非公開物件というのは掘り出し物でしょうか?

不動産の売り物件を探していますと、非公開物件、未公開物件というものを目にします。この「非公開」という言葉に「掘り出し物である」「お買い得である」という印象を与える効果があるためか、この非公開物件を多く取り揃えていると主張される不動産会社はたくさんあります。

ですがこの非公開物件が本当に掘り出し物かと聞かれますと、大半は掘り出し物ではない、とお答えすることになるでしょう。今回の記事では、このテーマについてお話したいと思います。

そもそも非公開物件とは何でしょうか?

この非公開物件、未公開物件とはそもそも何なのかを考えてみましょう。こちらには明確な定義がある訳ではありませんが、一般的に不動産業者が未公開物件、と話されている物件は次の2つの内のどちらかに該当することが多いと思います。

1.REINSに登録されていない物件
2.REINSに登録はされているものの、広告掲載が不可となっている物件
の2つです。

私見では1.のパターンの方が多いように感じます。このREINSとは何かについては「不動産の用語解説シリーズ001~レインズ(REINS)って何ですか?」の中の動画でも解説していますので、こちらをご参照ください。

REINSへの掲載は無料でネット広告が出せるようなものです。

不動産の売主さんが不動産仲介会社に売却を依頼する時には媒介契約という契約を結びます。そしてこの媒介契約を締結した場合には、特定のケース(一般媒介契約)を除けば、この物件の売却を依頼され、いくらで売りに出しているかについて、REINSというシステムに登録をしなければなりません。

このREINSへの登録を行う事で、他の不動産会社に売り物件の告知ができますし、広告掲載も可とすれば、他の不動産会社が自社の費用を使って広告も出してくれます。売主さんにとっては良いことづくめで、基本的にREINS掲載する事のデメリットはほとんどありません。

なぜ非公開物件となっているのかを考えなければなりません

このようなREINSへの登録は売主さんのデメリットがほとんど無いにも関わらず、実際に非公開物件がたくさんあるのはなぜでしょうか?この非公開物件の購入を検討する際には、この理由について考えなければなりません。

売主さんが非公開にする理由があるとすれば、自宅を売りに出していることを近所の人や知り合いに知られたくない、という事が考えられます。特に日本の場合は土地信仰が強いせいか、家を売るイコール何か問題があって売らざるを得ない、という感覚が残っている人もおり、そのために内緒で売りに出したいという事もあるでしょう。

ただ最近では、また首都圏ではそのような感覚は薄れていますし、実際にステップアップや利便性の良い場所への買い替えも普通に行われるようになったため、現実的には内緒で売りたいという方はものすごく少数派だとは思います。

なぜ非公開としているのか考える必要があります。

それにも関わらず非公開物件の数が多いのは何故でしょうか。これは売主さん側の都合ではなく、仲介会社の都合で非公開にされているケースも多いと思われます。これは売り物件を非公開とすることで、他の仲介会社が買手を連れてくることを阻止し、自社でのみ買手を探す活動を行いたい為です。

自社で買手を見つけてきた場合、1度の契約で売り手と買い手の両方から仲介手数料が手に入ります。これを業界では両手取引と呼びます。両手取引自体は違法ではありませんが、両手を狙うが故の囲い込みと言われる手法は、法律に反する部分がたくさん出てきます。この両手取引や囲い込みの弊害については、
不動産情報の囲い込みに対する売主の対策について考えてみました
不動産の用語解説008~両手取引とは何ですか~」(動画)
のページもご参照ください。

この囲い込みを行われますと、本来であればもっと早く高く売れてかもしれない不動産が、遅く安く売られてしまう事がよくあります。幅広く告知や広告を行う方が、より多くの購入希望のお客様を集める事ができるため、その分条件が良い購入者を見つけられる確率が高くなるからです。ですので囲い込みは売主さんにとって大変不利な話ではあるのですが、残念な事に仲介会社の作戦に引っ掛かってしまう売主さんがたくさんいるのも現実です。

これらの話はネットで検索すればすぐに分かる話ではありますが、不動産の売主さんは高齢でネットの利用に詳しくない方も多いため、結果としてこのような囲い込みが横行するような事態となっています。

売主に誠意がない会社が買主に誠意をもって接してくれるでしょうか

このように、非公開物件が囲い込み物件である場合、売主さんについてはデメリットが大きい事をお話しました。しかしこれは買主側から見れば、特に問題は無いのではないか、と考えられる方も多いかと思います。

確かに売主側に不利、という事は逆から見れば買主側に有利とも言えますので、この考えが必ずしも間違いとは言い切れません。実際に相場よりも安い価格であっても、仲介会社はこのお客様であれば両手取引になると考えれば強引にその取引をまとめたいと考える事もあるでしょう。その場合は買主側からとって安い買い物ができる、という可能性は確かにあります。

しかしその一方で、売主さんにこのような誠意のない対応、売主さんが不利になるにも関わらず、囲い込みを行う会社が買主の為に誠意をもって対応してくれるかと聞かれれば、あまり期待はできないと思われます。あくまでも自社の利益重視で行う取引ですので、買主にとって不利な条件があったとしても、その対処はしてくれない可能性が十分にあります。

契約書や重説の説明を正しく行ってくれるでしょうか?

例えば今では不動産の買主に対しては、建物状況調査についての説明と、要望があった場合にはそのあっせんが義務付けられています。この建物状況調査が何であるかについては「2018年4月1日より宅建業法が代わり、建物状況調査の項目が加わりました」の記事をご参照ください。

しかし、両手狙いでとにかくこの取引を成立させたい仲介会社は、往々にしてこの建物状況調査を嫌がります。建物の検査の結果、不具合が見つかり、契約が流れる事を恐れているからです。建物状況調査の説明は法律で義務付けられていますが、この説明義務をなるべく簡単に済ませ、かつ調査を行わない方向で契約をまとめようとしている会社も多数あります。

両手狙いの会社のすべてがそうだとは言いませんが、そもそものREINSの登録義務を果たさない会社が、建物状況調査の説明義務を間違いなく果たしている、と考えるのは無理があるような気がします。

一見さんであるあなたに特別な優遇をしてくれるはずはありません

ここまでの話は、非公開物件が両手狙いの前提で進んでいると仮定して話を進めてきました。実際に非公開物件のすべてが両手狙いのためとは限りませんし、売主さんの希望・都合で非公開となっている場合も絶対にないとは言い切れません。その場合の非公開物件はお勧め物件、お買い得物件なのでしょうか。

現実にはそのようなケースはまずあり得ないと私は思います。居住用の不動産を購入される方は、ほとんどは一生の間に1度しか、せいぜい2度しか不動産を買いません。つまりこの後リピーターになる可能性はほぼ無いタイプの買い物となります。

そしてリピーターになる可能性が無い方に対し、不動産会社が特別に優遇する理由は全く考えられません。不動産会社の人が優遇したいのは、何度も買ってくれる建売会社の仕入部や、買取再販の不動産会社の仕入部の人であって、1度しか購入しない一般の方ではありません(他にもこれらの人を優遇する理由がありますが、ここでは省略します)。

もし居住用の不動産を購入しようとしている方で、仲介会社の方が自分だけ特別対応をしてくれている、と考えるのは甘いとして言えませんし、そのようなトークを行う営業マンは、信用すべきかどうかを考えるべきです。1回こっきりの取引である一見さんに、特別な対応や配慮をするという事は理屈から考えるとあり得ない行為だからです。

あなたにだけ特別に、という事があると思いますか?

ちなみに当社:ふくろう不動産では、お客様に対し、あなたにだけ特別にこうします、という事を言う事はありません。実際に特別な事をしてあげる事はまずありませんし、できない事をできるとも言えません。どのお客様であっても、いくらの物件を購入されるお客様であっても、行う事は同じですし、提供できるサービスも違いはありません。ですので、特別であると言いようがないのが実情です。

もし仲介会社が、あなただけに特別に、という話をされた場合、どういった点が特別なのかを詳しく聞いてみると良いと思います。本来はもっと高い物件なのに、特別にあなたにご紹介します、という事を言われた場合、本当に特別に価格が安いのか、建物に問題が無いのか、多くのデータを見せてもらい、判断しなければなりません。

ただ不動産の場合、価格が意味もなく安いという事はありません。価格が安い場合には安いなりの理由があると考えるべきですし、その理由を調べるためにも、ある程度の勉強は必要になると考えるべきだと思います。

会員のみ閲覧できるシステム自体が悪い訳ではありませんが

非公開物件の詳しい状況を知るには、その不動産会社の会員登録をしなければならないとしている会社もたくさんあります。会員登録自体が悪い訳ではありませんが、登録するためにどこまで個人情報を出さなければならないかについては注意が必要です。

登録の為には、名前やメールアドレスだけでなく、住所や電話番号等の情報を要求される事もあります。これがどのように使われるかについても考えなければなりません。まずはプライバシーポリシーがあるのかどうかを確認する必要があります。このプライバシーポリシーがすぐに分かる場所に無い場合には、登録は見送る方が賢明だと思います。

さらに言えば、仮にプライバシーポリシーがきちんとしている場合であっても、本当に登録が良いのかどうかは微妙な感じはします。基本的にこのような会員登録は、営業先のリスト化のために作られています。もちろんすべての不動産会社が変な営業を行う訳ではありませんが、住所と電話番号を相手方に示すことで、営業電話や突然の訪問等を受ける可能性が高まります

営業されるリスト

営業されるためのリストに載る事も考えられます。

営業される事を気にしないという方であればまだしも、大半の方は不動産会社から営業される事を快く思わないでしょう。この営業されるリスクをあまり軽視しない方が良いとは思います。

また、ここまでお話したような内容を把握されている方であれば、非公開物件を見る事ができるシステムにそもそも登録しないでしょう。逆に言いますと、偏見を持った見方かもしれませんが、このような非公開物件を見るために登録される方は、不動産について勉強しない買主のリストを作るフィルタリングでもあるように感じます。

もちろんこのような会員制のシステムを組んでいるすべての不動産会社が両手狙いでかつ問題がある会社であるとは言えません。ただ、その可能性もある会社である事も考え、こういった会社と取引しようとする場合には、登録前に事前に1度訪問し、営業マンと話をし、安心できるという確認が取れた後に登録を行う等、それなりの対処策を考えるべきだと思います。

この記事の内容を動画でも説明しています

この記事でお話しました内容は、下記動画でも説明しています。

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