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テレビ東京の人気番組「完成!ドリームハウス」は毎回楽しく見ています。この楽しくという部分には、凄いなと感じる部分と酷いなと感じる部分があり、正直ひどい内容と思われる回の方が多いのですが、先日見ました「家具職人が1,000万円台で建てるハウス」については、酷い内容は見当たらず、不動産屋的には真っ当な家という感じで見る事ができました。

それでも細かな部分では、なぜこのような造りに、と思われる部分もありますので、備忘録的にどうなのだろうと思う点を書いていきたいと思います。

また2016年7月に放映された「鎌倉の高台に建つガラス張りの家」については「ドリームハウスで放映された鎌倉のガラス張りの家について不動産屋的視点で考えてみました 」の記事でコメントしていますので、よろしければこちらをご覧ください。

値段は普通のローコスト住宅とあまり差がありませんが、考え方は良いと思います

この建物は、お施主さんが内装工事の一部を自分で行う、いわゆる半セルフビルド方式で、建設価格を抑えるというやり方で建てられています。ただ、この建物建設にかかった費用は1,900万円と表示されていました。これに施工(塗装など)を手伝ってくれた方へのお礼や、自分で調達した材料や器具などを加えていきますと、恐らく2,000万円弱の費用になるのではないかと思います。

セルフビルドのイメージ

セルフビルドで浮かしたお金を他の部分に使うというやり方でした。

建設費2,000万円というのは、高い金額ではありませんが、ものすごく安いかと言えば、実はそうでもありません。一般的に売られている建売住宅であれば、1,800万円前後で建てられる例が多いと思いますので、そう考えますとトータルでものすごく安いという建物ではありません。

ですが、これがダメかと言えば、そんな事もありません。セルフビルドで浮かした金額分を、他の快適性アップのために使っていると思われるからです。

具体的には、床暖房システムを広い範囲で入れたり、高価な壁紙やタイルを使っている部分です。また、2階に広いリビングを作るという作り方も、通常の建売住宅で望む事はできません。そう考えますと、抑えた費用分で、欲しい材料を入れたり、希望する間取りを手に入れたという事になりますので、考え方としてはアリだと思います。

人によっては、お金のかけ方のバランスが悪いと感じる人もいるかもしれません。ですが、バランスを自分で決めることが出来るというのも注文住宅の大きなメリットですので、お施主さんがこれで良いと考えるのであれば、良い費用の割り振り方だと思います。

建築家住宅は不動産屋的にはお勧めし難い内容が多くなります

この建物は施主の友人である建築家が設計したようです。この設計自体に大きな問題がある訳ではありませんが、一般的なアトリエ系建築家が好む設計が随所に表れています。そしてこの建築家的な造りは、不動産屋的に見ますと、ちょっとお勧めし難いというものがたくさんあります。

芸術性のイメージ

建築家が求めるデザイン性のせいで、安全性が少し劣る事があります。

好みの問題にも関わりますので、絶対的にダメという話ではないのですが、どういった点が建築家っぽく、どのような点が不動産屋的に不評なのかについて、お話しします。

キッチンとリビングとダイニングの段差は必要なのでしょうか

建築家住宅で良く見受けられるのが、キッチンやダイニング、リビングの床の高さを変えるという設計です。建築家の主張では、これで視線を合わせる、または視線が合わないようにする、更には空間の広がりを感じさせる、という理由で段差を付ける事を好む人が多くいます。

車いす

室内の段差はバリアフリーという観点から見れば良いものではありません。

一方でこの段差は、バリアフリーという考え方とは相反する事が多くなります。また、室内での転倒の可能性が高くなるため、小さな子供さんがいる家族や、逆にお年寄りがいる家族にはあまり好まれません。中古住宅の案内をする際に、たまに建築家住宅っぽい造りの戸建住宅を案内することもあるのですが、こういった段差については、否定的に捉えられる事の方が多いように感じます。

お年寄りが家の中で転倒し、そのまま寝たきりになる事例も多いという事を考えますと、見た目の問題だけでこのような段差を室内に作るのは、個人的にはお勧めし難いと感じます(「4-02-04.家庭内の転倒事故も死亡理由の上位です」参照)。もっとも、お施主さんが望んで作ったのであれば、余計なお世話なのかもしれません。

ですがこのお施主さんには小さなお子さんがいるようですので、お子さんの転倒対策は本当によく考えて欲しいものだと思います。

土を捨てる費用よりも基礎を階段状にする方が高いと思うのですが

先程お話ししましたリビング等の段差は、2階部分の話ですが、1階も段差を作る設計になっているようです。その理由として、元々の傾斜地にある土を捨てる費用が安くなるから、という説明がありましたが、恐らくこれは間違っているのではないかと思います。

土の搬出

土の廃棄費用よりも基礎の工事費の方が高くなると思います。

単に土を捨てる費用は確かに安くなるかもしれませんが、その分基礎の形が複雑になりますし、基礎の上に載せる土台なども複雑な形の上に載せなければなりません。その分の費用アップと、土の廃棄費用では、基礎の金額アップの方が大きいと思われます。

これも恐らくですが、土の廃棄費用を浮かすためではなく、デザイン上の問題で1階をスキップフロア風にしたかったのではないかと思います。ただ、前述しましたように、室内の段差は転倒の可能性を上げますので、個人的にはお勧めし難い設計だと思っています。

階段を片持ち階段にさせる意味はあるのでしょうか

この建物の1階から2階に上がる階段は大工さんが作り、2階から上部ベランダに出るための階段はお施主さんが作ったようです。階段を作れる器用さは素晴らしいと思いますが、その階段を片持ち階段にする必要はあったのでしょうか。

子供が落ちないか不安

室内の段差や片持ち階段は小さな子供が落ちてケガをしないかどうかが不安です。

片持ち階段は見栄えが良いとか光が通り易いという以外にメリットはありません。そしてこの位置の階段であれば、手すり部分から光が入るようにすれば、十分ではないかと思われる位置です。

手前側に側板を入れ、床と上の梁をつなげるだけでも強度や安全性は大きく上がると思うのですが、なぜそうしなかったのは分かりません。階段の取り付け部分の接合が歪み、踏み板が動くようになりますと、転倒の危険は本当に大きくなります。前述した床の段差以上に転んだ時のダメージは大きいでしょう。このデザイン優先による安全性軽視は、あまり好ましいものではないと思います。

建設当初は問題になる事はないでしょうが、5年後10年後に、階段の横の取り付け部分が劣化した場合にどうなるかは少し不安があります。

また、当然横への落下も気になります。最終的には手すりも付いた様子ですが、片持ちの不安定な部分に付く手すりですので強度には不安があります。また隙間部分も多そうなので、小さなお子さんが落ちたりしないかどうかも心配になります。建築家の方は、もう少しこのような安全部分に配慮してもらえないかと感じさせられます。

2階作業室を片持ちにして飛び出させる意味はあったのでしょうか

片持ちは階段だけでなく、一部の部屋も片持ちにしています。奥様の作業スペース部分を、1階部分が無い玄関上に飛び出させる設計になっており、床面も一段低く作っているようです。設計意図としては、リビングやダイニングの空間とは別空間として作りたいがために、わざわざ、横の位置と高さもずらして特別な空間を作りたかったのだろうと思います。

積み木の家

わざと複雑な形にする考えは、安全性とは相容れません。

デザイン上の主旨は分かりますが、一方で片持ち構造は、耐震上あまり良いものではありません。もちろん計算上問題なく作っているとは思いますが、それでも一体となっている箱型の家よりも、出っ張りがある分だけ弱くなることは間違いありません。

デザイン上の良さを追求し、安全性は少し劣るという事を容認できるかどうかは住む人の価値観によっても変わってくるでしょう。ですが私個人は安全上の問題を少しとはいえ犠牲にするデザイン性の追求には少し否定的です。構造的に無理のない形のままで、デザイン的な特徴が出せる案があっても良かったのではないかと思います。

バルコニー面前面がガラスになると、構造壁のつながりが出ません

2階から上に上がったバルコニー部分に面する壁は、すべてガラスとなっています。窓を横につなげる連窓というデザインも建築家が好む造りです。明るさを取るためや、見た目の美しさはメリットですが、一方でガラス部分には構造壁を作る事はできませんから、構造的には弱くなります。

連窓のイメージ

連窓が好きな人が多いのはコルビジュエの影響なのでしょうか。

1階のように重量がかかる壁ではないので、構造壁は必要ないだろうと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、必ずしもそうとは限りません。構造壁や構造に強い屋根や床は、つながっていないと強さを発揮しないという事があるからです。

今回の建物では、バルコニーに出る部分の壁がすべてカラスです。その向こう側に同じ高さの壁が立ち上がっていますが、この壁は屋根とはつながっていません。つまり構造の強い部分はこのバルコニー周りだけ切れていることになります。

窓の配置や形はデザインとの取り合いが難しいのですが、どこかに90cm幅だけでも構造壁を作る事は出来ないものかと感じました。

デザイン性と安全性の取り合いは結構難しく仕方がない面もあります

このように、1つ1つは細かな話ですが、デザイン優先のせいで、安全性が少しだけとはいえ、ないがしろにされるという事が、建築家住宅ではよくあります。安全性をないがしろと言っても、法律違反をしている訳ではありませんし、お施主さんが納得していればよい話なのかもしれません。

建築家の設計

建築家は立場上仕方がないのかもしれませんが…。

また、安全性に強く意識をし過ぎますと、結局普通の住宅と変わらないデザインとなってしまい、それでは建築家に設計を頼む意味が大きく減るでしょう。建築家としても、普通のデザインの住宅しか建てないのであれば、その建築家に依頼する人はいなくなるでしょうから、安全性についてはある程度確信犯的に設計せざるを得ないという事情もあると思います。

しかし一方で、安全性も十分に配慮した上で、素晴らしいデザインの建物が作れないものかと、過剰な期待をしてしまいます。私は建築家の方、設計士の方と話をしたことも多く、建築家の皆さんのほとんどが勉強熱心ですし、建築を愛しているという事も良く知っているつもりです。

こういった方々が、安全性を一部とはいえ犠牲にせざるを得ないという状況に何かしらモヤモヤしたものを感じるために、コメントが辛口になってしまうのかもしれません。ですが、建築家の方にはぜひ、安全性にも十分配慮した上で、素晴らしい建物を設計してほしいと強く願っています。

床暖房の上に張ったパネルを正しく打ち付けているかは少し心配です

問題になるかどうかは分かりませんが、この家では電気式床暖房を入れ、その上に下地で使われる合板を貼り、床仕上げとしていました。そのこと自体ですぐに問題が起きるとは思いませんが、一方でその合板を正しく取り付けているかどうかが少し心配です。

釘打ち

床材を留める際に、床暖房のヒーター部分を間違って打たないようにして欲しいものです。

普通は床暖房のヒーターの上には床暖房用のフローリングを貼ります。そして床暖房用のフローリングは、床に留める際に打つ釘が、ヒーターの面状部分に当たらないように考えられています。それは、ヒーター部分に間違って釘を行ってしまうと、その部分だけが異常発熱を起こし、火事になる危険があるからです。

今回の住宅では専用フローリングではなく、普通の合板を貼りつけたのですが、釘を打つ位置などを間違えますと、床暖房のパネルに悪い影響を与え、火事の危険性が高くなりますので、施工時にきちんと気を付けていたのかどうかが少し気になりました。

設計者も付いていますので、予め注意はしてあったと思いますが、一般の方が自分で床工事を行う際には、注意してほしい内容だと考えています。

北側の窓ガラスにLow-Eガラスは効果がどの位なのでしょう

余談ですが、北側にあるバルコニーに使う窓に、Low-Eガラスが使われていました。これも個人的な見解ですが、北側にLow-Eガラスを使う効果については疑問を持っています。

ガラスの透過と反射

Low-Eガラスは直射日光の遮熱には効果は高いと思うのですが…。

元々Low-Eは太陽光を入れ過ぎて室内が暑くなり過ぎないために、赤外線をカットするように作られたものです。ですので直射日光が入る部分にはLow-Eガラスは効果的だと思うのですが、直射日光が入らない北側の窓につける効果がどの位あるのかが正直よく分かりません。

ガラスメーカーさんのサイトによると、Low-Eガラスには日射遮熱型と日射取得型があって、北側の窓には取得型を入れれば効果があると書かれているのですが、それであればLow-Eガラスではなく、普通のペアガラスで、中空部分の幅を広く取るとか、中空層にアルゴンガスを入れるなどの方が効果が高いのでは、と考えてしまいます。

機能建材は、その機能を発揮しやすい場所に使えば良いと私は考えており、なんでもLow-Eにすれば良いとは思っていません。日射取得型のLow-Eガラスは、とにかくLow-Eガラスを普及させたいメーカー側も思惑が強すぎるためにできた製品なのではないかと考えています。

もっともこれは私の偏見で、実際にはきちんと効果が強いのかもしれません。このあたりは詳しい方がいらっしゃれば教えて頂ければと思います。

このページの意見は私見であって、絶対に正しいという話ではありません

このページで述べました意見は、あくまでもいち不動産屋の目線で述べたもので、この意見には納得できない方も多いと思います。一方で建物を建てる方、今後注文住宅を建てようとしている方は、様々な角度から建築について知ることが重要だとも考えています。このページの意見が、皆さんの住宅建築の何らかのご参考になればと思います。

最初に述べましたように、この番組に出る建物には酷いものも多いのですが、これはそんな問題がある建物だとは思っていません。番組に出た中ではかなり良い建物だと思っています。一方で気になる点も無いこともありませんので、こんな考えはどうだろうという意見を述べさせてもらいました。

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