高強度コンクリートという言葉ではなく数値で把握しましょう

雑誌やサイトの記事を見ていますと、マンションや戸建住宅の基礎に使われるコンクリートで高強度のコンクリーと使いましょう、的な内容を見ることがあります。ただ、この高強度という言い方の基準が人によって大きく異なるため、記事を読む人に誤解を与える可能性があるのでは、と思っています。

このページではコンクリートについて、知っておいた方が良い話をしたいと思います。

高強度コンクリートは人によって定義が異なるようです

まず高強度コンクリートの定義を考えてみましょう。高強度コンクリートの定義は建築と土木でも違うのですが、建築では原則として高強度コンクリートとは36N/平方ミリメートル以上のものという定義となっています。

コンクリートの地肌

高強度コンクリートと言っても、本当の高強度コンクリートではないケースが多いようです。

Nはニュートンという単位です。1Nは大体100gの重さと考えて構いませんので、36Nは3.6Kgの重さと考えられます。つまり、1平方ミリメートルのコンクリートに3.6kgの重りを乗せても、コンクリートは壊れません、というものです。

1平方ミリメートルですと分かりにくいので、1平米で考えますと、3,600トンの重さまで耐えられるという事になります。

このように定義ははっきりしているはずなのですが、実際に高強度コンクリートと使われている場合には、なぜか使い方があいまいだったりします。

戸建住宅の基礎は設計強度18N/平方ミリメートル以上であれば良い事になっています

住宅の基礎

戸建住宅の基礎に高強度コンクリートが使われることはまずありません。

なぜあいまいになっているかと言いますと、実際に建築物で高強度コンクリートが使われる例があまり無いからです。例えば戸建住宅では基礎に鉄筋コンクリートが使われますが、定義で定めた高強度コンクリートが使われることはまずありません。

建築基準法の決まりでは、戸建て住宅の基礎は18Nあれば良いことになっていますので、構造にあまり力をかけていない建設会社は、このレベルのコンクリートを使います。強度が強いコンクリートはその分価格が高くなりますので(もっとも費用増はそれほど多額ではないのですが)、建売住宅などで建築基準法の最低レベルで建物を建てようとする場合には、ぎりぎり基準法の条件を満たすコンクリートを使います

ちなみに18Nのコンクリートは寿命が30年という説もあり、個人的にはお勧めできないレベルです。耐久性もさることながら、地震等に対する安全面という考え方からも、設計強度で24N以上の基礎を標準にしている建設会社に建築を依頼すべきだと私は思っています。

私が今まで見てきた中で、戸建て住宅の基礎で1番強いコンクリートを入れてきた会社でも30Nの基礎でした。その会社はかなり建物構造に気を使っている会社ですが、それでも30Nです。もっとも個人的には30Nもあれば戸建て住宅の基礎としては十分以上だと思っています。

どちらにしましても、高強度コンクリートと呼ばれる36Nを使うという事はまずありません。時々戸建て住宅の会社で、高強度コンクリートを使っています、と主張される会社がありますが、それは営業マンがコンクリートの事をよく知らないケースが大半です。

あるいは、カタログなどをよく読みこんでみると、「高強度コンクリート」と若干表現を変えており、高強度コンクリートとは言っていなかったりします。高強度のコンクリートと言えば、比較的強度が高ければ使える表現と言う事なのでしょう。

ですので、住宅会社で「自社は建物の基礎に高強度のコンクリートを使っています」と言われた時には、高強度と言うあいまいな言葉ではなく、何ニュートンのコンクリートを使っているのか、数字で聞くようにしましょう。相手の返事で、どの位コンクリートに詳しい人なのかが分かると思います。

100年住宅と呼ばれるマンションでも設計強度は30N/平方ミリメートルです

ミキサー車

マンションでも高層マンションを除けば、30Nくらいのコンクリートを使います。

戸建住宅よりもマンションの方が高強度コンクリートという言葉を聞く率が高いかもしれません。ですが、マンションのコンクリートも高層マンションを除けば、高強度コンクリートが使われる例はあまりありません。

マンションでは100年住宅という言葉が時々使われ、その際には100年持つコンクリートが使われています、と説明が行われます。しかし100年もつコンクリートは設計強度が30N/平方ミリメートルで、厳密には高強度コンクリートではありません。

もっともこれが悪いという話ではなく、24Nや27Nのコンクリートよりも良いのは確かです。ただ、数値の解説がなく、高強度コンクリートと書かれている際には、こちらも数値を確認する方が良いと思います。

マンションの強度や耐久性はコンクリートだけでは決まりません

大規模工事の基礎

マンションの構造や耐久性はコンクリートだけで決まるものではありません。

もっともマンションの強度や耐久性はコンクリートの設計強度だけで決まる訳ではありません。例えば中に入れる鉄筋1つとっても、鉄筋の量をどの位入れるかとか、どのように鉄筋を組むか、かぶり厚をどのくらい取るかによっても、強度や耐久性は大きく異なります。

また、柱や梁の大きさや太さ等によっても、当然構造の強さは異なってきます。ですのでマンションの構造や耐久性を考えるときに、コンクリートの強度だけ考えても判断することはできません。と言いますか、建築のプロであってもマンションの強度や耐久性を判断するのは簡単ではないのです。

では一般の人がマンションの強度や耐久性を判断するにはどうしたら良いかと言えば、やはり性能表示のレベルを見るのが分かりやすいのではないかと思います。

構造については、構造の安定に関する等級が1から3まで(3が最高レベル)ありますし、耐久性については劣化対策や維持管理の等級を確認するのが簡単で良いと思います。

これらの等級は単にコンクリートの強度だけでなく、様々な項目をチェックして決められていますので、こちらの方がトータルでの性能を把握しやすいでしょう。

ちなみに、構造は等級が1から3までありますが、最高レベルの等級3という条件を満たしたマンションを私はまだ見たことがありません。実際にはほとんどのマンション(90%くらい)は等級1のマンションです。

このような状況を考えますと、性能表示を確認するよりも長期優良住宅の認定を取っているマンションを選ぶという方がより簡単で良いかもしれません。長期優良住宅の認定を取っているマンションは、構造の等級は2を満たしていますし、維持管理や耐久性についても一定の条件を満たしています。ですので、性能表示のレベルを1つ1つ確認するよりは、簡単で良いかもしれません。

カタログスペックだけではなく、養生期間や施工レベルも強度に影響します

もっとも、このコンクリートの強さや長期優良住宅の認定等については、基本的にカタログスペックで決まります。施工中の検査もあるにはありますが、検査では確認できない内容も多いため、カタログスペックで大体が決まると言って良いと思います。

しかし、実際には施工のレベルによっても、強度や耐久性は大きく異なります。コンクリートの強度は、何ニュートンかという単位で表せますが、それは正しく施工された場合に限ります。

コンクリートは養生期間によっても強度は異なります

アンカーボルト

打設してどの位養生期間を取るかによっても、コンクリートの強度は変わります。

例えば戸建て住宅の基礎の養生期間です。コンクリートは打設してから一定期間放置しておき、ある程度固まった後に、基礎の上の木工事を始めなければなりません。コンクリートが完全に固まる前に、上に土台やら柱やらを組んでいきますと、計算通りの強度を発揮することができません。

どのくらい放置期間、養生期間を取らなければならないかはコンクリートの種類によっても異なりますが、一般的には7日以上は養生し、そこから木工事に入る事になります。

しかし建物によっては、特に早い工期が要求される建売住宅などでは、コンクリートを打設してすぐに型枠を外し、木工事に入っている現場を時々見かけます。このような現場の基礎では、20年や30年後にどのような状態になっているかが、結構不安です。

設計強度と注文するコンクリートでは強度は違うはずです

使用中のミキサー車

設計強度と実際に注文するコンクリートの強度は違います。

また、いい加減な建設会社では、注文するコンクリートを正しく注文しない場合もあるようです。先ほど建築基準法の規定では18N以上必要とお話ししましたが、実際に注文するコンクリートで18Nのコンクリートを注文してはいけません。

どのくらい安全面を見るか、コンクリート打設日の気温が何度であるかにも影響されますが、設計強度で18Nの強度を出そうと思えば、注文するコンクリート(呼び強度とも言います)は21~24Nのものでなければいけません。

このあたりは細かな規定がありますが、実際にこの規定を守っていない建設会社も結構あると聞きます。

雨の日の打設や水増し打設もコンクリートの強度を悪くします

大雨のイメージ

昔の事ですが、大雨の日にコンクリートを打設している現場を見たことがあります。

他にも施工レベルによってもコンクリートの強度は大きく変わります。私は昔大雨の日にコンクリートを打設している現場を見たことがあります。コンクリートに含まれる水の量は決められているのですが、雨水が入ることで水の量が変わり、一般的には強度は弱くなります。

また、施工性を良くするために、現場で水を加える例もあると聞きます。水を入れて柔らかくしたコンクリートの方が、型枠に早くコンクリートが入り、作業が早く終わるからです。現場監理がきちんとしていない現場では、このような状況が起きることがあります。

ですので、カタログスペックだけで基礎やコンクリートの強度を判断することは、かなり難しいと考えた方が良さそうです。

戸建住宅であれば現場写真を公開している会社がお勧めです

では、このような現場の施工ミスやトラブルを防ぐために、一般の人はどのような会社を選べばよいでしょうか。確実にこれという回答がある訳ではありませんが、現場写真をたくさん公開し、一般の方にも見てもらっている会社は、安心度合いが高いと思います。

写真撮影

まめに現場の写真を記録として残し、お客様に報告するタイプの建設会社は信用度が高いと思います。

戸建住宅であれば、コンクリートの打設は1日か2日で終わります。この打設日の写真があれば、雨の日に打設したかどうかは分かるでしょう。また、木工事が入る日は上棟日となることも多いので、打設日と上棟日の日程差で、養生期間をどの位とっているかも分かります。

このような情報を公開している会社は、現場監理にも気を使っている会社が多いので、ある程度は信頼して良いのではないかと思います。

もっと確実にチェックしたいという事であれば、検査会社を入れる事をお勧めします。その検査会社のメニューで、基礎の鉄筋のチェックや、打設するコンクリートのチェックという項目が入っているのであれば、その内容を聞き、納得できる内容であれば、その検査会社に依頼すると良いでしょう。

一方でマンションに関しては施工レベルを確認することはほぼ不可能ではないか思います。コンクリートの打設期間も長いため、いつどの工事を行ったかの判断は難しいでしょう。残念ですがマンションについては施工レベルの判断はあきらめ、カタログスペック上での判断のみを行うしかないと思います。あるいは中古マンションとなった状況を見て、劣化があるかどうかを判断するという方法もありますが、こちらも現実的には難しそうな気がします。

このページの話を動画でも解説してみました

このページの話を動画でも説明してみました。どの動画がこちらです。

よろしければ動画もご確認ください。

ふくろう不動産でも建物の判断はある程度といったレベルです

当社:ふくろう不動産はバイヤーズエージェントという方式を取っていますので、お客様が購入予定の戸建て住宅やマンションについては、ある程度は建物がどのレベルなのかを調べ、その状況をお客様に報告し、判断材料にしてもらっています。

しかし、コンクリートの状況については、カタログスペックを確認する程度で、精度が高い判断ができる訳ではありません。戸建住宅の基礎であれば、クラックの入り具合などである程度判断できることもありますが、クラックなどが無い場合には、予想でしかお話しできないのが現状です。

しかし一方で、クラックの入り方など明らかに問題があるコンクリートについてはチェックできますし、カタログスペックで問題がある建物も、チェックすることで問題がある建物を指摘することも部分的には可能です。

基礎のひび

明らかにダメな基礎は、見つけることができますが…。

ですが一般的な不動産会社では、建物チェックをあまり行わない会社も多いので、不動産選びの際には購入者自身が気を付けて選ばなければなりません。この記事も不動産選びの参考の1つになればと思います。

この記事の内容について、ご質問等がある方は、ふくろう不動産までご連絡ください。ご連絡は「お問い合わせフォーム」のご利用が便利です。

Follow me!

不動産購入のご相談はふくろう不動産まで

CTAの画像
まずはメールにてご相談ください。

高強度コンクリートという言葉ではなく数値で把握しましょう”へ2件のコメント

この投稿はコメントできません。