不動産情報の囲い込みに対する売主の対策について考えてみました

昨日は不動産業界の透明度について簡単にお話ししました(「日本の不動産取引の透明度は世界で26位となっています」参照)。この透明度が低いと言われる理由の1つに、両手取引に係る不動産物件情報を囲い込むという問題があります。

ちょうど日経新聞でもこの問題について取り上げられていました。この記事を受けて、物件の囲い込みによるデメリットを受けないためにどうしたら良いかを考えたいと思います。

この囲い込みを行う不動産会社に不動産の購入や売却を依頼すると、自分が知らないうちに百万円単位で損をする可能性が高くなります。このような不動産仲介の状況を知っておきましょう。

不動産情報の囲い込みに関する記事を良く見かけるようになりました

囲い込みのイメージ

不動産情報が広く告知されず、最終的に安く売らざるを得なくなるのは、避けたいところです。

ひと昔前であれば、これらの囲い込みについての話は、不動産業界の人であれば知っていても、一般の方が知ることはあまり無かったと思います。このような内容のニュースを見かけることがあまり無かったからです。

それがここ最近では良くニュースなどで見かけるようになりました。主に経済誌などで取り扱われているようです。
不動産情報の囲い込み横行 売り主の対策は」(日本経済新聞)
大手不動産が不正行為か 流出する“爆弾データ”の衝撃」(ダイヤモンドオンライン)

国土交通省でもこの囲い込みに対する制度を取り入れる様子です。ただ、この制度が具体化し、実際に正しく運用されるまではまだまだ時間がかかるのではないかと思います。

この囲い込み対抗する制度の1つとして、2017年4月の宅建業法改正の中の一部に、他の業者から申し込みがあった場合には、売主にその報告をしなければならないという条文が追加されました。

媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、当該媒介契約の目的物である宅地又は建物の売買又は交換の申込みがあったときは、遅滞なく、その旨を依頼者に報告しなければならない。 上記の規定に反する特約は、無効

買付があれば売り主さんに報告するのは当然の義務だと思うのですが、このような条文を入れなければならないほど、実態はきちんとしていないという事なのだと思います。

売主が情報の囲い込みによってどのようなマイナス点があるかについては「第1章.その不動産が高く売れるかどうか」のページでも解説しています。よろしければこちらのページもご覧ください。

売主の対策の1つに一般媒介が良いと言われますが…

この情報囲い込みに対する方法の1つに、売主が不動産会社と交わす契約を専任媒介ではなく、一般媒介にすべき、という話があります。一般媒介契約では、売主が複数の不動産会社と媒介契約できるため、物件情報を隠そうと思っても隠せない、という理由によります。

前述した日経新聞の記事でも、この方法も検討できる1つとして挙げられていました。ただこの記事では懸念点として、一般媒介契約とした場合には、不動産会社が積極的に営業しない、という点も書かれていました。これは間違いではありませんが、実務を行っている私から見ると、少しニュアンスが違う感じを受けます。

営業活動といっても広く告知するかどうかの差がほとんどです

告知のイメージ

どれだけ幅広く告知できる科の差が大きいのです。

営業活動といっても、実際に行うことは広く告知するかどうかです。そして片手取引の場合、買い手のお客様に告知活動を行うのは買い手側の不動産会社です。

売り手側の不動産会社が積極的に広告を行うこと自体、両手取引を強く意識した活動です。幅広く告知したいと考えた場合には、売り手側の不動産会社は積極的な広告宣伝よりも、買い手側の不動産会社のバックアップに徹する方が、より広く告知できると思われます。ですので、一般媒介だと広告が出なくなる、という考えは少し違うのではないかと思います。

一般媒介の場合は不動産の物件調査に手を抜かれる可能性が怖いと感じます

調査のイメージ

一般媒介の場合はきちんとした調査が、省かれるのではないかと恐れています。

では、一般媒介の方が良いのかと聞かれると、別の問題があります。それは売り物件の物件調査がどのレベルまで行われるかが不安になるからです。

売り手側の不動産会社は単に物件情報を公開して終わり、という仕事ではありません。その不動産物件に問題がないかどうか、売主さんでも把握していないことを色々と調査しなければなりません。

具体的には法務局などで公図、地積測量図、謄本などを取り寄せます。きちんとした不動産会社であれば、売り物件だけでなく、周辺の測量図などもセットで取り寄せます。こういった手間と費用は意外とバカになりません。また市役所などの自治体への聞き込み調査も必須です。

土地や戸建住宅であれば、道路付けや地域の法的な規制などを確認しなければなりません。さらにガスや水道のインフラなども調べておかないと後でトラブルになりかねません。また境界がはっきりしない場合には、筆界確定作業などを行うかどうか、行う場合にはその段取りなども行わなければなりません。

マンションであれば、最低でも「重要事項に係る調査報告書」を管理会社から取得しなければなりませんし、それで不十分と思われれば、さらに管理人へのヒアリングや図面の確認などが必要になります(「4-03-09.中古マンション購入前には「重要事項に係る調査報告書」を取得しましょう」参照)。これらの費用と手間も大変なものです。

そして、売り物件の媒介契約が一般媒介の場合、こういった調査をどこまで行うでしょうか。手間と費用をかけても契約自体が他社に取られるのであれば、調査は最低限、あるいはお客様が決まりそうになってから調べるということになるでしょう。

この場合には、重要な問題に気付かずに営業活動が進められることもあるでしょうし、営業活動時に正しい情報が買い手のお客様に伝わらず、後からトラブルになりやすいのではないかと思います。

ちなみに当社は両手取引をしない、囲い込みを一切しない、という方針で活動していますが、不動産を売りたいというお客様とは専任媒介契約を結ぶことにし、原則として一般媒介契約では契約を受けないことにしています。

ふくろう不動産は事前の調査を徹底することにしていますが、一般媒介契約ではこれらの調査がすべて無駄になる可能性が高くなります。またそこまで任せて頂けないお客様に対して、そこまでの労力と費用を掛けられない、というのが正直な理由です。これは不動産会社の方針によって違いがあると思いますが、同じように考える不動産会社は多いのではないかと思います。

囲い込みに対する現実的な対策を考えてみました

もし一般媒介契約で受けてくれる不動産会社がなく、それでも囲い込みで物件情報の告知が少なくなることを避けたいと考えた場合、具体的な対策はどのようなものがあるでしょうか?

不動産ポータルサイトの広告出稿状況を確認しましょう

ポータルサイトで見付けるイメージ

不動産ポータルサイトなどで、複数の会社が広告を出しているかどうかである程度判断ができます。

目安の1つとして、広告の出稿状況を見るという方法があります。両手狙いの場合には不動産物件情報の出され方が限られます。両手狙いの会社であれば、他社がその物件の広告を出すことを許さないケースも多いため、広告は売り手の側についている会社1社しか広告が出ていないことが良くあります。

片手でも構わない場合には大概複数の会社が広告を出しています。これが1社しか出ていない場合には、その会社は両手狙いの為、物件情報の出し方を制限している可能性が高くなります。自分で売りに出している物件の広告の出し方を見たり、同じ会社の広告の出し方を見ることである程度判断が付きます。

もしその会社が両手狙いで情報を制限している、と思われた場合にはそのような会社には頼まない、という選択肢があります。一度媒介契約を頼んだとしても、その有効期間は最大でも3ヶ月です。自分で頼んだ会社が物件情報の囲い込みをしていると思われた場合には、媒介契約は更新せずに、別の会社に頼むという方法が考えられます。

REINSの広告掲載が可能かどうかの設定を見せてもらいましょう

広告宣伝のイメージ

他社による広告宣伝が可能かどうかを調べるだけでも割と正しく判断できます。

媒介契約を専任や専属専任とした場合には、不動産情報システムであるREINSというシステムに物件の登録をしなければなりません。そしてそのREINS上に、不動産の細かな情報を入力しなければなりません。その入力項目の中に「広告転載区分」というものがあります。

これは他の不動産会社がその物件の広告を出しても問題ないかを確認する欄です。両手狙いの会社や物件の囲い込みをしたい会社であれば、この欄はほとんど「不可」となっています。つまり他者がその不動産物件の広告を出すことを認めない、ということです。

もちろん色々な条件があるため、囲い込みをしていなくても不可となっている例もあるかもしれませんが、これは1つの目安になります。一般の方は個人でREINSの画面を見ることができませんが、不動産会社立会いの元であれば、見ることができることになっています。ぜひ1度見せてもらい、その画面を確認するようにしましょう。

サクラを使うという方法もあるかもしれませんが…

電話のイメージ

他の不動産会社のフリをして電話して確認するという方法もありますが、お勧めしたくありません。

日経新聞の記事では、「確認のため、購入者を装った親族が連絡をすることがありますがよろしいですか?」と尋ねるのが良いかもしれない、と書かれていました。こういった方法もあるかもしれませんが、やり方を間違えると意味がない方法になります。

意味がない方法とは、一般のお客様のフリをして、売り手の不動産会社に直接連絡するという方法です。一般のお客様が直接その会社に連絡すれば、当然その会社は両手を見込めることになります。ですので、その物件が無いとか案内できないなどの悪い対応をするはずがありません。

どうしてもサクラを使うというのであれば、お客様のフリではなく、他のお客様を持っている不動産会社のフリをすることで、正確な判断ができます。両手狙いの囲い込みをしている会社であれば、他の不動産会社からのお客様は受け付けません。ここで不動産会社がどのような対応をしているかが、ある程度判断できます。

ただ、この方法はちょっと人をだますことになりますので、個人的にはお勧めしません。また、これだけ疑わなければならない会社であれば、そもそも媒介契約を結ばず、信頼できる会社と媒介契約を結ぶことが重要だと考えます。

この記事の内容を動画でも解説してみました

このページでお話ししました、囲い込み対策について動画でも説明してみました。その動画がこちらです。

よろしければ、動画もご覧ください。

 

ふくろう不動産に頼むという方法も、もちろんありますが…

売り物件の囲い込みをされない方法として、両手取引を行わない専門の会社に依頼するという方法もあります。そしてふくろう不動産は米国式エージェントサービスを行う、両手取引を行わない会社です。ですので、囲い込みが発生することはありません。

当社はどちらかと言えば、買い手の側に立つバイヤーズエージェント業務が中心です。不動産を売りたいという方のためにも、両手取引を行わないエージェントとして活動しています。そのため、サービスが買い手向けに特化していますので、正直それほどお勧めではありません。

ですが、ご相談には乗れると思いますので、不動産の売り方に悩んでいる方は、よろしければご連絡ください。

ふくろう不動産はこのようなポリシーで営業しています。当社の営業方針については「ふくろう不動産とは」のページやその子ページをご覧ください。また、サイトの記事の内容で不明な点や、ご意見・ご質問などがありましたらお問い合わせください。

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