化学物質過敏症になる危険を警告する香害という本を読みました

当社:ふくろう不動産は不動産仲介会社ではありますが、不動産を購入される方が健康被害に遭う率を減らすべく、事前に様々な調査を行っています。具体的には、低周波音過敏症、電磁波過敏症、そして化学物質過敏症にならない住まいを提供できるような検査体制を整えています。

実際にこれらの検査は完璧からは程遠いものですが、お客様が健康被害を受ける率を少しでも減らせればと考えています。そして、そのための勉強も欠かせません。

過敏症関係の本やサイトは定期的にチェックしているのですが、今回は過敏症関連の本として「香害(発行:金曜日)」という本を読みました。本を通して読んでみて、良い点や悪い点を自分なりにまとめてみましたので、備忘録を兼ねてこのページにまとめてみたいと思います。

化学物質過敏症の存在を広く知らしめるという点がメリットです

香害の本の表紙

2017年4月に発行された本です。
出典:金曜日

この本の最大のメリットは、香料が入った柔軟剤や消臭除菌スプレー等が、化学物質過敏症を引き起こす可能性があると警告している点だと思います。最近(2017年時点)でこそ、ようやく香害という言葉がウィキペディアにも掲載される位、香りの問題が広まってきましたが、それでも世の中の大半の人は、香りが人の健康に悪影響を与える可能性があるという事を知らないでしょう。

私の家族の1人は軽度の化学物質過敏症なのですが、香り付きの柔軟剤を使ったと思われる人と長時間会っていますと、気持ちが悪くなったり胸が痛くなったりします。自宅で使うものについては、対処策が色々とある(例えば家具や家電は購入後1日以上は外で天日干しをした後で家の中に入れています)のですが、他の人が使っているものについては、何もすることができません。

もちろん香り付き柔軟剤を使っている方はまったく悪意は無く、むしろ良かれと思っているのだと思います。しかし知らないとはいえ、一定の方の健康に被害を与えているという事を知るべきだと思いますし、利用や使い方をもっと考えて欲しいと思います。

香りがきついと聞きますと、単に気分が悪くなる程度と考える方の方が多いと思いますが、過敏症の方にとってはそんな簡単なレベルの話ではありません。気持ちが悪くなり、頭が働かず、日常生活が送れなくなるレベルの話です。

香りの強い製品は化学物質過敏症という病気を引き起こす可能性がある、という事を世の中に広く知らしめるためにも、このような本はもっと多く読まれる事を期待しています。

メーカーの影響力が強いせいか、香害はマスコミではあまり取り上げられません

香害についての話がテレビや新聞、雑誌を持っている出版社から情報発信される率は残念な事に低いでしょう。それは香りを出して問題となる製品が、広告をたくさん出している大手会社の製品である事が多いからです。

マスコミのイメージ

残念な事に、広告を出している企業を批判するような内容は、マスコミではあまり扱われません。

皆さんご存知のように、テレビであればその収入はコマーシャルから、新聞や雑誌であれば、広告を出してくれる広告主からの収入で、それらの会社経営が成り立っています。そのため多くの広告費を出してくれる会社の悪口を簡単に言う事はできません。

この香害という本は(株)金曜日という出版社から発行されています。この会社は広告収入を当てにせずに運営するという方針で書誌などを発行しているため、メーカーの悪い点も隠さずに公表できるという数少ない出版社です。後述しますようにこの会社の発行物については不満も多くあるのですが、一方でメーカーの意見に左右されないという姿勢は高く評価されるべきだと思っています。

ですので、金曜日が発行している書籍等で当社の仕事に関わりがありそうな本は出来る範囲で買うようにしています。世間一般に出ている本とは違う切り口で書かれている書籍も多いので、興味がある方は(株)金曜日の本をチェックしてみてください。

内容がどこまで正しいのかは少し不安があります

ここまで持ち上げておいてデメリットを言うのは気が引けますが、この本を含めた金曜日の本には結構不満もあります。最大の不満は、本の内容がどこまで正しいのか信じきれない事が多いという点です。

内容が本当に正しいのか

この本に書かれた内容のどこまでが正しいのか疑問を感じさせます。

実際にこの「香害」の本の中でも間違いとまでは言いませんが、大きく誤解されるのでは、と思われる部分が多々あります。例えば家電製品の電磁波についての話が約1ページ書かれています。この1ページ分の内容だけでも私は突っ込める個所がたくさんあります。

電磁波対策の表現については下記のような問題があります

電気カーペットでは発生する磁場を打ち消しあうよう配線をした商品が売りに出されています

このこと自体は正しいのですが、対策商品を買えば電磁波の心配はしなくても良いように受け取られます。実際には書かれている通り、対策は磁場に対してのみで、電場に対しての対策はほとんどの製品は施されていません。実際に私もお客様の自宅の計測で、磁場はほとんど出ないけれども電場がすごく大きいという電気カーペットを計測した事があります。事実の一部だけを書いて、全体を誤解させる表現ではないかと思います。

電気毛布は寝る前に温めておき、寝る時に電源を切る方法があります

これも間違いとは言いませんが、正確に言えば電源を切るのではなく、コンセントを抜く、が正しい対処策のはずです。電源を切れば磁場の発生は防げますが電場は電源を落としていてもコンセントから電気毛布全体に広がっています。電源ケーブルを抜くことでこの電場を低くすることが出来ますので、表現にやや問題があります。

家電製品で最も強い電磁波を出すのはIH調理器です

これは製品によって異なります。一般的に2008年頃までに発売されたIH調理器は高い磁場を出していましたが、これ以降のIH調理器については、磁場がほとんど出ない製品の方が多くなっていると思われます。

電磁波については「第2章.健康被害を起こすかもしれない電磁波について知っておくべきこと」と、その子ページで色々と解説していますので、そちらも参考にしてください。

他にも電磁波関連の話については、ポイントが違うのでは、と思わされる記述がたくさんあります。私自身は化学物質については電磁波ほど詳しくありません。ただ自分で分かる電磁波については、これだけ違う、あるいは誤解を受けるような内容になっている部分を見ますと、他の化学物質過敏症について書かれている内容のどこまでが本当に正しいのか、少し不安を感じます。

化学物質過敏症の方本人向けではなく、周辺の方に読んでほしい本です

色々と文句を言ってしまいましたが、それでもこのような化学物質過敏症に関する本が出るのは大変良い事だと思っています。一方で実際の化学物質過敏症の方が読んでも、役に立つ部分はあまり無いでしょう。過敏症の方であれば話の大半は既に知っている話だと思われるからです。

ですが、過敏症の周りにいる方、ご家族や職場の方などに読んでもらう本としては結構有効です。過敏症の方にとって大きな障害は、周りの方に理解してもらえないという点です。当社にも過敏症と思われる方々から相談の連絡をよく頂きますが、それらの方々の何割かは、家族が病気を気のせいだと思っているという点です。

家族のイメージ

過敏症の方本人よりも、ご家族の方や会社の同僚に読んでほしい本です。

過敏症の方は、ご家族を含め周りの方の協力が無いと、対処しきれない事が多くなります。周りの方に過敏症とはどういったものなのか、本当に存在するものであり、大変な症状であるという事を理解してもらうために、この本は使えると思います。

また、香りがちょっと気になるという方の何割かは化学物質過敏症の予備軍と思われます。1度完全に過敏症の症状が発症しますと、日常生活を送る事が本当に大変になります。まだ予備軍の内に、打てる対応策を打つ事で、大きな被害を防ぐことが出来ると思います。何か色々な匂いが気になるという方も、良ければこの本を読んでみてください。

化学物質過敏症については「自然素材の住宅であれば化学物質過敏症の方でも大丈夫、ではありません」の記事も参考になると思います。

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