多く使って作られた建材もエコ建材と呼ばれます。しかしこれも本当にエコなのかはよく分かりません。リサイクルされるために多大なエネルギーを使っていることが良くあるからです。
例えば廃材となった木材と、捨てられるプラスチックを使って複合木材を作ったとしましょう。見た目が木材風で耐水性もありますので、ウッドデッキなどによく使われています。
ただこれが本当にエコなのかはよく分かりません。使用する木材はプラスチックは分別して集めるのにもエネルギーが必要です。さらに元の材料を破壊し粉砕するのもエネルギーが必要です。さらに木材とプラスチックを混ぜ、固めるのにもエネルギーが必要ですし、固める際にどのような処理が行われているのかもよく分かりません。
そして、本物の木材が入っていて、見た目も木材に見えたとしても、その製品そのものは本当の木材ではありません。もちろんこういった商品の必要性は認めているのですが、これがエコなのかと聞かれるとどうなのかと思います。
エコ製品はどうしても自然に近いもの、というイメージが先にありますから、リサイクル品については偏見を持っているのかもしれません。ただ、これらのリサイクル品は結構無理をして作っている感が強く、本当に環境に良いものなのかどうかは良く分かりません。そもそもこれらの品はウッドデッキで使う必要があるのか、アルミパネルなどの方が良いのではないか、と感じてしまいます。
エコであることと人の健康に悪影響を与えないかということは別の話です
ここまでエコ建材についてお話ししてきました。そしてこのエコであるという話の中に、住む人の健康に良いか悪いかという話は入れていません。基本的に環境に良いという話と人の体に良いという話は別問題だと思うからです。ただこのあたりもあいまいになっているせいか、エコであることがそのまま人にも良いと勘違いされることがあります。
自然素材のページでもお話ししましたが、自然素材がそのまま住む人の健康に良いとは限りません(「5-01.自然素材を使えばエコ住宅になる訳ではありません」参照)。また設備もエコであることと住む人の健康に良いかどうかは別の問題です(「5-04.発電や給湯器系のエコ設備も本当にエコなのかが微妙です」参照)。同様にエコ建材もそれを使えば住む人の体に良いかどうかは別の問題と考えるべきです。
もちろんエコ建材の中にも、人の健康に良さそうなものや、快適に感じるものもたくさんあります。一方で、エコ建材の中には本来求めている機能が劣るものや、逆に人の体に良くないものもあります。
環境に良いから人にも良いと考えがちですが、基本的に別物で、各々について考えるようにした方が、建材の選択で間違える率を減らせると思います。
ではいったい何がエコ建材なのでしょうか?
こういったお話をしていますと、では何がエコ建材なのか、と思われることでしょう。私個人の意見では、単体でエコと呼べる建材はない、という考えです。エコであるかどうかは、建物のプランや造り、設備と材料の組み合わせで決まると思っています。ですので、材料単体でエコが決まるという考えを持っていません。
建物のプランで言えば、例えば小さな家を作るというのはそれだけでもエコに貢献します。使うべき材料が少なくて済みますし、光熱費などのエネルギーも少なくなるからです。自然素材をふんだんに使った大豪邸と、普通の造りの小さな家とどちらがエコなのかは簡単に判断できません。
材料も化学系の素材であっても、それが長期間その建物の機能に貢献するのであれば、エコとなることもあります。例えば化学系の断熱材であっても、それが長期間にわたり建物の断熱性能を維持できるのであれば、こちらも光熱費を安く、つまりは使用エネルギーを低くすることができます。
エコには色々な切り口がありますので、これを行えばすぐにエコになるというものはありません。材料も材料単体ではなく、その組み合わせや状況によっても、エコの要素が出たり、逆にエコに反する予想が出たりします。
では結局建材は何をどう選んだら良いのか、という質問については、機能を中心に選んでくださいと私はお答えします。機能と言うのは、構造的な強さであったり、人の健康に悪い影響を与えない建材であったり、断熱性や室内環境の維持に効果を発揮する建材だったりと、実際に住むのに必要な機能のことです。その機能を満たした上で、他の条件が同じであれば、あとは自分なりに考えるエコを追求するのが良いと思います。
ただ、これらの機能中心で考えていくと、意外とエコな建物に行きつくことが良くあります。人の健康や心地よさを追求していくと、エコの部分と重なることも多いからです。ですがこれはその人の価値観にもよりますので、絶対ではありません。
エコについては簡単に結論は出せません
ここまで書いておきながらですが、このページははっきりとした結論を出せていません。なんとなくこういった問題がある、こういった状況にある、という事をつらつらと述べたページでしかありません。
ただ、これがエコ建材である、とメーカーなどが主張している製品について、そのまま鵜呑みにすることなく、あなたなりにエコについて考えて頂きたく、こんなページを作ってみました。
エコについては色々と意見があるかと思います。当社:ふくろう不動産では皆さまから色々な意見を募集しています。ご意見やご質問は「お問い合わせフォーム」をご利用の上、ご連絡ください。ご連絡されたからといって、当社からしつこい営業を行うことはありませんので、ご安心ください。