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先日の事ですが、低周波音に悩んでいる方から連絡がありました。その方は隣地のエコキュートの音に悩まされているとの事でしたが、その隣地の建設会社の人から話を聞くと、この機械からは低周波音は出ていません、と主張されたとの事です。そして、低周波音が出ていないという話をメーカーにも確認している、との事でした。

こういった話を受け、この話は本当でしょうか、と質問されたのですが、この質問に「出ています」「出ていません」と一言で返答するのは実は難しい事だったりします。その理由を電話やメールで簡単に説明するのは難しいので、現時点で私が考えている内容について、サイトの記事でまとめてみたいと思います。

機械である以上、低周波音を含めた音が全く出ないとは考えられません

ここで言う低周波音を、とりあえず周波数が20Hz以下の超低周波音であると定義しましょう。20Hz以下の超低周波音は普通の騒音計では測定できません。低周波音用の測定器を使う必要がありますし、更には1/3オクターブバンド分析が利用できる機器等を使う必要があります。

当社はこの低周波音測定器を所有しており、実際に低周波音が出ていると思われる機器について、何度か測定したことがあります。そして測定対象となっている機械の静音時と稼働時で音圧レベルのグラフを比べた場合、可聴音も20Hz以下の低周波音も静音時よりも大きな音圧レベルになっています。

室外機

機械である以上、全く音を出さないとは考えられません。

これは当たり前の話であって、どういった機械であれ、機械である以上稼働時には何らかの音が出ます。この音が可聴音で大きく出るか、超低周波音の中で大きく出るかの違いはあっても、どちらもある程度音が上乗せされる事には違いはありません。

ですので、「音」と言いますか空気の振動という事で言えば、出ているか出ていないかという話では「出ています」という返事になります。

もちろん私も全てのメーカーの全ての機器について計測したことがある訳ではありませんから、絶対に出ているとは断言できません。ですが、普通に考えますと全く出ていないとは言えないと思いますし、出ていないと主張するには何らかの根拠があってしかるべきだは無いかと思います。

ではその根拠がどのようなものなのかを考えてみましょう。

低周波音が出ないという主張にはいくつかパターンがあるように感じます

この根拠のパターンは、私が今までに見聞きした内容からまとめたものであって、何らかのデータがある訳ではありません。ただこのパターンに当てはまる例はそれなりに多いと思っていますので、皆さんのご参考になればと思います。

単に自分では聞こえないから存在しないと主張しているだけのケースがあります

騒音問題、低周波音問題の初期段階ではこのパターンが多いように感じます。つまり何らかの計測データをもって話をするのではなく、関係者の感覚だけでである無しを決めるというやり方です。

例えば隣地のエコキュートが問題では無いかと考えた場合、隣地の所有者、居住者、エコキュートを設置した建設会社、設備会社の人たちが、自分では全く聞こえないので、それは存在しないと主張するケースです。

聞こえない

自分には聞こえない=存在しないという理屈を主張される方もいます。

これは低周波音に限らず、アレルギー関連ではよくある話です。例えば今でこそ花粉症は一般的な症状として知られていますが、花粉症の存在が公になり始めた当初では、花粉症などというものはなく、気のせいである、と主張される方はたくさんいました。残念な事ですが、自分が知らない、自分が分からないものは存在しないと考える方は一定数います

今では消費者庁も「可能性がある」的な見解を出していますが、このような情報はなかなか広まらないため、全く悪意なく関係ない、低周波音は出ないと主張される方が多いという事が、この問題を更に大きくしているように感じます。

A特性の音が無いから存在しないと主張されるケースがあります

1番最初の感覚だけの話を過ぎますと、次は普通の騒音計での調査で問題がないと主張される段階に入ります。低周波音については、どの周波数でどの位の音圧レベルであれば違法といったような規定が全く無いため、相手方が低周波音等について詳しく無い場合には、普通の騒音計で測定しようとします。

普通の騒音計

普通の騒音計では低周波音は計測できません。

通常の騒音については、自治体等で規定がある場合が多いため、その規定と照らし合わせて、問題ないと主張されるケースも多いようです。

ですが低周波音の問題は、通常の騒音計では計測することは出来ません。通常の騒音調査ではA特性と呼ばれるタイプの音を計測します。そしてこのA特性とは、空気の振動の結果をそのまま音圧レベルとして表現するものではありません。本来低周波音過敏症の方が問題となる周波数の音を無かったことにする計算方法で算出しているからです。

低周波音を出している機器や、過敏症の方の症状などによっても異なると思いますが、よくあるケースでは12.5Hzや16Hzの周波数で、卓越周波数と呼ばれるものとなった場合に、体調が悪くなる方が多いようです。卓越周波数とは、その特定の周波数の音のみ他の周波数の音よりも高い音圧レベルになっているものとお考え下さい。

ですので、この12.5Hzとか16Hzの音がどの位出ているのかという点が、低周波音が出ているかどうかの判断の1つにもなります。しかし前述のA特性では、これらの周波数の音については、差し引いて計算するルールになっています。一般の方はは20Hz以下の音は聞こえないはずなので、これらの周波数の音は計算しないという理屈から、このルールが設定されています。

例えは12.5Hzの音は、本来の音圧レベルよりも63.4dB、16Hzの音であれば56.7dB引いて計算するようになっています。ですので、仮に12.5Hzの周波数の音が60dBあったとしても、そこから63.4dB引いた数値で表現され、結果として12.5Hzの音はゼロですという話になります。

低周波音が計測できる精密騒音計

本来は特定の周波数の音圧レベルがいくつであるかを見なければならないのですが…。

あくまでも計算上で引いているだけですので、実際にこの周波数の音、空気の振動が無くなる訳ではありません。しかし、計算で引いただけの数値をもって、12.5Hzの周波数の音はゼロですから低周波音は出ていません、と主張される方がいます。私見ではこのような話の展開は詭弁としか言いようがないのですが、残念な事にこの話をタテに、低周波音が出ていないと主張される方はいるようです。

もし交渉の相手方が、このような主張をされているのであれば、低周波音測定器等を使った計測データを提示し、その理屈は間違っていると反論しなければなりません。

参照値を下回っているので、問題となる程出ていないという主張のケースがあります

ここまで話が進み、最後の段階になりますと、参照値の話になります。低周波音が物理的に出ているか出ていないかと言われれば、出ていますが、問題となる参照値よりも小さな音しか出ていないので、「問題となる程大きな低周波音は出ていない」という主張になります。

参照値

参照値自体が参考にならないのが問題だったりします。

しかし、この参照値が当てになるかどうかがたいへん疑問です。この参照値の決め方も、資料を見ます限り結構雑に作られている印象があります(参照値についての私の意見は「低周波音の紛争解決ガイドブックを読みました」のページをご確認ください)。

今まで当社に対して調査依頼があり、測定した結果では、大半の機器については参照値以下の範囲に入っていますが、それでも被害は出ているというケースがたくさんあります。当社の測定もそれ程件数が多い訳ではありませんから、この意見が絶対的に正しいとは言えません。しかし少なくとも参照値以下でも十分に被害が出るケースはあるとは言えると思います。

個人的な意見としては、このような意味の無い参照値という数値は撤廃し、もっと多くのデータから取り出した基準値を作るべきなのではないかと思います。

ご自身で計測して確認されるのが1番確実です

このような背景を考えますと、交渉相手から低周波音は出ていません、と主張されたとしても、実際のところどうなのかは分からない事の方が多いと思います。この場合、確実なのは自分で低周波音の有無を計測し、本当に低周波音があるのか、卓越周波数があるのかを確認される方が早いと思います。

最近では低周波音の測定器の貸出を行っている自治体も増えていると聞きます。測定や測定結果の分析は少し難しいところもありますが、個人で出来ないというものでもありません。またエリアにもよるかもしれませんが、低周波音被害者の会等で調査について協力してくれる団体もあるように聞きます。低周波音が出ているのかどうかは、自分自身の手配で確認される方が確実です。

wiiの音を計測

結局は自分で調べる方が早い気はします。

費用はかかりますが、有料で低周波音測定器をレンタルしている会社もあります。どうしてもうまく測定器が借りられなかった場合には、レンタルも考える必要が出てきます。

交渉の相手方は、低周波音などは無かったことにしたいと考えています。そのような利益相反する相手方に、事実関係の確認を任せるのは良い方法とは思えません

自分側に非がない状況で、なぜ自分で手配や調査をしなければならないのかと思うと、納得がいかないというお気持ちは理解できます。ですが、早めに事実関係を確認しないと、意味が無い対応策を取られたり、単なるクレーマーであると認識されたりする可能性も出てきます。

全ては相手側の問題なのだからと完全に任せてしまいますと、意味の無い対応策ばかりが進み、その間に病状の方は逆に悪化するという事も考えられます。低周波音については法律の規定がない以上、自分自身で何らかの対応策を考えざるを得ないというのが現状では無いかと思います。

本当に自分が低周波音の被害を受けているのかどうかの判断は簡単ではありませんが、「NPO法人STOP!低周波音被害」のサイトにあります「低周波音被害チェック」のページにあるチェックリストと照らし合わせてみるというのも1つの方法です。

とりあえず、現時点で自分が考えていることをまとめてみました。低周波音被害で悩まれている方の何らかの参考になればと思います。