自然素材の住宅であれば化学物質過敏症の方でも大丈夫、ではありません

建設会社や工務店の宣伝に、当社は自然素材を使った住宅でシックハウス対策は万全です、と書かれているものがあります。このあたりは建設業界の誤解もあると思います。しかし実際のところ、自然住宅には化学物質過敏症の方は住めない可能性が高いようです。

自然住宅から発散する物質は化学物質過敏症の方に影響を与えます

化学物質過敏症と聞くと、人が作った化学物質にだけ反応するように聞こえます。そのため、自然素材だけで作った家であれば、化学物質過敏症の人でも問題なく過ごせるような気がしてしまいます。

畳の部屋

すべてが自然素材で作った部屋でも、化学物質過敏症の方にとってはダメというケースはよくあります。

ですが実際は化学物質過敏症の方は、自然素材から出る匂いや成分にも反応します。割とよく聞くのは、ヒノキやヒバなどの木の香りや、畳のイグサの匂いなどです。

木の香りや畳の匂いなどは、一般の方からすればとても良いと感じられるものです。ですが過敏症の方は、このような匂いにも反応し、体調を悪くする方がいらっしゃいます。どんな匂いに反応するかは過敏症の人によって異なるのですが、木の匂い、畳の匂いは割と高い確率でダメという方が多いように感じます。

化学物質過敏症になる原因としては、シックハウス、本当の化学物質がもとで発症する人が多いと思いますが、1度症状が出てしまうと、化学物質だけでなく、色々な匂いや物質に反応してしまうようです。

ですので自然住宅は、化学物質過敏症でない方が、過敏症となるのを防ぐ効果はあるかもしれませんが、1度過敏症になった方から見れば、住めない住宅である可能性がそれなりに高くあります。

変な話ですが、化学物質過敏症の方が自然素材よりも化学物質の方が悪い症状が出ないということもあります。例えば床材はムクのフローリングよりも、表面をウレタン塗装した床材の方が問題にならない、というケースはよくあります。また、本畳よりもビニール製のゴザの方が悪い症状が出ないというケースもあります。

床のタイル

では床をタイルや石にしてはどうかと考える人もいますが、タイル自体に匂いがするものもあれば、目地材や接着剤が問題となることもあります。

過敏症の方は、人それぞれ症状の出方や何に反応するかが異なります。ですので、これらの話は絶対にどの人にも当てはまるという話ではありませんし、逆に自然素材であれば何でも良いという話でもありません。

エコ対策建材で症状が悪化するという可能性もあります

また、色々なエコ対策建材が出ていますが、これらの建材がすべて化学物質過敏症の人に問題がないかと言えば、そんなことはありません。むしろかえってマイナスである例も多々見受けられます。

匂うのイメージ

化学物質過敏症の方は自然素材やエコ建材の匂いでも症状を悪化させることがあります。

例えばエコ系の壁紙です。化学物質過敏症と言えば、塩ビの壁紙に問題があると思われがちのため、エコ系の壁紙に代えれば問題は出ないのでは、と考える方もいます。しかしエコ系でも問題がある壁紙はたくさんあるようです。

例えば再生紙を使った壁紙などでは、製造過程に問題があるのか、これがダメという方はそこそこいます。あるいは壁の中にある別の物質の何かを通してしまうからかもしれません。

再生紙は地球環境的には優れているのかもしれませんが、環境に良い話と人の体に問題がないかどうかは全く別の話です。単にエコという言葉に惑わされてはいけません。

塩ビクロスがダメであれば、左官材が良いのでは、と考える方もいるかもしれません。ですが左官材もそれなりにリスクがあります。

左官のイメージ

左官材も天然由来のものしか使っていなくても、過敏症の方に悪影響を与えることがあります。

まず左官材には化学物質が入っているものが多くあります。例えば珪藻土はそれ自体に固まる機能がありませんので、珪藻土壁にはバインダーと呼ばれるつなぎ材が入っています。このつなぎ材は化学物質であるケースも多く、それが体に悪い可能性もあります。

またこのバインダーが自然由来のものでも問題となるケースもあります。昔の壁材ではこのバインダーに海藻を使うものが多くあるのですが、この海藻系のつなぎ材がダメという過敏症の方も多くいるようです。昔ながらの漆喰でもこの海藻系の材料を使うことも多いため、しっくい壁でもダメという方がいると聞きます。

壁以外も似たような状況です。床のフローリングに自然系の塗料を検討される方も多いと思いますが、これも問題がでるケースがあります。自然系塗料ではヒバ油や荏油など自然から採った材料で作った塗料がありますが、これの匂いや成分で体調を悪くする過敏症の方もいらっしゃるようです。

塗料のイメージ

仮に100%自然素材が原料であっても、現場施工の塗料は使わない方が確実です。

基本的に塗料は化学物質過敏症の方にとって、リスクの高いものです。塗装がどうしても必要だということでない限り、塗料は使わない方がリスクが少ないと思われます。床材など、どうしても汚れが出やすい部位などは、塗装済みの製品を使う方が、まだ危険は少ないのではと思われます。

一般の基準は過敏症の方に耐えられるものではありません

昔はシックハウスについて聞くことが多かったけれども、2003年の法律改正以降は問題はないのではないか、と考える建設関係者も多いようです。

確かに2003年で制定された俗に言うシックハウス法で、内装に使える材料の制限が入ったことで、問題は少なくなっていると考えられるかもしれません。

ですが、この内装制限で抑えられる化学物質はホルムアルデヒドだけです。よく内装材の基準で、F☆☆☆☆(正式な読み方は決まっていませんが、エフフォースターと呼ぶ人が多いようです)を使っているので大丈夫です、と話す人がいます。このF☆☆☆☆のFとはformaldehyde(ホルムアルデヒド)の頭文字を取って付けられている名称で、発散成分について制限されているのもホルムアルデヒドだけです。

つまりホルムアルデヒド以外の化学物質については、どの成分がどれだけ出ているのかは全く分かりません。このことは施工する建設会社の人はもちろん、作っているメーカーや輸入している商社の営業マンでも知らないこともあります。

以前私が勤めていた出版社の雑誌で、とある建材について、製造過程を考えるとこの建材はアセトアルデヒドを出している可能性がある、という記事を載せたことがあります。その際に建材を販売している販社から、大きなクレームがきました。ですがそのクレームの内容は、「この製品はF☆☆☆☆を取っている建材で、アセトアルデヒドのような有害な物質を出しているはずはない」というものでした。

前述しましたように、F☆☆☆☆の規定はホルムアルデヒドについてのみの規定ですから、アセトアルデヒドについては何ら保証するものではありません。しかし、この製品を売っている会社ですらこのような認識だったりします。販社はこの製品を卸す工務店などに製品の説明をするでしょうが、恐らく間違った説明をしているでしょう。そして工務店などの人は、この間違った内容を信じて、間違った施工をしてしまうこともあると思います。

先日リフォーム工事を行っている職人さんと話をした際に、接着剤の話が出ました。職人さんは、接着剤は昔と違って匂いもほとんどしないものになったので、今では気にする人はいないのではないか、と話されていました。私は一般の人には分からなくても過敏症の人は接着剤が最近使われたかどうかは分かるし感じることも多いという話を返しました。

化学物質過敏症の人の数自体がそれほど多い訳ではないために、あまり知られていないのでしょうが、建設業界では今は化学物質については問題はない、と考えている人は多いようです。

化学物質過敏症の人が感じるのが、規定値以下のホルムアルデヒドなのか、あるいは他の化学物質、トルエンとかキシレンとかアセトアルデヒドとか、別の物質なのかは正確には分かりません。恐らく人によっても反応する物質が違うでしょう。ただ、今の建材だから問題が出ないということはなく、今でも化学物質過敏症の症状を発症される方は一定数いらっしゃいます。

過敏症の症状は人によって異なるため、試してみないと分かりません

化学物質過敏症の厄介なところは、人によって問題となる物質が違う事です。ある過敏症の方はこのやり方で問題が改善したとしても、別の過敏症の方が同じ手法で問題が解決できるとは限りません。別の物質で症状を発症している可能性があるからです。

薬品のイメージ

どの薬品、その物質に反応するかは過敏症の方ごとに異なります。

ですので対処策を求められた場合、一般的にはこうですが、実際には試してもらわないと分かりません、としかお答えできません。

ですがこの試すという方法自体、簡単ではありません。例えば壁に評判の良い左官材を塗り、それが逆効果だった場合はどうでしょうか。一部屋に左官を入れること自体大きな金額がかかりますし、さらにそれがまずかったからというって、削り落とすのも多額の費用がかかります。

それも左官材を落とすだけで元に戻るのであればまだしも、変な匂いがその部屋の床やら天井、あるいは壁の下地材に染み込んでしまった場合は、その部屋自体が使えなくなるということもあります。少し間違えるだけで、費用がかかることはもちろん、住める部屋を失う事にもなり兼ねません。

中古住宅を借り、手を入れるのが現実的な対処策かもしれません

このような状況を考えますと、化学物質過敏症の方が住まいを探すのは本当に大変だという事が分かります。当社:ふくろう不動産は当初は過敏症の方専門の不動産会社、と謳っておりましたが最近はあまりこの内容を全面に出していません。

色々な方の相談に乗ったり話を聞いたりして感じたのは、あまり当社側で役に立てるサービスが提供できないことに気が付いたからです。

当社は過敏症について、シックハウスについての知識がそれなりにあり、アドバイスできることもあります。ですが、まだ過敏症ではない方に対して、その予防策で物件の選び方などをお話しすることは出来ても、既に過敏症の症状が出ている人については、本当に一般的な話しか出来ません

また過敏症の方に適した住まいを探そうと考えても、なかなか条件に合った住まいを見つけることができません。

引っ越しのイメージ

過敏症の方が引っ越し先を見つけるのも本当に大変です。

売買物件であれば、古い中古戸建てを探して提案するということもできますが、住む場所を固定化するのはそれなりにリスクがあります。例えば隣地の住宅が外壁の塗装をやり直すとなった場合、対処する方法が無いからです。これはマンションであっても同じです。大規模修繕を行うかどうかは、その人自身で決めることができず、そして大規模修繕によくある外壁塗り直しによる悪影響を防ぐことが出来ません

一方賃貸物件であれば、問題があればすぐに別の場所に引っ越すという選択肢は出来ますが、別のデメリットが出てきます。まずリフォームやクリーニングの時期や内容が簡単に把握できません。化学物質過敏症の方が住む部屋であれば、一定期間リフォームをしていない部屋が望ましいのですが、最近の賃貸住宅は割と高い率で入居者入れ替え時に壁紙などを取り換えます。リフォーム工事から期間が経っていない部屋には、過敏症の方はとても住むことはできないでしょう。

事前にリフォームの有無を聞き、リフォームから一定期間経過後の部屋のみ見に行けば良いではないか、と思われるかもしれませんが、この情報がなかなか正しく伝わりません。リフォームされていないと聞いていたのに実際に内見してみるとリフォーム直後というケースはよくあります。

元付側(大家さん側)の不動産会社に状況をきちんと話しているにも関わらず、リフォームの有無や時期については無視されることがよくあります。おそらく大きな問題とは思われていないからでしょう。

また、過敏症の方が100%満足できる部屋はなかなかないため、契約後に手を入れなければならないこともあります。壁などにアルミホイルを貼ったり、危険と思われる建材や設備を外したりしなければならないこともあります。ですが賃貸物件はその人の持ち物ではないため、これらの改装も簡単ではありません。大家さんが認めないこともあるからです。

古民家のイメージ

古い住宅を借りるのが現実的な対処策だと思いますが…

これらの状況を考えると、手があまり入っていない空き家住宅、中古の戸建て住宅を借りて、手を入れていくというのが現実的かもしれません。中古戸建て住宅ですと、賃貸アパートや賃貸マンションと比べてリフォームされる件数が少ないこと、そして、古い戸建て住宅であれば、建材も使い古され、変な物質を発散していないことも多いからです。

そして、その古い住宅に問題がなければ、最終的にその家を買い取るという選択肢もあります。不動産の購入は、住む場所が固定化されるというリスクもありますが、もともと建物評価がゼロに近い住宅を購入するのであれば、万一出なければならなくなったとしても、もともと建物評価がゼロですので、購入時から大きく資産価値が下がるという事もありません。購入パターンの中ではリスクが小さいと思われます。

もちろん土地を購入して、自然住宅を建てるという選択肢も考えられなくはありません。しかし、自然住宅であれば化学物質過敏症の方が住むのに問題がないかと言えば、そうとは言えないのはここまでお話しした通りです。そして、新築の戸建て住宅は転売する際の価格の下がり具合はとにかく大きなものになります。経済的にはリスクの高い方法ではないかと思います。

当社:ふくろう不動産は売買仲介を中心としている不動産会社です。ですので、医学的な内容にそれほど詳しい訳ではありません。ただ、住まいを提供する立場として、わかる範囲で化学物質過敏症の方、あるいは過敏症が気になる方に向けて、情報を発信していきたいと思います。

また、当社はまだまだ過敏症の方の情報が足りていません。もし、過敏症の方に役立つ情報がありましたら、皆様から教えてもらえればと思います。

当社への連絡は「お問い合わせフォーム」のご利用が便利です。ご連絡されたからと言って、当社からしつこい営業を行うこともありませんので、ご安心ください。

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