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不動産用語解説シリーズの第6弾は、「任意売却」についてです。通常任意売却の話は、競売との比較等、売る方の立場で話される事が多いのですが、このページと動画では、買う方の立場から見た任意売却物件についてお話しします。

まずは、動画をご確認ください。

今回の動画は少し時間が長くなりましたので、レジュメ的に内容を下記に簡単に示します。動画と併せてご確認下さい。

任意売却物件の競売と比べた場合のメリット

まずは競売物件を購入する場合と比べたメリットには次のものがあります。

任意売却物件は契約前に建物内部を見る事が出来る

競売物件では、建物の場所は分かりますので外から立地や建物状況を確認することはできますが、実際に中に入って内部を確認することはできません。競売物件の情報は「不動産競売物件情報サイト」で検索することが出来ますし、建物の内部については3点セットと呼ばれる資料を見る事で室内の写真を見る事は出来ます。

しかし、部屋の感じが分かる写真だけですので、詳しい室内の様子までは分かりません。特に物件が戸建住宅の場合、もし建物に問題や欠陥があったとしても、その事を事前に調べたり確認したりすることができません

雨漏り等の欠陥

競売物件な中を確認出来ないため、建物トラブルがあったとしても把握できません。

執行官の意見については、事前に読むことは出来ますが、執行官は法律のプロであっても建築のプロではありません。法的な内容は事前にチェックできるとしても、建物の技術的な内容については、ほとんど分からないのが実情です。

建物に問題がないかどうか確認するためには、建物検査、インスペクションを受ける事が一般化しつつありますが、競売物件についてはそのような検査を事前に行う事ができません。検査ができないという事は瑕疵保険にも加入できないという事になります。

その建物が全く問題が無いと確信が持てれば別ですが、不安がある場合には、その不安を解消させる手段が無いまま、購入するかどうかを決めなければなりません。

これと比べ、任意売却の場合は、売主さんが了解すれば内見はもちろん建物検査も行えますし、その検査が通れば保険の加入も可能です。戸建住宅の建物をそのまま利用しようと考えている場合は、この内部チェックや検査ができるかどうかは、大きな違いとなります。

任意売却物件では住宅ローン特約を使う事が出来る

また、任意売却物件では住宅ローンの利用が簡単です。競売物件でも今では住宅ローンを使う事が出来ますが、万一このローン審査が通らなかった場合は、お金を現金で用意しなければなりません。また、引き渡しまでの期限は決まっていますが、銀行などの担当者が競売物件に不慣れな場合には審査に時間がかかり、その結果引き渡しまでに融資の実行が間に合わないというリスクも残ります。

住宅ローン

競売物件では住宅ローンやローン特約の使い勝手が良くありません。

これに比べ任意売却物件では、通常の中古住宅と同じような売買契約を締結しますし、その契約書内で引渡しの時期も設定できますので、融資が間に合わないというリスクはほとんどありません。更に万一住宅ローンの審査が通らない場合には、契約を解約できるという特約も設定できます。

物件の状況が分かり、借り入れする方の属性が問題なければ、ローンが通らないという可能性は低いものの、万一ローン審査が通らなかった場合のリスクを考えますと、この住宅ローン特約が使えるというのは大きなメリットになります。

任売却物件は売主が退去した状態で引き渡しを受けられる

また、競売物件との大きな違いは、引き渡し時に物件が空き家の状態になっているかどうかです。競売物件の場合は、最初から空き家でない限りは、引き渡し時にも売主さんがそのまま住んでいます。そして競売で落札できた場合には、その住んでいる方に対して物件を明け渡してもらうよう交渉しなければなりません。

空き部屋

競売物件の場合は空け渡しも必要となりますが、任意売却についてはその心配はあまり必要ありません。

明け渡し交渉には時間と費用が掛かる事が一般的です。引っ越し代相当の金額や引っ越し先の賃貸物件の敷金や礼金分まで負担しなければならないケースもあるようです。

もちろん裁判所に依頼し、強制退去させるという方法もありますが、こちらも一定以上の費用がかかります。実際には、こういった金額を最初から想定して、その分を引いた金額で入札価格を設定するでしょうから、金額的なロスは想定以上に出ないかもしれませんが、手間がかかるという点は残ります。

この競売のケースと比べ、任意売却では、引渡し前に引っ越ししてもらい、完全に空き家の状態で引き渡しが出来ますので、こういった手間や余計な費用を払わずに済みます。

一般の媒介物件と比べた場合のメリット

任意売却物件といっても、実際に行う事は通常の売買物件とあまり変わりません。売主さんが売り急いでいる場合には金額が相場よりも安くなることもありますが、そうでないケースもあります。金額以外では、メリットは頭金を無しにできる可能性が高いという点だと私は思っています。

頭金無しで物件購入できる可能性が高くなる

通常の売買物件では、頭金を一定金額入れます。売買代金の1割相当とか、50万円、100万円という単位の金額を契約時に支払うケースが一般的です。ですが任意売却物件の場合には、それなりの確率で頭金はゼロにできます。この売却に関わるお金は、原則として売り主さんにローンを貸していた金融機関が管理します。つまり手付金がいくらであっても、売主さんはその金額を使う事は出来ず、金融機関が預かるだけです。

頭金のイメージ

任意売却の場合は、頭金ゼロで契約できる可能性が高くなります。

この場合、売主さんは事前に使えないのであればいくらであっても問題は無いため、結果として手付金がゼロになるケースはよくあります。そして、買い手が売買代金の100%を借り入れるフルローンを使う場合には、事前にお金を用意する必要がなくなるため、この手付金ゼロは、それなりにありがたい話になります。

任意売却物件を購入する場合のデメリット

実際のところ、任意売却物件を買う場合、買い手側にそれ程大きなデメリットが出る事はありません。ただ細かなデメリットや、当初メリットを考えていた点がメリットではないというケースもありますので、注意喚起的な意味で注意点を記載します。

途中解約となる可能性が少し残る

任意売却の場合は、一般的な売買と異なり、買主さんと売主さんの意思だけで全て決めるという事ができません。特に金額については売り主さんが了解したとしても、後ろにいる金融機関が了解を出さないと最終的に引き渡しまで進むことができません。

解約のイメージ

任意売却の場合、売主さんがOKでも金融機関がNOという事があります。

通常は売買契約前に、金融機関にこの金額で契約して良いかどうかを打診しているため、契約後にキャンセルになるケースは多くありません。ただ、最終的には金融機関の上層部の決済が必要となり、その決済時にやっぱりダメという事になる例がゼロではないため、契約後に解約になる可能性が通常の取引よりも少し高くなります。

このあたりは金融機関によっても違いますし、時期によっても異なるようですので、判断がし難いのですが、契約書上には金融機関が了承しなかった場合には解約できる旨の条文が入る事から、解約の可能性はゼロではありません。

仮に解約になったとしても元から手付金は入れない事が多いですし、仮に入れたとしても返金されるような内容になっていますので、買い手側に金銭的なダメージはありません(正確に言えば印紙代分は損をします)が、手間の分だけ損をするという事もあります。

金額が相場から比べて安いとは限らない

また、競売や任意売却と聞きますと、通常よりも価格が安いと考えている方が多いと思います。ですが実際に任意売却物件として公開されている物件のすべてが安いかと言えば、そうでもありません。中には相場と比べても高いという物件も混じっています。

実は高い

任意売却物件だからといって安いとは限りません。

これは売り主さん側に付いている金融機関が、実際の相場を知らなかったり、ローンの残債額から考えてあまり安く売りたくないという意図があったり等、様々な理由があるためですが、現実問題として、すべての任意売却物件が安いとは限りません。

もちろん全ての任意売却物件が高いという事でもなく、相場よりも高いものもあれば相場通りのものもありますし、若干安く出ているという事もあります。結局は通常の物件の購入と同じように、相場をきちんと把握した上で買うかどうかを決めるという事になります。

司法書士が売り主側の金融機関から指定される

こちらも細かな話ですが、司法書士は売り主さん側の金融機関が指定するため、買い手側で選ぶことが出来ません。この場合には2点ほどデメリットが出る可能性があります。1点は、手数料が高い司法書士を使わざるを得ないというケースが出る点、もう1点は、ネット銀行等を使う場合に不具合が出る可能性がある事です。

司法書士のイメージ

任意売却物件は登記の際に使う司法書士が指定されます。

1点目の手数料とは、司法書士さんに払う手数料の事です。引き渡しの際には登記関連費用がかかります。その金額の半分近くは登録免許税等で一律の金額ですが、それとは別に司法書士の先生に支払う手数料がかかります。そしてその手数料は司法書士さん毎に異なります。一般的に買い手が選ぶ場合と異なり、指定が入る場合は、その司法書士さんの手数料は高くなるケースが多いようです。実際には数万円の差なのですが、この点は予め織り込まなければなりません。

もう1点のネット銀行を使う場合にはもう少しやっかいです。ネット銀行の場合には、引渡し自体をネット銀行指定の司法書士事務所内で行うケースも多いため、ネット銀行さん側で司法書士を指定します。しかし任意売却の場合は売り主さん側が司法書士を指定するシステムとなっているため、どこかで折り合いを付けなければなりません。最悪の場合、両方の司法書士が立ち会う事になり、その場合には通常よりも手数料がはるかに高くなります。

現実的には任意売却物件の場合にはネット銀行を使わず、店舗のある銀行のローンを使うケースが多くなるのですが、どうしてもネット銀行を使いたいという場合には、費用が余分にかかる可能性が高い事を覚悟しておく必要があります。

任意売却物件の購入の場合には、このような内容を知っておく必要があります。他にも細かな話はあるのですが、買う立場では大体このような内容を知っておけば、問題にはならないと思われます。

任意売却一般については、専門の会社が多数ありますので、そちらに問い合わせするか、サイト等で確認される事をお勧めします。

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