横浜のマンションの傾き事件でも分かるように、建ってしまった建物の良し悪しは判断できません

ここ数日、横浜市のマンションが傾いていたという事件の報道が続いています。10月16日に、ディベロッパーである三井不動産レジデンシャルが住民説明会を行い、全棟建て替えの提案を行ったとも聞いています。最終的にどのような結論となるかは今後の展開を見てみなければ分かりませんが、この報道を聞いて思ったことについて述べたいと思います。

不動産会社や建設会社は建てられた建物について良し悪しの判断はできません

分からないイメージ

1度建ってしまった建物の構造の良しあしはプロであってもほとんど判断できません。

当社のサイトでは何度もお話ししていますが、1度完成してしまった建物について、その建物に問題があるかどうかを判断するのは、プロであっても簡単ではありません。と、言いますかほとんどの場合は判断できないものです。

今回のケースでは、渡り廊下があり、その手すりがずれていたために問題が発覚しましたが、通常の一棟建てのマンションであれば、問題は見つかることなくそのままになっていたでしょう。分かりやすいポイントが無い限り、目視で傾きを判断することはできません。これは一般の方はもちろん、建築のプロが見てもやはり分からないと思われます。

戸建住宅であれば、レーザーレベルなどを用いて、室内の傾きを計測し、建物の構造的な問題がないかどうかを確認できますが、マンションではこのような簡易的な方法では傾きを調べることはできません。このあたりのお話は「4-02.建築士だからといって、建物のすべてが分かる訳ではありません」のページでも記載していますので、こちらのページも参考にしてみてください。

そして建築のプロですら分からないマンションの構造の話を、営業部門である不動産会社の人間が分かるはずもありません。今回の報道の中で、不動産会社からきちんとした説明が無かった、ですとか、きちんと調べて安心なものを売って欲しい、というコメントがあったようですが、現実的には無理だと思います。

不動産会社の人間も設計事務所やゼネコンから聞いた話をそのまま説明するだけですし、頑張ったとしても図面上で説明するのが精いっぱいでしょう。今回のように図面自体に偽装があった場合に、不動産の営業マンがそれを判断するのは無理です。恐らく建築家でも無理でしょう。

ではどうすれば良いかと考えても、基本的に対策はありません。今回は珍しく問題が発覚しましたが、発覚していないだけで問題を含んでいるマンションはたくさんあるのではないかと思います。ですが、問題があるようなマンションを選ばずに済む確実な方法はありません。今回のような大手ディベロッパーでも起こり得ることを考えますと、他のデベのマンションであっても安心とは言えないでしょう。

強いて対策を考えると、複雑な技術を使わないマンションを選ぶことです

複雑なイメージ

複雑なもの、新し過ぎるものを選ばないことが強いて言えば選び方になります。

強いて対策をお話ししますと、それは複雑な工法や技術を使っている建物を選ばないことです。今回の場合は、杭が多く打たれたマンションですが、もともと岩盤の上にある立地であれば、杭を打つ必要はありません。であれば、少なくとも杭についての問題は起きません。良い地盤のマンションであれば、必ず大丈夫であると保証できるものではありませんが、危険と思われる要素が少ない分、少しは安心できると思います。

今回ニュースになっているのは、杭が地盤まで届いていなかったり、根固め分のセメント量が足りなかったりしたために起きている問題ですが、そもそも杭が地盤まで届いているからといって、本当に安心できるものなのかどうかも確実ではありません。沈下に対しては問題ないかもしれませんが、地震などで強い横揺れがあった場合に、杭が横からの力にどのくらいまで耐えられるのかは正直不安です。

もちろん計算上は大丈夫なことになっているとは思いますが、実際には正確なデータがそろっている訳ではありません。大きな地震の後に、杭を引き抜いて問題がないかどうか確認した訳では無いからです。これらの杭が問題ないかどうかがはっきりと分かるまでには、この後数十年以上の年月が必要になるでしょう。数十年後にこれらのマンションを壊し、杭を引き抜き、検査することで最終的な結論が分かります。現時点での安全であるという根拠は机上のものでしかありません。

もっとも今の杭が打たれているマンションは危険なのかと聞かれれば、ほとんどの場合は問題が出ないと思っています。マンションの場合、かなり高い安全率で計算して建物を作っていますので、若干の問題があったとしても、危険な状況になることがあまり無いと思います。

今回の事件が起きたマンションでも、実際にどのくらい危険なのかを考えた場合、仮に大きな地震があったとしても、他のマンションと比べて、それほど大きな差は出ないのではないとも、思っています。もっともそう思っているだけで、ちゃんとした根拠がある訳ではありません。

今回は杭の問題でしたが、他にも新しい技術で建てられている建物やマンションはたくさんあります。ですが、新しい技術は、本当に問題がないかどうかが確認されるまでは長い年月が必要です。個人的には新しい技術をふんだんに使ったマンションよりも、枯れた技術で建てられた建物の方が安心度合いは高いと思っています。

私は個人的にはタワーマンションはあまりお勧めしていないのですが、その理由の1つには、枯れた技術で建てられたマンションではないから、というものがあります。作られてからまだ20年近くしか経っていないタワーマンションは、今後どのような問題が起きるのかがはっきりとしていません。

大きな財産をかけて購入するものですので、リスクがあるものはなるべく手を出さないほうが良いのではないかと考えています。タワーマンションについては「2-05-11.タワーマンションは本当に資産価値を維持できますか?」のページでも意見を述べていますので、こちらのページも参考に読んでみてください。

マンション選びでは分かる範囲内のチェックしかできないことをあらかじめ理解しておきましょう

マンションの構造的な問題は分からないからといって、何も考えなくとも良いという話でもありません。竣工図面などを見ることでわかることもたくさんあります。分かる部分はしっかりとチェックし、分からない部分については、運に左右されると考えるのが現実的ではないかと思います。

構造的な部分はどうせ分からないから何もチェックしない、という事では防げるトラブルも防げません。図面を見るだけでも、明らかにおかしい建物を省くという事もできますので、注意する分は注意した上で、100%の安全を確認するのは無理だと考えておくのが良いと思います。

ふくろう不動産は売買仲介専門の不動産会社です。そしてお客様が購入される建物を詳しく検査して、極力安全な建物を皆様にご提案するという方針で営業しています。ですが、マンションについては、構造のチェックはできません。その分、図面を確認することで音の問題がどのくらいありそうなのか、また重要事項に係る調査報告書などを詳しくチェックし、他の問題が起きないかどうかをチェックするようにしています。

当社はマンションについても経済的か、安全か、快適か、の3つの切り口で考え、お客様にアドバイスするようにしています。
経済性については「2-05.最終的に安く買えるマンションの選び方」とその子ページを、
安全性については「3-03.安全という観点から見たマンション選び」とその子ページを、
快適性については「4-03.快適という観点から見たマンション選び」とその子ページをご確認ください。

ふくろう不動産では皆様からのご意見やご質問などを随時受け付けています。ご連絡は「お問い合わせフォーム」のご利用が便利です。ご連絡されたからと言って、当社からしつこい営業を行うことはありませんので、ご安心ください。

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