不動産の競売物件についての基礎知識を得ておきましょう

不動産仲介の仕事をしていますと、お客様から競売物件はどうですか?と聞かれる事がよくあります。また、メールや動画の投稿欄でも競売についての話が出ることもあります。

ただこういった話を聞くたびに、一般の方は不動産競売についてはあまり詳しくない、または明らかに勘違いしている、と感じることがよくあります。私は競売が専門ではありませんので、それ程詳しい訳ではありませんが、それでも一般の方よりは若干知っていることが多いと思いますので、この記事では競売についての基礎的なお話をしようと思います。

オークションハンマー

369さんによるイラストACからのイラスト

また今回の記事では競売の実務的な内容については触れません。あくまでも考え方のみの話ですので、実務的な内容を知りたいという方は競売専門の会社にご相談される事をお勧めします。

そもそも不動産の競売についての手続きは不動産仲介業務ではありません

まず最初に知っておくべき話は、競売物件の購入の手伝いは、不動産の仲介業務ではないという事です。この仲介業ではないという点が何にどう影響するのかが分からない方も多いと思います。ただ実務的には全く違うと言っても良いくらい内容は異なりますし、法律の適用も異なります。

競売物件の購入を手助けする事は不動産仲介業務ではありませんので、宅建業法の適用も受けません。
競売物件を何度も落札する場合には、宅建業であると解釈されることもあります(最高裁の判例もあるようです)。ただ競売物件を紹介したり、競売の手続きの代行等をする分には、これは宅建業、仲介業務に当たらないようです(判例もあるようですが、確認できていません)。

不動産仲介業務

競売の購入代行は不動産仲介業務ではありません。
あーやんさんによるイラストACからのイラスト

競売物件の購入の手伝いが仲介業ではないという事は、色々な面で影響があります。分かりやすいのは代行に係る費用についてです。仲介業であれば、宅建業法で報酬の上限額が定められています(売買価格の3%+6万円+税)が、競売物件購入の代行や手伝いは、仲介業ではありませんので、報酬についての規定はありません。ですので代行の費用についてはその代行会社に確認する必要があります。

もっとも実際には、代行の手数料を仲介業務の同じ金額設定としている代行会社も多いようです。私は前職で不動産競売代行会社の方に取材したことがあるのですが、仲介手数料と同じような金額設定にすると、お客様も納得しやすいので、その設定にしていると聞いたことがあります。

他にも仲介業であれば、色々な制限があるのですが(買手のお客様に説明しなければならない事が決まっている等)、競売物件の購入の手伝いは、そのような規定はありません。ですので、通常以上に取引について詳しくならなければ、失敗する率が高くなると考えるべきだと思います。

ちなみに当社:ふくろう不動産では競売物件の購入代行の手続きは、一切行っておりません。競売物件の購入の実務ノウハウは仲介とは全く異なるのですが、当社にはそのノウハウが無いからです。

競売であれば不動産が相場と比べてものすごく安く買えるという話は幻想です

また競売物件であれば、一般的な価格よりも安く買えると考えている方も多くいらっしゃいますし、そのような記事も多く見かけますし、テレビ等でも、安く買えると主張している(小さくテロップで可能性がありますとは書かれていますが)番組も見たことがあります。

もちろん相場よりも安く購入している人は実際にいるでしょうし、その可能性はゼロではありません。その一方で、一般の方、個人の方が安く買える可能性はかなり低いと考える方が良いと私は考えています。

安く買える

安く買えるという話は幻想だと思っています。
しゅんぴさんによるイラストACからのイラスト

そもそも競売物件は安く買えると主張される方は、何を根拠にそのお話をされているのでしょうか?恐らくは、サイトに掲載されている競売物件の「売却基準価額」を見て、相場からずいぶん安い、そしてこの価格で購入できる可能性がある、という事から、安く買える(可能性がある)とお話されていると思われます。

ちなみに競売物件については「不動産競売物件情報サイト(BIT)」というサイトで、誰でも競売物件の検索ができます。この「売却基準価額」と相場の金額を見れば、確かに安いように感じます。そして、この価格でも買える可能性がある事を考えれば、安く買えると考えても不思議ではありません。

しかし実際はどうでしょうか?同じサイトで過去の売却価格のデータを見ることができますが、その内容を見ますと、競売物件の大半は売却基準価額よりも高い金額で落札されています。これは考えてみれば当たり前の話です。競売はお金さえあれば誰でも参入できる市場です。そして世の中には買取再販(古い不動産を購入してリフォームし、利益を乗せて販売する)を行う会社がたくさんあります。本当にものすごく価格が安いのであれば、そういったプロの集団がすべて買っていくでしょう。

ただ実際には買取再販を行うプロでも、全て安く購入できる訳ではありません。買取再販業者はたくさんあり、その中での競争を勝ち抜いていかなければならないからです。競争を勝ち抜く、つまりは落札して実際に購入するためには、競合他社に負けない高い価格で入札しなければなりません。入札価格が安すぎると落札できない、高すぎると購入することは出来ても利益が出るかどうかが怪しくなる、そのために、ベストバランスはどこかという点を真剣に考え、入札価格を決めています。

この判断には多くのノウハウが要求されますし、100%正解というものもありません。このような多くのプロに混じって戦わなければならない市場で、一般の方が簡単に安く買えるはずは無い、という事は考えてみれば当たり前だと思います。

ちなみに、最初に出ている「売却基準価額」は、時価の70%程度だと言われています。これは東京の場合で、地方の競売物件であれば、時価の50%程度で設定しているとも言われています。そうだとすれば、売却基準価額よりも高かったとしても、時価よりも安ければ、結局はお買い得ではないか、と考える方も多いでしょう。

実際に特定の時期の東京の売却価格を調べてみました。もし売却基準価額が相場の70%の価格だとすれば、相場金額は0.7で割り戻した価格となるでしょう。そして実際の落札価格は、その計算された時価から見て、56%から182%とかなりばらつきがありました。強引に平均を出しますと、時価相当額の90%が落札価格となりました(この平均に意味があるかどうかは疑問が残りますが)。

ものすごく安くは買えないにしても、1割も安くなるのであれば良いではないか、と考える方もいるでしょう。ただ競売物件にはこれから述べるデメリットもあります。そのデメリットを受け入れた状態で1割安いのが妥当かどうかは、しっかりと考える必要があります。

競売物件ならではのデメリットも知っておきましょう

競売物件を、世間一般に販売されている物件よりも安く購入できたとしましょう。しかし、これからお話しますデメリットを受け入れた上で、そのデメリット以上に安くなければ得をしたとは言えません。

競売物件の購入にはいくつかデメリットがありますが、代表的なものは次の通りです。
1.購入(入札)前に、物件を内見することはできない
2.瑕疵担保責任を以前の所有者や裁判所が引き受けることはない
3.入札時に保証金が必要
4.物件の明け渡し、引き渡し交渉を行わなければならない
5.住宅ローンが問題なく使えるとは限らない
といった点です。

購入前に物件を内見することは出来ません

1.の内見できないというのは大きなデメリットです。

物件の内見

競売物件は、事前に内見することができません。
こうのみささんによるイラストACからのイラスト

不動産取引に詳しくない方からしますと、実際に中を見なくても「3点セット」を見れば十分に内容を理解できる、と思われるかもしれません。
「3点セット」というのは、
1.現況調査報告書
2.評価書
3.物件明細書
の3種類の書類の事です。

これらの書類は前述の「不動産競売物件情報サイト(BIT)」の各々の物件のページからダウンロードすることが出来ます。そして実際にこれらの書類を見て頂くとお分かりの通り、これらの書類を作成するのは法律の専門家であって、建築の専門家ではありません。3点セットの資料を試しに見ましたところ、各々の書類の作成者が掲載されていますが、
1.現況調査報告書は裁判所の執行官
2.評価書は評価人(不動産鑑定士)
3.物件明細書は裁判所書記官
が、作成していました。

3人が確認しているという事になりますが、この中に建築や建物検査の専門家はいません。中の詳しい状況が分かるのは「執行官の意見」や写真の部分ですが、技術的な調査を行っている訳ではありませんので、これだけでは建物に問題があるかどうかの判断は出来ません。

つまり建物に問題があった場合には、その分のリフォーム費用等がかかる訳ですが、その分の費用は実際に建物を買い受けた後で調査してみなければ分かりません。このリスク以上に購入価格が安くなければ、割に合わないという事になります。

瑕疵担保責任や保証はありません

建物に問題があっても、それがリフォームできる範囲で、かつそのリフォーム費用が少額で収まる場合には、ダメージは少ないでしょう。しかし、もし問題が大きく、簡単なリフォームくらいでは解決できないようであれば、修繕工事費が多額となる可能性もあります。

これが一般の仲介で購入する建物であれば、ある程度の期間について、売主に瑕疵担保責任を持ってもらう事も可能です。売主にそれが出来ないという場合でも、事前に検査を行い、問題がありそうであれば見送るという事もできます。また検査で問題が見当たらない場合の保全措置として、瑕疵保険に加入し、万一問題があれば、その保険金で修繕するという事も可能でしょう。

しかし競売物件は、以前の所有者は瑕疵担保責任を負う事はありませんし、検査も出来ませんし、瑕疵保険に加入することもできません。結局リスクはすべて購入者が負わなければなりません。このリスクと価格が安かった部分の兼ね合いがどうであるかを考える必要があります。

建物の状況

競売物件には瑕疵担保責任は付きませんし、瑕疵保険にも加入できません。 MeeeさんによるイラストACからのイラスト

「競売物件が戸建てである場合は、そのような建物に関するリスクがあるかもしれないが、マンションであれば、技術的なリスクはあまりなのでは?」と考える人もいるかもしれません。その点は確かにリスクは小さくなるでしょう。一方でマンションの競売物件の場合は、ほとんどの場合、管理費や修繕積立金も以前の所有者は滞納しています。そして、この滞納についての責任は、新しい所有者である落札者の負担となります。

もっともこれは入札時にある程度内容が分かると思います。一方で後述します立ち退き交渉等で時間がかかりますと、更にその滞納額が増え、結局のところ多額の負担となってしまう可能性もあります。このようなリスクについても予め考える必要があります。

入札時に保証金が必要になります

他には入札する際に保証金が必要になるという事もあります。保証金は一般的には売却基準価額の20%と設定しているケースが多いと思います(違う金額が保証額として設定されているケースもあるようです)。

保証金

一定額の保証金が必要になります
モッファさんによるイラストACからのイラスト

ただ、元々の売却基準価額が相場の70%なのであれば、その20%という事は相場と思われる金額の14%相当分となります。頭金でこのくらいの額を設定されている方も多いと思いますので、自己資金があれば、これはそれ程大きなデメリットという訳では無さそうです。

物件の明け渡し、引き渡しをどうするかが問題です

これが1番問題かもしれないのですが、無事に落札出来て、自分の所有物に出来たとしても、占有者がいる場合には、物件の明け渡しをしてもらわなければなりません。そして、その交渉も簡単ではない事もあります。

物件の明け渡しを簡単に言えば、今住んでいる人及び荷物を追い出すという事です。もちろん法的には占有者は出ていかなければならない訳ですが、その占有者が素直に言う事を聞くか、法律を守るかどうかは別の話です。

この追い出しを、競売物件の代行会社の人に依頼するとか、裁判所に依頼する等の方法もありますが、どちらもタダではありません。仮に落札者自身が、明け渡し交渉をするとしても、ほとんどの場合、タダでは済みません。占有者の引っ越し代や荷物の処分代、次の住居に住むための費用の一部等を負担しないと、占有者は納得しないことも多いからです。

ゴミ屋敷

明け渡しにかかる手間と費用を考えましょう。
acworksさんによるイラストACからのイラスト

裁判所に依頼する方法であれば、占有者に対しての引っ越し代等の負担は無いと思いますが、裁判所に払う費用は結構な額になり、それであれば、占有者に交渉したほうが安かった、という事もありえます。

立ち退きを他の人に依頼するという方法もありますが、原則として立ち退き交渉については弁護士等の資格を持っている人でなければ仕事として行うことが出来ず、資格のない人に立ち退きを依頼しますと、非弁行為に該当し、罰せられる可能性もあります。

何が非弁行為に当たるかは、競売の代行を行っている会社であれば、詳しく把握していると思いますので、こういったあたりは問題がないかどうか、相談しながら進める事になります。

どういう形で、この明け渡しが解決するかは状況によりますが、何にせよ費用負担が全く無く明け渡しが終わると考えてはいけません。そしてこの明け渡し等に係る費用が、安く購入できた分以下の額に収まらないと、結局は損をしたという事になります。

住宅ローンが必ず使えると考えてはいけません

最終的な落札代金を支払うのに住宅ローンを使いたいという人も多いかもしれません。昔は競売物件は現金のみでしか落札できませんでしたが、今では住宅ローンを使うことも可能となっています。

だからといって、通常の仲介物件と同じように住宅ローンを使える訳ではありません。まず一般的な不動産の売買契約で利用できる住宅ローン特約は、まず利用できません。もし住宅ローンの本審査に落ちてしまい、お金が用意できない場合には、既に支払っている保証金は放棄しなければならなくなります。

また仮に審査が無事に通るとしても、支払いの基準日までに必ず実行できるとも限りません。最近の事情はあまり詳しくありませんが、住宅ローンを競売物件でも利用できるようになった当初は、銀行の担当者も慣れておらず、結局は手続きが支払日までに間に合わなかった例もあったと聞いたことがあります。

まだまだ一般の方が競売物件を購入する例は多くありませんし、銀行の融資担当者も慣れていない融資については通常以上に時間がかかるケースも考えられますので、スケジュール的に間に合わない可能性もある、という事もある程度考えておくべきだと思います。

住宅ローン

住宅ローンが必ず使えると過信してはいけません。
イラストスターさんによるイラストACからのイラスト

もちろん現金での購入を考えている方からすれば、この点は問題にはならないと思いますが、ローン利用者は最悪うまく借入が出来ない可能性もあることを前提に、融資を考えるべきだと思います。対策としては、複数の金融機関に申請を出す等の方法はありそうです。

私見ではお勧めしませんが、挑戦したい方は様々な勉強が必要です

こういった競売ならでは問題というものはたくさんあります。ただ、競売物件の購入を代行する専門の会社はこういった話は私以上に詳しく把握しています。ですので競売に詳しい代行会社を利用する前提で、こういったリスク、更には他にもある多くのリスクをある程度受け入れられるという事であれば、挑戦してみても良いと思います。

一方でこの挑戦には様々なリスクがあります。また良い物件を購入するためには、具体的なノウハウがたくさん必要でしょう。こういったノウハウが、代行会社に依頼すれば簡単に得られると考えるようでは、良い物件の購入は難しいと思います。前述しましたように、買取再販業者等、数多くのプロが参加する市場で戦わなければならないからです。

この覚悟が十分にあるという方のみ、この競売物件購入という挑戦ができるものだと思っています。

また、この記事の内容を動画でも解説してみました。その動画がこちらです。よろしければ、動画もご確認下さい。

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