何故バイヤーズエージェントが求められているのかを考えてみました
世の中に不動産会社はたくさんありますが、バイヤーズエージェントとして活動している会社はそれ程多くありません。当社:ふくろう不動産は設立当初からバイヤーズエージェントと謳い活動している訳ですが、実際に仕事を始めてみて、このバイヤーズエージェントというタイプは今後ますます世の中から求められていくだろうと実感しています。
何故このバイヤーズエージェントというものが必要なのか、自分の経験も交えてお話ししたいと思います。
何故バイヤーズエージェントが必要かと言えば、問題がある不動産会社が多いからです
この理由を述べなければならない事に、実は少し躊躇しています。変な言い方をしますと、同業者の悪口になり兼ねませんし、実名を挙げて内容を書く事も出来ませんので、何となくイメージが伝われば良いと割り切って説明したいと思います。
そもそもなぜバイヤーズエージェントというものが必要なのかと言えば、一定数以上の不動産会社は、そのまま付き合うには問題があるからです。つまり不動産を買いたいという人に、ある程度の知識とノウハウが無いと、不動産会社の都合の良いように扱われ、購入者が最終的には損をしてしまう、という可能性がある程度の確率で起こりうるという事です。
よくある問題点として
1.情報を全て公開せずに、お客様をコントロールしようとする
2.法的に定められた情報以外の情報を隠す
3.購入者の為にならない営業活動を行う
4.調査などが適当で間違った情報を与えてしまう
と言ったあたりがあります。
これらの点について、もう少し細かくお話をします。
情報をコントロールすることで特定の不動産を買うように誘導しようとします
この典型的な例は、不動産会社が過度に両手取引を狙う場合です。自社で仲介している売主さんの物件で成約することが出来れば、1度の取引で売り上げは2倍になります。そのため、他の仲介会社が扱う売り物件よりも、自社の売り物件の方を優先的に案内しようとしますし、自社の取り扱い物件の都合の良い情報ばかりを伝えようとします。
もし、自社の売り物件のすぐ近くに、他社の条件が良い物件が売りに出されていたとしても、他社物件の紹介はずっと後になるでしょうし、ひどい場合にはその物件の存在すら知らせないでしょう。こういった両手取引の弊害については「不動産取引は知らないと損することがたくさんあります」のページも参考にしてください。
そして、不動産を買おうとしているお客様が情報に注意していないと、情報が制限されている状態になっていること自体に気付かず、損をしていたとしても気が付かないという事が出てきます。
他にも様々な事情で、この物件に当て込みたいと仲介会社が考えた場合、提供する情報をコントロールすることで、売りたい物件を良く見せるという事も出てきます。しかし、その物件が本当に買いたいお客様の為になるかどうかは別の話です。
法律で定められていない情報については隠しても罰則はありません
このケースの典型例は、将来の資産価値についてでしょうか。宅建業等の法律では、すぐに建物が建てられないなど短期間に問題が出そうな項目についてはきちんと説明しなければならないような取り決めになっていますが、長期間後に起こりうるトラブルについては、説明しなくても済むケースが多いように感じます。この代表例が資産価値に関する部分です。
例えば再建築不可物件については、将来建て替えが出来ないという点については説明を行わなければなりませんが、その物件が10年後や20年後にいくらになるかの説明がきちんと行われるケースは少ないと思われます。
あるいは擁壁が隣接している土地についてはどうでしょうか。その時点で擁壁に問題が無ければ、その土地に建物を建てる事が出来ますし、大きな地震が無い限り問題が表面化することはあまり無いでしょう。ですが、こちらも10年後や20年後に擁壁が劣化し、修繕しなければならなくなった場合、その費用やその時の土地の資産価値はどうなるかまで説明されるでしょうか。このあたりの話については「隣地との境に擁壁や高低差がある場合には、資産価値に大きな影響を与えます」の記事も参考になります。
細かな事を言えばキリがありませんが、後々まで考えた場合に知らなければならない事は本当にたくさんあります。しかしこのような内容について説明を受けるケースはあまりありません。その時点での取引に問題はありませんし、そのことで仲介会社が訴えられる事も無いからです。
このあたりの話については「不動産会社の善管注意義務とはどのようなものかご存知ですか?」の記事も参考にしてください。
しつこい営業など迷惑なタイプの会社もそれなりにあります
また、購入を検討している不動産そのものよりも、営業スタイルに問題があるという会社もあります。しょっちゅう電話をしてきたリ、休日や夜間に突然訪問してくる会社はまだまだたくさんあります。未だに怪しい体育会系のノリの、ひたすら強く推した方が良いと考える会社がそこそこあります。私自身はこのような会社は特に嫌いですし、嫌い以前の問題としてとても迷惑だったりします。
他の業界ではこのようなしつこいセールスは減っているのではないかと思うのですが、不動産業界はまだまだ悪い方の古い体質が残っている会社が多数あるため、迷惑な営業を受ける事もしばしばあります。そして何となく流され、強い営業の流れに乗せられて契約してしまい、後で後悔するという話もよく聞きます。
ちなみに当社はこの強引な営業に嫌気がしていますので、当社では電話営業や突然の訪問等は一切行わない事にしています。このあたりの話は「第3章.ふくろう不動産は嫌がられる営業を行いません」のページをご参照ください。
そもそも事実確認をきちんと行わない会社も多数残っています
他にも、事実確認をきちんと行わず、間違った情報を与えたまま契約に進んでしまうという例もあります。不動産取引を行う場合には、調べなければならない事が皆さんの予想以上のたくさんあります。チェックすべき書類だけでも10数枚はありますし、市役所、法務局、現地でも確認すべき項目がたくさんあります。
そして不動産会社によっては、こういった調査をおざなりにして、根拠なく大丈夫だと言い張る事で契約に至ろうとする会社もたくさんあります。例えば前面道路が私道であるにも関わらず、調査をせずに公道だからと言い張り、契約してしまった例や、接道幅も大きく異なっていた等の例も時々目にします。
このような内容については、公図や周辺の土地の登記事項要約書等を取得したり、市役所の道路台帳等を確認することで分かるのですが、この確認作業を行っている会社は残念な事に今でもたくさんあります。正確に言えば、契約までには書類を揃えているのかもしれませんが、検討段階ではこのような書類を取っていないという会社に、私は今でもしょっちゅう会っています。
当社でこのような会社が仲介する売り物件を検討する場合には、売主さん側の仲介会社を催促したり、自分で役所に訪問して書類をチェックするようにしていますが、何割かの会社は、このような確認作業を行っていない様子です。
ではこういった調査をきちんと行わない会社はどのようにお客様に説明をするかと言えば、単に大丈夫ですから、と言い張るだけの会社が多いようです。このあたりの話は「不動産の営業マンの大丈夫というセリフに流されてはいけません」の記事でも触れています。
問題が表面化するのが10年以上先であれば、その内容を無視する仲介会社がたくさんあります
これらの項目については、後々問題になるのですが、この問題になるのが10年以上先の場合と思われる場合には、仲介会社はきちんと説明を行いません。こういた問題で仲介会社が責任を問われる事はあまりありませんし、そういった問題を指摘することで、却って成約の妨げになる事もあるからです。
結局問題がある不動産会社がたくさんあり、そういった会社から自分自身や自分の財産を守るために、購入者の味方になってくれる専門家が必要な状況になっていると私は感じています。
いい加減な不動産会社がたくさんある理由も理解しましょう
世間一般の不動産会社のイメージは、あまり良くないでしょう。ガラが悪い、ウソをつく、強引な営業をされる等、悪いイメージを持ている方の方が多いように感じます。
このイメージがすべて正しいという事はなく、紳士的でウソをつかない不動産会社ももちろんたくさんあります。一方で実際に問題がある、具体的には判断に必要な情報を隠し、適当な話をして、とにかく成約に結び付けようとする会社がたくさんある事も残念な事に事実です。
これはもちろん、その不動産会社に問題があるのですが、なぜそのような会社が数多くあるのか、背景を考える事も重要です。私の推測では、どの会社もどの営業マンも設立当初や就業当初は真面目に、誠実にお客様の話を聞き、様々な情報を提供して、きちんとした仕事をしようと考えていたと思います。
しかしこの仕事を経験した人は誰しも感じる事でしょうが、
・きちんと内容を説明する→話を聞かない
・条件に合う物件をいくつも紹介する→条件がコロコロ変わり、無駄な案内が増える
・現状の相場を正しく説明する→市場に無い理想物件ばかり要求し、最終的に決まらない
・物件をたくさん案内する→他の仲介会社に簡単に流れてしまう
という経験をある程度積みますと、だんだん真面目に案内や紹介をするのが、馬鹿らしくなってしまう、あるいは無駄だと感じてしまう時が来ます。
そして、どうせ話をきちんと聞かない相手であれば、強引に押した方が早いと考えるようになりますし、期間が経って他の不動産会社に流れてしまう経験を何度かしてしまいますと、とにかく早いうちに成約させてしまおうと考えるようになります。
この「話を聞かない」という事はお客様自身は自覚が無いようなのですが、実はこのタイプの方は結構数多くいらっしゃいます。当社に来訪されるお客様では少ないのですが、質問のメールや電話をされる方では、3割くらいの方は話をきちんと聞かないタイプだと私は感じています。当社のようなある種マニアックな会社に連絡をしてくる人ですらそうなのですから、他の会社ではこのようなお客様の比率はもっと高いでしょう。
この時点で踏みとどまって、真面目に仕事を進めようと意思を強く持つのは簡単な事ではありません。会社員であれば営業ノルマもありますので、時間をかけてお客様に不動産を理解してもらうための時間が取れない事も多いからです。
実際には強引で悪質な営業と、丁寧で時間をかける営業は完全に2つに分かれるというものではありません。1つの会社、1人の営業マンの中に、早く強引に進めたいという部分と、じっくりと考えてもらおうという部分が共存しており、状況等によってこの2つのどちらかが強く出てきます。しかし前者が強く出るタイプの困った会社、困った営業マンが一定数以上いるのも確かです。
変なお客様が続いた場合に、それでも丁寧な仕事をしようと思い続けるのは本当に大変な事です。不動産を買いたいというお客様の目からすれば納得がいかない事だとは思いますが、変な不動産会社の人間が多いというのは、一定数のお客様が作ったとも言えると私は思っています。
だからと言って、問題がある不動産会社の存在が許せるというものでもないでしょう。他に問題があるお客様がいたからといって、真面目な購入者が代わりに被害を受けるという話も納得のいくものでもありません。
そして私は、設立当初の気持ちは忘れないようにしたいと思っていますし、変な経験をした後であっても、真面目に情報を伝える事を怠らないようにしようと心がけているつもりです。
バイヤーズエージェントがもっと増えると良いと思っています
しかし、現状としてこのような問題がある会社が一定数あるのも事実として受け止めなければなりません。そして、このような問題を起こさずに済む方法の1つとして、バイヤーズエージェントの存在があると私は思っています。
もちろんバイヤーズエージェントであれば、こういった問題のすべてが解決するわけではありません。バイヤーズエージェントだとしても強引な営業を行う会社はあるでしょうし、きちんと調査を行わない会社もあるでしょう。
一方でバイヤーズエージェントを名乗ろうとすれば、当然その特徴を出さなければなりません。買い手側の味方になるための特徴を出そうと考えた場合に、どうしても調査や検査やコンサルティング部分を強化しなければ、その特徴は出し難いと私は思っています。
特徴として「誠心誠意仕事をします」とか「フットワークの良い会社です」といった切り口では、買い手のお客様に強く印象付けるのは難しいでしょう。このあたりの不動産会社の見かたについては「不動産会社は売り文句で実力が判断できます」の記事も参考になります。
そして、買い手の立場に立ったバイヤーズエージェントが増える事で、買主はどのような情報を求めているのか、何を必要としているのかがもっと明確になり、その内容が売り主側の不動産会社にも伝わるようになり、いまよりももっと情報公開が進む業界になって欲しいと私は思っています。
この記事と似たような話を動画で説明してみました
この記事と内容は重なるのですが、似たような話を動画でも解説しています。その動画がこちらです。
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