合板の寿命や耐久性はどの位と考えればよいですか

以前に木造住宅の寿命についての記事や、集成材についての記事を書きました(「木造住宅の実際の寿命はどの位と考えるべきでしょうか~世間一般のデータに惑わされないために」:参照)ところ、合板は寿命が短いのだから、木造住宅がそんなに長い間持つはずはない、という意見がいくつか出てきました。ここで語られる合板は、構造用合板の事で、この合板に問題が出ますと、建物の強さに問題がでるはず、との主張につながっています。

合板のサンプル

合板は寿命が短いという意見は本当なのでしょうか

私自身は材料の専門家でも構造の専門家でもありませんが、この話には極論も多いと感じますので、ご参考までに私見を述べたいと思います。

合板の寿命が短いと主張されている方は自身の経験から語っている例が多いようですが

この合板の寿命が短いと主張される方の仕事として、次の2つのタイプを多く見る事ができます。1つはRC造(鉄筋コンクリート造)を強く推す仕事の方々、マンションの分譲会社の方やRC造を得意とされている建設系の方々です。そしてもう1つは同じ建設系でも自然住宅、無垢の木材を多く使う建設系の方々です。

この2つのタイプの方々は、嗜好性としては真逆と言ってよいくらい異なるのですが、合板はダメと主張する点では一致するという少し珍しい展開になっています。もちろんどんな方の意見であっても重要なのは、その意見が正しいのかどうか、どれだけの根拠で語っているのかであって、発言者自身がどうであるかは関係がありません。ただ、合板がダメという意見を出す理由が、自社の製品等が良いと語りたいだけである場合も多く、根拠が弱いケースも多々見受けられる点が難点だとは思います。

そして合板の耐久性が無いと主張される方の根拠として「実際にダメになっている合板を見た」という経験からの話が多いように感じます。屋根の野地板で濡れてベコベコになっているものを見た、ですとか床板の下の合板がフニャフニャになっているのを見て、合板はダメである、と結論付ける方が多いように感じます。ちなみに建築の専門書でも同様の主張が書かれているのを見たことがあります。

野地板に使われている合板

野地板に使われていた合板がダメになっていたという専門書を読んだことがあります。

しかし、この話をもって根拠であると主張するのは無理があるように感じます。なぜならその合板がどのような合板であったのか、そして置かれた環境、使用状況等が良く分からず、適切な使用で無かったためにダメになってしまったケースも多いと思われるからです。

例えば野地板として使っていた合板がダメになっていた場合、なぜダメになってしまったのでしょうか。合板がダメになる原因として、水に濡れてしまったためにダメになるという事が多いのですが、野地板の場合、防水処理が適切でなかったため野地板を濡らしてしまい、ダメになったという可能性が考えられます。この場合は合板がダメというよりも防水工事がダメだっただけで合板の責任とするのは問題だと思います。

あるいは結露した結果合板が濡れ、ダメになったという可能性もあるでしょう。しかしこの場合も結露を起こしやすいような断熱処理や気密処理(正確には水蒸気密処理と言うべきでしょうか)を行っていたことが原因であって、合板自体の責任ではありません。

このような原因の考察が無く、ダメになっていた合板を見て、それがイコール合板はダメであると結論付けるのは問題であると私は思います。

似たような話の展開として、木造住宅でシロアリの被害があった建物を見て、イコール木造住宅はダメと結論を出すというものがあります。シロアリの被害にあった木造住宅はたくさんあるでしょう。その一方でその事実をもって木造住宅がダメであると言えるかと言えば、そうではありません。なぜシロアリ被害を受ける事になったのか、対策はどうしていたのか、被害の危険性と木造住宅である事のメリットとのバランスをどこで取るか、こういった話を抜きにして、一律に木造住宅がダメであるとは言えません。(こういった話を全て考慮の上で、木造以外の建物が良いと主張されるのであれば、それはそれで良いと思います。意見の1つとしてアリだと考えます。)

心理学の世界では「自分が見たものがすべて」という理屈があります。合板がダメと主張される方の何割かは、この自分が見て、ダメだったから自分の意見が正しいと強く主張されているように感じます。ただその意見が本当に正しいのか、どういった状況でダメであったのかについては、主張されている方自身も含め、より詳しく確認すべきだと思います。

バラバラになるような合板はそもそも構造用合板ではないとの指摘があります

先に述べました剥がれてしまうという合板は、そもそも構造用合板ではない可能性が高くあります。日本合板工業組合連合会(JPMA)の資料によれば、1990年以前に軸組み工法で使われている合板の大半は、そもそも構造用合板ではないとの見解を出しています(参照「合板の耐水性(JPMA)」)。

構造用合板

1990年以前に軸組構法で使われていた合板の大半は構造用合板ではありません。

現在国内で製造されている構造用合板のほとんどは特類と呼ばれるものが中心で、これは接着力の耐久性が高いものです。過去のそもそも構造用合板ではない合板がダメになっている現場を目撃し、その経験を元に本来は違うものである構造用合板までも耐久性が無いと論じるのは間違っているのではないかと思います。

ちなみにこの特類と呼ばれるジャンルの合板は、JAS 規格で定める連続煮沸試験、スチーミング繰り返し試験、減圧加圧試験に合格するものとなっており、それなりに水に強いとされています。もっともこの話は反論も多数あり、これらの試験結果は実際の数十年後の耐久性を証明するものではない、と主張される方もいます。またこういった耐久性試験を行っているのは、合板工業組合であり、合板を普及させる立場の人が行っているものだから、そもそも試験の結果が信用できない、と主張される方もいらっしゃいます。

これらの試験結果と実際の耐久性との関連性を示した明確な資料が無い状況では、どちらの意見が正しいと判定することは出来ませんが、反対者の意見も単なる推測であって、耐久性が無いという事を証明するものでもないという事は知っておくべきだと思います。この特類とは何かについては「合板の基礎知識(構造用合板の手引き:JPMA)」等の資料を参考にしてください。

更に余談ですが、合板が水に弱いのは接着剤そのものではなく、合板を構成しているベニヤ(単板)は水に濡れたり水蒸気を吸う事で収縮するが、接着剤は収縮しないので、その収縮率の差で剥がれるのだ、と主張される方もいらっしゃいます。しかし、もしこの主張が正しいのであれば、先に述べました煮沸試験やスチーミング試験で何らかの問題が出るのではないかと思います。日常の水蒸気等による収縮と比べて、試験で行われる環境の方が厳しいため、収縮の度合いが大きいと思われるからです。その試験に合格しているという事を考えますと、この主張が正しいのかどうかは疑問が残ります。もっともこの話も、実際の数十年後の耐久性を証明するものではないと言われればその通りなので、確実にどちらが正しいと言えるものでもありません。

林産誌だよりのデータに築30年の合板も問題ないというデータもあるようです

試験結果だけではなく、実際に年数を経た合板があれば、どちらが正しいのか分かるのではないか、という指摘もありそうです。特類の合板で数十年経過したものがあり、その強さを調べたデータがたくさんあれば、推論に頼らなくても良いのですが、残念ながら詳しいデータは存在しないようです。

時間経過のイメージ

実際に年数を経た例が多くあれば分かりやすいのですが…

ただ全くデータが無いかと言えば、少ないですけれどもいくつか調査データはあるようです。例えば「住宅に長期間使用された構造用合板の接着性能調査(技術部 生産技術グループ 古田直之)林産試だより」ではサンプル数は少ないものの

特類合板は築後30年経過したB30-Wにおいても木部破断率が比較的高く,新品合板と同様の傾向を示していることから,接着層の劣化はほとんど見られないものと考えられます

との記述があります。これは「地方独立行政法人北海道立総合研究機構 森林研究本部 林産試験場」のデータです。同じ執筆者である古田さんが書かれたものとして「構造部材としての合板の耐用年数は推定できるのか(技術部 生産技術グループ 古田直之)」という資料もあります。

この資料の中では、合板の耐久性はこの位である、という断言はありませんし、執筆者の古田さんも今後のデータの蓄積が必要である、と述べられており、結論が出ているという話ではありません。内訳を見てみますと、サンプルの大半は1類であって特類の合板ではなく、特類と思われるデータは2つだけであるため、本当に参考程度でしかないという問題はあります(更に2つのうちの1つは7年しか経過していない割と新しいものでした)。

ですのでこのデータからは、参考程度の話しか分からない、という結論でしかないのですが、全くダメ、完全にダメという結論でも無さそうという事になります。

合板は80年後でも多少の強さは残っていると思われます

これらのデータから実際の合板の寿命を予想することは簡単ではありません。ただ30年後の合板の木部破断率を見ますと、それ程ひどい状態ではない事を考えますと、50年程度は一定の強度は確保できそうな気はします。これは1類の話ですので特類であればもっと強度は残っているはずですから、80年くらいはある程度の強度を保てるのではないかという気もします。

繰り返しになりますが、正確なデータが無い以上、予想でしかありません。ただ予想を行うにしても、正しいデータを知った上で、予想すべきではないかと思います。

ちなみにこの記事を書いている中川自身が注文して建てた家は、構造用合板を全く使っていません。私はTIP構法というやり方で家を建ててもらいましたし、床もグランドピアノを置く場所を補強しなければならなかったのですが、大引きや束を増やすというやり方で対応したため、最終的に構造用合板は1枚も使わない形になりました。野地板も無垢材を使っています。

グランドピアノ

グランドピアノの補強にも結局合板は使いませんでした。

この話をしますと、構造用合板を擁護するような事を書いておきながら、自分は使っていないのは説得力が無いではないか、とお叱りを受けそうです。ただ私が家を建てた2001年当時は私も構造用合板に関する知識があまり無く、データも今以上に不十分であったため、安全側を考えて、合板を使わないようにしました(私自身が、ややアレルギー体質であったという側面もあります)。今であれば、構造用合板を使う事に、あまり抵抗は無いと思います。

ただそれでも、どうしても不安だという方は、TIP構法等合板を使わない構法もありますので、最終的には家を建てる方ご自身が決めればよいことだと思います。

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