ドリームハウスで放映された鎌倉のガラス張りの家について不動産屋的視点で考えてみました

2016年7月18日にテレビ東京で「完成!ドリームハウス 鎌倉の高台に建つガラス張りの家」という番組が放映されました。私も不動産業という仕事柄、不動産や建物に関するテレビ番組をできる範囲でチェックしていますが、毎回色々と考えさせられる事が多くあります。

今回の放映でも、不動産屋的な立場から見ますと得とは思えない、お勧めしないという内容がたくさんありました。もっとも単に考え方の違いと言える部分が多いため、良い悪いという話ではありません。

ただ、家づくりを考える際に、極端に考えや性能が偏った建物について考える事で、自分の家選びについて深く理解することもできますので、テレビの情報やその建物についてどのような意見があるかを知る事は、何かしらの役に立つと思います。

また2016年11月に放映された「家具職人が1,000万円台で建てるドリームハウス」については「家具職人が建てたドリームハウスは悪くは無いのですが… 」の記事でコメントしていますので、よろしければこちらもご覧ください。

他にも2017年9月10日に放映された「斜めに反り立つ壁の家」については「ドリームハウスで放映された斜めに反り立つ壁の家を見て考えさせられました 」の記事でコメントをしています。

これらのページは、あくまでも私個人の意見ですので、参考意見の1つとして聞いてもらえればと思います。

資産価値的にはお勧めし難い物件と思われます

建築家と不動産屋では、建物についての基本的な考え方が大きく異なります。あくまでも一般論ですが、建築家は建物に芸術性や視覚的な快適性を強く求めるのに対して、不動産屋は資産価値について強く考えます

建築家のイメージ

建築家と不動産屋では、同じ建物を見ても考え方は大きく異なります。

今回放映された物件は、土地は階段を120段上がった上にある立地という事で、土地代はそれほど高くない事でしょう。その分建物は建築費が4,860万円との事、建坪から考えますと通常の戸建住宅の2倍以上の金額です。この価格は設計料を含んでいませんので、建築家が通常求める10%の設計料があったとすれば、合計で5,346万円という価格になります。

これだけ金額がかかるのは仕方がない事でしょう。特殊な立地のために、重機を入れる事ができませんので、その分の人手、人件費は高くなります。また高価な設備機器をたくさん入れていますし、建材も特注で作ったと思われるものが多いことを考えますと、5,000万円以上かかっても不思議ではありません。

一方この高価な建物は資産価値という切り口で見ると、結構厳しいものがあります。最近の戸建住宅は安いものであれば2,000万円位で建てられます。もちろん今回の建物には色々な機能がありますので、同じ価格にはなりませんが、それでも一般的な建物と比べ、3,000万円以上高い価格が付いている事になります。

これが中古物件になった場合、この建物代がいくらになるかはとても不安です。一般的な建物が2,000万円という評価だったとして、この建物の場合、中古住宅の購入者はいくら位高くても買って良いと思うかになります。これは実際の購入者の価値観や感覚にもよりますので、正確なところは分かりませんが、普通は建物が良かった場合でも相場の500万円増しといったあたりではないかと思います。

この考えが正しいとすると、当初5,000万円かけた建物をすぐに中古で売らなければならなくなった時には価格は2,500万円くらい、この差額の2,500万円分は資産価値ではなく、快適性に支払うという事になります。

もちろんこの家を建てた建築家はこういった内容をある程度は把握しているのでしょう。今回は建築家が自宅として建てている建物ですので、自分の設計のショールームとしても使うつもりでしょうし、テレビで取り上げてもらったという広告宣伝費として考えれば、全く元が取れないという事もないかもしれません。

ただ、一般の方が建てるのであれば、資産価値的にはお勧めできませんので、最初から余分にかかるお金は資産価値ではなく、道楽部分だと割り切る必要があります。

これも家を建てる人の価値観に依りますので、これが悪いという話ではありません。ただ、最初からこのような事を知った上で、家の建築を行うべきだと思います。

不動産の資産価値については「2-04-02.戸建住宅建物の資産価値について考えましょう」の記事も参考にしてみてください。

温熱環境については自ら実験台になるつもりのようです

この建物の温熱環境についても、大丈夫だろうかと疑問に思われる点がいくつかあります。例えば
・屋根換気のシステムは本当に有効なのか
・アクアレイヤーシステムを使った床暖房の効果はどの位か
・窓暖房の効果とランニングコストはどの位か
といったあたりで、確実に効果があるのかどうかは、私にはよく分かりません。

実験台のイメージ

建築家も効果を確信している訳では無く、自ら実験台になろうとしているものと思われます。

屋根換気のシステム自体はよくあるのですが、屋根断熱した内側の空気を換気することが、どのくらいの断熱効果を生むのかはよく分かりません。

また、アクアレイヤーシステムという床暖房の効果やランニングコストも効率的なのかどうかが分かり難いと思われます。床暖房につかう電気ヒーターで水を温めるという方法は本当に効率的なのか、直接水を温めた方が良いのでは無いのか、リビングには通常の琉球畳と思われるものが敷かれているが、その下に使う床暖房の効果は出るのか、等々疑問に感じられる部分はたくさんあります。

窓に電気を通し、窓自体を補助暖房として使う方法も、どの位の効果が出るのかはよく分かりません。窓暖を出しているメーカーのサイトによると、冬季の暖房利用時の熱貫流率は1.0となっていますので、断熱材のような効果が高いものとは思われません。

一方で通常のペアガラスの熱還流率は2.0以上ありますから、普通のペアガラスよりも冬場に効果は出ている事でしょう。

アトリエ系の建築家の方は、開口部を多くとる傾向があります。ですが当然その分断熱性は悪い建物になります。窓暖の採用は、開口部は多く取りたい中での苦肉の策のような気がします。冬場の断熱効果は、通常の建物よりは悪いものと思われますが、ガラス面が多い割には寒くない、という点を自ら試してみたかったのではないかと思います。

個人的には温熱環境が劣る建物は、あまりお勧めしませんが、室内からの景色が良い割には、冬場の寒さ対策を完全に見放している訳でもない、という考え方は、あっても良い気はしました。

一般的な断熱の考え方については「3-02-18.プロもあまり詳しくない断熱について知っておきましょう」のページでも説明していますので、興味がある方はこちらのページもご覧ください。

不動産屋的にはお勧めし難くても悪い物件と言う話ではありません

今回は放映された建物について、文句を言っていますが、この物件についてはそれほど悪いとは思っていません。誤解を恐れずに言えば、これまで放映されたドリームハウスの建物の中では、問題が少ない方だと思っています。特に今回は、建築家が自宅として建てていますので、メリットデメリットは納得した上で建てていると思われます。

価値観のイメージ

何を重要視するかは人によりますので、これが一律にダメという話ではありません。

他の放映物件では、建築家のエゴを施主に押し付けているのではないか、実験台にしているのではないか、と思われるような建物もありましたが、今回は建築家の自宅ですから、押し付けるという事はありませんし、実験も自分の身をもって行っているという点で、悪い印象はありません。

新たに採用した住宅設備については、ランニングコストも通常以上にかかるのではないかと思いますが、そういった情報などを公開し、今後似たような設備の導入を考えている人の参考事例を出してもらえればと思います。

新たに注文住宅を検討されている方は、一方的にこの建物が良いとか悪いとか簡単に結論を出さずに、様々な切り口から建物を考え、自分の価値観に合った建物を建てて欲しいと思います。

この記事もその建物選びの参考の1つにでもなればと思います。この記事についてご意見やご質問がある方は「お問い合わせフォーム」をご利用の上、ご連絡をお願いします。

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