低周波音は機器の設置状況によって抑えることができるのでしょうか

当社:ふくろう不動産は低周波音に関するお問い合わせを多く頂きます。それらの質問の中に、エコキュートのヒートポンプなどは防振ゴムなどの対策商品を付けることで低周波音を無くすことはできないのでしょうか、という質問が時々あります。

私は、この防振ゴムを付ける前と付けた後の両方を同条件で計測したことがないため、効果があるのかどうかをはっきりと答えることができません。聞かれた際には、完全に低周波音を抑えることは難しいと思いますが、多少は効果があるかもしれません、というあいまいな予測しかできないという事をお話ししています。ただ、それだけではあまりにも情けないので、取り付け状況などによって、低周波音も若干は変わる可能性もある、というお話をこのページでしたいと思います。

扇風機の置かれている状態で低周波音が変わるのかどうかを試してみました

以前このサイトで「扇風機も意外と低周波音を出しています」という記事を書きました。そこで簡易的な実験ですが、この扇風機の置き方を変えることで、下の部屋に聞こえる低周波音に違いが出るのかどうかを試してみました。

床に直置き

最初に扇風機を2階の床の上に直接置き、下の階で低周波音を計測しました。

台の上

次に扇風機を木でできた台の上に置き、同じように下の階で低周波音を計測してみました。

扇風機は単純な機械ですが、それでも100Hzあたりに少し大きな卓越周波数があります。それが、置き方によって異なるのであれば、ヒートポンプなども取り付け方によっては低周波音にも差が出ることもあるかもしれない、と考えました。両方計測した結果がこちらです。

低周波音のグラフ

耳に聞こえない低周波音の音圧レベルも意外に差が出ています。

100Hzあたりで少し大きめの低周波音が出ているという点は変わりません。ですが、意外と音圧に差が出ています。この2種類のA特性の音圧レベル、つまり一般的に言われている騒音のレベルは、
台の上    29.9dB(A特性)
床の上に直接 30.7dB(A特性)
と、あまり変わりません。むしろ直接床に置いた方が少し大きな音圧レベルです。

しかし低周波音と呼ばれる周波数帯では、台の上に置いた方が大きな数値を出すことが多くなっています。問題がありそうな100Hzでは
台の上    44.8dB
床の上に直接 40.9dB
と、台の上の方が4dBほど大きくなっています。

わずか4dBと思われるかもしれませんが、これはまあまあ大きな差です。同じ音源を2つ置いた場合であっても、1つの時よりも3dBしか増えません。それを考えると4dB差はそれなりの差だったりします。

一般的には人の耳に聞こえない20Hz以下の超低周波音の音圧レベルも、台の上の方がかなり大きくなっています。一般的な低周波音の表示で使われるG特性と呼ばれる数値では、
台の上    62.3dB(G特性)
床の上直接  58.1dB(G特性)
と、やはり台の上の方が4dB以上大きくなっています。

この実験結果だけで確実な話ができるはずもありませんが、単純な機械である扇風機の置き方1つでも低周波音は大きく違う数値になります。これが、音源がヒートポンプで、かつ振動を抑えることを考えられた防振ゴムを使うという事になれば、低周波音であってもそれなりに変化が出る可能性はあると思われます。

単に音が小さくなったというだけで判断してはいけません

ただ問題なのは、単なる音の大きさだけで判断できないということです。上記の簡単な実験でも、耳に感じられるA特性の音には違いはほとんどありません。しかし低周波音については、それなりに差が出ています。

低周波音が計測できる精密騒音計

単に耳で聞いて音が小さくなったというだけでは低周波音問題は解決しません。周波数ごとのどのくらいの音圧レベルなのかを計測したうえで判断すべきです。写真はふくろう不動産所有の精密騒音計「NL-62」に解析プログラムの「NX-62」を組み入れたものです。

防振ゴムを販売している会社のサイトを見ますと、こんなに音が小さくなります、と主張されていますが、これは単に耳で聞こえる音が小さくなっているだけです。これで低周波音まで減衰しているのかどうかは分かりません。

防振ゴムや、ヒートポンプを覆うカバーなどを出している会社や販売している会社は、できれば精密測定器を使って、対策をする前と後で、低周波音などがどのくらい変わっているのか、数値で公開するようにして欲しいと思いました。

もし低周波音について変化がないのであれば、防振ゴムなどの対策はお互いに不満が残ることになり兼ねません。低周波音被害を受けている方は、対策と言いながら、効果があることを何もしない、と考えるでしょう。逆に対策をした方は、お金をかけて対策を取ったのに、なぜ相手は納得しないのか、ただのクレーマーではないのか、と考えるでしょう。

低周波音被害を受けている方は、一般の人が聞こえないような音でも圧迫感を感じることがあります。ですので、対策される方は、自分の耳で音が小さくなったから効果があったはず、と考えてはいけません

最初に、どの周波数の音がどのくらい出ていたのか、そして低周波音対策を行うことで、どの周波数の音に対してどのくらいの効果があったのか、数値で考えるようにしないと、お互いの誤解がますます進むことになり兼ねません。正しい知識と正しい測定を行うことで、正しく判断できるように考えていくべきです。

対策商品で完全に低周波音を無くすというのは無理ではないかと思われます

また、上記のグラフを見ますと、100Hzの音圧レベルも小さくなってはいますが、それでも他の周波数と比べると高い数値を出しています。置き方によってある程度は大圧レベルを下げることは可能でしょうが、低周波音を完全に無くすという事は難しいのではないかと思います。

音のイメージ

低周波音は低減させることが難しいため、後付けの対策で完全に低周波音を無くすという事は難しいと思われます。

ただ、それでも対策を何も行わないよりも若干の効果があるのではないかと思います。最終的には数値を計測して判断しなければならないと思いますが、防振ゴムやカバーなどの取付と、設置位置を被害がある人から遠く話すなどの対策の合わせ技によっては、効果が出る場合もあるかもしれません。

既にエコキュートなどを導入されている方は、それを一般的な電気温水器に交換したり、ガス給湯器に代えるとなると多額の費用が発生します。その費用を考えると、できる対策として防振ゴムなどの対策をまずは取ってみるという方法もあるかもしれません。

一方で、これらの対策の効果は小さいという気もします。ですのでエコキュートやエネファームなどで低周波音被害が出た場合には、これらの設備を別のものに取り換える、というのが1番確実な対処策だと思われます。

あくまでも意見の1つであって、何かを約束するものではありません

このページで色々とお話ししましたが、これは実際にヒートポンプに防振ゴムなどを入れて、低周波音の低減効果を試したものではありません。簡易的に扇風機の置き方の違いで低周波音に違いが出るかどうかを試し、その結果からヒートポンプの対策商品の効果を予想しているだけです。

単なる予想ですので、特定の製品について文句を言っている訳ではありません。ただ低周波音などの対策製品を出している会社は、もう少し分かり安く、数値などで効果を示してもらえればと思います。

当社:ふくろう不動産は低周波音や電磁波の過敏症にならないように注意している不動産会社です。精密騒音計も所有しており、お客様が購入される予定の不動産については音のチェックも行っています。詳しくは「2-16.低周波音測定器などを使い騒音チェックを行っています」のページをご確認ください。

また、有料にはなりますが、建物が人の健康に問題を与えないかどうかの検査業務も行っています。詳しくは「6-01.健康に住めるための建物検査を行っています」のページをご確認ください。

皆様からご意見やご相談の連絡も随時受け付けています。ご連絡は「お問い合わせフォーム」のご利用が便利です。ご連絡されたからといって、当社からしつこい営業を行うことはありませんので、ご安心ください。

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