隣地との境に擁壁や高低差がある場合には、資産価値に大きな影響を与えます

戸建住宅や住宅用の土地を買う場合、様々なタイプの土地を見る事になります。その中であまり注意されていないと思われるのが、隣地との高低差です。

住宅地全体が傾斜地となっている場合、道路と敷地の間だけでなく、隣地との間にも高低差があったり、擁壁がある場合があります。高低差があるという事は分かっても、それがどのようなリスクがあるのか、土地の資産価値にどのような影響を与えるのかについて、考える方が意外と少ないようですので、今回はこの隣地との間に高低差がある場合のリスクについてお話ししたいと思います。

単に擁壁工事の費用の問題では済まない可能性があります

購入を検討している敷地に擁壁があっても、気にする人は多くいません。単に擁壁の変更や修復工事にいくらくらいかかるのかを考える程度ではないかと思います。

擁壁のイメージ

隣地との間が擁壁の場合は、単に工事費だけでは問題が済まない可能性があります。道路との間が擁壁の場合であれば、問題は小さいのですが…。

安く作る事ができる擁壁のタイプに間知ブロック(けんちぶろっくと読みます)を積むタイプがありますが、こちらですと1平米当たりの工事費は5,6万円位でしょう。ですので、擁壁の面積が20平米だとすると、6万円×20平米で120万円見ておけばよい、と考えがちです。

ですが実際には、そう簡単に解決しないケースが多々あります。工事が単に擁壁の工事だけで済まないケースと、そもそも工事自体が出来ないケースがあるからです。

単に擁壁の工事だけで済まないケースとは、擁壁の上に建物が建っている場合です。この場合単純に擁壁を作ればよいという訳ではなく、上の建物が崩れないように、悪い影響が出ないように、補強などを行いながら工事を進めなければなりません。当然単なる擁壁工事の費用よりもはるかに大きな費用がかかります。

ですが、これはまだマシなケースです。問題は、工事自体が出来ないケースです。

擁壁が自分の敷地ではなく隣地の敷地内の場合、工事はコントロールできません

もし敷地にある擁壁が、自分の敷地内にある場合には自分の費用と責任で工事を行う事ができます。厳密に言えば隣地所有者との調整が出てきますので、100%コントロールは出来ないかもしれませんが、概ね自分側主導で工事を進める事ができるでしょう。

問題なのは、擁壁の所有者が隣地所有者の場合です。擁壁自体が隣地の敷地内にある場合は、擁壁は隣地の方の所有物となります。そしてもし、大きな地震があって、その擁壁に亀裂が入り、崩れ落ちそうになった場合、どうすればよいでしょうか。

もちろん擁壁の修繕義務は所有者である隣地所有者にありますので、隣地の方に、擁壁を修理してもらうよう、依頼することになるでしょう。しかしさらに、隣地の方にお金が無く、擁壁を修理できない、となった場合はどうでしょうか。いつ崩れるか分からない隣地の隣に、不安を抱えながら住んでいかなければなりません。

隣地の擁壁に問題がある場合、その土地を売って引っ越そうと考えても、そのようなリスクがある土地を高く買ってくれる人はいません。購入した当初よりも価格が大きく下がる事もあり得ます。資産価値に大きな影響を与える可能性がある訳です。

がけ条例に抵触する場合には建物が建たない可能性も出てきます

更には擁壁の高さが一定以上あり、そのエリアのがけ条例に該当する場合はさらに面倒です。がけ条例に該当する場合には、その擁壁が一定の基準を満たさないと、擁壁の下の敷地に建物を建てる事がとても難しくなります。

がけ条例の参考例

自治体によって内容は異なりますが、がけ条例に該当すると、土地の使い方に制限がかかります。
出典:千葉県

基準を満たさない擁壁と判定されますと、その擁壁から一定以上の距離を取るか、がけ崩れに対処する塀のようなものを作らないと、下の敷地に建物を建てることができません。新築で建てようと思っても、建築確認申請が通りませんので、新築用地としては役に立たない土地になります。

もし購入当時は問題が無かったとして、その後数十年経過し、隣地の擁壁に問題が出た場合には、その敷地は建物が立てられない土地になり、資産価値がほとんど無くなってしまうという可能性もあります。購入当時は問題が無くても、将来に渡って問題が無いとは限りません。

このがけ条例にかかる擁壁の問題は単に擁壁が損傷する場合のみとは限りません。擁壁の上の土地で、問題があるような盛り土をした場合でも、認められない擁壁になる事もあります。擁壁の上の盛り土を戻せば、下の土地の建物建設は問題なくできるかもしれませんが、擁壁の上で盛り土をしている場合は、大概建物もセットで建てられていますので、その建物に影響を与えず、盛り土を無くすという事は現実的ではありません。

このように、がけ条例に係る擁壁がある場合は、購入当時は問題が無くても、将来何らかの問題が出る可能性を含んでいます。もちろん可能性ですから、絶対に問題がでると断言できる話ではありませんが、こういったリスクを含んでいるという事を、購入当初から把握しておかないと、後で苦労することになり兼ねません。

平坦地との金額比較が簡単にできない点が難しいところです

がけ条例にかからないまでも、隣地との間に擁壁がある土地は、このようなリスクを抱えていることになります。そうなりますと、平坦な土地と比べてリスク分だけ金額が安くないと割が合わない事になります。ただそこで問題なのが、このリスク分をいくらと考えたらよいのかが、はっきりと分からない事です。

この擁壁が隣地側にはなく、道路側にあるだけで、かつ建物に影響しない擁壁であれば、擁壁の工事費用分だけを考えればそれで済みます。ですが、隣地との間に擁壁などがある場合、そしてその擁壁が、自分の敷地側なのか、隣地の敷地側なのか、がけ条例に係るのか、擁壁工事を行う事で上や下の建物に影響がでるのか、こういった要素によって、考えなければならない金額は変わってくるでしょう。

考え方としては、とても小さな金額に収まりきらない程擁壁が高い場合や、がけ条例に係る場合は、よほど条件が良くない限りは見送る方向で考える方が良いのではないかと思います。

そして擁壁が小さく、建物との影響が少なそうな場合は、個別に問題があった場合の金額を考え、想定したリスク分のみ安く買えるように交渉するしか方法は無いのではないかと思います。

隣地に擁壁がある場合、その擁壁を誰が所有しているのか、建物の重量が関係するのか、どの位の高さがあるのかなど、様々な条件によって、考え方は変わってくると思います。どのようなリスクが生じるかは、担当する不動産会社の営業マンに確認し、不明点がある場合には、納得がいくまで購入を控える位の慎重さが必要だと私は思います。

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