擁壁がある土地や一戸建ての購入前に「我が家の擁壁チェックシート」を見ましょう
一戸建てや戸建住宅用の土地を選ぶ際に、特に注意しなければならないのは敷地内、および周辺との高低差です。1番望ましいのは平坦な土地ですが、エリアによっては平坦な土地を見つけることが難しいエリアもあります。
道路と敷地の間、あるいは隣地との間に高低差がある場合には、擁壁を作り、その上か下に建物を建てる事になりますが、この擁壁がある土地には注意しなければならない事がたくさんあります。ただ、どのような擁壁がダメなのか、何に注意しなければならないのかについては、判断が結構難しかったりします。
そこでこのページでは、国土交通省が公開しているチェックシートを参考に、擁壁の注意点について簡単に述べたいと思います。
不動産会社の営業マンは擁壁に詳しくない人が大半です
まず最初に知らなければならない事は、擁壁は見た目だけでは判断できない事が多いという事です。どんなに見た目が立派な擁壁でも、中身が全くダメという擁壁もあります。これについては、見るだけでは分かりませんので、資料などを調べて判断するしかありません。
一方で見ただけでこれは危ない、と感じられる擁壁もあります。そして、この見ただけで危ないという擁壁のタイプを知っている事で、将来のリスクを減らすことも可能です。
ただこのタイプについては、不動産を購入する皆さん自身が知っておかなければなりません。と言いますのも、一般的に不動産会社の営業マンは擁壁について詳しくないからです。そして詳しくないにも関わらず、大丈夫であろうと判断する人もいます。
これは主に、その営業マン個人の経験から来ています。今までこのタイプの擁壁に建てられた家を見たけれども問題は無かったので大丈夫だろうという判断です。
ですが、もし擁壁に問題が起きるとすれば、それは大きな地震の時です。大きな地震が起きない限り、その擁壁に問題があるかどうかは分かりません。そして不動産の営業マンのほとんどは、大きな地震を経験したことがありません。地震が無かった期間の経験で、大丈夫だろうという判断が本当に正しいとは限りません。
こういった安易な予測を避けるためにも、皆さん自身がある程度擁壁について知っておく必要があります。
この擁壁の見かたについては国土交通省が出しています「我が家の擁壁チェックシート」が役に立ちます。チェックシートはPDFデータでダウンロードできますので、こちらを使って擁壁について確認しましょう。
危険な4タイプの擁壁を知っておきましょう
最初に、擁壁のタイプについて確認しましょう。擁壁が大丈夫かどうかは、水が染み出ていないかとか、ひびが入っていないかなどの確認項目がありますが、その前に、ダメなタイプの擁壁を知っておくべきです。ダメなタイプの擁壁であれば、一見良さそうに見えたとしても、大きな地震の際に問題になる可能性が高くあります。
ちなみにこの4つのタイプの擁壁は、国土交通省のチェックシートの対象外の擁壁とされています。簡単に判断することが難しい擁壁だからだと思われます。
空石積み擁壁は石を積んだだけの壁です
空石積み(からいしづみ)擁壁とは、簡単に言えば石を積んだだけの擁壁です。同じ石積みでも練石積み(ねりいしづみ)と呼ばれるものは裏側をコンクリートで固めているのですが、空石積みは単に積んだだけですので強度は高くありません。
この2種類の見分け方は難しいのですが、とりあえずは石と石の隙間を見てみましょう。この隙間、いわゆる目地部分にモルタルらしきものが見えれば、練石積みの可能性が高くなります。逆に隙間には何も見えないか、土が見えるような擁壁は高い確率で空石積みの擁壁と考えられます。
空石積みは高さが低い擁壁で見受けられるものですが、もしこれが高さ1m以上や1.5m以上の高さであった場合には、少し問題が出る可能性があります。
空石積みは石を積む職人さんの技量によって強度が大きく異なると言われています。ただ、その技量を見ただけで判断することはほぼ無理と思われますので、高さが1m以上ある空石積みの擁壁は、強度が低い可能性が高いと考えておく方が無難です。
増し積み擁壁はよく見るタイプでかつ危険度が高い擁壁です
増し積み擁壁は街中でも結構見る事ができます。よく見るのは、間知ブロックで出来た擁壁の上に、ブロック積みの擁壁があるパターンです。
間知ブロックなどの擁壁の上にあるブロックが1段だけであれば、その上のフェンスを支えるだけであって、擁壁では無いかもしれませんが、3段以上の高さがあるようですと、上乗せされた擁壁である可能性があります。
この間の2段の高さのブロック積みは、現地を詳しく見てみないと判断しにくいのですが、ちょっと微妙なあたりです。ブロックでも擁壁として認められるものもあるようなのですが、見た目だけでは認められた擁壁であるかどうか判断ができません。増し積みされている擁壁がブロック積みの場合、何らかの資料が無い限りは、安全側で考え、問題がある可能性が高いと考えるべきだと思います。
増し積み擁壁の内容については、動画でも説明してますので、よろしければ動画もご確認ください。
二段擁壁も増し積み擁壁と同じ危険性があります
二段擁壁は、先に述べた増し積み擁壁と似たようなものです。明確な定義ではないかもしれませんが、上に詰まれている擁壁がブロック積みである場合は、増し積み擁壁と呼び、上の擁壁が間知ブロックやコンクリートの擁壁などの場合は、二段擁壁と呼ぶことが多いような気がします。
擁壁は一体で作る方が強度が出やすいように思われますが、それをわざわざ2段にしている点で、問題がありそうな感じがします(実際にはこのタイプの擁壁は1段当たり5mの高さ位までしか作る事が出来ないため、2段にせざるを得ないようです)。実際には問題がない擁壁もあるのかもしれませんが、きちんとした書類が無いようであれば、基本的にはお勧めしがたいタイプの擁壁です。
張り出し床版付き擁壁は見るからに怖そうです
たまに見るタイプですが、張り出し床版付き(はりだししょうばんつき)擁壁というものもあります。下から見ると本当に大丈夫だろうかと恐怖を感じます。
そもそも張り出しているという時点で、構造的に不安があります。その下にコンクリートの柱がある事も多く、この柱で支えているから大丈夫と思われるかもしれませんが、もし本当にそうならなぜ、最初から柱などを立てずに、なぜすべて擁壁にしなかったのかという疑問が残ります。
後から柱を作ったのであれば、元々あった擁壁の下の土台部分を壊したのではないかという不安も残ります。個人的な見解では、張り出し床版付き擁壁の上や下の土地は、お勧めしません。他のタイプの擁壁以上にリスクが大きいと感じるからです。
これら4タイプの擁壁に隣接する土地は基本的にはお勧めできません
今回4タイプの擁壁についてお話ししましたが、これらの4タイプの擁壁が敷地のすぐそばにある場合は、その物件は基本的にお勧めしません。これらの擁壁では検査を受けたという書類が無いことも多く、どのように作られたのか、はっきりしない事も多いからです。
このような土地を買うかどうかは、費用のバランスで考えるという考え方もあります。擁壁がある土地は、平坦な土地と比べて価格が安い事も多いからです。
ですが、その安さが本当にリスク分と同等以上に安いかどうかは難しいところです。擁壁の修繕費や作り直す費用を正確に見積もる事が難しいからです。
これは私見に過ぎませんが、大半の擁壁付きの土地は、擁壁の修繕費以上に価格が安くなっているかと言えば、そこまで安くなっていないと私は感じています。その土地を売る売主さんも、今の時点で壊れていない擁壁の修繕費分まで値引く必要はないと考えているからでしょう。
そして購入する側も、こういったリスクを詳しく知らないまま購入する例も多いと思われます。その結果、リスクがある割には、割高の物件が取引されて相場が形成されるのだと思います。
擁壁が自分の所有物でない場合は、さらにやっかいな問題になります
このような擁壁が、自分の敷地内、つまりは自分の所有物であれば、最終的には費用だけの問題で解決できます。ですがその擁壁が隣地の持ち物だった場合には、お金では解決できない事も考えられます。
隣地の擁壁が崩れ、問題となった場合には、隣地所有者に対して擁壁の修繕を要求できます。ですが、臨沂所有者にそのお金が無い場合には、結局そのままになってしまう可能性も高いでしょう。そして隣地の擁壁に問題がある土地であれば、その土地に建物を建てられないという可能性も出てきます。役所の建築確認が下りない可能性があるからです。
こうなった場合には、もうその土地を売る事ができません。擁壁に接している土地は、安全上のリスクだけでなく、経済上のリスクも含んでいます。こういったリスクを考えたうえで、その土地をいくらで買うかを考えなければなりません。
結果的にですが当社のお客様で擁壁に接した土地を買う方はほとんどいません
当社でも戸建住宅や一戸建て用の土地の仲介を行いますが、擁壁に接した土地の購入を検討されているお客様に、こういった説明をした上で、買うかどうかを決めてもらっています。私が危険を言い過ぎるせいかもしれませんが、結果的に1m以上の高さの擁壁に接する土地を購入されるお客様はあまりいらっしゃいません。
擁壁がある土地が絶対にダメという話ではありません。エリアによっては、坂の無い場所はないというエリアもありますので、このような制限を設けますと、買える土地は無くってしまうというエリアもあるからです。
ですが一方で、擁壁にはこういったリスクがある事を把握し、擁壁がある中でもリスクが小さいのはどの物件なのかを判断できるようになれば、より安全な土地選びができるのではないかとおもっています。
他のタイプの擁壁も、チェックしなければならない点はたくさんあります。それは他のページで説明する予定ですが、まずは危険なタイプの擁壁について知って頂きたく、この記事を作りました。
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