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先週はブログで「世間で言われているRC造(コンクリート住宅)のデメリットに反論してみました」という記事を書きました。これは主に木造住宅の営業系の方がRC住宅を貶めるためよく使わる話に対し、反論を述べたものです。

では一方でコンクリート住宅系の営業の方が、木造住宅の事を正しく話しているかと言えば、こちらも変に間違っている話をするケースが多々あります。

もちろん全てのRC造系の営業の方が適当な話をしている訳ではありませんが、適当な意見に対してはこちらも反論しておきたいと思います。

RC造はシロアリ対策には有効な構造ですが、過剰な木造批判も多いようです

コンクリート系の方が良く使うトークとして、木造住宅はシロアリの被害が多く、大切な資産を失う可能性が高いですよ、というものがあります。コンクリート住宅と比べ、木造住宅はシロアリ被害に遭う可能性が高いのは確かだと思います。しかし、その話の内容が過剰に語られていることも多いように感じます。

シロアリのイメージ

木造住宅はシロアリ被害のリスクがある事は確かですが…。

このシロアリ被害の説明で使われるのが、国土交通省の主導で行われたシロアリ実態調査です。その調査報告書の原文は国土交通省のサイトの「シロアリ被害実態調査報告書」で見る事が出来ます。

この報告書は参考になるデータもたくさんあるのですが、一方で結論が怪しいと思われる話もあり、内容がとこまで正しいのか慎重に読む必要があると思っています。

例えばRC造系の方が使うセールストークの中に「木造住宅はその半分がシロアリの被害に遭う」という話があります。この話の元ネタは前述の「シロアリ被害実態調査報告書」の5.20.で書かれた総括の文章を根拠にしていると思われます。

報告の文面では、地域別蟻害発生率について「防除処理をしていない建物では、被害発生率は地域を問わず 50%以上」となっています。この文面から木造住宅の半分はシロアリにやられる、というセールストークが組み立てられているのでしょう。もっともトークの中では「防除処理をしていない建物では」という部分は意図的に外されているようです。

しかしこの総括の内容に私は不満があります。その不満とは
1.防除処理をしていない建物では、という前提条件の防除処理の内容がよく分からない
2.総括は61Pに記載されているが、その前の詳細説明の中に、この話が全く出てこない
という2つです。

詳細データを見ますと「防蟻処理保証切れ」の区分であるA区分という中でのシロアリ被害は床下で6.2%、外周で2.2%、玄関周りで2.1%、その他で2.3%となっています(小屋裏はデータ数が少ないので除外)。こちらのデータでは恐らく重複があると思われますが、仮に重複が無かったとしても合計で12.8%となっており、半分からは程遠い数値です。

データの集計

このデータの集計方法に恣意性を感じるのは私だけでしょうか?

他の詳細データを見ましても、どういった根拠でこの50%という数値が出てきたのか、全く分かりません。恐らくC区域という過去シロアリ被害があった建物のデータを何らかの形で使っていると思うのですが、元々被害があった建物を母数に多く入れる計算方法が正しいかどうかは疑問です。

この50%という数値が唐突に出てくる点も不審点ですが、そもそもこれらのデータの集め方や結論の出し方に恣意的なものを強く感じます。調査を行った会社がシロアリ駆除業者であるという点から、シロアリ駆除や防除をした方が有利と思われるような結論の誘導が随所に見受けられるからです。

もちろんこれは私の感じ方の話ですので、実際に恣意的な内容かどうかは、皆さんご自身で元データを見た上で決めてもらえればと思います。

どちらにしても、この根拠がはっきりしない50%という数値が独り歩きして、木造住宅はシロアリにやられやすい、という話がセールストークの1つで使われているという気がします。この話を聞いた方は、本当にその話の信憑性が高いのかどうかを確認するために、元データのチェックをされる事をお勧めします。

少し余談になりますが、この「シロアリ被害実態調査報告書」のデータの取り方はかなり怪しいと個人的には思っています。私も仕事柄中古の戸建住宅をたくさん見ていますが、シロアリの発生率は首都圏についてはそれ程高いものだと感じません。これらのデータにあるような10%近い発生率と言うのは、私の経験からは、そんなに高いとは思えないからです。

データの抽出が本当に無作為だったのか、何か他の要素があるのか、詳しくは分かりませんが、私個人の実感としては、実情から大きく離れているように感じます。

RC造の方が環境に良いという意見の根拠は不明です

この主張をされる方はあまり多くありませんが、時々木造は環境に悪いと言われる方がいます。森林破壊につながり自然環境に悪いという考え方です。環境に良いかどうかの判断は簡単ではありませんが、一般的には木造の方が環境に良いと言われています。

森林のイメージ

木材を使う事と森林破壊はイコールではありません。

木材の伐採による森林破壊は、主に広葉樹の伐採であって、木造住宅の構造材として使われる針葉樹では森林破壊につながらない例の方が主流です。国産の針葉樹であれば、人工林で育てられているため、計画的に植林が行われています。むしろ最近では国産の杉があまり使われなくなり、人工林に手を入れられず、山が荒れて却って環境を悪くしているという話もあります。国内の人工林だけに関して言えば、木材を使った方が環境に良いという事になるようです。

海外の木材も針葉樹に関しては同様で、計画的に植林のサイクルが組まれているため、自然破壊にはあまりつながりません。もっとも遠くから木材が運ばれてくるために、その燃料消費等を考えますと環境に悪い部分はありますが、それでもトータルで見てRC造より悪いかどうかは微妙です。

RC造であれば、鉄筋やコンクリートそのものを作る際に大きなエネルギーを必要とします。こういった分を考えますとRC造の方が環境に良いとは簡単には判断できません。

耐久性を考えるとトータルではRC造の方が環境に良いと主張される方もいますが、こちらも正確には分かりません。木造も使い方・作り方によっては高耐久となる場合もありますので、正確に計算できる人は現実にはいないのではないかと私は思っています。

ちなみにエコについての話は「5-02.地元の材料や国産材を使えばエコと決まる訳でもありませんし性能が高いとも限りません」の記事でもお話ししています。よろしければ、こちらの記事もご参照ください。

価格の高い安いは数値で判断するしかありません

一般的にはRC造は木造住宅と比べて価格が高いと言われています。しかし、コンクリート系の方の中には高くないと主張される方もたくさんいます。この高くないという主張の内容は大体次の3つに集約されます。

価格のイメージ

価格については実際の金額を見て判断するという事で良いと思っています。

1.性能から考えれば高くない
2.耐久性があり長く持つため、長期間で考えれば高くない
3.ハウスメーカーの戸建と比べて高くない
という3つです。

1.の性能は主に耐震性について語られる事が多いようです。RC造と木造の耐震性については私も色々と思う事があるのですが、話が長くなりますのでこれは別の機会にお話しします。ただ平均するとRC造の方が構造が強い率は高いと思っていますので、考え方によっては高くないという主張もアリだとは思います。しかしだからと言って、当初のグロス金額が安くなる訳でもありませんので、考え方次第という気もします。

2.の耐久性については少し微妙です。RC造の耐久性の話の根拠として、税法上の償却期間が使われます。国税庁の設定では木造住宅は22年、コンクリート住宅は47年となっています。これをもって、コンクリート住宅は木造住宅の2倍以上の耐久性があると主張される方もいます。

しかし税法上の基準と実際の耐久年数は同じではありませんし、比例している訳でもありません。実際に木造住宅でも22年どころか50年以上の木造住宅で現在も使用しているという建物はたくさんあります。元々の構造がしっかりしている建物で、メンテナンスを適切に行う事で100年持たせることも不可能ではありません(異論がたくさんある事は承知しています)。

実際に長く使われるかどうかは、性能の問題よりもデザインや所有者の愛着の問題である事も多いように感じます。長く持つデザインであれば、構造に関係なく長く使おうという話になり易いため、構造による耐久性、と言うよりも寿命の差は小さいと考えています。

古い家のイメージ

家の寿命は物理的な耐久性ではなく、愛着などで決まっている気がします。

3.のハウスメーカーの木造住宅と比べるとRC造の住宅は高くないという主張については、概ねその通りだと思います。一方でハウスメーカーの木造住宅は一般的な木造住宅と比べますと価格が高いケースがほとんどです。

今の木造住宅は2,000万円台で、ローコストを得意とする工務店であれば1,000万円台から建物を作る事も可能です。これらと比べ、ハウスメーカーの木造住宅は3,000万円以上の建物が多いでしょう。RC造もその位の価格帯からの建物が多いのではないでしょうか?

もちろん建物毎に価格は異なりますので、一概には言えませんが、本来高い価格帯であるハウスメーカーの木造住宅と比べて、木造全般と価格が変わらないと主張するのは無理があると思います。

まあ価格については、建設会社毎に価格は異なりますので、各々で見て、その数値で考えるという事で良いと思います。

コンクリートそのものに断熱性がある訳ではありません

これは営業マンよりは一般の方でこのように主張される方が多いように感じます。マンションと戸建の両方に住んだことがある方で、マンションの方が暖かかった事を受け、コンクリート住宅の方が断熱性があると主張されます。

断熱のイメージ

コンクリートそのものに断熱性はありません。

ただ、素材の熱貫流率等を見ても分かるように、コンクリートそのものに断熱性がある訳ではありません。マンションの場合は、上下階や隣の住戸がつながっており、外気に接する部分が少ないため、結果として暖かいというケースは良くありますし、古い住宅同士で比べれば戸建てよりもマンションの方が気密と断熱の両方のレベルが高い事が多かったため、このように思い込んでしまっていると思われます。

断熱については、今の木造住宅は以前よりは良くなっており、昔の家のように寒くてたまらないというケースは少ないとは思います。しかし一方で新築であっても断熱にあまり気を使っていない住宅も多いため、注意が必要だという事も確かです。

構造がRC造であれ木造であれ、断熱施工をきちんと行えば、どちらも高い断熱性が確保できます。厳密に言えば、コンクリート住宅では熱容量の大きさを生かした外断熱とする事で、木造では作り難いタイプの断熱住宅を作る事が出来るというメリットはあります。逆に言えば、それ以外ではあまり構造による温熱環境の差は無いと思います。

RC造の外断熱と木造の外張り断熱を比べて、木造の外張り断熱では断熱性が確保できないという主張も聞いたことがありますが、これは比較が間違っています。木造住宅で高断熱をうたっている会社で外張り断熱だけの会社はあまりありません。少なくとも私が知っている範囲では、高断熱を得意とする工務店は、充填断熱か、充填断熱と外張り断熱を組み合わせる(付加断熱)方式を採っています。

とことん断熱を突き詰めていくと、最終的にはRC造の方が高断熱化できそうな気はしますが、今の通常のレベルであれば、それ程大きな差は無いように感じます。この断熱に優れた方を選びたいという事であれば、UA値等を見て比べて判断すれば良く、その会社がどちらの構造を得意としているかで考えれば良い話だと思っています。

構造のメリットデメリットは正しく把握しましょう

今回挙げました事例は、木造住宅の悪口部分のごく一部です。他にも様々な話がありますが、正しいと思われるものもあれば明らかに違うだろうという意見もあります。最終的には各々の構造、工法のメリットとデメリットを把握して、自分で良いと思われる構造に決めれば良い話だと私は思っていますが、その判断の際に間違った情報をそのまま信じて決めない方が、後で後悔する率を下げられると思います。

前回の「世間で言われているRC造(コンクリート住宅)のデメリットに反論してみました」の記事で木造系の人が言うコンクリートの悪口も適当なものが多いのですが、逆パターンも何だかなと感じるものがたくさんあります。正しく比較するためにも話は聞くとして、その話が正しいかどうかの判断は慎重に行いたいものだと思います。

悪口のイメージ

あまり調べもせずに悪口を言うのは止めて欲しいものです。

また業界の人にお願いしたいのは、自分の専門性の部分のメリットを語るのは良いのですが、相手方のデメリットをあまり調べもせずに悪く言うのは止めた方が良いと思います。十分に調べた上で、自分の意見を語るのであれば良いのですが、聞きかじった話をさも正しいかのように語る人を見るのは、あまり気分が良いものではありません。

もちろん私の意見の中にも間違っている部分は多々あるとは思いますが、極力調べた上で正しい情報を出せるように注意しています。意見を語る人にはなるべくこのような姿勢を持って欲しいと思います。

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