戸建住宅を建てる際に最初に思い浮かべるのはハウスメーカーという人も多いと思います。人によっては戸建住宅のほとんどをハウスメーカーが建てていると思っている人もいるようです。

ハウスメーカーやビルダー、工務店の区別や定義がはっきりとしていないのですが、いわゆるハウスメーカーの住宅シェアは3割くらいではないかと思います。一般的には全国展開していて住宅展示場などにモデルハウスを出している会社をイメージしてもらえれば良いでしょう。

ハウスメーカーもその会社によって特徴が大きく異なり、一概には言えないのですが、ハウスメーカーも得意としているジャンルと不得意なジャンルがあります。このページではざっくりとハウスメーカーに住宅建設を依頼する際のメリットとデメリットについてお話ししたいと思います。

最初にウィキペディアでハウスメーカーを検索してみました

最初にハウスメーカーの定義の確認も兼ねて、ウィキペディアでハウスメーカーと検索してみました(2015年5月1日)。解説を一通り読んでみて驚いたのはメリットとデメリットの欄です。

辞書のイメージ

最初にWIKIでハウスメーカーについて調べてみました。

メリットとして書かれていたのは1つだけ、それもプレハブ工法などに限定で工期が早いという部分のみです。プレハブ工法、ユニット工法以外ではメリットが無いということなのでしょうか。

逆にデメリットとして書かれている内容には
・費用が高い
・ローコスト住宅の場合は数十年しか持たない
・施工後の対応に不安
・施工品質が地域によって違う
などと書かれています。

私の気のせいかもしれませんが、このウィキペディアによるハウスメーカーの説明にはちょっと悪意を感じます。特に数十年しか持たないという説明の部分です。説明によると「長く持つと建て替えサイクルが長くなるため、あえて腐りやすい基礎部分に腐りやすい木を使うなどの手法を意図的に使う場合が多い」と書かれています。

ローコスト住宅ではコスト削減のために、安い木材を使うことはありますが、建て替えサイクルを早めるために意図的に腐りやすい木を使うという事はさすがにありえないと思います。

住宅や不動産については色々な意見が飛び交い、中には間違っている情報も多数流れています。なるべく色々な立場の人から話を聞いたり、資料を確認したりして、情報が正しいかどうかを判断しなければならないということを改めて思い知らされました。

ハウスメーカーでは営業マンの能力差が大きく出ます

役に立つ営業マンをうまく使うことで、ハウスメーカーならではメリットが引き出せます

営業マンのイメージ

ハウスメーカーの営業マンはうまく使える人であれば、良いアドバイザーになる可能性があります。

ではハウスメーカーを使う事のメリットはどのようなものがあるでしょうか。私は営業マンの存在だと思います。ただこれは、役に立つ営業マンがいた場合に限ります。能力が高い営業マンが付いた場合には、その営業マンがとても良いアドバイザーとなることがあります。特に建物の性能以外のことについては、この営業マンがとても役に立ちます。

建物の性能以外という変な言い方ですが、住宅を建てる際には色々な事を行わなければなりません。住宅ローンも含めた資金計画のこと、登記や法律の話、契約から引き渡して引っ越しに至るまでの様々な雑事について、相談や手配をしてくれる営業マンの存在は大変ありがたいものです。

また、建物の間取り、内装や設備についても決めなければならないことが本当にたくさんあります。使える営業マンであれば、この辺りの調整がうまく、余計な手間や作業を大きく省くことができます。

人によっては、営業マンが家を建てる訳ではないので、住宅を営業マンで決めるのは間違いだ、と主張される方もいます。確かに営業マンが実際に家を建てる訳ではありません。しかし不動産取引では直接建物に係らない作業もたくさんあり、それを営業マンがフォローしてくれると取引がスムーズに動きます。

また住宅は内装や設備などの選択肢がとても多いのですが、それを正しく建物を建てる人たちに伝えてくれるのも営業マンの力量に大きく左右されます。

例えば能力が高い営業マンであれば、内装の素材や間取りによって室内の見え方が変わることを良く知っています。また外壁の選び方や屋根の形と窓の位置によって、外観がどう見えるかも詳しく把握しています。

こういった人のアドバイスを受けられるのと受けられないのでは、できあがる家が大きく異なります。営業マンは実際に家を建てる訳ではありませんが、全く関与しないという訳でもないのです。

一方で能力が高くない営業マンもたくさんいます

ダメ営業マンのイメージ

残念ながらダメな営業マンの方も数多くいます。

もっともここまでお話ししたような能力がない営業マンもたくさんいます。誤解を恐れずに言えば、ハウスメーカーの営業マンの半分以上は、ここまで話したレベルを満たせません

それは
・とにかく売れさえすれば後はどうでも良いと考えるタイプの営業マンがいる
・建物や不動産についての知識が明らかに足りない
・入れ替わりが激しい業界の為、経験が足りない
などといった理由から、言い方は悪いのですが役に立たない営業マンがたくさんいます

対応が悪い営業マンはそもそも論外ですが、それ以上に問題なのは知識が足りない営業マンが結構多いことです。住宅のプロなんだから住宅に詳しいはず、と皆さんはお考えかもしれませんがそうとは限りません。営業マンで多いのは自社の商品知識は詳しいけれども、他社と比べてどうかという知識がほとんどない方もたくさんいます。

知識が不足している営業マンが多いのは自分が所属する会社からセールストークの一環として、他社よりも自社が優れているという点を教わるだけで、自分で検証していない方が多いせいだと思われます。

これはハウスメーカーの教育姿勢にもよりますが、結構間違った内容を教えている会社もあります。時には意図的に会社が営業マンに間違った情報を与えているのではないかと思うこともあります。

この辺りについては「3-02-04.自社の構造が一番良いと主張する人には注意しましょう」にも書きましたので、こちらのページもご参照ください。

勉強のイメージ

営業マンの良しあしを判断するには自分で勉強するしかありません。

充分な知識がある営業マンであるかどうかを判断するには、建物を発注する皆さん自身が建物に詳しくなるしか判断方法は無いと思います。

営業マンの人柄やまじめな人であるかどうかは、見たり話したりすることで判断できることもあるでしょう。ですが、営業マンが建物や不動産について詳しいかどうかは、皆さんご自身が詳しくないと、相手が詳しいかどうかが判断できません

営業マンの問題は人柄の問題もありますが、知識があるかないかという点も大きな問題となります。知識が無い営業マンが付いたせいで、家づくりがうまくいかないケースは多々あります。

このような失敗を避けるためには自分自身が建物や不動産に詳しくなり、営業マンの知識レベルを判断できる能力が必要です。建物について、すべてのジャンルに詳しくなる必要はありません。一部でも詳しくなり、その詳しくなった内容について、質問するだけでも相手の営業マンの知識レベルが多少は判断できます。

また、他のハウスメーカーの営業マンにも話を聞き、各々のハウスメーカーのメリットデメリットを聞くという勉強方法もあります。あるハウスメーカーのメリットは他のハウスメーカーのデメリットであることが多いからです。

タイプが違うハウスメーカー3社から話を聞くだけでも勉強になることが結構ありますし、可能であれば工務店と建築設計事務所の人とも話をした方が、より幅広い知識が身に付きます。色々と試しながら、話を聞きながら勉強することをお勧めします。

ハウスメーカーの建物性能や価格は高いでしょうか

さて、営業マン以外についてのハウスメーカーの特徴はどうでしょうか。ここからはハウスメーカーの建物自体についてお話しします。

ハウスメーカーの建物は高いでしょうか

これはハウスメーカーによっても異なりますが、一般的にはハウスメーカーの建物は工務店などの建物と比べて金額が高くなります。工務店などと比較して、広告宣伝費や営業経費が高くなるため、その分建物価格が高くならざるを得ないという仕組みになっているからです。

会社によって率は異なると思いますが、ハウスメーカーが実際に工事に掛ける費用は、住宅の代金の60%前後だと思われます。残りは広告宣伝費、住宅展示場の建物の建設費用や維持費用、営業マンの人件費などの経費に取られます。

建材や設備などは大量発注により仕入れコストを低く抑えることができますが、全体の中で見ればわずかな部分ですので、一般的にはハウスメーカーの建物は高いと考える方が良いと思います。

高価なイメージ

ハウスメーカーの建物は価格が高いようです。

代表的なハウスメーカーの価格については、ハウスメーカー評論家の椎名前太さんがご自分のブログで定期的に公開されています。そちらも良ければ参考に見てください。
2014年上半期大手ハウスメーカー平均坪単価ランキング

一方規格住宅であれば、ハウスメーカーでも価格が安いという話を聞きます。ただ一般的なハウスメーカーの規格住宅のプランや中身と価格を見る限り、規格住宅であっても性能を考えれば安いとは感じません。同じプランや同じ性能であれば、おそらく工務店の方が安く建てることができると思います。

設計の自由度が低いと言われますがどうでしょうか

自由度のイメージ

言われるほど設計の自由度が低いとは思えません。

また、ハウスメーカーの建物は元々規格住宅を中心に考えられているため、設計の自由度が低いと言われます。ただ実際のところ、それほど自由度に大きな難があるとは私には思えません

狭小住宅や変形敷地のような土地形状で無い限り、そして特別変わった間取りやデザインの建物を望まない限り、日常的に使う分には十分な設計ではないかと思っています。

そもそもハウスメーカーのプランは一般の方が日常的に住宅を使う分には問題が無いように作られています。これで使い勝手に問題があるのであれば、それは皆さんの生活スタイルが少し変わった生活スタイルである可能性が高く(もちろんそれが悪い訳ではありません)、その場合には建築家に住宅を依頼するのが良いのではないかと思います。

ハウスメーカーの建物は品質が高いでしょうか

品質のイメージ

平均すれば良いでしょうが、特別品質が高いとも思えません。

ハウスメーカーは工場で部材などを作ることが多いため、建物の品質が高いと主張される方も多くいます。ここで言う品質とは欠陥の有無のことだとお考えください。

確かにハウスメーカーの方が工場で作られる部材が多いとは思いますが、それでも現場で行われる工事は多くあります。そして会社にもよりますが、ハウスメーカーは1人の現場監督が複数の現場を受け持つため、その建物の監理が充分できないこともあります。

実際に建物の工事はハウスメーカーと提携している工務店が行うのですが、この工務店にはレベルのばらつきがあるため、必ずしも品質が高いとは言い切れません。

私見ではきちんとした工務店と比べると、むしろ品質は劣るのではないかと思っています。一方できちんとしていない工務店も数多くありますので、平均して見れば、工務店と比べると品質は高いという言い方もできます。

ハウスメーカーの建物は性能が高いでしょうか

品質とは別の意味で、建物の性能がハウスメーカーは高いと主張される方もいます。価格は高くてもそれに見合った、あるいはそれ以上の性能があるという見方をする方もいます。実際に長期優良住宅の建物は工務店よりもハウスメーカーの方が率が高いと思います。

ただこれも、レベルの低い工務店が一定数いるためにこのような結果になりますが、レベルの高い工務店と比較すると、ハウスメーカーの建物性能がさほど高いとは思えません。ただこれも品質と同様に、きちんとしていない建物も多いため、平均して見れば性能は高い方に入ると思います。

建築中の建物

建物性能については平均的には高いと思われますが、特別に高いとも思えません。

またハウスメーカーは住宅性能表示の等級で高いレベルの等級を取っていることが多いと思いますが、この等級はギリギリで取れるレベルの設定をしていることがあります。

それはコストとの兼ね合いで、性能表示で高い等級レベルを取りたいですが、コストはかけたくないというバランスから、ギリギリの線で等級レベルを満たす設計が行われます。そのため、少し条件が異なると、ランクが下がるという事があります。

例えば耐震等級で最高等級の3を取っていたとしても、屋根に太陽光発電パネルなどを設置すると、最低レベルの等級1まで落ちたりします。

耐震等級3はギリギリのレベルで取得しているため、屋根の重さの評価が変わると、その等級レベルの基準を満たさなくなるからです。最近では太陽光発電の普及に伴い状況は変わっていると思いますが、少し条件が変わると基準を満たさないということはよくあります。住宅性能表示の等級は同じ等級だからと言って、性能が同じとは限らないという事も理解しておきましょう。

ハウスメーカーの建物はデザイン性が高いでしょうか

そのデザインを良いと感じるか悪いと感じるかは人によって異なります。また工務店やハウスメーカーによって、デザイン力が大きく異なりますので、一概にこうだと言い切ることはできません。

建物外観

建物の外観については、ハウスメーカーは総じてレベルが高いと思います。

ただ、それでも強引にデザイン性について述べれば、ハウスメーカーのデザイン力は高いと私は思っています。特に外観については、大半のハウスメーカーは高いレベルにあると思っています。

建築家が設計する建物のような芸術性からは離れているものの、パッと見た高級感や素材感の出し方はとても良く考えられていると思います。こう言うと悪く聞こえるかもしれませんが、ハウスメーカーは一般受けする外観のつくり方では建築家以上の部分があるのではないでしょうか。

もっともこれは好みの部分が大きいと思います。気に入った外観のハウスメーカーがあるのであれば、皆さんはご自分の好みで決めて良いと思います。

ハウスメーカーは住宅設備が優れているでしょうか

住宅設備のイメージ

最先端の住宅設備の導入は早い方ですが…

ハウスメーカーの建物は価格は高いが設備が充実しているとも言われています。実際に最近のハウスメーカーの建物では、太陽光発電システム、エコキュートかエネファーム、家庭用蓄電池やHEMSなどの最新設備を充実させているハウスメーカーもあります。こういった最新設備の普及という点ではハウスメーカーは確かに優れているかもしれません。

ただ、最新設備については、私には別の懸念点があります。具体的には低周波音の問題、電磁波の問題です。エコキュートやエネファームは最近になってようやく低周波音の問題が大きいことが知れ渡ってきました(問題自体は当初からありました)。

新しい住宅設備などが住んでいる人や近隣の人の健康にどのような影響を与えるかは、一定の時間が経ってみないとはっきりとは分かりません。住まいの中の電磁波も年々大きくなってきており、今後どのような影響が出るかは誰にも分かりません。

住宅設備の先進性という点ではハウスメーカーは進んでいると思いますが、手放しで推奨できるかどうかといえば、お勧めできない設備も多くあります。低周波音についての問題は「低周波音の問題が少しずつ分かってきました」のページを、「電磁波については「2-02-01.日本の住まいは世界トップレベルで電磁波が強く出ています」をご参照ください。

低周波音については「NPO法人STOP!低周波音被害」のサイトも参考になります。

ハウスメーカーの建物はリフォームしやすいでしょうか

住宅チェック

ハウスメーカーの建物は構造に手を入れにくいという問題があります。

これは少し先の話になりますが、ハウスメーカーの建物をリフォームする際の話も知っておいた方が良いと思います。リフォームと言っても普通に内装や水周りなどの設備を交換する分には一般の建物と特に変わりはありません。問題になる可能性があるのは構造について手を入れる場合です。

ハウスメーカーの建物はメーカーによっては特殊なつくり方をしているので、構造に影響を与えそうなリフォームは簡単ではありません。そのハウスメーカーの指定の工務店でなければリフォームができない、あるいは構造上の保証ができないというケースもあります。

そして指定の工務店のリフォームはそれなりに高額だったりします。将来大きく建物を変える可能性があるのであれば、特殊な工法を使っているハウスメーカーの建物を建てるには注意が必要となります。

最終的にハウスメーカーの建物はトクでしょうか

このページではハウスメーカーの建物について色々とお話ししてきました。では最終的にハウスメーカーの建物は良いのか、トクなのかと聞かれれば、頼む人の価値観によります、としかお答えできません。

私個人はどうかと聞かれれば、価格と性能のバランスを考るとハウスメーカーの建物は割高なので、ハウスメーカーには頼まないと思います。

デザインをあまり重視しなければ工務店に、デザイン上好みを追求するのであれば、建築家に依頼する方が、私は満足する建物が得られると思っています。

迷うイメージ

最終的には建てる人の好みに影響されます。

しかし、最終的にどの会社に建築依頼をするかは本当にその人の好みによります。そのハウスメーカーのデザインが好きな人、そのブランドが好きな人、営業マンの対応が気に入った人であれば、ハウスメーカーを選ぶという選択肢ももちろんあります。

大事なことは、自分が住まい何を求めていて、どの会社がその求めているものを満たしてくれるかをしっかりと考えることだと思います。そのためには色々なものを見て、多くの人と話をして、本やサイトなどを見て勉強して、本当に自分が気に入る住まいを見つけて欲しいものだと思います。

このページの内容を動画でも解説してみました

このページの話の一部を動画でも解説しました。その動画がこちらです。

また、ハウスメーカーと工務店との比較という切り口でも動画を作ってみました。その動画がこちらです。

よろしければ、動画もご確認ください。

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