不動産の売り主が知らない内に損をしているケースがたくさんあります
当社:ふくろう不動産はバイヤーズエージェント、つまりは買う人の代理専門の仲介会社を営んでおりますので、売主さん側の仲介会社の立場に立つ事は、原則としてありません。ただ、逆の立場で、買う人の立場で売主さん側の仲介会社の応対を見ておりますと、この仲介会社の応対は売主さんを損させているのになあと感じる事がたくさんあります。
売主さんが損をするケースで1番多いのは、売主さん側の仲介会社が囲い込みをしているというケースです。そして売主さんはこの囲い込みについて、よく知らなかったり、相手方を信用しているから大丈夫と簡単に考えている方が多いように感じます。そしてこの囲い込みにはレベルがあり、どのレベルの囲い込みをされているのかも判断は簡単ではありません。
そこで今回の記事では、囲い込みにはどういったものがあるのかについて、お話したいと思います。
そもそも囲い込みとは何でしょうか
囲い込みというのは、売主さんから依頼された売却物件を、他の仲介会社に案内しない行為を指します。不動産の売買取引で、売主さんと買主さんの両方を自分のお客様で契約させれば、仲介手数料は、売主さんと買主さんの両方から取得する事が出来るため、1回の取引での売上額は、売主さんだけからもらう時と較べて2倍になります。ですので売主さんから預かった物件を、他の仲介会社から「その物件を買いたいお客様がいます」とご案内の打診があったとしても、案内させないように断ります。
本来であれば、売主さん側の仲介会社は売主さんの利益が最大になるように活動しなければなりません。その行為の報酬として仲介手数料を頂く訳です。ですのでなるべく多くのお客様に物件を見てもらい、その中から最も条件の良い買主さんを売主さんに紹介する義務があります。
しかし現実として、より良い条件の買主さんがいたとしても、それが自社のお客様でなければそれを断り、もっと条件が悪かったお客様(例えばより購入金額が低い買主さん等)であっても、それが自分のお客様であれば、そちらのみご案内します。これは売主さんが損をする取引になりますが、それでも仲介会社は自社の利益のために、売主さんにはバレないように、こういった囲い込み行為を行います。
実際に業界でどのくらいの比率で囲い込みがされているのかは、正確には分かりません。私の個人的な感覚では、完全な囲い込みは全体の20%位ではないかと思われます。これはその立地によっても異なります。東京23区の人気エリアであれば、もっと高い確率で囲い込みがされていると感じます。
この囲い込み行為は違法ですし、売主さんに対する背信行為ですが、こういった違法行為が普通に行われているのが現実です。
完全な囲い込みは、そもそもレインズに登録をしません
さて、囲い込みの段階の話をします。完全な囲い込みとは、そもそも売り物件をレインズに登録すらしません。レインズというのは、不動産の売り物件を登録しているデータベースです。不動産の仲介会社は、売主さんから売却依頼を受けた場合、このレインズに物件登録をしなければなりません(登録の義務は、媒介契約の形態によって少し異なります)。
レインズのシステムは、不動産業者であれば誰でも閲覧する事が出来ます。そして原則として、すべての売り物件はこちらのレインズに登録がされています。逆に言えば、どの不動産会社に行っても同じ物件を購入できるという事です。すべての不動産会社がレインズを使う事が出来、そして全ての物件がレインズに登録されているからです。
ただ、現実として、売主さん側の仲介会社の中には、レインズに登録をしない会社が一定数あります。これは大半の場合、違法行為です。ただ、本当に囲い込みをしようと考えた場合、レインズを見て問い合わせしてる買い手側の仲介会社の応対に時間と労力を取られるのは馬鹿らしいと感じるため、最初から登録をしないという手法を取ります。
この場合、レインズを見て問い合わせしてくる仲介会社を減らす事が出来ます。その分、購入検討者の数は減りますが、そんな事は売り手の仲介会社には関係ありません。最終的に、条件が悪くなったとしても自社のお客様の中から1人、買い手を見つければそれで済みますし、仲介会社の利益も2倍になるからです。
ちなみにレインズへの物件登録が終われば、登録証明書というものがレインズから仲介会社に発行されます。ですので、売主さんは最低でもこの登録証明書の取得を心がけて下さい。この登録証明書を売主さんに出さないという事は、そもそもレインズに登録をしていないという可能性が高くあります。
媒介の依頼が一般媒介契約であれば、レインズへの登録は義務ではありませんが、登録をしてはいけないという事でもありません。実際には、一般媒介であっても、レインズへの登録を依頼し、登録証明書は取得すべきです。この登録証明書を出さない仲介会社は、その時点で問題であると考える方が良いと私は思っています。
この登録証明書については、公益社団法人東日本不動産流通機構のサイトの媒介契約制度のページを見て頂き、確認されておく事もお勧めします。
法律の規定を満たすために、囲い込みして営業活動後にレインズの登録をする例もあります
ちなみに少し余談になりますが、レインズにきちんと掲載していたから、営業活動に全く囲い込みが無かったかと言われますと、そうではない例もたくさんあります。
実際にレインズのデータ等を見ておりますと分かるのですが、レインズに販売物件の掲載がされ、その日に連絡をしたとしても、この物件は今週末に契約予定なので、もう売止になりました、と言われる事は珍しくありません。
現実を考えますと、売却の媒介契約を取り、すぐにレインズの掲載をして、その日の内に売買契約の段取りまで決まるという事はあり得ません。ではなぜこのような事になるかと言えば、レインズの掲載前に、何かしらの営業活動をして、買い手が決まってから、形を整えるために、レインズに掲載しているからであると思われます。
つまり実質は囲い込みをして、両手取引をしているのですが、後からそれが見つかり問題になると困りますので、形式上普通に営業活動をしていたと見せるために、レインズの登録だけ行うというケースは、それなりにあると考えて頂く方が良いと思います。
レインズの登録はされていても、内見させてもらえない例も珍しくありません
では、レインズに登録され、登録証明書も取得できたので、営業活動も進めてくれているようなので、もう囲い込みされていないと考えるのは早計です。次の段階の囲い込みがあります。
それは、レインズに登録はしているものの、買い手側の仲介会社から内見や購入検討の依頼があったとしても、断るという事が出来るからです。
実際に私は、レインズ掲載の物件の内容確認の電話連絡をした際に、こちらは極力両手取引にしたいので、案内はさせません、とストレートにお断りされた事もあります。そこまでストレートに言わなくても、何かしらの理由を付けて、物件を内見させてもらえないという事は日常的にあります。
こういった完全に他の仲介会社には案内させませんというケースと並んで、一定期間は案内させません、という方針の会社もたくさんあります。これは3週間とか1ヶ月位は、両手取引にすべく自社で買い手を見つけられるように活動するやり方です。
一定期間で契約が決まらなかった場合は、売却の媒介契約の期限が切れてしまい、1円にもならないというリスクが囲い込みをしている仲介会社にも出てきます。媒介契約の期限は最長で3ヶ月ですが(それより長い期間の設定や、自動更新の設定は無効)、1ヶ月近く営業してまったく当てがつかないと、そのまま3ヶ月間経過してしまう可能性が出てきます。それであれば、片手取引でも(本来はそれが普通ですが)全くお金にならないよりもマシという事で、2ヶ月目からは他社案内を可能にするという仲介会社もそれなりに存在するようです。
ようです、と曖昧な言い方をしていますのは、長引かせる理由として別の理由を付ける事が多いため、正確なところは当社では分からないからです。もちろんこれも、ストレートに「当初1ヶ月間は両手取引にすべく、当社のみで活動しています(もう少し穏やかに、最初は自分たちで頑張りたいので、という表現をされる事もあります。内容は変わりませんが)」と言われる事もありますが、大半は別の理由を付けます。
例えば、売主さんの荷物の整理が出来ていないので、荷物の撤去が終わる、翌月まで待って下さい、という理由です。あるいは何かしらの理由を付けて、その日はダメ、この日もダメと単純に期日を合わせないようにする手法も取れられているようです。もっともその一方で、その前にオープンハウスを行う旨の広告が掲載されていたりしますので、この理由は言い訳である事は多かったりします。
当社でも買い手のお客様の内見依頼を出して、様々な理由でしばらく内見できないと言われる事はよくあり、その場合は一時的な囲い込みの可能性が高いだろうなとは思いながらも、こちらで出来る事はありませんので、分かりましたとしか言えません。
しかし、本来であれば条件が良い(かもしれない)買い手のお客様を、売主さんに断る事なく、仲介会社の都合で断っている訳ですので、これも囲い込みの一種と言えます。
内見は出来ても、案内し難い事や資料が揃わない事も数多くあります
このような囲い込みをする会社が一定数ありますが、もちろん囲い込みをしない会社もたくさんあります。ですが、囲い込みとまでは言えないまでも、実際に他社の案内や紹介をし難くしている会社もたくさんあります。
例えばですが、空き家の内見で、鍵を管理している仲介会社にまで、買い手側の仲介会社が預かりにその事務所までいかなければならないというケースはよくありますが、その事務所の立地の利便性が恐ろしく悪いという事もあります。
通常買い手のお客様は内見日は複数の物件を見に行きますし、買い手の仲介会社もその内見に同行しますので、余分な時間はありません。それにも関わらず、鍵の預かりの往復で2時間以上かかるというケースがあり、そうなりますと、その物件の優先順位がものすごく高くなければ、当日の内見候補からその物件を外さざるを得ないという事もよくあります。
その物件が内見されず、他の見に行った物件を気に入り、そちらで契約してしまえば、結局はその物件は売れません。これは売主さん側の仲介会社が怠慢なだけという可能性もありますが(もちろんそれも良くはありませんが)、間接的に囲い込みをしているという可能性もあります。買い手のお客様が自社のお客様であれば、遠くてもきちんと案内をしますが、他社案内をし難くする事で、最終的に両手取引の方が進みやすいような環境を作っているからです。このケースも意外と珍しくありません。似たような形で案内の条件を厳しくしている形を取る会社も、それなりにあります。
また、案内自体はさせてもらえても、資料を全く出さないという会社もあります。契約が決まらない限り関連資料を出さないと言われた事も実際にあります。買い手側としては、関連資料を見て契約するかどうかを決めたいのですが、そういった配慮は全く無く、その結果、内容が分からないものには買付も出せないという事で、検討から外れた物件も多数あります。
これは間接的な囲い込みというよりは、売主さん側の仲介会社の体質の問題だとは思いますが、こういった仲介会社の事情等で、売主の利益に反する行為というのは日常的に行われています。
他社の広告掲載を不可とする事で片手取引の率を下げようとする動きもあります
またこちらも囲い込みではありませんが、広告の掲載を制限するという動きもあります。これも売主さんの利益を考えた場合、他社さんでも広告を出してもらう方が、より広く告知でき、より条件が良い買い手を見つける率を高く出来ますが、この他社広告を禁止としている会社も多数あります。
これは様々な要因がありますので、囲い込み目的の為だけとは言えませんが、広告を掲載するのは自社だけとする事で、両手取引の率を高く出来るというメリットが仲介会社側にあります。
他社が広告を出す事で、売主さん側の仲介会社は余計な経費をかける訳ではありませんし、売主さん側のメリットを考えた場合、他社広告を不可とするのはどうなのかとは思いますが、この手法は日常的に取られています。
他社広告不可の理由については、少し別の話になり、本論から外れますのでこの記事ではお話しませんが、こちらもある種両手取引狙いの一環と言っても良いと思います。
今回の記事の話は、また聞きではなく、私が実際に経験した話です。同じ業界にいる人間として、少し悲しくなる事もあります。
だからと言って一般媒介が良いとも限りません
こういった囲い込み行為で不利益を受けないためには、媒介契約を一般媒介にするしかない、と主張される方もたくさんいらっしゃいます。その主張は正しい事もありますが、実はそうでもないケースも結構あります。
例えばですが、レインズへの掲載は、一般媒介の場合は義務ではありません。ですので、売主さん側の仲介会社が、媒介契約を一般媒介という形にし、レインズへの登録をせずに、囲い込みしている例もあるようです。
こういった囲い込みを防ぐには、一般媒介契約で、かつ複数の仲介会社と媒介契約を締結するという事が必要になりますが、その場合は別の問題が出て来ます。それは仲介会社がきちんとした営業活動をしない可能性です。
不動産仲介会社の報酬は、成約報酬です。つまりは、最終的にその物件が売れる売買契約が成立しないと仲介会社にはお金が入ってきません。そして一般媒介契約で売りに出し、広告費や手間暇をかけて集客行為を行ったとしても、結局別の仲介会社契約で契約が成立しますと、経費が持ち出しになってしまいます。
詳しくは申し上げられませんが、他にも一般媒介契約ならではの問題も見受けられ、それが故に、仲介会社は一般媒介契約はあまり受けたがりませんし、仮に受けたとしてもきちんとした活動を期待できるとも限りません。
ではどうすべきかの明確な答えはありません
ではこのような仲介業の現状の中、実際に家を売りたいと考えている人はどうすれば良いのか、と思われたでしょう。これについては、きちんと営業活動をしてくれる仲介会社を見つけて依頼すべき、という話になりますが、ではどうすれば、そういった会社を見つける事が出来るのかについて、明確な答えはありません。
囲い込みを確信犯的に行っている会社でも、そういった囲い込みをしていると自分から言う事はありませんし、営業活動の実情が売主さんから見えない以上、どうとでも話は出来るからです。
ですので、実際には、どのような広告活動をしているのか、等の状況から判断する事になりますが、強いて言えば、囲い込みが出来ないようなタイプの会社、例えばセラーズエージェントのように、代理販売専門で、両手取引は一切していません、というタイプの会社を狙うのも1つの方法です(ただその場合、本当に両手取引を行っていないのかの確証をどう取るかは考える必要はあります)。
囲い込みを防ぐための決定的な手法というものはありませんが、それでもこういった現状を知っているだけでも、ある程度は酷い会社を候補から外す事は可能です。例えば、自分の物件の広告が、媒介依頼をしている会社からしか出されていない、という事であれば、他の会社に対して、広告活動を不可としている可能性が高くなります。この点だけで囲い込みとは言えませんが、すくなくとも広く告知する事については否定的な会社であると予想されます。そういった会社が、きちんとした営業をしているのかどうかについては、通常以上に真剣に考えなければなりません。
こういった細かなチェックで、問題がありそうな会社はある程度候補から外す事ができそうですが、その細かな手法については話が長くなりますので、また改めて別記事でもう少し細かな話をしたいと思います。
この記事についてのご意見等がありましたら、お問い合わせフォームから、ご連絡を頂ければと思います。
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