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日本の戸建住宅は木造が中心で、時々鉄骨造(S造)はあるものの、コンクリート住宅の数はあまり多くありません。ですが、条件さえ許せば、戸建て住宅であってもコンクリート住宅は優れた点が多いものであると私は考えています。

その一方で、世間一般で言われているコンクリート住宅のメリットやデメリットについては、その意見は違うのではないか、と思わされる事が結構あります。

そこでこのページでは、世間一般で言われているRC造、コンクリート住宅のデメリットに対して、それは正しいのかどうか、意見を述べたいと思います。

マウスの実験からデメリットを語る人はあまり信用できません

1番良く聞くRC造のデメリットは、コンクリートの家は住む人の健康に良くないという主張です。その参考例として挙げられるものの中に、マウスの実験があります。この実験では、マウスを木の箱、金属製の箱、コンクリートの箱の中に入れ、それらのマウスの生存率を調べたものです。

マウスのイメージ

コンクリートの箱で育ったマウスの生存率が低いという実験がありました。

この調査によりますと、木の箱、金属製の箱、コンクリートの箱ではマウスの23日間の生存率が違うとされており、
木の箱 85.1%
金属製の箱 41.0%
コンクリートの箱 6.9%
と、木の箱の生存率が高い事に比べ、コンクリートの箱の生存率が著しく低い数値となったため、この結果からコンクリート住宅は人の健康に悪い、と主張される方がたくさんいます。

しかし、この実験の元データである静岡大学の論文を読んでみますと、「動物の体と材質との接触面での熱損失の差が動物の熱代謝に大きな影響を及ぼしたものと思われる」と書かれており、素材そのものの問題と言うよりは、熱の問題、つまりは動物の体が冷えたために、生存率が悪くなったという説明になっています。

こういった実験結果がある、と聞いた時には、その話が本当かどうか確認するには、元データを確認するのが簡単で確実な方法です。今回の実験データは「生物学的評価方法による各種材質の居住性に関する研究(出典:Agriknowledge)」 で実際の論文を見る事ができます。

ちなみにこの実験とは別に、同じ静岡大学で、箱の床の素材を代えた場合にどうなるかの実験も行われています。この実験結果は北海道立総合研究機構の森林研究本部が発行しています「林産試だより1988年11月号」で読むことが出来ます。タイトルは「マウスを用いた床材性能評価の試み」です。

この実験結果によりますと、箱自体はコンクリートの箱ですが、床材に合板、塗装合板、クッションフロアを入れたものと、何も入れないコンクリートの箱、木製の箱の計5種類の箱でマウスの生存率を調べています。この結果では、むき出しのコンクリートの箱では生存率は低いものの、他の箱は生存率に大きな差は出ていません。

コンクリ打ちっぱなし

コンクリートむき出しではなく、内装がある状態であれば、木製の箱との生存率は大きな差がありません。

コンクリート住宅といっても、コンクリートむき出しの床となっている住宅は少ない事から、こちらの方が実例に近いデータだと考えて良いと思います。

正確に言えば、それでも木の箱の生存率が1番高いのですが、問題視できる程の大きな差とは思えませんし、更には同記事の中で「今回の結果はあくまでマウスの生理的、心理的反応結果であり、人間の健康に及ぼす影響を必ずしも説明するものではありません」と明記されています。

この「コンクリート住宅は人の体に悪い説」は、木造住宅系の建設会社やハウスメーカーの営業マンが好んで使っている話です。その方々は、この実験の詳細を知らないのか、あるいは知っていても敢えて黙っているのか、私には分かりません。

私見では、このコンクリート住宅に住むと健康に悪いとか寿命が短くなるという人を、私はあまり信用していません。こういった実験内容は少し調べれば分かる事です。それを敢えて誤解させるように説明するのは、悪意があるか勉強不足かのどちらかで、どちらのタイプであってもあまり信用できないという事に変わりはありません。

論文や記事についてはリンクを貼っておきましたので、興味がある方は、元データをご確認ください。

また、この話に対する批判記事として、個人の方が書かれたREPOROGの記事がとてもよくできていると思いました。タイトルは「「鉄骨住宅は身体に悪い」と言われた方に知ってほしい真実」です。こちらの記事を併せて読むことで、この話の理解が深まると思います。

カビが生えやすいという主張は俗説で間違いだと思っています

コンクリート住宅は健康に悪いと主張される方の意見で、カビが生えやすく、シックハウス症候群を起こし易い、というものもあります。その理由として、コンクリートは乾燥するまでに何年もかかり、その間中水蒸気を発散させるため、住戸内の湿度が高くなり、カビが生えやすくなるとしています。

これについては、科学的な根拠と思われるような論文などはありません。コンクリートが完全に乾燥するまで長い時間がかかるのは確かですが、実のところ室内の湿度が問題になる位高くなるかは疑問です。普通に考えればそれほど影響が出るとは思えないからです。

カビのイメージ

私見ではカビが多いというのは俗説です。

最近の建物であれば24時間換気システムが標準で入っており、計算上では2時間で室内の空気が入れ替わります。仮にコンクリートから水蒸気が出ていたとしても、外の空気と入れ替わる訳ですから、問題が出るほど湿度が高くなるとは思い難いです。

一方でRC造の建物に住んでいる方の中で、いや室内が湿気っぽいと主張される方は一定数いらっしゃいます。ただそれはコンクリートの水分せいではなく、断熱設計がうまくいかず結露してしまったとか、換気システムがうまく稼働していない等の別の問題によって起きているものと予想されます。

結露しやすいとすれば構造のせいではなく断熱施工か設計の問題です

先の話とつながりますが、RC造は結露しやすいと主張される方もいます。しかしこれは、コンクリートのの問題ではなく、断熱設計の問題です。戸建住宅のRC造ですとコンクリート打ちっぱなしのようなデザイン性の高い住宅を作られる方も多いのですが、この場合の断熱性はかなり低いため、結露しやすいという問題が出てきます。

こういった住宅であれば確かに結露しやすいのですが、きちんと断熱について考えている設計であれば、断熱性を木造住宅よりも高くできるケースも多く、その場合にはむしろ結露し難い住宅になります。

結露

結露しているのは窓であって、コンクリートでは無いのではありませんか?

コンクリート住宅は戸建てでは件数が少なく、かつその少ない件数の中ではデザイン住宅と呼ばれるような、断熱性よりもデザイン性を重視している住宅の比率もそこそこ高いため、このような話がRC造一般の話として普及したのではないかという気もします。

マンションではRC造が中心で、昔のマンションであれば、断熱が適当で結露していたという例も多かったと思いますが、今のマンションで断熱設計がきちんと行われているものであれば、簡単に結露するとは思えませんし、実際に新しいマンションではあまり結露の話を聞きません。

更に言えば、結露していると言っても、結露している場所が窓周りであるケースも多いように感じます。それはコンクリートのせいではなく、窓の断熱性能の問題です。エリアによる差はあるとは思いますが、ペアガラス以上でサッシの枠が断熱対策が施されたものであれば、今の製品ではめったに結露しません。

逆に言えば、木造の戸建住宅でも、窓が昔ながらのシングルガラスのアルミサッシであれば、冬場には結露します。しかし、昔の木造住宅は家自体の断熱性が低く、室温も高く上がらなかったために結果として結露し難かったという事はあったかもしれません。

どちらにしても、結露をコンクリートのせいにするという考えは、建築をあまり知らない人の意見ではないかと思います。

コンクリートから放射線が出るという意見がありますが、数値ではあまり語られません

他にも時々聞く意見として、コンクリートからは放射線が出るので健康に悪いという話があります。コンクリートからはラドンが発生しますので、木造と比べれば放射線量は多いかもしれません。ただこの点について、数値で語られている話をほとんど見る事ができません。

私は建物検査や電磁波測定等の検査の際に、ガイガーカウンターとシンチレーションカウンターの2つで放射線もチェックしているのですが、実際にRC造の建物で放射線量が高かったという事が1度もありません。理屈を考えますと、木造よりは少しは放射線量が多いのかもしれませんが、検知できない位の差であれば、それ程気にする必要は無いのではないかと思います。

ガイガーカウンター

マンション内でも高い放射線を計測したことがありません。

ラドンとは別に、一時期コンクリートから放射線が出ていたという事件がありました。これは原発事故の近くの砕石場から採った砂利を使用しているために起きた事件のようです。事件はもちろん問題ですが、一方でこの事件をもって、コンクリートが問題であると語るのもおかしな話であると思います。

構造のメリットとデメリットを一言で言うのは無理があります

今回RC造のデメリットという事でよく聞く意見について反論してみましたが、実はこれらの意見は全体の中の一部でしかありません。実際に木造やS造、RC造のメリットやデメリットをお話ししますと、最低でもこの何倍かの量になります。耐震性や断熱性、経済性や快適性、リフォームのし易さ等についてお話ししますと、各々メリットデメリットがあるためです。

複雑

メリットデメリットは一口で言える程簡単なものではありません。

ですので、どの構造が良いか、という質問に対して一言で語るのは無理があります。しかし残念な事にマスコミはもちろん、ブログやネット上の動画でも、簡単に1点だけ取り上げて、こちらが良い、と語られているケースが数多くあります。

もちろんどのような意見を持っているかは発信者の事由ですし、何を語るかも自由ではありますが、これから家を買う、あるいは建てたいという方は、なるべく多くの意見を聞き、皆さんご自身で考えた上で判断してほしいと思います。

今回は木造系の方がよく話すRC造のデメリットについてお話ししましたが、これとは逆にRC造系の人が話す木造系のデメリットという話の中にも、おかしな話がたくさん混ざっています。次回はその点についてお話ししたいと思います。

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