この記事の所要時間: 1024

不動産に関わるトラブルの中で、善管注意義務違反という言葉を見たり聞いたりすることはあるでしょうか。元々善管注意義務とは民法の規定なのですが、不動産取引でもこの規定に反するという事でトラブルになる事があります。

このページでは、そもそも善管注意義務とは何なのか、そして不動産取引を行う人はどういった点に注意しなければならないのかについて、お話ししたいと思います。

不動産に関する善管注意義務は3つに分類できます

この「善管注意義務」とは略さずに言いますと、「善良なる管理者としての注意をもって処理する義務」の事です。これは民法の第644条の規定です。

この義務を不動産取引に当てはめますと、大体3つの義務に分類できます。その3つとは、
1.調査義務
2.説明義務
3.指導助言義務
の3つです。

調査義務については大半の不動産会社はきちんと調べていると感じています

1.の調査義務とは、一戸建ての売買であれば、土地や建物の法律的なチェック、土地があるエリアの用途地域、建築上の制限、周辺環境の調査など、不動産のプロとして調べなければならない項目について、きちんと調べなければならない義務の事です。

土地の調査のイメージ

大半の不動産会社はきちんと調査を行います。

幸いという言い方が正しいかどうかは分かりませんが、この1.の調査義務については大半の不動産会社はきちんと調べています。何を調査しなければならないかについては、不動産業法や不動産の関連協会で取り決めがあり、調査内容については、契約書や重要事項説明書に記載しなければなりません。

この部分で調査が無かったり、間違った内容を記載していますと、裁判沙汰になった場合にはかなり高い確率で不動産会社が負けますので、不動産会社はこの点についてはきちんと調べる会社が多い印象があります。

大半とは言いましたが、それでも当社に頂く相談等で、重要事項説明書では公道に接道となっているのに実際には私道だったという話が先日ありました。残念ですがすべての会社で調査が完璧に行われているとは限りません。

ですので調査内容については、その裏付け資料、例えば私道かどうかについては、お客様自身が公図等を確認する等のチェックは必要になるでしょう。私道については「3-01-06.敷地に接している道路が私道でないと言い切れますか?」の記事や「私道に接している土地や戸建住宅を買う場合には、最低2つの許可を確認しましょう」の記事も参考になります。

また、契約時までにはきちんと調査を行うにしても、検討時には必要な書類が揃っていないため判断ができないというケースは結構あります。当社でお客様が検討されている物件について問い合わせをしても、その時点では公図が無いとか測量図が無いと売り主さん側の仲介会社から返される事も時々あります。

ごく一部とは言え、このような調査義務を果たさない不動産会社はありますので、不動産の売主さんや買主さんは自分でもある程度は不動産に詳しくなり、その上で自分が依頼している仲介会社が調査義務を怠らない会社であるかどうかを判断する必要はあります。

ちなみにこれらのチェックは、難しくはありませんが数が多いのが難点です。土地のついてのチェック項目については「2-09.土地の事前チェックだけでもシートは4枚」と「2-10.現地では道路との関係と周辺環境をチェックします」の記事も参考になります。

ちなみに上記のページで説明しているチェック内容は、実のところ土地のチェックの最低限レベルでしかなく、実際にはもっと他の項目も含めて調べる必要があります。

説明義務を果たしていても、どこまで詳しく話しているかは疑問です

2.の説明義務についても、大半の不動産会社では説明を行っていると思います。こちらも法律の規定で、重要事項内容については説明しなければならないとなっており、契約書や重要事項説明書に記載がある以上、その内容については説明せずに済ますという事は難しくなっています。

説明のイメージ

説明はまあまあというレベルの会社が多いでしょうか。

一方でこの説明をどこまで丁寧に行っているかは、不動産会社によって差があるように感じます。例えば重要事項説明書の書面を事前に渡さず、契約当日の説明で済まそうとする不動産会社は丁寧な説明をしているとは思えません

不動産の説明は専門用語が多いため、重要事項説明書の文面だけを読んでも、一般の方には分からない内容もたくさんあります。例えば売買する土地が市街化調整区域にあった場合、その旨の説明は行うとしても、市街化調整区域にある土地にどのようなデメリットがあるのかについては、仲介会社によって説明の深さは異なるでしょう。

不動産取引を行う方は、当然より詳しく説明してくれる不動産会社、あるいは営業担当者を選ばなければなりません。しかし、契約前に仲介会社が詳しく説明してくれる会社なのかどうかの判断も簡単ではありません。自分が問題の有無すら知らなければ、そもそも質問をすること自体が難しいからです。

当社のサイトでは何度も同じ話をしていますが、きちんとした質問をするには、皆さん自身がある程度は不動産について詳しくならなければなりません。知識を持った上で質問し、相手の反応や説明を確認し、問題が無いと思われた場合に、その会社に取引を依頼するという流れが必要になってきます。

法律のカバーが及ばないのは、指導助言義務です

善管注意義務違反で一番問題になりやすいのが、3.の指導助言義務です。「問題になりやすい」と申し上げましたが、これは裁判沙汰のようなトラブルになりやすいという意味ではありません。

指導助言のイメージ

指導助言は的確にできている会社は少ないと感じます。

裁判になるのはむしろ1.の調査義務違反や2.の説明義務違反です。こちらは法律で内容が定められていることが多いため、その規定から外れますと、不動産会社が裁判で負ける事例が多くなります。また、不動産会社の失態が明らかになり易いので、目に見えるトラブルという点では1.や2.の方が多いでしょう。

ですが実際には3.の指導助言義務をきちんと行う不動産会社が圧倒的に少なく、長い目で見ますと売り手や買い手が損をしているという事例が多いと私は思っています。

例えばお客様が購入された不動産の将来の資産価値についての説明や指導を、懇切丁寧に行う会社はどの位あるでしょうか。将来の資産価値ついて悪く言う不動産会社はあまり無いでしょう。

不動産分譲会社も仲介会社も、不動産の取引が成立して初めて報酬が発生します。ですので取引を妨げるような情報で、かつ法的に訴えられないような情報を正確に伝え、かつ助言するようなインセンティブは全く働きません。

この指導助言義務違反については、あまり公にならず、取引した人自身も気が付かずに損をしているという事も多くあります。この問題を避けるには、やはり取引される方自身が不動産について詳しくならなければなりません。

トラブル発生が10年後以降と思われる内容については助言されません

これら3つの善管注意義務は、法律で定められているものもありますが、法律の取り決めがないものについては、不動産会社のモラルに委ねられます。そして一般的には、問題が取引から10年以上後に発覚しそうな問題については、知らされずに終わると考えてください。

数十年後に出るトラブル

遠い将来に起きるかもしれないトラブルについては、ほとんど説明されません。

調査義務や説明義務はもちろん、指導助言義務についても、取引した後すぐに問題になるようなものについては、ほとんどの不動産会社はきちんと義務を果たすでしょう。すぐに問題が発覚するものについては、正しく調査し、きちんと説明し、リスクについても助言を行います。取引が無事終わったとしても、すぐに問題が出るのであれば訴えられ、トラブルに巻き込まれる可能性が高いからです。

一方でトラブルが起きる可能性が10年以上先と思われる場合はどうでしょうか。説明などの内容が法律で定められたものでないのであれば、わざわざ説明する会社は少ないのではないかと思います。

例えば購入する戸建て住宅の隣地と高低差があり、2m強の擁壁が隣地の敷地内にあったとしましょう。売買契約時点ではその擁壁に全く問題は無く、取引自体には何の問題もありません。

高さが2m以上の擁壁がある場合には、自治体のがけ条例に該当することが多いため、がけ条例の説明は行われるでしょう。ですが取引時点ではその擁壁に問題は見当たらなければ取引自体が問題視される事はありません。

ですが10年後や20年後はどうなっているでしょうか。その期間に大きな地震があり、隣地の擁壁にひび等が入った場合はどうなるでしょうか。

この場合でも今の建物を日常的に使う分には問題はならないでしょう。ですが、売却時にどういった影響が出るかは分かりません。

新たにその土地を購入しようと考える人は、家を新たに建てたいと考えて土地の購入を考えているとします。ですが隣地の擁壁に問題がある場合には、家を建てようと考えてもその土地の建築確認申請が通らないという事も考えられます。擁壁が対象土地内であれば、擁壁補修工事分の金額を考えて、最終的に土地代の減額などで折り合いが付くこともあるでしょう。ですが擁壁が隣地の場合には手の打ちようはありません。この隣地に擁壁がある場合の問題点については「隣地との境に擁壁や高低差がある場合には、資産価値に大きな影響を与えます 」の記事も参考になります。

これはほんの一例ですが、長い先の資産価値がどうなっているかや、建物建て替えの可能性がどうなっているかなどの説明については、正しく助言されているかどうかは分かりません。

自分で勉強することでリスクを避けるしか方法はありません

ここまで善管注意義務についてお話ししてきました。そして、これら善管注意義務違反を避けるには、結論から言いますと自分で不動産について勉強し、詳しくなるしか方法はありません

勉強のイメージ

自分で勉強するしか対策はありません。

もちろん取引を行う不動産会社がきちんと対応してくれれば、問題になる事は無いでしょう。しかし、その不動産会社がきちんと調査や説明や指導助言を行ってくれるかどうかは、知識が無ければ運任せになります。一方である程度の知識ああれば、自分で相手方の不動産会社がどういった方針や考えなのかが分かりますし、より精度が高い目で不動産会社を選ぶことが出来るでしょう。

当社:ふくろう不動産ではサイトや動画で様々な情報を提供していますが、どのページにも通ずるテーマとして、不動産取引は知らないと損をするという話を入れています。不動産のプロに対して、知識で対抗するのは無理という意見もありますが、私はそうは思いません。プロと全く同じ知識を持つ必要はなく、不動産の選び方、不動産会社の選び方という点である程度知識があるだけでも、失敗を減らすことが出来るからです。

不動産の売買はほとんどの人にとって人生で1番金額の大きな取引です。この取引で失敗をしないように、十分に勉強して臨んで頂ければと思います。

この記事の内容を動画でも説明してみました

このページの内容を動画でも解説しています。その動画がこちらです。

よろしければ、動画もご確認ください。

この記事についてのご意見やご質問等がある方は「お問い合わせフォーム」をご利用の上、ご連絡をお願いします。