エコ住宅には、地元の材料を使った建物、という考え方もあります。これは地産地消という考え方とも相通ずるものがあり、エコの考え方の1つでもあります。

この考え自体は素晴らしいと思うのですが、一方で強引な理屈で地元の建材が良い、性能が良い、とこじつけて主張されている面もあるように感じます。

他の条件が同じであれば、極力地元の材料を使うというのは良い事だと思いますが、本来要求されるべき機能を落としたり、経済的に大きな負担になるにも関わらず、無理して地元の材料を使うというのは本末転倒ではないと思っています。

このページでは、地元の建材を使う事の是非について、考えてみたいと思います。

地元の木なので環境に合っていて強いという話に根拠を感じません

地元の木材のイメージ

地元の木材を使えばエコと言えるほど簡単なものではありません。

地元の材料を使えばエコ、という話で1番よく聞くのは木材だと思います。地元の木は、その地方に合っているので強い、という主張です。

地元であれば同じ環境なので、と言われますが、住宅街と木を育てている山や森の中ではそもそも環境が大きく異なります。また、建材として使われる場合の環境と、木として成長する場合に必要な環境に同じ環境が求められるはずはありません

木として成長するためには、多くの水分が必要ですが、建材としての木材は雨に濡らさらないように使わなければなりません。

また木が成長するためには太陽の光を多く浴びて光合成を行わなければなりませんが、建材としての木材には日が当たらないようにしないと、劣化が早くなってしまいます。

地元の木材を使う方が強い家ができます、と主張される方も多くいらっしゃいますが、具体的な根拠を私は見たことがありません。地元産の木材の方が強度が強いというデータはありませんし、耐久性があるという統計的なデータも無いからです。

地元の木の方が腐りにくいと主張される場合もありますが、これもきちんとしたデータは見たことがありません。腐りやすいかどうかは木の産地よりも、樹種や施工内容に左右される部分の方が圧倒的に大きいと思います。

地元の木材の集成材と他地方のムク材のどちらがエコなのかを考えましょう

さらに集成材であっても地元の木材の方が良い、という主張もあります。集成材とは、太くない木材を接着剤で張り合わせて、大きな断面の木材としたものです。

地元の方が何よりも良いという理屈で、他の地方のムク材よりも、地元の集成材の方がエコだという主張に対しては、本当にエコなのか、と疑問に思うことがあります。

このあたりはうまく説明できないのですが、接着剤で張り合わせた状態の木材を、地元の同じ環境だから、と主張するのは無理があるのではないかと思います。

ムクと集成材

左はクリのムク材、右はゴムの集成材です。

集成材自体は否定されるような材料ではありません。径の細い木材であっても有効に使えますし、木材を乾燥させやすいため、計算上の強度も強くなるケースが多くなるはずです。ですが、集成材の方が耐久性があるかどうか、と聞かれれば、まだはっきりとしたことは分かっていません。これは恐らくですが、耐久性についてはムク材の方が高いのではないかと私は考えています。

現在の研究では集成材で使われる接着剤は耐久性が高く、集成材であっても木材と同等の耐久性があると言われています。ですが、研究上の結果と実際の現場では状況が異なります。現在の接着技術で作られた建築物の件数や年数が満たないため、本当のところどうなのかは、完全な結論が出ていません。

結論が出ていないものの善し悪しを判断することは難しいのですが、これらの状況を考えた上で、どちらがエコなのか、どちらの性能が良いのかと考えた上で、選ぶべきものだと思っています。

経済的な話とエコとは分けて考えましょう

経済のイメージ

地域経済の話とエコの話は分けて考えましょう。

また、木材に限らず地元の材料を使う場合、あるいは国産の材料を使う場合には、地元の経済に貢献し、という言葉が出てきます。本来はエコの話だったはずですが、なぜか経済の話が混じっていることがあります。

地元の経済発展に貢献するのは良い事だと思います。しかしエコの話や住む人の健康、そして建物の耐久性の話を中心に考えるべき話の中に経済の話を、それも家を建てる人の経済性ではなく、エリアの経済の話を混ぜるのは問題だと思います。

少なくとも、エコの話とは切り離して主張されるべき内容だと思います。

輸送距離が少ないのでエコと言える面は間違いなくあります

タンカー

輸送距離が短い方がエコだという考えは正しいと思います。

一般的に地元の材料を使うことがエコになるというのは、材料の輸送距離が短いと、その分運送にかかるエネルギーを減らすことができるからです。そういった意味で、地元の材料を使うのはエコだという要素は確かにあります。

もっともそれがコストにも反映されているかと言われれば、必ずしもそうなっていません。これには色々な事情があるのですが、外材はそれ自体の価格が安い事や、外国から日本に持ってくる輸送コストがそれほど高くないために、輸送距離が長い外材であっても、コスト的にはトクすることが多いからです。

これは聞いた話ですので正しいかどうかは分かりませんが、海外から日本の港に持ってくるコストと、その港から現場に運ぶ日本国内での輸送コストでは国内の輸送の方が費用がかかるという話を聞いたことがあります。

これは木材に限らず、いくつかの輸入建材を取り扱う方からも聞いたことがある話ですので、ある程度は正しいのかもしれません。

では安ければ何でも良いのか、と言われればそうでも無い点がありますので、こちらもバランスを考えながら決めなければならないと思います。

日本国内の人工林を守る効果は確かにあると思われます

人工林のイメージ

人工林は手を入れないと環境が悪化すると言われています。

またエコという点では、日本の木材を使うことで、日本の森を守るという面もあるようです。これは日本の木材が売れることで、日本の人工林に手を入れることができ、結果として森を守ることができるというものです。

人工林は、間伐や枝打ちなど、定期的な手入れをしていかないと維持できないという性質を持っています。この人工林に人の手が入ら無い場合には枯れ木なども増え、森の表層土などが流れやすくなり、土砂災害が起きやすいと言われています。

また森が枯れていくことで、川の水の栄養も少なくなり、周辺の海の環境にも悪い影響を与える恐れもあると聞いています。

私は環境の知識がそれほど深い訳ではありませんので確実な話ではありませんが、森が荒廃すると一定以上の確率で環境に悪い影響を与えてしまうようです。

こういった現状を考えると、できる範囲で経済的に許される範囲で、国産材を使うという選択があって良いと思っています。

ただ、国産材を使うという事に過度の評価を与えたり、根拠が無い話で人を誘導することを止めて欲しいと思っています。

私自身はできる範囲で国産材を使い、一部は外材という選択肢にしました

私自身は10年以上前に家を建てたのですが、当時エコについて考えた結果、できる範囲内で国産材を使い、国産材の使用が難しい部分については外材でも可、という事にしました。

床はカラマツ

床は国産のカラマツを使いました。使われることが多い階段前は、かなりすり減っていますが、味があって良いと思っています。

具体的には、土台は国産のヒノキ、柱は国産のヒノキとスギ、床は国産のカラマツ、建具はできる範囲でスギ使用、梁は外材のダグラスファー、ウッドデッキは外材のレッドシダーです。大半はムク材で、集成材は極力少なくしたいと考えました。

障子の桟にはスギ

障子の桟は一般的にはスプルースですが、敢えて国産の杉を使ってもらいました。

梁はダグラスファー

なるべく国産材を使いたかったのですが、梁は良い材料を見つけられなかったため、外材のダグラスファーを使いました。

洗面台のカウンターと壁には国産ヒバの集成材を、また子供室の仕切り壁はJパネルと呼ばれる国産のスギの集成材を使っています。

脱衣室にはヒバ集成材

脱衣室や浴室の壁の一部、手洗い場のカウンターはヒバの集成材です。

Jパネル

リフォーム時に作った壁はJパネルと呼ばれる国産材を使った3層パネル材を使いました。見た目はスギのムク風ですが、ムク材ではありません。

もちろんこれが正解ということではありません。自分で予算と性能とエコのバランスを考えて、このような結果になっています。

建物を建てて10年以上経過し、良い点悪い点がようやく少しずつ分かってきました。自分なりに考えて決めた結果ですので、特に後悔はしていませんし、それなりにはエコ住宅ではないかと今でも思っています。

エコは1人1人が考えることが重要です

本当に何をもってエコ住宅とするのかを考えるのは難しい事です。ただ、エコという意識を持っていることは大事なことだと思います。

私個人の意見では、できる範囲で地元の建材を使う方がよりエコであろうと思っています。一方で地元材料が耐久性などで優れているとはあまり思っていません

様々なメーカーや建設会社がエコという表現で商品の宣伝などを行っていますが、何がエコなのかを、あなた自身がもう1度考え、単なる宣伝文句に騙されないようにして頂きたいと思っています。

この記事の内容の一部を動画でも説明してみました

このページでお話ししました内容の一部を動画でも解説しています。その動画がこちらです。

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ふくろう不動産では住む人の健康はもちろんエコについても興味を持っています

当社:ふくろう不動産は、住む人の健康に留意して物件の提案を行っている会社です。住む人の健康に悪い影響を与えないように、土地や建物の検査を徹底して行うような体制を取っています。

それと並行して、エコについても留意した土地・建物提案を行っています。何度も申し上げますように、エコについては考え方によって、何がエコなのかが大きく異なります。ですので、色々な切り口でのエコについてお話しし、最終的にはあなたご自身でできるエコは何かを考えて頂き、住まい選びをして頂くようお話をしています。

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