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戸建住宅では、新築中古を問わず、1階のリビングに階段があって、2階に上がるときには必ずリビングを通る設計になっている建物がよくあります。一時期子供の引きこもりが話題になった時に、この間取りであれば子供は引きこもりにならないと言われたため、お子さん連れの家族では、この間取りは今でも一定の人気があるようです。

ただ、このリビング内階段にはデメリットもあります。このページではリビング内階段のメリットとデメリットについてお話ししたいと思います。

リビング内階段が子供の引きこもりに効果があるかどうかは微妙です

リビング内にある階段

リビング内階段は見た目は良い事が多いのですが…。

リビング内階段のメリットは、一般的には2つあると言われます。1つは、通常2階にある寝室に行くには必ずリビングを通らなければならないために、家族間の会話やコミュニケーションが取りやすいという点、もう1つは、リビングの見た目が広く見えるという点です。

私見ですが、1番目の家族のコミュニケーションが取れるという意見にはあまり賛同できません。間取りと家族や子供の成長については色々な事が言われていますが、完全にこうであるという結論が出ている訳ではありません。

またこのような子供になる率が高いというような統計的に有意と思われるデータも無いと思われます。もちろん現時点では判明していないだけかもしれませんが、この種の意見は結構あやふやなものが多く、どちらかと言えば建設会社の営業トークとして使われているだけで、実際の効果の検証は行われていないと思っています。

もちろん好みでリビング内階段を入れること自体は問題ありませんが、子供の成長のためとか家族のためという考えは特に入れなくても良いのではないかと思います。

リビングの見た目が広くなるという点は私も同感です。ですが、この広く見えるという効果を得る代償に、断熱と構造の問題が出る可能性は考えなければなりません。

建物の断熱がうまくできていない建物では冬は寒いリビングになります

リビング内階段のデメリットとして良く言われるのは、冬にはリビングが寒くなるという事です。そして大半の家ではこのデメリットが当てはまります。中古住宅はもちろんの事、新築でも断熱をきちんと行っている一戸建ては少ないからです。

寒いイメージ

建物全体の断熱が出来ていないと、冬には2階の冷気が下りてきます。

建設会社や工務店、ハウスメーカーでは、自社ではこれだけの断熱材を使っているから、と説明される事も多いのですが、それがどのレベルの断熱性なのかをきちんと説明される事はあまりありません。よく使われる次世代省エネレベルで断熱性を設定していますから、という説明も実はあまり断熱性の高さを表していません。

次世代省エネレベルというと、次の世代でも使えるくらい高性能のものというイメージを持たれがちですが、そもそもこの基準が設定されたのは1999年で、20年近く前の基準です。そして世界の先進国の断熱レベルを考えた場合、この次世代省エネレベルは大変お粗末なもので、このレベルでは断熱性が高いとは言えません。

実際に次世代省エネレベルで建物を建て、リビング内階段を入れた場合には、冬のリビングは寒くて仕方がないでしょう。リビング内階段で問題がない断熱レベルを考えた場合、最低でもUA値(外皮平均熱貫流率)で0.87以下位の数値は要求されると思います。個人的には0.5以下位が望ましいと思っています。

ただ残念な事に、このUA値について気を付けている建設会社はあまり多くありません。それどころか存在を知らない会社もたくさんあります。リビング内階段を提案してくる会社については、断熱のレベルをどの位と考えているかを聞いてみる事をお勧めします。これが断熱材の話しかしない会社であれば、あまり断熱に気を使っていない会社であると考えられます。

広く見える効果と耐震性能が相反することもあります

リビング内階段のメリットは、リビングが広く見える、解放感を感じるといったあたりでしょう。また、階段を付けるとともに吹き抜けをセットにするプランも多いと思われ、横方向だけでなく、高さ方向でも広がりを感じることができます。

風通しが良い階段

蹴込み板を無くすことで風や光が通り易くなる点は良い点です。

更に階段の蹴込み板を無くすことで、光や風を通し、より解放感を高める事も可能です。建築家の設計ではこの蹴込み板を無くすプランはよく見かけます。さらに手すりを細い金属性のものを使ったり、側板を無くしたりなどで、階段の圧迫感を減らしている例もあります。

ただ、1階のリビングを広く、階段もリビングと一体化し、吹き抜けもセットで作ると解放感は高くなりますが、その分耐震性が劣る事があります。耐震性や構造の強さは室内に大空間を作るという事と相反します。もちろん他の部分を強化することで強度とのバランスを取れば良いのですが、間取りのみ注意していて構造のバランスを考えない会社が建てた場合には、その分地震の際のリスクは高くなります。

間取り1つの問題でも全体のバランスを考えなければなりません

これは決してリビング階段はダメとか作るなと主張しているのではありません。ただ、単にリビング階段が子育てに良さそうだからとか、見た目が良いからという理由で、他のバランスを考えずに作ると大きな問題が出る事があると言いたいだけです。

バランスのイメージ

あくまでもバランスを考えましょうと主張しているだけです。

そんなことは建築のプロが考えれば良い事だと皆さんは思われるかもしれません。ですが残根な事に家を建てる人たちのレベルが全員高いとは限りません。誤解を恐れずに言えば、構造や断熱性に関しては、プロであってもよく知らない人の方が多いと思っています。

構造については大きな地震が無いと問題が発覚しません。そのため問題がある建物を建て続けても、建てている人や会社が問題があると自覚しない事も多いからです。

また断熱については更に詳しくありません。建築基準法上で断熱についての記載はありませんし、先ほどお話しした次世代省エネ基準であっても努力目標に過ぎず、実際にもそのレベルに達している建物は半分も無いのではないでしょうか。

ではどうしたらよいかと言えば、家を建てる人、家を選ぶ人自身が建物について詳しくなるしか方法はありません。構造や断熱についての知識は、決して難しいものではありません。実際に断熱性が高い建物を施工すること自体は難しいのですが、知識として知るだけであれば書籍やサイト上に情報がたくさん載っているからです。

ですが、このような知識が無いまま、リビング内階段が良いと信じ、他の点は考えずに取り入れると、後で後悔することになり兼ねません。断熱については「3-02-18.プロもあまり詳しくない断熱について知っておきましょう」も参考にしてください。

また、リビング内階段を入れないとしても、家全体の断熱をしっかりとした方が、人の健康にも良い家になります。この話は「4-02-03.ヒートショックに強い家は住んでいても快適です」のページを参考にしてください。

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