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少し前から気になっていた「かびんのつま(小学館:刊)」という漫画を先日購入し、読んでみました。この本の内容や、更にはこの本の書評などを見て、考えされられる事がたくさんありましたので、少し自分の意見を述べたいと思います。

かびんのつま3冊の表紙

「かびんのつま」を購入し、読んでみました。

どんな症状であるのかを過敏症を知らない人でも理解しやすい本だと思います

この本は化学物質過敏症を題材にした漫画です。化学物質過敏症について書かれた書籍は多数ありますが、マンガは市販されているものとしては、恐らくこれだけだと思います。

そして、この本は過敏症の方本人にとって役に立つというだけでなく、周りの方に過敏症とはどういったものかを知ってもらうために、有効な本だと思います。

理解してもらう

まずは病気の存在を理解してもらう事が重要です。

化学物質過敏症の方が、日常生活を営むのに家族や他の方の協力が必要となります。しかし、家族の方が過敏症に対する理解が無いために、悪意が無くても過敏症の人に迷惑を掛けるという事が普通に起きます。また精神病の一種と誤解される事も多いため、過敏症の方の主張が無視されたり、更には間違った対策が取られる事もあり、却って症状が悪化する可能性もあります。

そのような危険を避けるために、まずはご家族の方に過敏症とはどのようなものかを理解してもらう事が重要です。一方で世の中には本を全く読まない人や読めない人もたくさんいます。そういった方に過敏症について語られた本を読んでもらうのは大変なのですが、マンガであれば、その敷居が少しは下がりますし、人によってはイメージをつかみやすいと思います。

実のところ、この漫画は読んでいて楽しい本ではありません。むしろ家族間のドロドロしたあたりは、読んでいて気分が悪くなることもあります。しかし、過敏症になると、このような家族間のトラブルもよくあると聞きますので、こういったあたりも含めて、読んで理解しておきたい本だと思います。

批判コメントが異常に多い点に恐ろしさを感じます

私はこの3冊をamazonで購入しましたが、その際に気が付いたのは、批判コメントが異常に多いという点です。アマゾンの書評だけでなく、他でもサイト上でこの本の批判をいくつか見る事が出来ます。

悪意のコメント

悪意のある批判コメントを数多く見かけます。

もちろん本を読んだ感想は、読んだ人それぞれあると思います。しかし怖いと感じるのは、マンガの著者や主人公を精神病であると断定するような内容が多い事です。この本の最後では、医師から化学物質過敏症であるという診断結果が出ているのですが、1巻2巻しか読んでいない方は、状況だけを読んで、精神病や統合失調症であると考えるのでしょう。

もっとも人によっては、医師が化学物質過敏症だと診断しても、その医者が怪しいと主張されますので、単に理解の問題だけではないのかもしれません。

どんな本でも主張でも、アンチコメントは付くものですが、そのコメントの付き方や量の多さに驚きます。漫画が面白くないとか内容がつまらないという事であれば好みの問題ですが、内容がウソであるとか精神病であるとかを根拠なく断言する人たちが多い事に恐怖すら感じます。

私の知人は軽度の化学物質過敏症の症状が出ているのですが、その事を外で話す事は全くありません。周りの人に、心の病であるように勘違いされるリスクを取りたくないからです。

臭いや食べ物について話をしなければならない時には、アレルギーがあって、という事しか話をしません。アレルギーであれば、それなりに理解がされているようだからです。残念な事に、今の世の中ではこのような対策を取らざるを得ないようです。

軽度の過敏症である知人は、主人公の感じ方が良く分かるようです

その知人は、この本の主人公と同じように、特定の果物を食べた際には喉がはれ上がり、息が詰まるようになります。今までは、何か別のアレルギーであると思っていたのですが、本当は化学物質過敏症と何か関係があるのかもしれません。

息が出来ない

果物を食べると喉が腫れて息がし難くなるようです。

車の排ガスがひどい場所では、その知人も肌が痛いと感じるようですし、香料の強い服などを着ている人が通った後は、見えるとまでは言わないまでも、存在感を感じると言っていました。

過敏症の人には分かる感覚であっても、そうでない人には気の迷い程度にしか感じられないものなのだと思います。私自身は化学物質過敏症ではありませんが、30年近く前から花粉症の症状が出ています。その当時は花粉症はまだ一般的なものでは無かったせいか、この症状について友人から気分の問題だと言われた事を今でも覚えています。よく知られていない病気で、自分が関わらないものは、気のせいだと考えるような世の中の風潮は昔も今も変わっていないのかもしれません。

余談ですが気のせいだと言ったその友人は、数年後に自分自身も花粉症になりました。そして自分に症状が出るようになって、初めてその病気が本当にあるという事を理解したようです。自分に影響が無いイコール存在しないという感覚は、多くの人にあるのだと改めて思わされます。

家族や関係者には100%の理解は無理でも半分は理解してもらいましょう

他人であれば、過敏症を気のせいだと思っていても大きな問題にはなりませんが、家族や仕事仲間等については、ある程度理解してもらわないと生活自体を成り立たせることが難しくなります。特に家族の理解は絶対に必要です。食べ物はもちろん生活用品の細かなものまで気を遣わなければならないからです。

家族

一緒に住む家族には、最低では半分位は理解してもらわないと生活が大変です。

例えば過敏症の方は、洗剤やせっけん、シャンプー等で香りの強いものは使う事ができません。柔軟剤は、それ自体使う事が難しかったりします。

家具や家電製品、ちょっとした小物であっても簡単に家の中に入れる事ができません。同じ部屋に新しいものがあると、過敏症の方の体調が悪化することがあるからです。新しい製品は抗菌剤等の匂いが強いため、一度外で干して臭いを取ってから家の中に入れるなどの配慮が必要になります。

食品や調味料に至っては何が良くて何がダメかは人によって大きく異なりますので、過敏症の人は何がダメなのかを早い段階で把握し、問題がある食べ物などは料理の中に入れない事はもちろん、場合によっては同じ冷蔵庫に入れないとか家の中に入れないという事まで考える必要も出てきます。

自動車も新車には乗れないという方もいます。新車特有の匂いで体調が悪くなるからです。新車でなくても、車で香料を日常的に使っている場合には、その車に乗れないという方もいます。

このような話をしますと、頭がおかしいのではないかと考える人も出てくるでしょう。真面目な話、過敏症でない方が過敏症の症状を100%理解することは無理なのではないかと感じています。しかし、100%の理解は無理だとしても、一定以上、最低でも半分くらいは理解してもらい、できる限りの対処を取らないと病状が悪化する可能性が高くなります。

どこまで対応できるかは、家族の協力度合いや過敏症の方の症状によっても異なるでしょう。ただご家族の協力が得られないために、離婚や別居という展開になるような話もよく聞きます。

家族の協力が、病気について理解するというだけである程度良くなるのであれば、理解してもらう方法を色々と考えなければなりませんし、そのためにはこの漫画を読んでもらうというのは1つの有効な方法だと思います。

化学物質過敏症の未病以下の人は真剣に対策を考えるべきです

ちなみに当社は不動産会社ですが、様々な過敏症の方から、住まいを紹介してもらえないかという連絡があります。しかし残念な事に、過敏症の症状が発症している方に問題のない住まいを提供することができません。

当社は売買仲介専門の不動産会社ですが、過敏症の症状が出ている方が住まいを買うという事をあまりお勧めしておりません。室内の空気環境を整えたとしても、周辺環境が悪くなれば、すぐに引っ越しを考えなければならないため、住む場所が固定化される家の購入は、過敏症の方にとってリスクが高いからです。

引っ越しのイメージ

過敏症の症状がひどい場合には、状況によってすぐに引っ越しできる体制を整えておくべきです。

そして当社では賃貸物件の紹介を全く行っていないため、過敏症の方の力になれないというのが正直なところです。

では過敏症になるリスクに対して、当社では何をしているかと言えば、未病以下の方に対して、過敏症になるリスクが高くない物件を紹介する、あるいは過敏症になるリスクがある不動産について、注意喚起するというだけだったりします。

これが正しい解釈であるのかどうか微妙ですが、私は過敏症の症状についても
健康→未病→過敏症
という段階を経て、過敏症になっていくと考えています。

そして、過敏症の元になるもの、それが化学物質であったり強い電磁波であったり、強い低周波音であったりと元になるものの量が多いほど、この過敏症になるリスクが高くなると考えています。逆に言えば、健康な人や未病といった段階の人であれば、これらの影響が少ない住まいに住むことで、過敏症になるリスクを低くする事が出来ると考えています。

様々な過敏症は、住まいだけがその原因ではありませんが、どういった場所や家に住むかで、この影響の強さは大きく変わります。将来的に過敏症になるリスクを減らしたいという事であれば、住まい選びにもこの感覚を持っている方がより良いと私は考えています。

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