不動産の用語解説009~建築条件付きの土地とは何ですか?

注文住宅を建てたいと考えて土地を探していますと「建築条件付き」と書かれた土地を数多く見かけます。首都圏では、建築条件が付いていない土地の売り物件がほとんどないというエリアもあります。

この建築条件付き土地自体は違法なものではありませんが、タイプとしてはトラブルが起きやすいタイプの土地取引でもあります。また、ネット上で多くの解説を見る事が出来ますが、その解説の内容が間違っているケースも数多く見受けられます。そこでこのページでは、建築条件付き土地について、知っておきたい事、注意点等をお話ししたいと思います。

簡単に建築条件付きについて動画で説明してみました

不動産用語解説シリーズは動画上で、不動産用語を分かり易く解説しているシリーズです。ですのでまずはその動画からご確認ください。

ここから先の話は、動画とほぼ同じ内容のお話です。内容の確認という観点で、ご覧ください。

建築条件付き土地はあくまでも土地の売買です

この建築条件付きの土地は「土地」と名前があるように、あくまでも土地の売買です。ただ、この土地の売買を最終的に有効にするには、土地の売主が指定する建設会社に、建物の請負工事を発注しなければなりません。この建築条件付きの「条件」というのは、「建物建築の請負工事の契約をする事」がその条件となります。

売地

土地建物セットではなく、売買契約を結ぶのは土地のみです。

この条件には期限が付いていて、土地の契約時から3ヶ月以内に建物の請負工事の契約をしなければならないとしています。もちろん契約ですから、この期間を3か月にするなり半年にするなりと売主さんが同意すれば期間は延ばせるとは思いますが、ほとんどの契約は3か月以内という期間設定がされています。この期間が長すぎますと、将来解約となった場合には、売主の販売機会損失等のダメージが大きいため、売主は極力この期間を短くしたいと考えているからです。

この建築請負工事の契約内容については、この3か月という期間で内容を詰める事になります。プランはもちろん建物の仕様や金額についてもこの間に決め、契約をしなければなりません。そしてこの内容がうまくまとまらず、請負工事の契約ができない、という事になった場合には、土地の契約を解除することができます。

この解除は白紙解約と呼ばれる解除ですので、土地契約時に支払った手付金等は返してもらえます。特に違約金や損害金などが発生することもありません。もちろん、この白紙解約できるという停止条件については契約書にきちんと記載しておく必要があります。この確認作業を怠りますと、後々トラブルになる可能性が出てきます。

考える期間が3か月もあれば十分ではないか、と思われるかもしれませんが、この3か月は決して長い期間ではありません。特に注文住宅を建てようと考えている方から見ますと、納得できない事も数多く出てきます。

土地の契約と建物の請負工事契約は基本として別物ですので、建物も自由に設計できると買主側では考えるのですが、売り主側にそういった対応ができない会社も少なくありません。この意識の違い、考え方の違いが原因で、打ち合わせがうまく進まないという事があるからです。

建築条件付きの土地と建物が未完成の建売住宅とは明らかに違うものです

この建築条件付きの土地の販売と似ているようで大きく違うのは、未完成の建売住宅です。この2つは全く別のものなのですが、混同している人が多いような印象を受けます。

例えば条件付き土地は、売買契約は土地のみですのでこちらに建物代金は含まれていません。仲介手数料は土地代分についてのみで計算されますし、広告の表示も土地と建物をセットにして売り出し価格として表示する事は許されていません

しかし、実際には条件付き土地であっても、建物代込みの値段で販売されている事例を見かけます。更にこういった事例について、ネット掲示板等では、建物代込みの表示は違法ではないという返答もよく見かけます。恐らく未完成の建売住宅と混同しているのでしょう。

条件付き土地を建物代込みで広告掲載を行うのは厳密には違法です。広告表現では、土地代はいくら、建物代はあくまでも参考プランでいくらの予定、という書き方にしなければなりません。「厳密には違法」というあいまいな表現になってしまうのは、〇〇法違反というものではなく、不動産公正取引協議会連合会が定める「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」の表示規約違反というのが正確な表現で、法律違反では無く規約違反という形になるからです。

ただ、この連合会の規約は、景品表示法に基づいて公正取引委員会が認定した規約ですので、法律に準ずるものですし、この規約違反は最終的には景表法違反になるものと思われます。ですので一般的には違法と呼んで問題ないと思います。

これが建売住宅の未完成物件であれば、建物は出来ていなくても、最低でも建物の建築確認申請が通った後で、確認番号がはっきりしている状態でなければ販売できないルールになっています。このあたりの取り決めは少しグレーなのですが、建売住宅の場合は建物内容が決まっていないければ売ってはいけないというルールがあり、その内容確定の手段の1つとして確認申請取得という条件を付けていると思われます。

建物図面

建売住宅は未完成であっても建物内容は決まっています。

しかしここまで読んでお分かりの通り、完全に法律の何条違反というような明確に言い切れない内容になっていますので、とても分かり難いルールです。一方で、宅建業者に対しては、建築条件付き住宅の広告の規制はこうである、建売住宅の広告規制はこうである、という話は割とよく出てくる話でもありますので、プロとして知らないという事はあまりありません。それでも違法広告が普通にあるのは、業界のモラルがあまり高くないという事でもあります。

私見では、こういった違法広告を堂々と行っている会社の建築条件付き土地の購入はあまりお勧めしません。細かな規則とはいえ、堂々とルール違反を行っている会社が建てる建物がどの位信用できる建物になるのかが不安だからです。広告掲載は違法だけれども、お客さまへの対応は誠意がある、という事は現実的にはあまり考え難いと私は思っています。

建物レベルがお勧めできない会社も中にはあります

また、建築条件付き土地を販売している建設会社の中には残念な事に建設レベルがとても低い会社が混じっています。もちろん条件付き土地を販売しているすべての建設会社のレベルが低いという話ではありません。が、それなりの率でダメな会社も混じっていると考えるべきです。

もちろん建設会社も商売ですので、自社で建物を建てるために、様々な方法を考えます。条件付き土地の販売もその1つです。一方で注文住宅中心でお客様から人気がある工務店等では、こういった建築条件付き土地の販売をする事はあまりありません。土地とセットにしなくても、お客様が付くからです。

建物のレベル

建築レベルが低い建物会社が指定されているケースは普通にあります。

例外もたくさんありますので、一律には言えないのですが、普通の注文住宅の建築ではお客様が付かないため、人気のありそうな土地を無理して購入して、その土地に建物を建てる事で食いつないでいる建設会社もあります。その場合は、なぜその建設会社の人気が無いのかを考えなければなりません。

建築条件付きの土地に建てる建物で、想定プランからほとんど建物内容が変更できないという会社もあります。これも様々な理由がありますので一概には言えませんが、建築技術が高く無いから、というケースもある事は知っておきましょう。

技術が無いがゆえに、建物のグレードアップができないという事も普通にあります。例えばお客様が長期優良住宅の建物を建てたいと考えていたとしましょう。ですが、長期優良住宅の建物を建てる事ができる会社は、技術が高い上位2割位です(これは諸説あります。棟数ではもっと比率は高いのですが、それは上位の会社が数多く建てているからです)。

また、理由は分かりませんが、そもそも間取りすら変更できないというケースもあります。決まったパターン以外作りたくないのか、既に材料などを仕入れていて変更が聞かないのか、理由は分かりませんが間取り変更すら嫌がる会社もあるようです。

私見では、建築条件付きの土地を買い、指定の建設会社で家を建てる場合には、第三者の検査会社を買主さんの費用で雇い、通常以上の検査ができる体制を整えるべきだと思います。あまり人や会社を疑うのは良くない傾向かもしれませんが、建築条件付き土地に建てる建物関連はトラブルが多いという現状を考えますと、ある程度の保全策は考えるべきだと思います。

建築条件付き土地の契約はトラブルを起こしやすいタイプの契約です

これは建築条件付き土地の契約自体がダメという話ではありません。しかし、このタイプの契約はトラブルを起こし易いという側面があります。なぜトラブルになるかと言えば、土地を買うお客様の意識と、販売している不動産会社との意識に大きな差がある事が多いからです。

ギャップ

トラブルの真因は意識の差だと思っています。

購入者は、自由設計ができる土地を買い、自分の望む注文住宅を建てられるというイメージを持っています。それに対し、不動産会社側は、建売住宅がたまたま完成していないだけで、形式上建築条件付き土地の契約にしているだけ、という意識を持っていることが良くあります。

もちろん法的な側面を見れば、お客様の方が正しいのですが、実際には不動産会社側がそう考えていないケースは珍しくありません。本当は建売住宅なのに、規制の問題で建築条件付きの土地といった形式をとっているだけという意識が強いと、この感覚のズレはとても大きくなります。

そしてお客様側は、自由設計のはずなのに、求める性能の建物を建てられない、仕様も満足できない、間取りすら自由にできない、という不満が溜まり、トラブルを引き起こすケースは珍しくありません。

対処策としては、法律でこうなっているから、とか、正しいはずという意識を強く持ち過ぎず、現実としてどう対処するかを考える方が良いと思います。そのためには、その建設会社がどのような建物を建てているのか事前に建設中の物件を見せてもらうとか、施工期間は、自分で検査会社を使い、定期的な検査を入れるなどの手配を考えるべきではないかと思います。

満足できる不動産を手に入れるためには、このような細かな注意は欠かせないと思います。

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