低周波音に対する対応を見ると市町村の誤解が大きいようです

低周波音被害については、市役所などの対応もその自治体によって大きく違うという話を聞きます。どのケースが一般的なのかは、今の私は勉強不足のため良く分かりません。

ただ、公的に公開されている資料などを読んでいると、なんだかなと思わされることもよくあります。このページでは、低周波音被害を訴えても自治体の対応が今一つだった場合にどうしたら良いのかを考えてみたいと思います。

総務省の機関誌「ちょうせい」を読んで参照値の悪い使われ方を知りました

ちょうせい70号の表紙

総務省の機関誌「ちょうせい」第70号です。
出典:総務省

この記事を書くきっかけは、総務省が発行している機関誌「ちょうせい」の記事を読んだことです。この「ちょうせい」の第70号の寄稿として、「市区町村騒音担当職員へのメッセージ(後編)」という記事がありました(2020年4月時点で確認しましたところ、この記事は総務省のサイトから削除されていましたので、現在は内容の確認が出来ないようです)。

低周波音が参照値以下だと問題なしと結論付け、それ以上の調査は行われないようです

拒否のイメージ

参照値以下だとそれ以上の不満は受け付けないのは問題です。少なくとも環境省の通達とは違います。

その記事を読んで驚いたのは、低周波音を測定した結果、参照値以下なので問題ないとして終了としている点です。そしてその説明で納得されない場合でも、それ以上の調査や説明は行わず、苦情処理を終了しているという点です。

環境省のサイトによると、参照値以下であっても低周波音が原因である場合も否定できないため、その場合には詳しく調査するように、と書かれています(「低周波音問題に関するQ&A」出典:環境省)。

しかし「ちょうせい」の記事によれば、参照値以下イコール問題ではない、と結論付けて終わらせています(記事中の「エ 低周波騒音苦情の対応事例」より)。

参照値以下でも低周波音被害が出ているケースは数多く聞きます

低周波音の心身的苦情の参照値

心身的苦情の参照値はこちらですが、実際にはこの数値以下で低周波音被害を受けている方が数多くいます。

実際には参照値以下でも低周波音被害を受ける方はたくさんいます。2014年12月に出された消費者庁のエコキュート調査報告書を見ますと、そのエコキュートは参照値以下であったにもかかわらず、被害が出ており、給湯器をヒートポンプではない電気温水器に変更したところ、症状が治まったという事例も報告されています。

「ちょうせい」の記事は消費者庁の報告前に書かれた記事ですので、今は違うのかもしれませんが、自治体の対応がこのような状況だったのかと思うと、被害者の方のいら立ちがわかるような気がします。

この記事ではもう1つ、低周波音苦情の対応事例が掲載されていました。こちらも低周波音が参照値以下なので、問題なしとしています。苦情者にも測定結果を説明し、問題なしとして解決しました、と書かれています。もちろん実際には何も解決していないでしょう。

低周波音が参照値を超えていなければ問題なしとする対応を、早急に改善してほしいものだと思います。

ちなみにこの参照値の決め方は結構いい加減に決められたものではないかと私は思っています。参照値については「低周波音の紛争解決ガイドブックを読みました 」のページも参考にしてください

間違っている情報を広めようとするのは勘弁してほしいものです

スピーカー

間違っている情報を全国に広めようとするのは止めて欲しいものです。

それにしてもこの「ちょうせい」の記事は、市区町村騒音担当職員のメッセージというサブタイトルが付いています。このような間違った対応の仕方を全国の自治体の方に広めようとしていたのかと思うと、さすがに怒りを感じます。

測定される職員の方は、悪気はもちろん無いのでしょう。しかし実際には被害を受けていても、自治体の職員に知識が無いために問題なしと判定されるのでは、被害者はたまったものではありません。

そこで自治体の各々の対応について、どう対処すべきなのかを考えたいと思います。

まずは自治体が低周波音を測定できる機器を持っているかどうかです

低周波音測定器

これは低周波音測定器のNL-62です。ただ、低周波音を測定器できる機器を持っていない自治体も多いようです。

低周波音があるかどうかを計測してもらうには、その自治体が低周波音を測定できる機器を持っているかどうかを確認しなければなりません。通常の騒音計と異なり、低周波音を計測できる機器は70万円近くと高価であるため、通常の騒音計しか持っていない自治体の方が多いようです。

低周波音については、普通の騒音計で調べても何の意味もありません。自治体が所有していない場合には面倒でも、民間の測量会社に依頼するか、低周波音を測定できる騒音計をレンタルして自分で計測するしかありません。ただレンタル料もそれなりに高額ですので、確かに低周波音被害だ、と思われる場合にのみ利用する方が良いと思います。

体調不良の原因が低周波音によるものなのか、別の原因によるものなのかは「第3章.住まいが健康に悪い影響を及ぼしていると思われる場合にはどうしますか?」のページも参考にしてください。

低周波音の発生が夜間なのに昼しか計測できないと言われた場合はどうしましょう

昼夜のイメージ

低周波音が起きるのは夜間のことも多いのですが、自治体では昼しか計測できないことも多いようです。

また、低周波音の測定時刻についても問題となることが多いようです。エコキュートなどの低周波音被害は主に深夜です。ですが、自治体は平日の昼の時間にしか計測できない、と主張されることも多いようです。

ただ平日のエコキュートなどが動いていない時間帯に調べても意味がありません。エコキュートを自宅で利用している場合には、昼であっても稼働させることは可能ですから、測定時に稼働させて、低周波音を測ってもらうことで対応できます。

エコキュートなどを利用している人が隣地住宅の人なのであれば、面倒でも隣地の方と話をして、計測当日にエコキュートを動かしてもらうよう、交渉するしかありません。

どのみち、エコキュートなどから低周波音が確認できた場合には、その隣地の方と、撤去するか設置場所を動かしてもらうかの交渉をしなければなりません。であれば、早い段階から隣地の方と交渉する方が良いと思います。

自治体が参照値以下のため問題ないと主張した場合はどう対処するのが良いでしょうか

USBメモリ

問題ないと言われた場合でも、測定データはもらえるよう交渉しましょう。

自治体になんとか測定してもらえることができて、計測してもらったとしましょう。しかし「ちょうせい」の記事に書かれたように、参照値以下なので問題ない、と言われた場合にはどのように対処すべきでしょうか。

まずは環境省のサイトを見せ、参照値以下でも問題がある可能性があることを分かってもらいましょう。そして、計測した低周波音のデータをもらえるよう交渉すべきだと思います。

測定データがあれば、その後消費者庁などに被害の根拠資料として提出できます。こういったデータが多く集まることで、消費者庁なども動かざるを得なくなるかもしれません。

何の問題もありませんでした、という結論だけで終わってしまっては何の解決にもなりません。データがあれば、低周波音被害に詳しい方に見てもらうことで、本当に低周波音の被害の可能性が高いのか、別の理由と思われるのかの判断がしやすくなります。

計測機器にもよりますが、新しい機器であれば、CSV形式などで音のデータが取れますので、そのデータをもらえるよう、交渉してみてください。

データを元に隣地の方と交渉してみましょう

困っていることを分かってもらう

隣地の方には本当に困っているという事を分かってもらいましょう。単なるクレーマーだと思われると、話が進みません。

低周波音についてのデータが取得できたのであれば、そしてデータを見た結果、低周波音の影響が大きいと思われたのであれば、低周波音発生源を使っている方と交渉することになります。エコキュートなどを使っている隣地の方か、その建物を建てた建設会社の方が交渉相手となるでしょう。

低周波音発生のデータがあるからといって、強制的にその発生源を撤去したり移動させたりする権利がこちら側にある訳ではありません。ですが、データがあるのであれば、被害の可能性が高いということを説明できます。少なくとも口頭で説明するよりは説得力が出ます。

その上で、撤去や移設の依頼をお願いするしか今のところ方法が思いつきません。あるいは夜間運転のうち、一定時間の停止をお願いすることになるでしょう。

もっともエコキュートは安い深夜電力を使ってお湯を沸かすというシステムですので、夜間の使用を控えてもらうと、その家庭に金銭的な負担を与えることになります。撤去や移設の場合にも費用がかかります。

最終的に費用負担をどうするかも交渉しなければなりません。隣地のエコキュートで苦労しているのに、こちらでも費用を出さなければならないのか、と不満に思われる方は多いと思いますが、現在の法律では解決できないことが多いため、何らかの妥協点を見つけるのが現実的な対応ではないかと思っています。

また設置位置については日本冷凍空調工業会の設置ガイドを見せて、設置場所の変更を依頼したり、裁判となった事例などを説明したりと、硬軟使い分けた交渉が必要となってくると思われます。

大変とは思いますが、騒音の計測が無事に済んだとしても、自治体が騒音源の撤去の交渉まで行ってくれる訳ではありません。十分な知識を得た上で、落としどころを考えながら、交渉を進めることにならざるを得ないという事を、知っておいて欲しいと思います。

ふくろう不動産でも計測やアドバイスは可能ですが…

ここから先は当社の宣伝が含まれます。宣伝を好まれない方は、ここまで読んで頂いただけで充分です。

当社:ふくろう不動産でも低周波音が計測できる精密騒音計を所有しています。元々は不動産購入者の方に、健康被害が出そうな土地をお勧めしないために用意したものですが、不動産購入者の方とは別に、測量だけもサービスとして行っています。詳しくは「6-01.健康配慮型のインスペクションを行っています」のページや「6-02.健康配慮型インスペクションの内容を報告書からご確認ください」のページをご確認ください。

実際には住んでいらっしゃる方の体調不良が低周波音のせいではないケースや、別の理由によるものである可能性もあります。当社では住まいが人の体に何かしら悪い影響を与えそうなものを一通り調べて、お客様に報告しています。

ただ当社の調査は有料ですし、金額もそれなりにします。もし自治体などで機器のレンタルが無料でできたり、自分で対象がなんとかできるのであれば、それに越したことはありません。

また低周波音被害や、何か理由は分からないけれども、今の住まいに移ってから体調が悪い、という方は、よろしければ当社までお問い合わせください。100%原因が分かるということは無いと思いますが、何らかのアドバイスができる可能性もあります。お問い合わせには「お問い合わせフォーム」のご利用が便利です。メールでもお電話でも構いませんので、ご連絡を頂ければと思います。

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