現実の戸建住宅の断熱状況について思うことをお話します

最近では住宅の性能に関する意識が皆さん高くなってきているように感じます。動画やサイトでも断熱に関する記事も増えてきていますし、かつ以前であれば専門家しか分からなかった内容も、一般の方向けに公開されるようになってきました。

また最近の建売住宅でも、断熱効果がある部材の採用や、住宅性能表示制度で示される温熱環境で等級4(最高等級)を標準としている建物も増えています。このような背景から、いまではどの建物も断熱についてはきちんとしている、とお考えの方も多いかもしれません。

しかし残念なことに断熱という事に関しては、現実は必ずしもよくなっているとは限りません。当社:ふくろう不動産が今まで新築や中古の建物を見てきた経験から、まだまだこの断熱に関する意識は高くなりきっていないと感じる事も多いため、今回現状の断熱はこういった内容である、というお話をしたいと思います。

中古建物の場合、そもそも断熱されていないという事も珍しくありません

まずは昔の住宅は本当に断熱工事が雑だったというところから話を進めます。本当に古い住宅では、そもそも断熱工事がされていないという事は普通にあります。

例えば建物検査で床下から床面を見上げて見ますと、そこに断熱材が貼られていないという建物は普通に見かけます。

床に断熱材がない

今の住宅では当然あるはずの断熱材が貼られていません

点検口から床下を見る際に、下から床面を見てみますと、床材の下地の裏面が見えます。今の住宅ではほとんどの場合断熱材が貼られていますが、昔の建物ではこういった断熱材が全く無いという事も珍しくありません。

換気口から床下を見た場合

点検口が無い場合には、換気口から床下を確認する事もあります。

ちなみに建物によってはこの床下点検口が無い建物も結構あります。意外と思われるかもしれませんが、新しい建物よりも古い建物の中に、こういった点検口が無い建物が多くあるように感じます。そういった場合には、基礎の換気口にカメラを押し付け、写真を取ることである程度床下の状況を確認することができます。上の写真は換気口から撮影したもので、両側に換気口の桟部分が写りますが、床下の状況を確認するには十分です。

天井の断熱をサーモカメラで

和室の天井の半分は断熱材が敷かれていなかったため、サーモカメラではっきりと差が出ています。

上記のサーモ画像は、和室の天井を撮影したものです。サーモ画像だけですと分かり難いのですが、部屋の半分は熱が高く、残りの半分は低くなっていました。これはどうやら部屋の半分弱だけ断熱材が敷かれていて、残りは断熱材が入っていなかったために、このような天井となった様子です。

ここまで極端な例は難しいのですが、古い中古住宅の場合、こういった断熱材の入れ方が適当という例は珍しくありません。

新築でも断熱工事の精度が高いとは限りません

昔は断熱に対する意識が低かったとしても、最近はどうでは無いだろうとお考えだと思います。確かに昔と比べますと、断熱材がそもそも入っていないという例はめったに見ませんし、状況としては良くなっているとは思います。しかし、全ての建物がきっちりと断熱工事をしているかと聞かれますと、そうでもありません。例えば次の画像を御覧ください。

壁の中央の温度が高い

普通の壁の真ん中に、温度が高い部分が出ています

これは目で見ると何の変哲もない壁ですが、サーモ画像で見ますと、壁の中央だけ温度が高くなっています。他の画像や図面を確認してみますと、この壁は筋交いが入っている壁となっていました。ですので予想にはなるのですが、筋交いと間柱の周辺の断熱材の詰め方が甘かったのではないかと思われます。この画像は注文住宅の新築の検査を行った時の画像です。

構造壁を構造用合板等の面材で確保している建物ではこのようなケースは見かけませんが、構造壁を筋交いで作っている建物に関しては、このようなケースは珍しくありません(だからと言って筋交いがダメという話ではありません)。

では構造壁を面材で作っている会社は大丈夫なのかと聞かれますと、こちらもやはりそうとは言い切れません。次の画像は構造壁を面材で作っている建売会社の新築建物ですが、2階の天井ではこういった部分がありました。

新築の天井でも

新築物件の天井でもこのような状態になっているのは珍しくありません

これは恐らくですが、天井断熱で天井にグラスウールの袋を敷いていったのですが、断熱材の袋の長さが少し足りず、全てを覆いきれなかったのですが、そのままにしておいたものと思われます。上の画像ほど大きく足りていないといのは、少し珍しい方ですが、下の例のようなケースは日常的に見受けられます。

天井の端まで敷かれていない

天井と壁の境目あたりの温度が高くなっています

天井と壁の境目あたりの温度が高いというケースは新築であっても珍しくありません。断熱材がぎりぎり足りていないのか、敷き方が適当なのかは分かりませんが、端部分の断熱が甘いという建物は普通に見かけます。上の画像も新築の建売住宅の画像です。

また断熱材と断熱材の隙間と思われるような部分に、赤い線(温度が高い部分が線として出る)が出ることも珍しくありません。

断熱材の長さが足りないというのは、下記写真のようなイメージで考えると分りやすいと思います。

断熱材の長さが足りない

壁の上まで断熱材が届いていません

これは中古住宅の写真ですので、サーモ画像とは別の建物です。ただ、画像の左側では緑色の断熱材は本来上の梁まで届いていなければならないのですが、途中で切れています。繊維状の断熱材であれば、重さで少し沈み込んだという事も考えられますが、こういったボード系の断熱材で、経年変化でこれだけ下がるとは考えにくいため、恐らく施工当初から長さが足りなかったものと思われます。

他にも2階天井のダウンライトの周りの断熱材が無いとか、はっきりと温度差は出ないのですが、恐らくで断熱材が浮いていて、その分温度が高くなっているのであろうというような状況は新築でも普通に見る事ができます。

ちなみにこういった施工であっても、普通に住宅性能表示制度で示される温熱等級の4という最高グレードを取得していたりします。住宅性能表示制度の検査では、そこまで断熱材の施工状況についてはチェックしないのでしょう。

だからと言って、住宅性能表示制度を否定するつもりは全くありません。少なくともこういった等級を取得していない建物と比べれば、はるかに良いとは思います。その一方で施工が正しくされていないが故に、計算上の性能が出ていない建物も多数あるのであろうという現状もあるという事も、知って頂ければと思います。

欠陥とまでは言えませんが、現状について把握しておくのは重要です

ではこういった新築住宅は欠陥なのかと聞かれますと、どう答えたら良いのかは悩みます。厳密に言えば欠陥でしょうし施工不良と呼んでも良いと思います。ではこういった建物があった場合、その施工を改善してくれと言えるかと言えば、現実としては無理なケースがほとんどです。

例えば筋交いの断熱施工が今ひとつだったとして、そのためにもう1度壁を剥がし、断熱材を入れ直せるかというと、そこまで行う建設会社はほとんど無いでしょう。天井の断熱状況にしても、職人さんにもう1度天井裏に上がってもらい、断熱材を敷き直してもらうというのも現実的ではありません。

また、建物検査でこのような断熱状況だと分かったとしても、それを理由に解約できるかと聞かれますと難しいと思いますし、更に言えば、こういった建物を除いてきちんとした断熱施工の建物を選ぼうと考えた場合、現実的には選べる物件はほとんど無い、というのが実情です。

ですので、断熱性が高く、断熱施工も優れた建物を選ぼうと思った場合、高断熱を売りにしている工務店さん等に、注文住宅で頼むしか方法が無いというのが実情だと思います。高気密高断熱を売りにしている会社であれば、このあたりの施工に関してはとても気を使っていますし、検査もしっかりしている事が多いため、問題が出る率はかなり少ないと思います。

この事をもって、建売住宅がダメである、という結論としたいのではありません。今でも完璧とは言えないまでも、断熱に関しては良くなってきている傾向はあります。ただその一方で、このような現状もある、という事を知って頂いた上で、不動産探しを考えて頂ければよいと思います。

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